(八重山日報より)
海上保安庁 第十一管区海上保安本部によると、5月9日朝7時頃、中国海警局に所属する船舶2隻が尖閣諸島の南小島周辺で日本の領海に侵入した。日本漁船1隻に近付こうとする動きをみせた。海上保安庁が漁船の周辺に巡視船を配置して漁船乗員の安全を確保した。
日本漁船は八重山漁協所属の漁船「鶴丸」(9.6㌧)。尖閣諸島沖での漁業活動のため、石垣市議の仲間均氏など3人が乗船していた。中国海警局の船2隻が漁船「鶴丸」が接続水域に入ってから出るまで約36時間追尾したそうだ。
中国海警局の船2隻は「海警1302」と「海警1401」(どちらも機関砲は搭載していない)。10日12時過ぎに約29時間ぶりに領海を出た。
中国船が領海から出る 尖閣周辺に25日連続 | 八重山日報 (2022/5/11)
仲間均 石垣市議のツイッターと、八重山日報ほかのマスメディアの記事・動画によると、「海警1302」の船上では中国海警局の船員2人が一眼カメラを構えている姿が写っている。
日本漁船にカメラ構える 中国船、尖閣周辺で執拗に追尾 | 八重山日報 (2022/5/11)
仲間均 石垣市議はこれについて「また今回から海警もこちらを撮影してきました」とツイッターで書いていた。これについて少し。
仲間均 on Twitter: "ここしばらく海警は近寄って来ませんでしたが今回は近くまで接近して威嚇してきました。また今回から海警もこちらを撮影してきました。明らかに今までとは違う動きです。… "
中国海警局など海上法執行組織の船舶には、海上保安庁の巡視船に搭載されている「遠隔監視採証装置」と同じような装置がある。今回も、そのカメラのレンズは「鶴丸」の方を向いている。静止画や動画で撮影していただろう。
次の画像は、仲間均石垣市議が乗った漁船「鶴丸」から撮影した動画のスナップショット画像で、四角い赤枠など書き加えた。「海警1301」の船橋の上に2つある「遠隔監視採証装置」の、特に左舷のレンズが常に漁船の方を向いていることがわかる。
昨年も、中国海警局に船に装備されている遠隔監視採証装置のレンズは日本漁船等の方に向いていたので、これまでも日本漁船などの撮影は行われていただろう。
今回、わざわざ人間が甲板上に出て一眼カメラを構えていたのは、単に船舶の撮影をするだけではない何か特別な理由があったと考えられる。🤔
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【「接近映像」中国船が #領海侵入 】
— news zero (@ntvnewszero) 2022年5月10日
日本の漁船の目の前に現れた #中国海警局 の船#尖閣 諸島沖の日本の領海に侵入した時に撮影された映像#海上保安庁 の警告を受けてもとどまり続け
逆に「中国の領海から退去せよ」と警告しカメラ撮影
ロシアによる軍事侵攻の前と比べると変化が…#newszero pic.twitter.com/GjyxQj6XAq
海上保安庁の巡視船に装備されている「遠隔監視採証装置」は、中国語では「光电取证系统(光電取証システム)」や「远距离光电取证装置(遠距離光電取証装置)」等と書かれる。簡単に「光电系统」でも通じる。
ここでは日中双方ともまとめて「遠隔監視採証装置」と書きます。
海上保安庁の巡視船で採用されている遠隔監視採証装置はこういう角張ったタイプが多い。
一方、中国海警局や海事局など中国の海上法執行機関の船舶で採用されている遠隔監視採証装置にはこういう丸いタイプが多い。
(微博より)
見慣れれば、遠隔監視採証装置がどっちを向いているかはすぐ分かります。🙂
昨年も、尖閣諸島の沖では、仲間均石垣市議の漁船「鶴丸」や日本文化チャンネル桜の漁船が行った尖閣沖での漁業活動の時に、近付いてきた中国海警局の船の遠隔監視採証装置はレンズを日本漁船の方に向けていた。(1~数日間の全ての時間で撮影してはいないと思うが)
例えば昨年(2021年)2月の、仲間均石垣市議の漁船「鶴丸」から撮影された「海警1301」(2021年2月27日に動画公開)。
(【尖閣諸島】日本の海で釣りしてみたー前編 - YouTube (2021/02/27)より)
チャンネル桜の番組での、漁船から撮影された「海警2302」(2021年5月30日に動画公開)。
(【尖閣最新映像】視えた!尖閣最終局面!今、尖閣海域の主導権を握り始めた中国海警船、日本漁船三隻に急接近して威嚇!日本領海を守れ!気迫無き海保巡視船の無力! - YouTube (2021/05/30)より)
遠隔監視採証装置は、尖閣諸島の周辺で確認された中国公船では10数年以上も前、国家海洋局 中国海監総隊の頃から装備されてきていた。当時、1000㌧級以上の海洋監視船では「HEOS-300」型(中船重工第七一七研究所に関係する武汉华之洋光电系统有限责任公司が研究開発)が装備されていた。
写真や動画を含めて証拠の記録は重要な手続きだ。中国海監総隊の隊員が望遠レンズ付きのカメラを持って撮影することもあったが、遠隔監視採証装置の性能が上がっていって徐々に置き換わっていっただろう。
(尖閣諸島の沖の海域、海監50(当時)より)
その後の遠隔監視採証装置では、レンズやカメラなどハードウェアだけでなくソフトウェア面でも性能が大幅にアップした。海事局や海警局、海監や漁政など、海上法執行機関の船舶で採用された遠隔監視採証装置を製造販売している企業はいくつもある。(以下は一例)
尖閣諸島の周辺で確認されている3000㌧級から5000㌧級の海警船は、比較的に新しいとはいっても正式配備されてから10年近くたった船が増えてきた。今回、仲間均石垣市議が撮影した「海警1302」(前の船名は「海警2308」)が尖閣沖で初めて確認されたのは、実は7年も前のことだ。
その間、中国海警局の船の装備は、常に最新の最高の性能のものに更新されていただろうか?
そこんとこ海保と、機器の更新に対して行政の対応はあんまり変わんないと思う。😅
【中国海警局】3000トン級「海警2308」 東海分局の海監型3000トン級海警船、新型4隻全てが尖閣に - pelicanmemo (2015-06-07)
今回(2022年5月)、「海警1302」(もと海警2308)は、遠隔監視採証装置での撮影だけでなく、隊員が一眼カメラを持って甲板に出て、漁船「鶴丸」の方向を撮影していた。
これには、船舶の船体と船名その他を記録するだけではなく、船舶の甲板にいる人間の顔写真の撮影をして人物の特定をする意図があったのではないだろうか?🤔
今年(2022年)1月末に、石垣市の中山義隆市長と関係部署の部長、市議2人と東海大学の山田吉彦教授らが、東海大の海洋調査船「望星丸」(2174㌧)で、尖閣諸島海域の海洋調査および視察を行った。
中山市長が尖閣洋上視察 調査船に中国艦船並走 | 八重山日報 (2022/2/1)
その時も中国海警局の「海警2502」の遠隔監視採証装置のレンズは、東海大の海洋調査船「望星丸」の方を向いていた(ようだ)(少し遠くて、画像が荒いため曖昧)。
この時、甲板上の個々人の顔を判別できるだけの解像度の画像は得られなかったのではないだろうか?
(日テレNEWSより)
「海警2502」など中国海警局の5000㌧級の遠隔監視採証装置は次の画像の赤丸の位置にある。
(微博より)(海警2502のブリッジの上の様子、左舷の埠頭から撮影)
今年(2022年)5月5日、国会議員らでつくる安全保障議員協議会(会長・久間章生元防衛相)は衆院議員2人などと、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の海上視察を試みたことを明らかにした。しかし、天候不良で断念したそうだ。衆院議員2人が誰かは明らかにされていない。
衆院議員2人が尖閣視察を断念 安保議員協議会 - 産経ニュース (2022/5/5)
石垣市市長らの尖閣視察はかなり極秘に行われたそうだが、この国会議員らによる尖閣視察計画の情報は中国側もキャッチしていても不思議はない。中国側としては、外交ルートで抗議をするなど調査資料に顔写真は重要で、船上にいた人物を特定する必要があっただろう。
武警海警総隊(中国海警局)は、手ブレ補正機能の性能が高い一眼カメラと望遠レンズを用意して、甲板上の人物を特定するため撮影を予定していたのではないだろうか?
しかも片方が失敗した場合のために、隊員2人で撮影を予定していたのかもしれない。
ところが、国会議員による尖閣視察の計画は天候不良で行われなかった。
その後、中国海警局の船4隻の交代は行われてはいない。
そこで、数日後に尖閣諸島の沖で操業をした漁船「鶴丸」を撮影対象として”実戦的な訓練”を行ったのではないだろうか?撮影対象の船の甲板上の人物をどこまではっきりと撮影できて、人物特定ができるのか試して、問題点の洗い出しをしたのかもしれない。
時節柄、ロシアによるウクライナ侵略とその後の国際情勢の変化と関連付けてみたがるだろうけど・・・、現実的なところで尖閣諸島沖の状況を考えてみると、今年2月の石垣市市長の尖閣視察や4月末の国会議員の尖閣視察(計画)の方が蓋然性が高い。
もし次回も、これからも、仲間均石垣市議の乗る漁船「鶴丸」に対して、中国海警局の船の甲板上に一眼カメラを構えた隊員が出てくるようなら、対応が変わったと言えそうだ。
もしそうなら、尖閣沖で操業をする漁船の船名を特定するだけでなく(これは遠隔監視採証装置だけで可能)、乗組員の特定をして、中国の国内法に基づいた何らかの一方的な法的対応のための調査資料に使う可能性も考えられるだろう。
【中国海警局】海警の船の”機関砲のような武器”? それ、高圧放水銃や。 - pelicanmemo (2021-02-04)
中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
中山市長が尖閣洋上視察 調査船に中国艦船並走 | 八重山日報 (2022/2/1)
石垣市 調査船で尖閣諸島の海域を視察 - 日テレNEWS (2022年1月31日)
中山石垣市長が尖閣海上視察 就任後初 行政の海域調査は約10年ぶり - 琉球新報デジタル (2022年2月1日)
【動画】海保の警護で中国船寄せ付けず 石垣市の尖閣調査 - 産経ニュース (2022/2/1)
DN series EO device-SanScience
ファイル:JCG Remote Surveillance and Tracking System.jpg - Wikipedia
チャンネル桜
ここしばらく海警は近寄って来ませんでしたが今回は近くまで接近して威嚇してきました。また今回から海警もこちらを撮影してきました。明らかに今までとは違う動きです。 https://t.co/ufE1NFdm2X
— 仲間均 (@nakamahitoshi) 2022年5月11日
【「接近映像」中国船が #領海侵入 】
— news zero (@ntvnewszero) 2022年5月10日
日本の漁船の目の前に現れた #中国海警局 の船#尖閣 諸島沖の日本の領海に侵入した時に撮影された映像#海上保安庁 の警告を受けてもとどまり続け
逆に「中国の領海から退去せよ」と警告しカメラ撮影
ロシアによる軍事侵攻の前と比べると変化が…#newszero pic.twitter.com/GjyxQj6XAq