https://www.youtube.com/watch?v=C6Ndu6xGyJA
3月23日、日本の国会で、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンライン演説を行いました。
演説はウクライナ語で、在日ウクライナ大使館の通訳が同時通訳を行ったそうです。
演説の中では、「チェルノブイリ」「原子力発電所」「サリン」「津波」など、日本社会が経験した事柄と絡めた単語や表現が使われていて、よく考えられたものでした。
もちろん同時通訳の文章や表現は、そのままゼレンスキー大統領がそのまま話したわけでなく、日本向けの穏やかな表現にしています。
【全文書き起こし】ウクライナ・ゼレンスキー大統領が国会で演説 「このウクライナに対する侵略の"津波"を止めるために」 - ログミーBiz
同時通訳では、会話とほぼ同時で通訳をするため、言葉や表現を省略したり言い換えるのは普通にあることです。その国の言葉でしか使われない慣用句や四字熟語をどう訳して伝えるか、の例は分かりやすいでしょう。
ウクライナ大統領府が発表している演説の原稿の方を見てみると、段落ごとの大筋では間違っていませんし注目されているキーワードも使われています。逆に削られた重要だろうキーワードは少なく、極端な省略や言い換えはないようです。
なので、あまり、かたいことを言っても仕方ないのですが・・・「同時通訳の文字化」でもやもやしてるのでこれについて少し。😔
ウクライナ大統領府(公式サイト)で、日本の国会でのゼレンスキー大統領の演説の全文(英語版、ウクライナ語版、ロシア語版が公開されています。
ウクライナ国営通信社ウクルインフォルム(日本語版)による日本語訳はこちら。
多分、在日ウクライナ大使館が演説テキスト草稿から、日本社会向けの表現や単語を選んだり添削をしたでしょう。大使館の通訳による同時通訳では、全体的に穏やかな表現の日本語になっています。
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たとえば「この残忍な戦争(this brutal war)」は「この苦しい大変な戦争」に、「ウクライナに対する残忍な侵略の津波(tsunami of its brutal invasion)」は「ウクライナに対する侵略の津波」と言い換えられています。
「私たちの軍人はもう28日間も、ウクライナを英雄的に守ってきました(Our servicemen have been heroically defending Ukraine for 28 days already.)」は、「28日間に渡ってすぐにこの大規模な戦争、また攻撃に対して国を守っています。」となっていますね。
「核兵器を使用した場合の世界の反応」の段落は、演説で削られたか、多めに意訳されているようです。
「”自由で開かれた”海洋」という表現ではありませんでしたが、海運や海上交通について話しています。ここはもっとしっかりと伝えた方が、特に経済関係者の受け取り方が変わっていたかも。
「世界の他の(潜在的な)侵略者」という部分は、どこか知らんけど(棒)、日本へのアピール力を意識したのではないでしょうか。あまり話題になっていないのが残念。
ロシアは私たちの海を封鎖しました、通常の交易路をです。世界の他の(潜在的な)侵略者に、航行を阻害することによって自由国家に圧力をかける方法を示してしまいました。
Russia has even blocked the sea for us. Usual trade routes. Showing some other - potential - aggressors of the world how to put pressure on free nations by blocking sea navigation.
同時通訳ではこうでした。
またロシアは海も封鎖して、通常の交易路も封鎖しています。海運を障害することによって、他の国にも脅威を与えるためです。
(ログミーBizより)
「ロシアによるウクライナ攻撃によって世界が不安定になっています。」からあとは多めに省略され、意訳されています。ここも日本に、隣国との関係も含めて、しっかりアピールすべきところだと思うのですが。
ロシアとウクライナ に対する戦争によって世界は不安定になっています。世界は多くの新たな危機に直面しています。そして誰が今、明日がどのようになるか確信がもてるでしょうか?
世界市場の混乱は、原材料の輸入に頼っているすべての国にとって問題です。環境や食料の難問は先に例がないものです。そして最も重要なことは、地球上のすべての侵略者(明示的および潜在的)は、その戦争をはじめるべきでは無いこと、世界を破壊すべきではないこと、彼らが行った戦争が強力な罰につながると確信させることです。そして責任ある国家が平和を守るために団結することは絶対に論理的で正しいことです。
Due to Russia's war against Ukraine, the world is destabilized. The world is on the verge of many new crises. And who is now sure what tomorrow will be like?
Turbulence in world markets is a problem for all countries that depend on imports of raw materials. Environmental and food challenges are unprecedented. And most importantly, it is now being decided whether all the aggressors on the planet - explicit and potential - will be convinced that the war they have waged will lead to a punishment so powerful that they should not start a war. That they should not destroy the world. And it is absolutely logical and correct that the responsible states unite to protect peace.
演説の同時通訳ではこう。弱い残念な訳になっています。
これからも多くの危機が待っています。世界市場における状況も不安であり、また資材の輸入などの障害が出ています。環境的および食料面の調整も前例のないものです。また、これからも戦争をやりたいという侵略者に対して、非常に強い注意をしなければならないです。
平和を壊してはいけないという強いメッセージが必要です。責任のある国家が一緒になって平和を守るために努力しなければならないです。
(ログミーBizより)
ツイッターの「ナザレンコ・アンドリー🇺🇦🤝🇯🇵 (@nippon_ukuraina)」さんの訳。ツイッターのプロフィールによると在日ウクライナ人の方。
こんな感じでしょうか。リプライで要点をまとめます。 pic.twitter.com/pqTwjSJLH1
— ナザレンコ・アンドリー🇺🇦🤝🇯🇵 (@nippon_ukuraina) 2022年3月23日
ウクライナ語の演説を自ら訳されたのでしょう。大統領府が発表しているテキストとは違っている部分がいくつかあります。
全体的には、在日ウクライナ大使館が外交のよい仕事をしていると感じました。
実際の演説ではテキスト草稿と違っていた部分が多々あったのかもしれません。通訳さんが苦労していたよう。
最後に、
ファースト・レディのオレーナ・ゼレンシカ(Олена Зеленська)さんが視覚障害者のためのオーディオブック制作プロジェクトに参加して、日本のおとぎ話にウクライナ語で朗読をしたそうです。
日本のおとぎ話は「ももたろう」と、新美南吉作の『二ひきの蛙』でした(『ごんぎつね』『手袋を買いに』の作者)
『ももたろう』(朗読:ウクライナ語)(声:オレーナ・ゼレンシカ(Олена Зеленська)(ファースト・レディ))
Японська народна казка "Момотаро, або Хлопчик-персик" - YouTube
『二ひきの蛙』著:新美南吉(朗読:ウクライナ語)(声:オレーナ・ゼレンシカ(Олена Зеленська)(ファースト・レディ))
Японська народна казка "Дві жабки" - YouTube
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Зеленська озвучила дві японські казки
ウクライナ大統領府公式サイトの、日本の国会でのゼレンスキー大統領の演説の全文(ウクライナ語、ロシア語、英語)。
ウクライナ国営通信社ウクルインフォルム日本語版による、大統領府発表のテキスト日本語訳。
国会での演説の様子。
テレビ朝日のYouTube動画から。
https://www.youtube.com/watch?v=C6Ndu6xGyJA
(在日ウクライナ大使館がツイッターでTBSのYouTube動画を紹介していたけれども、そちらの動画は演説が始まる前からでかなり長いので。)
同時通訳が無いバージョン。Ukrinform TVより。
Володимир Зеленський звернувся до народу й політиків Японії - YouTube