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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【アフリカ豚熱】イタリア、ローマ市近郊で初確認 感染地域ゾーニング【ASF, アフリカ豚コレラ】

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2022年5月4日、ローマ市の北西にあるインスゲラタ自然保護公園で、イノシシからアフリカ豚熱(ASF、旧称:アフリカ豚コレラ)ウイルスが確認された。

5月6日、ラツィオ州(州都はローマ市)は専門家グループによる報告により、法律に基づいてアフリカ豚熱(ASF)のウイルスを封じ込めるための最初の規制措置を決定した。ニコラ・ジンガレッティ州知事が署名をした。
(注:アフリカ豚熱(ASF)は、イタリア語では"PSA(Peste Suina Africana)" (直訳:アフリカ豚ペスト)と書く。ここでは英語の略語の"ASF(African Swine Fever)"を使用する。)

 

前の記事でも書いたように、ローマの今回のASF発生の確認は、イタリア北西部から中部のローマ市までASFが感染拡大したという意味では無い。イタリア北西部のASF発生地域(ピエモンテ州とリグーリア州(記事公開時点))から400kmも離れている。

【アフリカ豚熱】イタリア、ローマ市近郊で初確認 インスゲラタ自然保護公園で【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2022-05-07)

 

アフリカ豚熱(ASF)の発生地点を中心にウイルスを封じ込めるための地域のゾーニングが、ローマでも行われる。「暫定感染地域 (zona infetta provvisoria)」が設定され、その外側に緩衝(バッファ)として「注意地域(zona di attenzione)」が設定された。
(「レッドゾーン(zona rossa)」には、「暫定感染地域 (zona infetta provvisoria)」や「感染地域 (zona infetta)」という表現も使われている。)

(イタリア中部、ローマ市と近郊のこの地域のこと↓)

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ASF発生が確認されたインスゲラタ自然保護公園(Riserva Naturale dell'Insugherata)は、市中心部からわずか10km前後にあり、都市部や住宅地が近く、バチカン市国も近い。

ウイルス封じ込めのためのゾーニングは、普通は同心円状に設定されるが今回のローマ市の最初の設定では南側と東側が開いている。

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暫定感染地域 (zona infetta provvisoria)」は、北から北西はA90環状高速道路まで、東から南東はティベレ川までと設定された。バチカン市国に近い南半分ではおおむね道路を境界線としている。

La “zona rossa” è all’interno del Grande Raccordo Anulare e il perimetro è delimitato dai seguenti confini:
Nord – Nord Ovest: A90 Grande Raccordo Anulare;
Est – Sud Est: Fiume Tevere;
Sud: Circonvallazione Clodia, via Cipro, via di San Tommaso D’Acquino, via Arturo Labriola, via Simone Simoni, via Pietro De Cristofaro, via Baldo Degli Ubaldi;
Sud – Ovest: via di Boccea.
Riguarda anche porzioni del Parco dell’Insugherata, del Parco di Veio, del Parco del Pineto e della Riserva di Monte Mario.

Regione Lazio | Sanità: ordinanza del presidente della Regione Lazio su peste suina

proposta-ordinanza-17483.pdf (927.14 KB)

 

「暫定感染地域 (zona infetta provvisoria)」では、公園や動物感染症の管理組織により監視体制が強化され、イノシシの死骸や病気個体のサンプル採取が行われる。

イノシシにエサをやったり近付くことは禁止される。

感染ゾーンでの農業と自然地域での、屋外のイベント開催やピクニックを含む集会が禁止、農業と自然地域から出る時は靴の消毒が推奨される。ゴミ箱を囲って、イノシシが生ゴミを漁るのを防ぐ、地域のペットの豚がいるか確認などが行われる、など行動制限が規定されている。

封じ込めのための地域を区切るために、標識が設置されるそうだ。
あくまでも自然地域での”集会の禁止”であり”出る時に靴の消毒が推奨”されているので、アクセス自体は禁じられていない。
それでも公園や緑地地域ではその外周に柵やゲートを設置したり、イノシシ忌避剤を使用した移動制限を試みるのかもしれない。さすがに感染ゾーン全体の外周に柵を設置して封じ込めるのは無理だろう。

ラツィオ州はタスクフォースを結成して地域市民向けのフリーダイヤルを公開し、死んでいる動物の発見を報告、獣医による検査をはじめている。

ゾーニング地図を見ると、特に南側では、地域住民は道路を隔てて明暗が別れている。個人宅の家庭菜園はどうなるかとか、どう適用するかなど、しばらく混乱や改正があるかもしれない。

 

都市部でのアフリカ豚熱(ASF)の発生による封じ込め対策の例として、自治体はどのように対応していくのか、ローマ市民はどう考えるのか、いろいろと興味深い。

 

 

ちょっと「ローマ イノシシ」(Rome cinghiale)で検索してみたら、市街地でもけっこうイノシシやうり坊たちの目撃情報があるんですね。

Roma, la cavalcata del cinghiale a due passi dal Vaticano(ローマ、バチカン近くでイノシシが爆走)

www.youtube.com

Wild boar runs amok in streets of Rome close to the Vatican | Daily Mail Online

Cinghiali: Wild boar invade Rome streets - Wanted in Rome (23 Sep, 2021)

Rome police kill family of wild boar in kids playground near Vatican (17 Oct, 2020)

2020年には、バチカン近くの公園の砂場を”ぬた場”としていたイノシシの集団が屠殺され、動物虐待だとして非難されたそうだ。

もしかしたら「暫定感染地域」の南のローマ市の市街地でイノシシが捕獲され、サンプル検査によりアフリカ豚熱(ASF)陽性の結果となり、ローマ市の市街地全域が感染地域として設定される可能性も否定できない。

自然保護や野生生物の保護団体がどういう対策を出すのか気になるところだ。

 

 

「暫定感染地域」の外に設定される「注意地域(zona di attenzione)」では、イノシシの死骸の積極調査が行われる。公園では、北側からの”レッドゾーン”へのアクセスを禁止する。豚の飼料の採集と、イノシシの狩猟活動が禁止される。

「暫定感染地域」は、東から南東へはティベレ川までと設定されている。Google衛星写真とストリートビューを見ると、その両岸に緑地が多く、河岸は石垣ばかりではなくイノシシの水際へのアクセスもしやすい場所も多い。

生きているイノシシが渡河したり、死骸が東岸に流れ着いてそれを偶然にイノシシが接触、そういう機会のリスクは低いとは思うけれども…、ティベレ川の東岸には「注意地域」が設定されていないので、ここも感染拡大の”抜け穴”となるかもしれない。

 

 

【アフリカ豚熱】イタリア、北西部で野生イノシシから確認 本土でのASF発生は初めて【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo

アフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ) - pelicanmemo

 

Peste suina africana, Zingaretti firma l'ordinanza: ecco cosa succede nella "zona infetta"

Peste suina africana a Roma, zona rossa al parco dell'Insugherata. Cassonetti dei rifiuti recintati

 

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