pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【新型コロナウイルス】 オミクロン株はどのくらいの時間で感染する? 香港で9秒?中国で14秒?豪州「すれ違っただけ」? 【空気感染】

20220121200738

世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、日本でもオミクロン変異株が主流となってきています。

オミクロン株は変異株の中でも新規感染者数が急激に増えており、ニュースでは「感染力が強い」と言われています。「感染力が強い」というよりも、むしろ家庭や職場で対策を強める前に感染拡大してしまった「感染の広がりやすさが速い」という方が適切かと思いますがそれは兎も角。

 

新型コロナウイルスの感染経路は接触感染や飛沫感染に加えて、換気の悪い室内などでの空気中のエアロゾルを介した感染も確認されています。
(注意:”はしか(麻疹)のような「空気感染」”という意味ではありません)

では、感染した人とどのくらいの時間、同じ場所にいたら、新型コロナに感染してしまうのでしょうか?

これまでに発表や報道されている例では、香港の地下鉄駅で9秒(オミクロン株)、中国の公衆トイレで14秒(デルタ株)、香港の検疫ホテルで30秒(オミクロン株)、韓国の飲食店で5分(アルファ以前の従来株)などがあります。

 

まず結論を書きますと、予防効果の高いマスクを正しく着用して基本的な感染予防の対応が適切に出来ていれば、そんなに短い時間で感染する!!! といった心配はいりませんし、不安感とストレスですり減る必要もありません。

もちろん「100%有り得ない」などといった非科学的な断言はしませんが、もしも、マスク着用で10秒やそこらすれ違っただけで感染拡大するのなら、満員の通勤電車やバスでアウトブレイクが頻発し続けていますし、日本でもとっくに100万人単位の新規感染者が出ていることでしょう。

 

 

まず、香港の地下鉄駅で9秒(オミクロン株 BA.2亜種)。

 

20220121200742

この例は衛生当局による公式発表です。監視カメラの映像を調べた結果、地下鉄駅の出口近くの通路でのことで、どちらもマスクを着用していて会話もありませんでした。
9秒で感染!?と盛んに報道されましたが、比較的に狭い地域での集団感染と感染連鎖であり、この後も陽性確認例が増えているので他の場所で別の感染者からウイルス伝播した可能性が指摘されています。

 

香港の衞生署衞生防護中心は1月20日、深水埗区の幼稚園教師の女性(26才)(新型コロナ感染者 #13072)からの新型コロナウイルスをゲノム解析した結果、1月中旬から感染拡大が起きているオミクロン株(BA.2)だと発表しました。

オミクロン株(BA.2)の市中感染は、検疫ホテルの滞在中に感染したパキスタン籍女性(43才)(#13045)が起点とされています。彼女の子供の中学生2人(#13067, #13069)も陽性と確認されており、積極的疫学調査と行動履歴、監視カメラの映像などを分析した結果、香港地下鉄の美孚駅A出口近くのトンネルでわずか9秒だけ、この幼稚園教師の女性(26)(#13072)と同じ空間にいたと発表されました。

確診兩中學生與幼稚園教師出入美孚站A出口相距約9秒 - RTHK

ここから、オミクロン株の感染しやすさを警告するとともにマスクの2枚重ねを推奨していますが、さすがに駅構内の出口近くの広い空間で、マスク着用のうえ会話も無いわずか9秒間で感染拡大する可能性は極めて低いでしょう。

ちょうど昨年(2021年)6〜7月に、オーストラリアでデルタ株の市中感染が拡大しはじめた時に衛生当局が発表していた「すれ違っただけで感染」と似た過剰反応と感じます。

【新型コロナウイルス】 結局のところ「すれ違い感染 (fleeting transmission)」とは何だったのか? ー オーストラリア - pelicanmemo (2021-12-31)

 

香港は、新型コロナウイルスのエアロゾルを介した「空気感染」に関して、かなり強硬な発言と対応をしています。それは、中国本土や共産党支配の強化が影響しているように思います。

中国共産党中央による支配がさらに強化されているので、中国本土のゼロコロナ政策もさらに強く影響します。しかし中国本土のような地域丸ごとロックダウンや外出禁止命令は香港では(まだ)実行することは出来ません。

そこに、もし香港で大規模な市中感染と感染拡大が続くようなら、業を煮やした中共中央や習近平主席が強硬な対応をしてくるかもしれない危機感があるでしょう。感染拡大を予防するための厳しい対策を、たとえ非科学的な見立てであっても政治的に行う必要があるのではないでしょうか。

 

Ads by Google

 


 

 

20220122175339

 

次に、香港の検疫ホテルで30秒(オミクロン株)の例。

 

香港でも、外国から入境した後に検疫のための14日間隔離が行われます。その検疫ホテルの中で、感染者が隔離滞在していた部屋から向かいの部屋の滞在者へと感染拡大が起こっています。従業員が食事を配達する時に、双方がドアを開けていたのは30秒でした。

日本でも昨年(2021年)12月、関西国際空港の検疫所の職員からオミクロン株の感染が確認されましたね。厚生労働省は「施設内での感染が強く疑われる」としています。

検疫所職員がオミクロン株陽性 療養施設勤務、入国者以外で初:時事ドットコム

 

検疫の間はマスク着用も義務づけられていますが、感染者が付けていたのは排気バルブ付きマスクだったためウイルスがマスクの外へ排出されていたと言われていました。
・・・ただ、感染者と向かいの部屋の滞在者が会話をしたという報道はありませんし、この排気バルブ付きマスクだけが原因とはちょっと考えにくいです。

 

隔離施設の滞在者は、自分1人だけの室内ではマスクは外しているでしょう。独り言や電話で喋るなどもあったでしょう。室内の空気中のウイルスを含むエアロゾルの濃度が高くなっていて、ドアを開けたときにその”濃い”空気が廊下や向かいの部屋へ流れていったと考えられます。

病院などでは感染者の部屋は陰圧(負圧)にしてウイルスが室外に漏れ出さないようにして、フィルタ付きの空調設備を使って屋外へと排気するのが基本です。しかし急遽確保された検疫ホテル(宿泊療養施設)では、そのような設備の追加を徹底するのは難しいでしょう。適切な換気は求められていたと思いますが、基本的に、寒いから窓は閉めてエアコン暖房を使っていた(陽圧)でしょう。

 

似た例は、オーストラリアの検疫ホテルや台湾の自宅隔離の家でも起こっています。

 

20220126200301ABC News より)

オーストラリアでは昨年(2021年)2月に、メルボルンの検疫ホテルで廊下の監視員や他の部屋の隔離滞在者へと感染拡大した例がありました。ドアの隙間や天井裏を通じた空気の流れがあったので、ウイルスを含むエアロゾルが流れていたと推測されています。

What we know about the nebuliser 'exposure event' that ignited a coronavirus outbreak at the Holiday Inn Melbourne Airport - ABC News (10 Feb 2021)

 

台湾では南部の屏東県で昨年(2021年)6月に、ペルーから帰国した後に自宅隔離をしていた女性(56)から、ゴミを外に出すわずかな時間に会ったお隣の女性が感染したと報道されていました。デルタ株です。

20220126200305

ゴミ出しで感染!?という表現で盛んに報道されていましたが、実際にはその他にも陽性が確認され病院隔離のため救急車で運ばれる前にドアの前で会って会話をしていたそうです。

この例でも、自宅隔離をしていた家の換気が悪かったためウイルスを含むエアロゾルの濃度が高い空気が滞留していて、ドアを開けている時に屋外へと流れ出し、ドアの近くにいたお隣の女性が暴露した可能性が指摘されています。

Delta恐「氣溶膠」傳播 陳秀熙:打開門負壓向外吹 | 三立新聞網

 

花粉が濃い場所では、しっかりとマスクをしていてもわずかな隙間から入り込んでしまう、そんな感じでしょうか。

習慣や家族、生活や仕事の環境などで違いがあると思いますが、エアロゾルのウイルス濃度が高くなりそうな場所、特に換気の悪い空間では、たとえ自分一人しかいなくてもマスクをしっかりと付けていないと空気を介して感染するリスクが高くなります。

 

その一例の、中国の公衆トイレで14秒(デルタ株)。

 

20220126200258

広東省の広州市で昨年(2021年)6月に、飲食店で起きたデルタ株の集団感染・クラスターと感染連鎖が発声しました。そのうち4次感染例では、感染者の女性(鲁某)と後に陽性となった女性(黄某)が同時に公衆トイレの中にいたのは14秒間だけだったと発表されています。トイレ入り口の監視カメラの映像から、どちらもマスクは着用していませんでした。

ウイルスを含んだエアロゾルが、トイレの中で滞留していたのかもしれません(手洗い場の蛇口などを介した接触感染の可能性もあります)

自分が入る前にトイレにいた人が、果たして感染者だったのか、くしゃみをしたとか咳をしていたのか分かりようがありません。

運(うん)次第です。トイレだけに。😅

 

不特定多数の人が使うトイレは、日本国内でも感染リスクが高い場所として周知されていると思います(多分)。なんなら、そういうトイレに入る時にはマスクをもう一枚、二重に付けるのもよいかと思います。

 

 

韓国の飲食店で5分(アルファ以前の従来株)の例は、飲食店での空調装置による感染拡大の発表や報告、報道を他の例と合わせて詳しくブログ記事に書いています。そちらをごらんください。

【新型コロナウイルス】飲食店・カフェでのエアロゾル感染、空調クラスターの例|韓国のスタバ、中国のレストラン、日本の飲食店など - pelicanmemo (2021-05-10)

【新型コロナウイルス】飲食店・カフェでのエアロゾル感染、空調クラスターの例|韓国のスタバ、中国のレストラン、日本の飲食店など (2/2) - pelicanmemo (2021-05-10)

 

 

オミクロン株の基本再生産数(R0)はデルタ株よりも小さいけれども、実効再生産数(Rt)はデルタ株より大きいという分析結果もあります。

オミクロンの基本再生産数もデルタ株より低そうであることがわかってきています。だいたい2台ではないかと考えられます。

第6波ピークアウトは早く、流行規模も小さい? 当初想定と異なるオミクロンとどう向き合えば良いのか

 

オミクロン株は、世代時間や潜伏期間が短縮したことによって、デルタまでに行ってきた対策(ワクチン2回接種、マスクを着用など)を繰り返すだけでは、条件が変わって防ぎきれないのでしょう。

それでも、オミクロン株はデルタ株やそれ以前とくらべて、ウイルスのサイズが小さくてマスクのフィルタをすり抜けるわけはありませんし、感染経路が大きく変わっているわけでもありません。感染の予防とコントロールは出来ます。

 

確診兩中學生與幼稚園教師出入美孚站A出口相距約9秒 - RTHK

張竹君疑女教師美孚地鐵站內與患者同場9秒中招 病毒基因相同

袁國勇解密|巴裔婦家人曾到逸葵樓執垃圾 引爆全幢16宗個案

【新冠肺炎】北角學之園女教師與巴裔婦病毒基因分析一樣 疑地鐵出口遇巴裔婦兩兒子染疫 - 香港經濟日報 - TOPick

【酒店群組】地利亞修女紀念學校再多1名學生確診 與早前確診學生不同年級 - 香港經濟日報 - TOPick

美孚站A出口

檢疫酒店群組傳6代42人 超望月樓 防護中心疑幼師美孚站9秒中招 - 20220121 - 要聞 - 每日明報 - 明報新聞網

 

广州疫情前四代病例接触画面曝光:最短接触14秒感染 有病例未戴口罩 - 新浪财经

变异病毒传播力有多强?广州两病例厕所相遇14秒感染!|变异|传染性|病毒_手机网易网

广州疫情前四代病例接触画面曝光:最短接触14秒感染 有病例未戴口罩|卫生间_网易订阅