(中国海警局より)
10月17日の午前10時頃、中国海警局の「海警2303(梅山艦)」と「海警2305(秀山艦)」が、ロシア国境警備局との共同訓練およびパトロール活動「太平洋パトロール 2024(太平洋巡航—2024)」を終え、浙江省の舟山基地に無事帰還した。埠頭では直属第二局による凱旋歓迎式典が開かれた。
中国海警舰艇编队圆满完成“太平洋巡航—2024”中俄海警联演联巡 - 国际合作 - 中国海警 (2024年10月17日)
「海警2303(梅山艦)」と「海警2305(秀山艦)」は9月13日に舟山基地を出港。日本海、オホーツク海、ベーリング海、チュクチ海を通過し、10月17日に舟山に戻ったと発表されている。
ウラジオストク沖で行われたロシア国境警備局との合同訓練のあと、日本海から北太平洋へどのルートをとったか分からなかった。今回、津軽海峡ではなく、宗谷海峡からオホーツク海を通るルートだったと判明した。
(千島列島のどの海峡、島と島との間の水路を通過して太平洋に抜けたか気になるが、もう続報は期待できなさそうだ)
10月1日の国慶節の日に、中国海警局に所属する艦船がはじめて北極海(チュクチ海)に入ったと発表された。報道から、10月1日にベーリング海峡を南下したことが確認されているので、チュクチ海を航行したのは半日か数時間だっただろう。
中国海警局の「海警2303(梅山艦)」と「海警2305(秀山艦)」の航海、35日間を簡単にまとめておきたい。
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(中国海警局より)
9月13日、中国海警局の「海警2303(梅山艦)」と「海警2305(秀山艦)」は浙江省の舟山基地を出港した。このときは、ロシア国境警備局との共同訓練が行われ、その後に北太平洋での共同パトロールを行うとだけ発表されていた。
さらに北上をして、北極海を目指すと思った人は多くなかったと思う。
【中国海警局】ロシア国境警備局と合同訓練・パトロールへ、818型「海警2303(梅山艦)」「海警2305(秀山艦)」出港 - pelicanmemo
出発時の公式発表では「合同訓練およびパトロール活動は、第三者を対象としたものではなく、現在の国際情勢や地域情勢とは無関係」というところを強調している。10月17日の終了時の発表まで繰り返され、終了時の発表では「特定の目標、地域、国家を対象としたものではない」など具体性が増した。
この任務は、中国海警局の年次計画に基づいた定期的なものであり、特定の目標、地域、国家を対象としたものではない、国際法および国際慣例に従い、現在の国際情勢や地域情勢とは何の関係もない。
此次任务是中国海警局年度计划内的例行性安排,不针对任何特定目标、地区和国家,符合国际法和国际实践,与当前国际形势和地区局势无关。
ちょうど帰港直前の10月14日に、中国人民解放軍東部戦区による軍事演習が台湾を取り囲む形で実施され、まったく同時に中国海警局も台湾を取り囲む形で大型海警船10数隻によるパトロール活動を実施していた。
まったく無関係だと思うのは、脳天気に”中国の公式発には全く裏が無い”と考える人くらいだろう。
9月16日に、「海警2303(梅山艦)」と「海警2305(秀山艦)」はロシアのウラジオストクに到着した。東シナ海から対馬海峡を通り日本海へ抜けるルートだっただろう。
9月16日から20日まで、歓迎式典、船舶公開日や甲板レセプション、文化・スポーツ交流などの一連の活動が開催された。18日には、ウラジオ沖のピョートル大帝湾付近の海域で、ロシア国境警備局と共同訓練を実施した。
中国とロシアの共同訓練は、どう見ても、北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)の多国間訓練(MMEX (Multilateral Multi-mission Exercise)) で使われたような設定だったが、ロシアは今年(2024年)も参加できないだろうから、中国とロシアの二国間で合同訓練を行ったのだろう。
ロシア国境警備局の局長 ローマン・トロク(Роман Толок)大将は共同演習後の記者会見で、このような訓練を定期的に毎年開催していくとし、来年は我々(ロシア国境警備局)が、中国側の招待を受けて中国の港へ行き、同様の共同訓練を実施すると述べた(ТАСС)。
「第24回 北太平洋海上保安フォーラムサミット」(9月23日〜26日、東京で開催)では、中国海警局から発表された結果概容に「NPCGFの枠組みの下での”二国間・多国間”法執行活動を実施することで合意した(各方一致同意,将继续推动开展论坛框架下双多边海上执法合作、)」としている。
第24回 北太平洋海上保安フォーラム・サミット、東京で開催 - pelicanmemo
今後の中・ロによる”二国間(bilateral)”法執行活動は、北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)の枠組みに基づいたもので、国際法および国際慣例に従った活動だと主張するのかもしれない。
北太平洋の公海での国際的な海上安全保障の観点から、ロシアを孤立させず、SARの連絡や協力のチャンネルを閉ざさないことは大事だと思うが、中国とロシアが国際法の抜け穴を使ってきているという違和感は強くもたれそうだ。
【中国海警局】ロシア国境警備局と共同訓練を実施 ロシア極東のウラジオストク沖 - pelicanmemo
9月21日、中国海警局の818型「海警2303(梅山艦)」「海警2305(秀山艦)」と、ロシア国境警備局のプロイェクト22100「ペトロパブロフスク・カムチャツキー(Петропавловск-Камчатский) (262)」、同 22120「カムチャッカ (Камчатка) (257)」の4隻がウラジオストクを出港した。隊列を組んで太平洋へ向かった。
ウラジオストクから北太平洋へは、予想に反して、宗谷海峡を通ってオホーツク海へ抜けて、千島海峡のどこかの水路を通って北太平洋へ行くルートが使われていた。
北太平洋における公海での漁業パトロール活動という名目なので、津軽海峡を通って北太平洋に抜けるルートと予想してたんだけど、ハズレでした😅
中国海警局は、今回の中国とロシアによる共同訓練と共同パトロールは、「国連総会 46/215 号決議」(1991年に採択された公海での流し網漁業禁止決議)および「北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約」(略称:北太平洋漁業資源保存条約)に従って、法律に基づいた船舶検査や漁業生産秩序の維持に積極的に取り組んでいると発表している。
この、北太平洋漁業委員会(NPFC)の対象海域の定義では、太平洋の縁海であってもオホーツク海の公海は含まれないし、この後に言及するベーリング海の公海は特に記して除外されている。
もちろんロシアなど周辺国の排他的経済水域(EEZ)は含まれないし、北極海も当然含まれていない。
中国の「国際法に従った」という公式発表を言葉通りに、脳天気に信じるのなら、オホーツク海から千島海峡のどこかの水路を通って太平洋に入ったあとに、どこかのタイミングで公海に達するまで排他的経済水域(EEZ)200海里(約370km)を東へと進み、その公海で共同パトロール活動が行われたのかもしれませんね(苦笑)
(北太平洋漁業委員会(NPFC)より)
北太平洋で行われた、中国海警局とロシア国境警備局の船4隻による共同訓練および共同パトロールも日程と場所は発表されていない。
この共同訓練の映像には近くの陸地にある山の稜線が写り込んでいる。ヘリかドローンによる海上十数mから撮影した映像なので、当該海域は陸地から40km強離れていても”はるか沖”の海域では無いことがわかる。
当ブログ管理人は、カムチャッカ半島の南部、国境警備局の拠点があるペトロパブロフスク・カムチャツキー市の沖の海域だった予想している。
共同訓練には、中国海警局の818型「海警2303(梅山艦)」「海警2305(秀山艦)」と、ロシア国境警備局のプロイェクト22100「ペトロパブロフスク・カムチャツキー(Петропавловск-Камчатский) (262)」、同 22120「カムチャッカ (Камчатка) (257)」の4隻が参加した。
共同訓練の後、ロシア国境警備局のプロイェクト22100「アナディル (Анадырь) (260)」が加わり、「カムチャッカ (Камчатка) (257)」と交代した。
「海警2303(梅山艦)」「海警2305(秀山艦)」が同市の港で補給等を行ったかどうかは確認されていない。
9月26日か27日(現地時間、アラスカ時間の9月25日か26日)に共同訓練(同市の沖で行われた場合)が行われたと推測できる。(9月29日12時半(現地時間、アラスカ時間では9月28日夕方)に中・ロの4隻がベーリング海で確認されている)(*)
(*)日付変更線をまたぐので時刻のすり合わせがめんどくさい
【中国海警局】ロシア国境警備局と、北太平洋の公海上で共同訓練と共同パトロールを実施 - pelicanmemo
中国海警局の「海警2303(梅山艦)」「海警2305(秀山艦)」と、ロシア国境警備局の「ペトロパブロフスク・カムチャツキー(Петропавловск-Камчатский) (262)」「アナディル (Анадырь) (260)」の4隻はさらに北上しベーリング海に入った。
9月28日(アラスカ時間)(*)に、米国沿岸警備隊(USCG)がベーリング海のセントローレンス島の南西約440マイル(約708km)の海域で4隻を確認している。ロシアの排他的経済水域(EEZ)の内側約5マイルを北東方向へ航行していた。
(*)USCGが公開した画像のタイムスタンプは”2024/09/29 00:35 (UTC)”、アラスカ標準時(夏時間)の9月28日16時35分。カムチャッカ時間は29日12時35分。北京時間は29日08時35分。
ペトロパブロフスク・カムチャツキー市の沖からUSCGが確認した海域まで約1200km。平均18ノット(時速約33km)で航行したとして1日半かかる。
同市の沖を27日の夜に出発して、平均18ノット弱で北上したと仮定すると、29日昼頃にUSCGが確認する時間にだいたい符合する。
10月1日、国慶節の日に「海警2303(梅山艦)」「海警2305(秀山艦)」がはじめて北極海に入ったと中国海警局が発表した。中国中央電視台の記者らが同行し船上レポートを伝えた。
【中国海警局】北極海をはじめて航行 (追記あり) - pelicanmemo
「海警2303(梅山艦)」「海警2305(秀山艦)」がベーリング海峡を「北上↑」しチュクチ海(北極海)に入ったのは、国慶節の日の10月1日(北京時間)だとされている。
海事情報サイトgCaptainは、「海警2305」が10月1日にベーリング海峡を「南下↓」したと報じた。
ベーリング海峡にあるリトル・ダイオミード島とアラスカのスワード半島の間を通過する衛星写真ものせている。AIS情報画像のタイムスタンプは”Oct.01 2024 06:28(UTC)"。北京時間は10月01日 14:28、アラスカ標準時は9月30日 22:28。
北極海(チュクチ海)に入ったら、少しは西へと航行すると思っていたけれども、10月1日にベーリング海峡を通ってチュクチ海に入ったあと、半日から数時間でベーリング海へと戻っていたようだ。
北極海へはじめて入ったという実績と発表ができれば充分だったのだろう。
Chinese-Russian Naval Patrol Skirts U.S. Territorial Waters Off Alaska Coast
ベーリング海を陸に沿って南下し、途中でロシア国境警備局の2隻と分かれた。
(そのイメージで中国海警局はこの画像↓を撮影したんだと思う)
「海警2303(梅山艦)」と「海警2305(秀山艦)」は、9月13日に浙江省の舟山基地を出港したときAIS情報は発信していなかった。
千島列島の沖、北海道、本州の沖の太平洋を下っていき、おそらく大隅海峡を通過して東シナ海へ抜けたと思うけど、往路も逆に進んで、千島列島〜オホーツク海〜宗谷海峡〜日本海〜対馬海峡〜東シナ海だった可能性も否定できない。
10月17日に、浙江省の舟山基地に帰港した。
埠頭に着岸する直前にAIS情報の発信を再開した。
中国海警舰艇编队圆满完成“太平洋巡航—2024”中俄海警联演联巡 - 国际合作 - 中国海警 (2024年10月17日)
中国海警舰艇编队圆满完成“太平洋巡航—2024”中俄海警联演联巡-新华网