pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【中国海警局】 718B型「海警2204」初確認、76ミリ砲(H/PJ-26型76mm単管速射砲)を装備

20221116001504(海上保安庁第11管区海上保安本部より)

11月15日、尖閣諸島の接続水域ですでに航行していた中国海警局の船4隻(*1)が別の4隻と交代した。新たに確認された1隻が76ミリ砲を搭載しているのを海上保安庁が確認した。76ミリ砲を搭載する中国海警局の船が尖閣諸島の接続水域で確認されたのははじめて。(*1)前の4隻は海警1302、海警1102、海警1103と30mm機関砲を搭載する海警1304)

 

15日に交代した新たな4隻は「海警2502」「海警2301」「海警2102」と76mm機関砲を搭載する「海警2204」。

日本経済新聞などの記事で、中国海軍から約20隻の76mm機関砲を搭載する056型コルベット(初期型)が中国海警局に移管されたことも合わせて報じたため、この「海警2204」が056型コルベットだという勘違いもされていたようだ。

「海警2204」はもともと公安部の辺防海警部隊の頃、2016年から2017年にかけて建造され配備された公船で、056型コルベットのような中国海軍から移管された”もと軍艦”では無い。

大型機関砲を載せた中国海警船、尖閣周辺に 日中首脳会談前: 日本経済新聞

中国、76ミリ砲搭載艦を派遣 尖閣周辺、海警過去最大か | 共同通信

中国海警局の船 これまでで最大の砲を搭載 76ミリ砲か|NHK 沖縄県のニュース

20221116065623

 

実は、中国海警局に所属する船舶のうち76mm機関砲を搭載約45隻(*2)。同型船の中で「海警2502」など76mm砲を未だ搭載していない船を差し引いても約40隻ある。
(*2)国家海洋局 中国海監総隊の頃に建造・配備された、万トン級 (NATOコード:ZHAOTOU class) 2隻、5000トン級 (SHUOSHI II class) 4隻、4000トン級 (ZHAOLAI class) 4隻
公安部 辺防海警部隊の頃に建造・配備された、818型・3000トン級 (ZHAODUAN class) 6隻、718B型・2000トン級 (ZHAOJUN class) 9隻(「海警2204」はこの718B型)。
中国海軍から移管された、056型コルベット(初期型)・1500トン級 (JIANGDAO class) が約20隻
(詳細は後述)

【中国海警局】5000トン級「海警2501」、76mm機関砲を新たに装備 - pelicanmemo (2021-01-23)

【中国海警局】 中国海軍の056型コルベット、約20隻が海警局に移管か - pelicanmemo (2021-12-25)

中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

 

この数日前から、尖閣諸島の北西約100kmから東シナ海を東の方角へ、76mm機関砲を搭載する「海警2501」と「海警14605」(30mm機関砲を装備)が航行していたことはほとんど話題になっていないようだ。尖閣周辺にいたのは接続水域の「海警2204」など4隻だけでなく、連携して日本政府や海保に対してプレッシャーをかけていたと考えられる。

20221116063427(MarineTrafficより(記録は11/12))

Ads by Google

 


20221116194739(微博より)

 

中国海警局が2018年7月に武警部隊に正式に編入(*3)されるよりも前の、公安部 辺防海警部隊での大型辺防巡邏船建造計画によって3000トン級(818型)6隻と2000トン級(718型改・718B型)9隻が建造、配備された。

「海警2204」はこの2000トン級のうちの1隻。

2000年代の”718型”建造計画の船体を参考にしたので”718B型”と呼ばれている。同型9隻は、中国船舶重工集团公司第701研究所による設計で、2013年から中船黄埔文沖船舶有限公司との建造契約が締結された。2016年から2018年にかけて進水し配備された。

(*3)中国海警局は2018年7月1日に、中国共産党の中央軍事委員会が指揮する武装警察部隊(武警 People's Armed Police(PAP))に編入された。海警総隊となり中国海警局(China Coast Guard(CCG))の名称も引き続き使用している。

20221116065735(微博、中国ネットより)

報道によると、全長102m、型幅13.9m、型深さ5.7m、最大喫水3.7m。標準排水量1900トン、満載排水量2200トン。最大航速22~23ノット。(海監(国家海洋局)や漁政(漁業局)と違って、辺防海警(公安部)では新造船の諸元や契約の詳細をくわしく公開していない)

 

2000年代前半の”718型”「海警1001」(後に海警31101と改名)は37mm機関砲を搭載していた。新たに設計された”718B型”では、船首にH/PJ-26型 76mm単管速射砲を1基と上部構造物後部にH/PJ-17型 30mm機関砲を2基装備する。
高圧放水銃、遠隔監視採証装置や停船命令等表示装置など、海上法執行機関の公船としての法執行活動のための装備を持つ。
新旧どちらの718型もヘリ甲板がある。ヘリ格納庫は無い。

 

 

中国海警局に所属する船舶に搭載されている「76ミリ砲」は、中国北方工業公司(NORINCO)「H/PJ-26型76mm単管速射砲」とされている。海軍の056型コルベットと同じであり、武器管制システムも同レベルのものが装備されている可能性は高いだろう。

20221116194743
(中国海警局 718B型巡邏艦での76mm速射砲の実弾演習の様子)(微博より)

 

 

2018年に中国海警局が人民武装警察部隊に編入され海警総隊と改編された後、組織の再編と船舶の異動があった。それに伴って船名・番号も変更された(めんどくさい😬)。

【中国海警局】 船名・船舶番号、変更(2019年7月〜)。| 「海警6501」は直属第六局所属の5000トン級。 (2019-12-15)

 

公安部 辺防海警の818型・3000トン級(6隻)と718B・2000トン級(9隻)の海警船は、沿海省・自治区・直轄市の地方海警総隊に配備された。特に、南シナ海を管轄する地方に所属する船が多かった。

818型・3000トンの方は上海総隊が3隻と海南省総隊が3隻という配分で当時の戦力配分が分かりやすい。武警への編入後は直属第2局(上海)と直属第5局(三亜)の所属となった。(このブログ記事では長くなるので818型について多くは触れていない)

 

人民武装警察部隊に編入された後には、さらに南シナ海を管轄する直轄総隊への718B型の異動が増えていた。実際のところニュース映像でこれらの船が写りこむのは南シナ海での、フィリピンやベトナム、インドネシアのEEZなどでの、中国の漁船団やオイルリグ調査、島嶼の領有権主張など、沿海各国の沿岸警備隊や海軍の艦船と対峙した場合が多い。

もしかしたら、これから東シナ海での尖閣諸島や、台湾の周辺海域でのこれらの船の活動のニュースが増えていくのかもしれない。

 

 

718B型・2000トン級「海警2204」は東シナ海を管轄する東海分局の直属第2局に所属する(武警部隊の方の組織の書き方だと、東海海区指揮部第2支隊に所属する(めんどくさい😬))。

もとの船名は多分、浙江省総隊の「海警33111」だろう。あるいは遼寧省総隊の「海警21111」かもしれない。
「海警33111」は、2018年9月に中国の浙江省で行われた「第19回北太平洋海上保安フォーラム・サミット」に参加していた船だ(参考)。日本へ嫌がらせ(ハラスメント)で派遣するにはちょうど良い(いやらしい)船ではないだろうか。

他の718B型・2000トン級の7隻は、南シナ海を管轄する南海分局の直属第4局(文昌(海南省))や直属第5局(三亜(海南省))への異動が確認された。例えば福建省総隊の「海警35111」は「海警5202」に、海南省総隊の「海警46113」は「海警5204」に変わった。

 

この718B型・2000トン級「海警5204」(もと海警46113)は2020年1月に、フィリピンのマニラを公式訪問し、フィリピン沿岸警備隊(Philippines Coast Guard, PCG)と海難救助訓練などを行っている。これまでにも行われてきたCCGとPCGとの交流という意味の他に、中国海警局側としては「戦力」の違いを見せつける意図もあったのかもしれない。🤔

PCGの公式発表から(「海警2204」など同型艦も装備する)H/PJ-26型 76mm単管速射砲が分かりやすい。

20221116194758(Twitterより)

 

 

中国海警局に所属する船舶のうち76mm機関砲を搭載する船は約45隻(未だ搭載されていない同型艦も含む)。次の通り。

・国家海洋局 中国海監総隊の頃に建造・配備:
万トン級 (NATOコード:Zhaotou class) 2隻(海警2901、海警5901(もと海警3901))、
5000トン級 (Shuoshi II class) 4隻(海警2501、海警3502(もと海警3501)、海警6501(もと海警1501)。海警2502は未だ搭載していない)、
4000トン級 (Zhaolai class) 4隻(機関砲搭載が確認されているは1隻(海警5402(もと海警3401)だろう)。海警2401、海警5403(もと海警3402)、海警6402(もと海警1401))、

・公安部 辺防海警部隊の頃に建造・配備:
818型・3000トン級 (Zhaoduan class) 6隻(もと海警31301, 31302, 31303, 46301, 46302, 46303)
718B型・2000トン級 (Zhaojun class) 9隻(もと海警21111, 33111, 35111, 37111, 44111, 45111, 46111, 46112, 46113)
(新しい舷号の方は全部が確認されていないので割愛。古い方だけ記載した)

・中国海軍から移管された、056型コルベット(初期型)・1500トン級 (Jiangdao class) が約20隻。
(もと056型海警艦は1500トン級なので舷号(船名・番号)は「海警4103」や「海警4110」のように2番目の数字が”1”となる(海警ABCDだと”B”の数字)。)

【中国海警局】 船名・船舶番号、変更(2019年7月〜)。| 「海警6501」は直属第六局所属の5000トン級。 (2019-12-15)

 

【中国海警局】 4000トン級海警船に76mm機関砲を搭載か - pelicanmemo

【中国海警局】5000トン級「海警2501」、76mm機関砲を新たに装備 - pelicanmemo

【中国海警局】 056型は「フリゲート艦」? それとも「コルベット」? | 中国海軍から移管、76mm機関砲を装備 - pelicanmemo

【中国海警局】 排水量12000トン「海警2901」 vs. 排水量6500トン「しきしま型」巡視船、という数字のトリック - pelicanmemo

中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

 

中国海警局の船 これまでで最大の砲を搭載 76ミリ砲か|NHK 沖縄県のニュース

接続水域で過去最大の砲を搭載している船が確認されたことについて、海上保安本部は「中国海警局の船舶の大型化、武装化に対してもしっかりと対応出来るような万全な体制を確保している」などとしています。

76ミリ砲を積んだ中国海警局の船は外形から718B型巡視船と見られます。

中国の軍事専門誌によりますと718B型巡視船は、中国の軍艦と同じ76ミリ砲と射撃レーダーが搭載されていて、砲の攻撃能力は大きく変わらないものと見られます。

アメリカのシンクタンク、CSIS=戦略国際問題研究所の分析では、排水量が2700トンと巡視船としては中型で、南シナ海では頻繁にパトロールしているのが確認されているということです。

  

 尖閣周辺の中国船交代 13日連続航行 | 八重山日報

第十一管区海上保安本部によると、尖閣諸島(石垣市登野城尖閣)周辺の接続水域を航行していた中国海警局の艦船4隻が15日午前7時ごろ、新たに接続水域に入った他の4隻と交代した。中国艦船が尖閣周辺を航行するのは13日連続。
 新たに入った4隻は「海警2102」「海警2301」「海警2502」と、機関砲らしきものを搭載した「海警2204」。このうち「海警2204」は尖閣周辺海域で初確認となる。
 海保の巡視船が領海に侵入しないよう警告している。

尖閣諸島周辺の接続水域 中国海警局の船が初めて76ミリ砲を搭載し航行 | TBS NEWS DIG

大型機関砲を載せた中国海警船、尖閣周辺に 日中首脳会談前: 日本経済新聞

中国、76ミリ砲搭載艦を派遣 尖閣周辺、海警過去最大か | 共同通信

中国、76ミリ砲搭載艦を派遣 尖閣周辺、海警過去最大か(共同通信) - Yahoo!ニュース

 

 

 

718B型巡視船 - Wikipedia

中国海警局 - Wikipedia

056型コルベット - Wikipedia