pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【新型コロナウイルス】変異株の集団感染、愛媛県今治市での造船所クラスター関連、まとめ

20200214065503

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性患者の検体から、英国型や南アフリカ型、ブラジル型、さらに日本国内で変異した可能性がある変異株の事例が増えている。

新型コロナの陽性と分かった感染者の検体から、5~10%の数でスクリーニング検査を行って、そこからさらに変異株PCR検査を経て確定できたものだけなので、発表と報道されるのは氷山の一角にすぎない。

 

国立感染症研究所(NIID)からの第7報(3月9日発表)によると、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の遺伝子解析は国内症例全体の約5.8%について行われた(国内で26111検体、空港検疫で817検体(2021/3/3現在)、註:患者報告から検体輸送やゲノム情報解析まで数週間かかるため、解析割合としては過少評価である。)

厚生労働省の3月10日発表によると、空港検疫74件、新型コロナウイルスの変異株の国内事例271件(英国型260、南アフリカ型8、ブラジル型3)合計345件が確認された。

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000751599.pdf(pdf)

変異株の発表は、国立感染症研究所による検査で変異株と確定した事例だけだったが、3月8日から自治体のPCR検査で陽性と判明した時点で確定とする変更が行われた。

 

その他に、日本国内で変異した可能性がある変異株(感染性に影響のあるN501Y変異を有さないが、免疫に影響を与える可能性があるE484K変異を有するR.1系統)が、空港検疫で2件と関東を中心とした全国で394件検出されている(2021/03/03現在)

この変異株は、国立感染症研究所(NIID)からのレポートと神戸市の発表で出ていたが、厚労省が発表する新型コロナウイルス感染者の統計データでは未だ含まれてはいない。

もしかしたら、ある日突然にこの変異株も厚労省発表に含める事が決まって、いきなり数字が倍増して、マスメディアが「変異ウイルス感染者が倍増!」と煽るような記事が出るのかもしれない。続報を待ちたい。

新型コロナウイルス感染症(変異株)の患者等の発生について - 厚生労働省(2021年3月10日(水)掲載) 

感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について (第7報) - 国立感染症研究所(2021年3月3日14:00時点)

  

閑話休題、

新型コロナ変異株について、具体的な感染事例が発表されることは非常に少ない。特に初期はそうだった。しかし、陽性者の6割の検体の変異株PCR検査(厚労省の推奨は5~10%)を行う神戸市や、独自に具体的な発表を行う自治体が出てきている。

2月中旬から発生した、すでに「封じ込めや囲い込みが終了している」と市や県が発表している、愛媛県今治市の造船会社などの変異株クラスターについて、個人的まとめ。

 

 

3月12日発表までで、変異株と確定あるいは”みなし変異株”の陽性者は26人となった。

当アカ中の人は、この変異株クラスターについてあまり心配はしていない。自治体は充分な対応と情報公開をしている。

その後の発表や報道をよく見ていると、感染拡大はほぼ沈静化しているようだ。まだ10日~2週間は経っていないし無症状の感染者が把握されていない可能性もあるので、油断は禁物だが。

 

新型コロナウイルス カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

 

Ads by Google

 


 

 

愛媛県今治市の新型コロナ感染事例から、変異ウイルスの可能性が高い検体が複数確認された事案で、国の検査の結果、4人からイギリス型の変異ウイルスと同じ特徴を持つ検体が確認されました。
(中略)
4人は、「今治造船」と「四国アイビ」のクラスター、そして非公表の1事例のあわせて3事例の感染者で、県は3事例の陽性者、あわせて23人を変異ウイルスの確定患者と同等に扱い、拡大防止に万全を期す考えです。
3事例の関係性ですが、一部の陽性者が別々に同じ場所を利用していて、県はドアノブなどの物を介して感染が広がった可能性もありうるとしました。
中村知事は、この3事例について、封じ込めや囲い込みが終了しており、「これ以上地域への変異ウイルスの拡大はない」などと述べ、県民に冷静な受け止めを求めました。

「英国型と同じ特徴」変異ウイルス検査結果【愛媛】 « 愛媛朝日テレビ (2021年03月03日)

愛媛県の中村県知事や今治市の徳永市長が記者会見で明らかにし、今治造船もプレスリリースを出している。

新型コロナの変異株PCR検査を行っても検体のウイルス量が少ないなど変異株と判定できない例が、これまでにいくつも発表されている。愛媛県は変異株と確定できていなくても、濃厚接触者など関係する陽性者を”みなし変異株”として同等の対応をすると発表した。

 

 

今治造船の2月19日付けプレスリリースによると、バングラデシュの船員派遣等を行う会社から入国した船員20人(全員バングラデシュ国籍)のうち7人で新型コロナウイルスの陽性が確認された。

バングラデシュ出国前と日本入国後にPCR検査を行っておりどちらも陰性だった。入国後にチャーターバスにて今治へ移動し宿泊施設で14日間を過ごしている。

約2週間の船内作業の後、出航後に中国で入港をするので、出航前72時間のPCR検査を実施したところ新型コロナ陽性が確認された。

これにより、接触した可能性のある他の船員や、今治造船の従業員ら約30人は在宅勤務や自宅待機となった。

今治造船の3月3日付け発表で、濃厚接触者で新たに7人の感染が確認され、陽性確認14人(船員9名、監督2名、取引先関係3名)と発表した。今治造船の従業員及び構内にて就業している協力業者で陽性者は発生していないそうだ。

国立感染症研究所(NIID)による変異株PCR検査によって変異株と確定した。 

2021年2月18日、バングラデシュ HAQUE & SONS LTD.社(ハックアンドサンズリミテッド(以降ハック社と記載))所属の船員20名(全員バングラデシュ国籍)に対してPCR検査を実施したところ、内7名について陽性と判定されました。
尚、現時点で7名全員に新型コロナウイルスの諸症状は確認されておりません。
上記船員に関する行動歴/陽性判定経緯は以下の通りです。
1月20日 バングラデシュ出国前にPCR検査を実施し、陰性と判定
1月22日 バングラデシュ出国
1月23日 日本入国後に空港にてPCR検査を実施し、陰性と判定
      その後空港よりチャーターバスにて今治へ移動
1月23日~2月5日 宿泊施設にて待機
2月5日~2月17日 船内作業に従事
2月17日 PCR検査を実施(※)
2月18日 陽性と判定
現在、所管保健所の指導のもと、宿泊施設にて療養中。
 (※)日本出港後に中国に入港するに当たって必要となる出航72時間前のPCR検査を実施したものです。

新型コロナウイルス感染者の発生について|ニュース|今治造船株式会社 -IMABARI SHIPBUILDING CO.,LTD- (2021年02月19日)

新型コロナ: バングラ船員7人がコロナ陽性 今治造船で作業: 日本経済新聞 (2021年2月19日)

愛媛県庁/変異株の分析結果及び新型コロナウイルスの感染の確認(3月3日公表分)に関する記者発表の要旨について (令和3年3月3日)

Crew Management and Shipping Agency | Haque And Sons Ltd.

 

さらに清掃会社「四国アイビ」および他一件(非公表)の検体から変異株が見つかった。

愛媛県知事の記者会見によると、 一部の陽性者が別々に同じ場所を利用していた。同一の場所を介した環境要因、たとえばドアノブなどの物を介して感染が拡がった可能性もありうるとしている。この3つの事例の接点となった可能性のある場所は、不特定多数の者が訪れる場所ではないそうだ。

 

 

3月12日、愛媛県は既存の変異株クラスター関連であらたに1人が変異株と確定したと発表した。愛媛県内の変異株として対応される新型コロナウイルス感染者(変異株と判明、および”みなし変異株”と対応)は計26人となった。

”再検査”と書かれているので、濃厚接触者として以前にPCR検査を行っていて結果は陰性だったのだろう。ホント、めんどくさい感染症だ。

県によると、既存事例の1人は英国型の変異株が広がっているとみて対処中の今治市の職場内クラスター(感染者集団)の関連。職場以外の関係者で、濃厚接触者として自宅待機しており、症状が出たため再検査した。同事例の感染者は累計9人となり、県内で変異株として対応する感染者は計26人となった。

県内3人感染確認 1人は英変異株関連|愛媛新聞ONLINE (2021年3月13日)

 

感染者は清掃会社「四国アイビ」関係で陽性9人(社員5名、職場以外の者4人)となった。愛媛県の発表では320事例目(クラスターNo.30)の ”職場内クラスター④”(*1)に該当する。
新たに職場以外の者1人から陽性が確認されたことで”封じ込み事例”から”囲い込み事例”に変更されたようだ。

今治造船では、クラスターは14人と発表(3月3日付発表)し、3月12日までに続報は無い。一方、愛媛県の3月10日付け発表によると、この317事例目(クラスターNo.29)では15人(仕事関係者 13 名、仕事以外の者 2 名)。

もうひとつの変異株の事例(316事例目)(非公表)は感染者2~3人なのだろう。

”仕事以外の者”とは家庭などでの濃厚接触者かもしれない。

 

https://www.pref.ehime.jp/h25500/kansen/documents/04cluster.pdf(愛媛県庁 pdf)

 (*1) ”職場内クラスター③”は今年1月の警察署関係。”職場内クラスター②”も今年1月。
愛媛県では”飲食店クラスター”や”高齢者施設クラスター”、”会食クラスター”など分類している。今治造船のクラスターは”仕事関係クラスター”と記載されている。

 

 

この今治造船での新型コロナウイルスの集団感染は、検疫のPCR検査をすり抜けてしまった入国者を起点として感染拡大が起こりクラスターとなった典型的なケースだ。

出国時のPCR検査でも、日本入国時のPCR検査でも陰性だった。しかも、東京都での英国型変異株の感染拡大の起点となった某ロイター通信の記者(当時)とは違い、入国後の行動はチャーターバスでの移動で14日間の待機など要請がしっかり守られている(今治造船の発表による)

 

(追記:今治造船発表の最初の7人が検疫すり抜けた起点ではなくて、入国時に感染はしておらず14日間の宿舎滞在の後に、他から新型コロナ変異株に感染した可能性も否定はできません。)

 

幸いにと言うと語弊があるが、出航前72時間のPCR検査が義務づけられていたので早期に発見されたのは運が良かった。

今後の教訓として、14日間の待機明けにもPCR検査があればもしかしたらもう2週間早く感染が確認できたのかもしれない。

 

ほぼ沈静化していると思ったので、記録のためブログ記事にまとめてみた。

この記事は、あくまでも今治造船のクラスターと今治市での変異株について簡単に調べて書いたものであり、他地域の事例については論じていません。念のため。

 

愛媛県庁/新型コロナウイルス感染症に関する情報

新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況、国内の患者発生、空港・海港検疫事例、海外の状況、変異株、その他)|厚生労働省