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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

クリミア大橋での爆発で、カディロフの娘の裁判を担当した判事が死亡→ 陰謀論を検証してみた。

20221017060725(tsn.uaより)

クリミア大橋の爆発事件について、カディロフの娘の裁判を担当した裁判官が死亡していたと分かったことから、「橋での爆発は裁判官を殺害するためだった」という説が話題だ。

陰謀論らしい陰謀論で楽しいのでこれについて少し。

結論は「ほぼデマ」。

”ほぼ”をつけたのは、裁判官の死に関してロシア国内で情報が厳しく管理されている場合、100%デマだとは言い切れないからです😅

 

まず事実(ファクト)は、

・モスクワ市仲裁裁判所のセルゲイ・マスロフ(Сергей Маслов)裁判官が、クリミア大橋の爆発事件で死亡した。裁判所の所属する裁判官一覧にのっており、ロシアのタス通信が10月11日付けで死亡を報道した。(タス通信, 2022-10-11)

・ラムザン・カディロフの娘であるアイシャット・ラムザノフナ・カディロワ(Айшат Рамзановна Кадыровой)(22)が関わるファッションハウス「フィルダウス(Фирдаус(Firdaws))」に対して米国の出版社「コンデナスト(Condé Nast)」のロシア部門が訴訟を起こしていた。
この訴訟は今年(2022年)8月8日に受理されたが原告が請求を棄却したことで、モスクワ仲裁裁判所が8月19日に手続きを終了する決定を下した。(コーカサスの絆(Кавказский Узел)紙、2022-08-23)(同紙、2022-08-15)

、この2つ。

これに加えて、カディロワの会社への訴訟を担当したのはセルゲイ・マスロフ(Сергей Маслов)裁判官だとコーカサスの現実(Кавказ.Реалии)紙が8月に伝えていた。ただしこの情報は、このRadio Free Europe/Radio Liberty系ネット・ニュース・サービスの記事でしか見つけていない。(コーカサスの現実(Кавказ.Реалии)紙、2022-08-23)

出版社コンデナストが請求を取り下げた理由ははっきりしないが、メディアで取り上げられたことで公判前に出版社と和解をした可能性があるそうだ。

 

この訴訟の後にふたたび、カディロワと関係する会社に対して別の訴訟がありモスクワ仲裁裁判所でマスロフ裁判官が担当となった可能性もゼロでは無い。しかし9月以降に新たな訴訟があったことを指摘する発表や報道は見当たらない。ウクライナのメディアはこのネタを多く報じているが、どれも8月の米国の出版社コンデナストの訴訟だけを書いている。

 

 

実はクリミア大橋の爆発事件の後にこの話題が出た当初は、爆発物が隠されていたのはトラックではなく隣を走っていた車(キャデラック エスカレード)の方だという文脈で語られていた。車の所有者がモスクワ仲裁裁判所の裁判官なので、橋の入り口の検問所で充分な検査が行われなかったという指摘だ。

20221017194505

それに加えて、爆発の死者3人と発表された後に4人目の死者がいてモスクワの裁判官だとネットSNSで噂となり、その氏名が慎重に扱われて報じられなかったことで陰謀論が育まれる土壌となっただろう。

 

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ロシア連邦保安庁(FSB)は爆発物はトラックに積まれていて、ウクライナ情報局が背後にありウクライナのオデッサからブルガリア、ジョージア、アルメニアを経由してロシア国内に持ち込まれたというシナリオを発表した。

いろいろ問題のあるシナリオだと思うし、真偽はともかくロシア政権にとってはどうしても「ウクライナによるテロ事件」としたいストーリーだろう。陰謀論にとっても栄養たっぷりの肥料だ。

 

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セルゲイ・ウラジーミロヴィチ・マスロフ(Сергей Владимирович Маслов)裁判官の、モスクワ市仲裁裁判所(Арбитражный суд города Москвы)公式ホームページでの紹介ページはこちら

Маслов С.В. | Арбитражный суд города Москвы

2014年5月28日にロシア連邦大統領令第373号により着任。民事訴訟や紛争を検討する司法委員会のメンバーで、裁判所の情報筋の話として、彼は難しい問題を解決する(*1)妥協を許さない裁判官として評判だったと伝えている。

モスクワ仲裁裁判所の裁判スケジュールを調べてみると(*2)、マスロフ裁判官が最後に担当した裁判は10月3日に1件。次の予定が10月24日なので約3週間の休暇だったのだろう。友人の誕生日を祝うため、彼が所有する車(キャデラック エスカレード)に乗って友人たちとクリミアへ向かっていたそうだ。

20221017062241(10/17にSS画像取得(先週と同じだった))

Тайна взрыва на Крымском мосту: в ходе теракта погиб судья, имя которого пытаются скрыть

 

(*1)余談だが、”難しい問題を解決する”と日本語訳した部分のロシア語原文は"крепким орешком"でGoogle英訳では"tough nut"。ブルース・ウィリス主演の映画「ダイ・ハード」のロシア語タイトル"Крепкий орешек"と奇妙に暗合していたりする。

この表現を使ったのは、爆発でマスロフ裁判官が死亡した可能性を最初に指摘したSNSアカウント(このすぐ後で紹介している)であちこちで引用されている。ロシア国内・ロシア語圏向けに、クリミア大橋の爆発事件と関連して映画「ダイ・ハード」の爆発シーンを印象づけようとしたようにも感じられる。

 

(*2)裁判スケジュールの調べ方は、モスクワ市仲裁裁判所の公式ウェブサイトで、画面上のメニューバーの「カレンダー」アイコンから移動。カレンダーのページに移動すると、左メニューに「Участник дела(訴訟の関係者)」や「Судья(裁判官)」「裁判所」「訴訟番号」があり、キーワードを打ち込んで検索ができる。上から2つめの「Судья(裁判官)」項目に「Маслов」(マスロフ裁判官の姓)と打ち込むと同姓の裁判官+裁判所の選択肢一覧が出てくる(OS・ブラウザによっては出ないかもしれない)。選択肢一覧から「Маслов С. В., АС города Москвы」を選択して「検索」ボタンを押すと結果が表示される。10月17日夜の時点でまだ表示されていた。

 

 

最初に、爆発でセルゲイ・マスロフ裁判官が死亡した可能性があると伝えたのは、ロシアの腐敗や犯罪の情報を調査し公開するプロジェクトВЧК-ОГПУ(VChK-OGPU)のTelegramの10月10日付け記事。

Telegram: vchkogpu (https://t.me/vchkogpu/33541)

20221017061015

В Арбитражном суде Москвы сегодня весь день обсуждают, что одним из погибших на крымском мосту мог быть судья Сергей Маслов и в АСГМ уже приходили из органов по этому поводу. Он находится в отпуске, который планировал провести в Крыму. На связь с момента взрыва не выходит.

ВЧК-ОГПУ пока не имеет официального подтверждения данной информации.

ВЧК-ОГПУ(VChK-OGPU)のTelegramでは引き続き、クリミア大橋の爆破事件やその関係者として拘束された人たちについて追跡報道している。

 

ロシア国外で報道を続けているロシア系メディアのメドゥーザ(Meduza)紙などが一部の確認された情報を伝え、それらを参照するかたちで拡がっている。

その後、検証や続報はとくになく、ロシアFSBが発表したトラックによるルートと爆発物との関係も出ていないようだ。

 

日本語で紹介されていのはウクライナ・メディアの記事が多い。

TSN紙では記事タイトルで「カディロフの娘に対する訴訟を審理している裁判官が、クリミア橋での爆発の際に死亡した」と分かりやすい表現を用い、本文ではこの陰謀論情報を信じたくなるような情報だけを抜き出してまとめている。

Вибух на Кримському мосту - загиблий суддя слухав справу доньки Кадирова — Укрaїнa — tsn.ua (2022-10-12)

 

陰謀論って楽しいですよね😅

 

 

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以下、資料リンク

10月8日のクリミア大橋の爆発事件の後、10月11日付けのタス通信が、裁判所からの公式の発表はまだ無いとしながらも、爆発事件の死亡者が4人でマスロフ裁判官が含まれていることを伝えた。

Число погибших при взрыве на Крымском мосту выросло до четырех. Среди них судья из Москвы(タス通信, 2022-10-11)

 

Кавказский Узел | Издательский дом "Конде Наст" отказался от иска к модному дому Айшат Кадыровой (コーカサスの絆(Кавказский Узел)紙、2022-08-23)

Издательский дом Conde Nast отозвал иск к модному дому дочери Рамзана Кадырова (コーカサスの現実(Кавказ.Реалии)紙、2022-08-23)

Издатель Glamour подал в суд на модный дом дочери Рамзана Кадырова  (コーカサスの現実(Кавказ.Реалии)紙、2022-08-14)

Погибший на Крымском мосту судья рассматривал иск к компании дочери Кадыров

Кавказский Узел | Иск к модному дому Айшат Кадыровой стал вторым за год

Айшат Кадырова и "Райский сад". Что известно о бизнесе дочери главы Чечни

 

Four people dead in weekend Crimean Bridge blast — including Moscow Arbitration Court judge — Meduza

При взрыве на Крымском мосту погиб судья Арбитражного суда Москвы - Новости – Происшествия – Коммерсантъ

 

Заказ на взрыв в 5 км от Кремля - RUCRIMINAL Истина любит действовать открыто.

Тайна взрыва на Крымском мосту: в ходе теракта погиб судья, имя которого пытаются скрыть

По уголовному делу о теракте на Крымском мосту задержали восемь человек - РИА Новости, 12.10.2022

 

Вибух на Кримському мосту - загиблий суддя слухав справу доньки Кадирова — Укрaїнa — tsn.ua

Модный дом Айшат. Кадыров взорвал Крымский мост, взорвёт и | Newssky.com.ua

Крымский мост: умер судья, который вел дело дочери Кадырова | Новости на Gazeta.ua

 

RUCRIMINAL Истина любит действовать открыто.

Официальный сайт | Арбитражный суд города Москвы

Crimean Bridge - Wikipedia

Крымский мост — Википедия

クリミア大橋爆発 - Wikipedia

Кадырова, Айшат Рамзановна — Википедия

コンデナスト・パブリケーションズ - Wikipedia