pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【アフリカ豚熱】イタリアでの流行、その後(〜2023年9月)|サイゼリヤで生ハムメニューが復活【ASF, アフリカ豚コレラ】

20231012070057(サイゼリヤ(pdf)より)

10月11日にサイゼリヤが秋のグランドメニューを改定、生ハムがふたたびメニューに戻ってきた。生ハム(ハモンセラーノ)なのでスペイン産生ハムを使用していますね。

 

せっかくなので、イタリアの本土で2022年1月に発生したアフリカ豚熱(ASF、旧称:アフリカ豚コレラ)の状況は1年半が経ってどうなっているのか?日本への輸入再開はいつになりそうか?、など、少し書いてみたい。

ニュースリリース|10/11 秋のグランドメニュー改定!(https://www.saizeriya.co.jp/PDF/irpdf001416.pdf)

2023101207020320231012070212

 

 

イタリア本土では2022年1月7日に、イタリア北西部に位置するピエモンテ州のアレッサンドリア県 オヴァーダで見つかった野生イノシシの死骸からアフリカ豚熱(ASF、旧称:アフリカ豚コレラ)ウイルスが確認された。国際獣疫事務局(OIE)へ報告された。

イタリア本土でアフリカ豚熱(ASF)の発生が確認されたのは初めてだった。

地中海のサルディーニャ島では1970年代から発生していて風土病となっている。この別タイプのアフリカ豚熱(ASF-I型)のことや、日本でのイタリアからの豚肉等の一時輸入停止措置についてはASF発生の後のブログ記事で書いています。そちらをご覧ください。

【アフリカ豚熱】イタリア、北西部で野生イノシシから確認 本土でのASF発生は初めて【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2022-02-03)

 

そのブログ記事の中で、アフリカ豚熱(ASF)ウイルスの封じ込めに成功したベルギーの例をあげて、「もしもイタリアで、ベルギーと同じくらい厳しいアフリカ豚熱(ASF)対策が講じられるようなら、3年たてば、イタリア産の生ハムやプロシュートの輸入も再開されるかもしれない。」と書きました。

残念ながら、イタリアはASFウイルスの封じ込めに失敗した。北部の養豚場でのASF発生も起こっているので、日本への輸入再開(豚肉等の一時輸入停止措置の解除)は絶望的な状況にあります。10年以上ダメでしょう。

 

 

【アフリカ豚熱】イタリア、北西部で野生イノシシから確認 本土でのASF発生は初めて【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2022-02-03)
【アフリカ豚熱】イタリア、ローマ市近郊で初確認 インスゲラタ自然保護公園で【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2022-05-07)
【アフリカ豚熱】イタリア、ローマ市近郊で初確認 感染地域ゾーニング【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2022-05-08)

 アフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ)のカテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

 

Ads by Google

 


20200916121819 
動物検疫所ホームページより)

 

2022年1月7日、イタリア北西部のピエモンテ州で見つかったイノシシの死骸からアフリカ豚熱(ASF、旧称:アフリカ豚コレラ)ウイルスが確認された。イタリア政府当局は、2016年3月に欧州議会および理事会で採択された、アフリカ豚熱(ASF)や豚熱(CSF)など動物の伝染性の疾病に関する規則(EUの動物衛生法とも呼ばれる)に基づいて、アフリカ豚熱(ASF)の発生地域を汚染地域、その周囲を監視地域などに指定して「ゾーニング」を行って、産業活動の制限や立ち入り規制などASFウイルスを封じ込める対策を行っている。

ただ、イタリア北部の場合は、ベルギーのASF発生地域よりも範囲が広いこともあり汚染地域と監視地域をフェンスで囲って封じ込めることが出来なかった。野生イノシシの移動とウASFウイルスの拡大を止められなかった。

さらに、今年(2023年)8月には、北部のロンバルディア州の養豚場でアフリカ豚熱(ASF)が発生し、9ヶ所で約3万4千頭を予防的に殺処分することとなった。

 

 

当ブログ管理人は、イタリア本土でのASF発生が置きてからイタリア当局の発表を頻繁に見ているんだけど、徐々にゾーニングの規制地域は拡がっている(現在進行形)。

 

ピエモンテ州とリグーリア州での、アフリカ豚熱(ASF)ウイルスが確認された地域の推移をマッピングした。
黄色(黄土色)で塗られた地域がASF発生初期の2022年3月までの汚染ゾーンで、外側の黄色い線(追記・注:四角い線の方ではありません)が監視ゾーンとして設定された。
その1年後の2023年3月には、汚染ゾーン(斜線で塗られた地域)は当初の監視ゾーンの外側にまで拡がり、監視ゾーン(赤い線)はロンバルディア州との州境やエミリア・ロマーニャ州の中にまで食い込んでしまっている。

20230421064356(ブログ管理人が、Istituto Zooprofilattico Sperimentale del Piemonte, Liguria e Valle d'Aosta(izsplv)発表の地図を重ね合わせて加工した。)

 

さらに、今年(2023年)10月8日時点のゾーニング地図はこうなった。(縮尺が違うので、海岸線や州境の黒線を参考にすり合わせて見てください)

ASFウイルスが確認された汚染地域はさらに拡大している

20231012065406(izsplv)

 

この地図はピエモンテ州やリグーリア州などを管轄する獣医当局(izsplv)のものなのでロンバルディア州の状況は含まれていない。次の地図でロンバルディア州も合わせて見てみよう。

赤い三角()は野生イノシシ、青い丸()は飼育豚でのアフリカ豚熱(ASF)ウイルスの確認を表している。

20231012065425(Peste Suina Africana - Istituto Zooprofilattico Sperimentale dell’Abruzzo e del Molise)

汚染地域や監視地域のゾーニングの外側へASFウイルスがジャンプして、ロンバルディア州パヴィア県の複数の養豚場でASF発生があったことが分かる。

 

イタリア北部のロンバルディア州やエミリア・ロマーニャ州は国内でも養豚の盛んな地域だ。世界3大生ハムの1つ、パロマ産プロシュート(プロシュット・ディ・パルマ)で有名なパロマ地域はASFウイルス汚染地域から数10kmしか離れていない。

もちろんイタリアの養豚業者は、アフリカ豚熱(ASF)ウイルスが養豚場の中へと入りこまないよう懸命の努力をしているだろうが、ASFウイルスの封じ込めに失敗している現状では養豚場でのASF発生は完全には食い止められないだろう。

 

 

ローマ市近くでアフリカ豚熱(ASF)ウイルスが確認されたことを憶えている人も多いと思う。実はこちらの方では、ローマ県やラツィオ州での大きな拡大は起きていない。

都市部と近郊でのASF発生ということもあり、野生イノシシ(野良イノシシ)の駆除や管理とASFウイルス封じ込めが行いやすかったのかもしれない。ASFウイルスのローマへの移動も偶発的なものだったのだろう。住人や観光客が、ASFウイルスに汚染されている可能性がある豚肉や豚肉加工品(ハムやソーセージなど)の料理を食べたあと、残飯を適切に処理できていれば再発防止の一手となる。

【アフリカ豚熱】イタリア、ローマ市近郊で初確認 インスゲラタ自然保護公園で【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2022-05-07)

 

 

イタリア全体では、アフリカ豚熱(ASF)の汚染地域は南部にも拡大している。

アフリカ豚熱(ASF)のウイルスは豚やイノシシが移動して拡大するだけではなく、豚やイノシシの肉や加工品(生ハムやソーセージなど)に長く感染性を残したまま存在するため、遠隔地へとジャンプした感染源となりうる。
ウイルス汚染された土壌が、養豚業者や関連業者、報道関係者など立ち入った人の靴や道具、車やトラックなどに付着して運ばれて感染源とされたケースもある。

20231012065421(Peste Suina Africana - Istituto Zooprofilattico Sperimentale dell’Abruzzo e del Molise)

今年(2023年)5月には、南部のレッジョ・カラブリア州で野生イノシシでのASF感染が確認され、複数の小規模な養豚場にも拡大した。イタリア南部では小規模の養豚業者が多くいろいろな豚種を野飼いや半野生状態で飼育している。家庭での裏庭養豚(backyard)も非常に多い。

南部では野生イノシシと飼育豚との接触を避けることが難しく、ASFウイルスの封じ込めは北部以上に難しいだろう。

 

 

このブログ記事の上の方で、「日本への輸入再開(豚肉等の一時輸入停止措置の解除)は絶望的」「10年以上ダメでしょう」と書いた。

少し書きなおしたい。

このままでは「10年単位でダメだろう」。

 

・・・では、日本ではこれから10年以上、20年も30年もイタリア原産の生ハムやプロシュートを食べられなくなるのだろうか?

 

現在のように感染拡大が続いていては無理な話だけれども、100%完全に絶望とまでは言えないと思っている。

 

欧州委員会(EU)は昨年(2022年)12月16日に、サルディーニャ島で生産された豚肉について、島内の一部地域の制限を緩和して、EU域内での流通を解禁したことを公表した。流通に際しては、疫学的な安全性の確認や厳しい生産地証明や移動証明などをクリアする必要がある。島内の他の地域については引き続き厳しく流通制限がされる。

アフリカ豚熱対策の奏功でイタリア・サルデーニャ島の豚肉流通を条件付きで解禁(EU)|農畜産業振興機構 (2023年1月12日付け)

Peste Suina Africana in Sardegna: ridotte zone restrizioni

 

サルディーニャ島では1978年のアフリカ豚熱(ASF)の発生から継続してウイルスが確認され続けて風土病と化している。それでも、2000年代からは放し飼い飼育が禁止されるなどアフリカ豚熱(ASF)根絶の努力は自治州や政府によって続けられている。

その数十年の努力と効果が認められたのだろう。それ以上に、アフリカ豚熱(ASF)が国境を越えて拡大し続けていることへの西欧諸国と欧州委員会(EU)に強い危機感があるだろう。また、国内で発生した場合に、輸出規制が国単位でかけられることへの不満もあるのだろう。

 

欧州委員会(EU)・理事会のこの決定に対して、日本の農林水産省からはいまのところ特段の発表はない。

いずれEUから、特にイタリアやドイツから打診があるだろうが、農林水産省も政府も養豚はじめ農畜産業界も慎重にならざるをえない。

アフリカ豚熱(ASF、旧称:アフリカ豚コレラ)は、現段階で、効果が認定された商業ベースのワクチンは存在しない。(中国では試験段階のASFワクチンが闇流通してしまい、副作用で別の疾病が起きてしまって余計に面倒な事になっている)

もしも、日本にアフリカ豚熱(ASF)ウイルスが浸入してイノシシの間で拡がったら、豚熱(CSF)のように歯止めがかけられないまま感染拡大をしていって、九州や四国、本州はサルディーニャ島のようにアフリカ豚熱(ASF)が風土病として数十年以上残り続けるだろう。

 

 

African swine fever - WOAH - World Organisation for Animal Health

Peste Suina Africana (PSA) Commissario straordinario

Peste suina africana - izsplv

Regione Lazio | Sanità: ordinanza del presidente della Regione Lazio su peste suina

Peste Suina Africana

 

Peste Suina Africana Disposizioni – Istituto Zooprofilattico Sperimentale della Lombardia e dell'Emilia Romagna

Sette focolai di peste suina africana: il virus ha raggiunto la Lomellina

https://www.lombardianotizie.online/peste-suina-africana-lombardia-attenzione/

Peste suina: Sardegna; Costa, rispettati impegni con Ue - Notizie - Ansa.it

Peste suina, la Sardegna verso la revisione delle restrizioni | News - SardegnaLive

 

アフリカ豚熱対策の奏功でイタリア・サルデーニャ島の豚肉流通を条件付きで解禁(EU)|農畜産業振興機構 (2023年1月12日付け)

Peste Suina Africana in Sardegna: ridotte zone restrizioni

Regione Autonoma della Sardegna - Peste suina africana. Applicazione dei divieti ai movimenti di partite di suini detenuti, e dei relativi prodotti e sottoprodotti, ... - Regione Autonoma della Sardegna

Peste suina, Piloni (PD): “Regione in ritardo su gestione emergenza”

pelicanmemo.hatenablog.com

 

 

サイゼリヤの愛されメニュー「生ハム」がまさかの復活!→ファンから「うれしすぎ!」と歓喜の声。復活できた理由は…?

――昨年販売を休止した際には、イタリア産生ハムの輸入停止が理由と説明されていました。なぜ今回「生ハム」は復活できたのでしょうか?

イタリア産生ハムは現在も輸入できないため、他国製品について検討を続けた結果、お客様に喜んでいただけると考えられる品質ものが準備できたため再販に至りました。

プロシュート販売時と同様に、香りがよいもの、毎日でも食べやすいものを探索し、今回のハモンセラーノに決定しました。