pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【中国海警局】 尖閣沖の日本船を名指しで「退去を警告」、SNS投稿繰り返す - 読売新聞

20240709055808

読売新聞は7月5日付け記事で、中国海警局が公式SNSで、尖閣沖で操業する日本漁船を名指しした投稿を繰り返していると報じた。

これは、当ブログが詳しく追いかけてきたネタですね 😆

そこで読売新聞の記事の内容にコメントしつつ、今年(2024年)6月後半になってからふたたび変化があったので、これについて少し。

 

尖閣周辺の日本船を名指しで「退去を警告した」、中国海警がSNS投稿繰り返す…実効支配を宣伝か : 読売新聞 (2024/07/05)

尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺に船を送り込み、領海侵入を繰り返している中国海警局が、中国のSNS「微博(ウェイボー)」で、尖閣沖で操業する日本漁船などを名指しし、<退去するように警告した>とする投稿を繰り返している。昨年7月頃から始まった動きで、個々の漁船を監視していると強調し、尖閣の実効支配をアピールする狙いがあるとみられる。

 

簡単に三行。(これまでの当ブログ記事で書いたことの繰り返しが多いので)

読売の記事が書いていないところで、今年(2024年)3月後半から6月前半にかけて、日本漁船を名指しした公式発表は行っていなかった。
しかし、6月後半から再開している(まだ再開後に2回なので(記事公開時点)、今後どうなるか引き続き注視が必要)。

6月15日に、中国が一方的に主張する「領海」に侵入した外国人を最長60日間拘束するなど、中国海警局の法執行手続きに関する新規定を定めた中国海警法第3号令が施行された。6月後半からの対応の強化には、これが関係しているだろう。

南シナ海のフィリピン沖EEZで起きているフィリピン沿岸警備隊等のフィリピン船舶へのハラスメントや攻撃的な対応が影響しているだろうし、台湾の金門島の周辺海域でパトロールを常態化したことも影響しているのだろう。この国際状況下で、日本の尖閣諸島の周辺海域では対応を軟化させたままにしておく理由はないだろう。
実際問題、尖閣沖にやってくる中国海警局の船4隻すべてが機関砲を装備する船をつかう運用をしてきている。(これも、2回目なので(記事公開時点)、今後どうなるか引き続き注視が必要)

 

 

まず、読売新聞の記事を読むと、中国海警局による微博(ウェイボー)公式アカウントだけで投稿を繰り返していると思われそうだが、公式ウェブサイトでも報道官による発表を公開している。

20240709055811

政府組織の公式SNSアカウントが、X(Twitter)やfacebook、微博(ウェイボー)など大手ネットSNSに投稿するだけで、公式ウェブサイトの方には記録を残さない発言や発表を行うのは、中国にかぎらず、ほかでも見かける対応だ。

今回のこれら微博(ウェイボー)の投稿は、公式ウェブサイトでも発表されているので、より公式発表のレベルが高いものと言えるだろう。内容は基本的に同じものが投稿されている。

 

中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

 

Ads by Google

 


 

次に、読売新聞の記事では、2023年1月に実施された石垣市による尖閣沖での海洋調査のときから現在(2024年7月)まで途切れることなく、ずっと、中国海警局が日本漁船を名指した投稿を続けているように書いている。情報が中途半端なので、誤読を誘うような書き方だ。

 

今年(2024年)3月後半から6月前半までは、沖縄県の尖閣諸島の領海で日本漁船が操業したときに、中国海警局の船が領海侵入と日本漁船の追尾や接近を行っていたとしても、公式ウェブサイトや微博(ウェイボー)での発表は行っていない。

 

20240402200816(中国海警 微博(2024-04-02 にスナップショット画像を取得)より。3月25日の投稿の次は4月2日。公式発表なし)

 

詳しくみてみよう。

 

尖閣周辺の日本船を名指しで「退去を警告した」、中国海警がSNS投稿繰り返す…実効支配を宣伝か : 読売新聞 (2024/07/05)

初めて日本の船舶を名指ししたのは23年1月とみられ、石垣市が尖閣沖で海洋調査をしたタイミングだった。

このとき現場では、同市の中山義隆市長らが乗った作業船が海保の巡視船に守られながら航行。周辺では日本漁船4隻も操業していた。

(中略)

操業する日本漁船を名指しするようになったのは、23年7月からとみられる。微博では、石垣市や与那国町などの少なくとも5隻の名前が確認できる。

尖閣沖で警備活動をする海保の巡視船については、23年10月以降、「領海侵入」から「不法侵入」と表現を強めて投稿している。
(赤字強調は管理人による)

 

当ブログの記事から、まず、日本船に対する法執行活動の公式発表をはじめて行った2023年1月のときの記事。

【中国海警局】 石垣市、尖閣諸島で海洋調査 | 中国海警局は日本船に対する領海での法執行をはじめて公式発表 - pelicanmemo (2023-02-02)

次に、日本漁船の名指しをはじめたときの、2023年7月の記事。

【中国海警局】 尖閣沖の日本の領海での法執行活動を公式発表 日本漁船を名指し - pelicanmemo (2023-07-17)

そして、海上保安庁の巡視船について言及しはじめた2023年10月の記事と2023年12月の記事。

【中国海警局】 尖閣沖の日本の領海での、海上保安庁の巡視船に対する法執行活動をはじめて発表 - pelicanmemo (2023-10-18)

【中国海警局】 報道官発表の変化 海上保安庁による法執行活動の権利も否定 - pelicanmemo (2023-12-11)

 

このネタを、最初からずっと詳しく調べてきたことを分かってもらえると思う。🙃

中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

 

一方、今年(2024年)4月25日から27日にかけて行われた、石垣市による尖閣諸島での現地調査・海洋調査(3回目)では、中国海警局は公式発表を行っていない。

【中国海警局】 石垣市、尖閣諸島で現地調査・3回目(4月25日~27日)、今年は中国海警局の公式発表なし - pelicanmemo

20240501054331八重山日報より)

 

今年(2024年)の3月後半から、沖縄県の尖閣諸島の領海で日本漁船が操業したときに、中国海警局の船が領海侵入と日本漁船の追尾や接近を行っていても(日本メディアが報じている)、公式ウェブサイトや微博(ウェイボー)での発表は行わなくなっていた。

【中国海警局】 尖閣諸島の領海で日本漁船2隻が操業(3月28日~30日)、中国側の公式発表なし。 - pelicanmemo (2024-04-02)

【中国海警局】 尖閣諸島の領海で日本漁船1隻が操業(4月5日~6日)、今回も中国側の公式発表なし。 - pelicanmemo (2024-04-07)

【中国海警局】 尖閣諸島の領海で日本漁船1隻が操業(4月25日)、今回も中国側の公式発表なし(3月末以来3回目)。 - pelicanmemo (2024-04-28)

 

その一方で、日本漁船の操業などは無い、中国側が予定していたものだろう領海侵入(4月12日、5月8日、6月7日)の時は公式発表をしていた。この対応は、2023年よりも前からずっと行われてきたものだ。

【中国海警局】 尖閣諸島の領海に中国海警局の船4隻が侵入(4月12日)、中国側の公式発表あり。日本漁船の操業なし。 - pelicanmemo (2024-04-13)

【中国海警局】 尖閣諸島の領海に中国海警局の船4隻が侵入(5月8日)、中国側の公式発表あり。日本漁船の操業なし。 - pelicanmemo (2024-05-10)

【中国海警局】尖閣沖、4隻すべてが機関砲を装備。76ミリ砲装備の「海警2501」ふたたび - pelicanmemo (2024-06-08)(日本漁船の操業なし

 

 

このネタはその都度記事にまとめていたけれど、5月10日のブログ記事で一旦止めて、区切りとした。いつまで続くか分からなかったからなんですが、思ったより早く状況が変わりましたね 😬

公式発表のある/なしについて、日本漁船の操業の例が3件、中国側が予定してただろう定例の公式発表の例が2件、石垣市による尖閣諸島の現地調査が1件、と連続して書いてきました。
そこそこデータはとれたし、今後も同じペースで毎回書いていくのは大変なので、この「公式発表あるなし」の話題を記事にするのは一旦止めますです。
もちろん、何か変わった状況が起こっていたらSNSに書いたりブログ記事にできるでしょう。

【中国海警局】 尖閣諸島の領海に中国海警局の船4隻が侵入(5月8日)、中国側の公式発表あり。日本漁船の操業なし。 - pelicanmemo (2024-05-10)

 

この後の、ブログ記事にまとめなかった5月から6月前半までの状況を記録しておきたい。(SNSのBlueskyではその都度、投稿をしていたものです)

 

5月19日〜20日に、尖閣沖の領海で日本漁船1隻が操業。仲間均石垣市議の「鶴丸」。

領海侵入した中国海警局の船は「海警1301」と機関砲を搭載した「海警1305」の2隻。中国海警局の公式サイトや微博に発表なし

中国船2隻が領海侵入 尖閣周辺、漁船に接近 | 八重山日報 (2024/5/21)

 

5月24日に、尖閣沖の領海で日本漁船3隻が操業。日本漁船3隻は7・9㌧~17㌧で、2隻には1人、1隻には2人が乗船。

領海侵入した中国海警局の船は「海警1301」「海警1401」と、機関砲を搭載した「海警1305」。中国海警局の公式サイトや微博に発表なし

中国船3隻が領海侵入 尖閣周辺、日本漁船追う | 八重山日報 (2024/5/25)

 

6月7日、日本の尖閣諸島の領海に、中国海警局の船4隻が航行、4隻のいずれもが機関砲を搭載していた。日本漁船の操業なし
中国海警局の公式サイトや微博に発表あり

沖縄 尖閣沖 中国海警局の砲らしきもの搭載の船4隻 相次ぎ領海侵入 | NHK | 尖閣

中国海警舰艇编队6月7日在我钓鱼岛领海巡航 - 维权执法 - 中国海警局

 

6月20日〜24日に、尖閣沖の領海で日本漁船が3〜4隻(20日から23日にかけて別々に3隻、領海と接続水域の境あたりの海域で操業。23日から24日にかけて1隻(仲間均石垣市議の「鶴丸」))が操業。

領海侵入した中国海警局の船は「海警2501」「海警2201」「海警2202」。
中国海警局の公式サイトや微博で、6月20日から24日までの分をまとめて発表した。

20240709055848

中国海警依法驱离日非法进入我钓鱼岛领海船只 - 维权执法 - 中国海警局   (2024-06-24 20:22:11)

尖閣沖 領海侵入 中国海警局の船2隻 28時間余航行後 領海出る | NHK | 尖閣 (2024年6月24日 23時08分)

 

7月2日〜4日に、尖閣沖の領海で日本漁船2隻が操業。日本漁船は4・9㌧と9・1㌧で、それぞれ2人が乗船。中国海警局の発表等で「鶴丸」と「善幸丸2」と判明。

領海侵入した中国海警局の船は「海警2501」「海警2201」「海警1103」。中国海警局の公式サイトや微博で発表あり

20240709055811

中国海警依法驱离日非法进入我钓鱼岛领海船只 - 维权执法 - 中国海警局 (2024-07-04 10:03:07)

尖閣沖 領海侵入の中国海警局の船3隻 42時間余航行し領海出る | NHK | 尖閣 (2024年7月4日 11時20分)

 

 

これら中国海警局の対応の変化について、2023年から中国海警局の公式発表で発言の内容が強硬になったのは、2023年11月末に習近平国家主席が上海の人民武装警察部隊・海警総隊・東海海区指揮部(中国海警局・東海分局司令部)を視察することが決まったことから、要するに「いいところを見せたかった」仮説を示した。

習近平の視察が終わったので、2024年はじめからは「日中漁業委員会(中日渔委会)」の再開など省庁レベルでの関係悪化を懸念して、対応を軟化してきていた、という説も呈示してみた。

 

ところが2024年に入り、5月には台湾で頼清徳新総統が就任し、5~6月には南シナ海のフィリピンEEZでのフィリピン側の強い抵抗に直面している。中国側はさらに強く、攻撃的な対応で対処をする必要があった。

中国海警法第3号令が2024年6月15日に施行されることが決まったことで、中国海警局による法執行活動を強めるうえでの”法的根拠(中国の国内法。国際法に違反するケースもある)”を作った。フィリピンや台湾に対してだけでなく、日本に対して対応を強化してきたとしても不思議はない

日本はフィリピンへODAで巡視船を供与するなど安全保障上の関係を強化しており、米国や豪州などと協調して無償有償の支援を行っている。中国外交部は日本の対応に対して不満を述べている。

 

中国のいわゆる”サラミ戦術”では、”サラミ”を厚く切ったり薄く切ってみたりする。今回はかなり厚く切ってきているので、次は外交や政治のレベルと合わせて軟化して見せてくるかもしれない。すると、その次にはさらに分厚く削ってくることも考えられるだろう。

 

近ごろ少し気になっているのは、7月になってから、中国海警局の報道官(新闻发言人)が甘羽から劉德軍(刘德军)に変わっているところだ。

甘羽は政治工作部の副主任で、劉德軍(刘德军)は法執行部(执法部)の副部長(2024年5月21日時点)

単に、異動や健康上の問題など甘羽報道官の個人的な理由かもしれないし、なにか大きな政治的な思惑があって劉德軍(刘德军)が起用されているのかもしれない。

続報を待ちたい。

 

 

尖閣周辺の日本船を名指しで「退去を警告した」、中国海警がSNS投稿繰り返す…実効支配を宣伝か : 読売新聞 (2024/07/05)

読売新聞の記事を、より詳しく、解像度高めで書くとここまでの情報が必要となる。とはいえ、マスメディアが、特集や解説記事ではない普通の記事でここまで書くのは難しいだろう。もし仮に、マジメな記者が3月後半~6月前半にSNS投稿が無くなったことを書いていたとしても、それでは読者が混乱してしまうとして編集の時に段落ごと削除されていたと思う。

ものごとを単純化すれば分かりやすいし、定型化された表現とイメージを当てはめれば、読解力が少ない人にも読んでもらえるかもしれない。・・・それだけでは良くないということは自覚しているだろうけれども🙂

尖閣周辺の日本船を名指しで「退去を警告した」、中国海警がSNS投稿繰り返す…実効支配を宣伝か(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース (2024/07/05)

 

尖閣周辺の日本船を名指しで「退去を警告した」、中国海警がSNS投稿繰り返す…実効支配を宣伝か : 読売新聞
2024/07/05 15:00

 尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺に船を送り込み、領海侵入を繰り返している中国海警局が、中国のSNS「微博(ウェイボー)」で、尖閣沖で操業する日本漁船などを名指しし、<退去するように警告した>とする投稿を繰り返している。昨年7月頃から始まった動きで、個々の漁船を監視していると強調し、尖閣の実効支配をアピールする狙いがあるとみられる。

 海警局による微博公式アカウントへの投稿は、同局が中国軍を統括する中央軍事委員会の傘下に入った2018年7月から確認できる。22年までは<海警局艦隊は我が釣魚島(尖閣諸島の中国名)の領海内を巡航した>とするほぼ定型の投稿を続けていた。

 初めて日本の船舶を名指ししたのは23年1月とみられ、石垣市が尖閣沖で海洋調査をしたタイミングだった。

 このとき現場では、同市の中山義隆市長らが乗った作業船が海保の巡視船に守られながら航行。周辺では日本漁船4隻も操業していた。

 海警局はこの動きに、<(作業船を含む)日本船5隻が領海に不法侵入した>とし、<中国海警局は同船に対し、法に基づいて必要な措置を講じ、退去するよう警告した>と主張した。

 操業する日本漁船を名指しするようになったのは、23年7月からとみられる。微博では、石垣市や与那国町などの少なくとも5隻の名前が確認できる。

 尖閣沖で警備活動をする海保の巡視船については、23年10月以降、「領海侵入」から「不法侵入」と表現を強めて投稿している。

 海警船は23年3月以降、尖閣の周辺海域で船舶自動識別装置(AIS)を作動させ、自らの位置などを周囲に知らせるようになった。こうした動きとともに、「現場で日本漁船に退去を求めた」という主張を重ね、実効支配につなげる狙いがあるとみられる。

 さらに中国政府は6月、中国が主張する管轄海域に侵入した外国人を海警局が最長60日拘束できる新たな規定を施行した。尖閣諸島周辺にも適用されるとみられている。

 日本政府は海警船が領海侵入した際に、海上保安庁の巡視船が現場で退去要求を行い、外交ルートを通じて抗議している。しかし海警船は同諸島周辺での航行を常態化させている。

 政府は海警船の活動について「そもそも国際法違反で断じて容認できない。尖閣諸島は歴史的にも国際法上も疑いのない日本固有の領土だ。冷静かつ 毅然きぜん と対処する」としている。