豚やイノシシの感染症であるアフリカ豚熱（ASF(African Swine Fever)、旧称：アフリカ豚コレラ）がアジアやヨーロッパなどで拡がり続けている。
アフリカ豚熱(ASF)は、日本国内で発生している豚熱（CSF(Classical Swine Fever)、旧称：豚コレラ）とは違って（研究開発段階を除いて）有効なワクチンは無い。ASFに感染した豚・イノシシの致死率は100％に近い。
ASFワクチンの研究開発は、米国USDAや欧州連合(VAGDIVA)、英国、ベトナム、韓国、ロシアや中国など世界各地の研究所や企業で行われている。そのうち今年(2022年)8月に、ベトナムで実用化段階のASFワクチンを接種した豚の大量死がニュースになっていた。年末なので今年の書き忘れていたネタをすこし。
実用化段階のASFワクチンを接種した豚が大量に死亡したということで、ASFワクチンの安全性と効果に疑問を呈するコメントを多く見かけた。ちょうど新型コロナ「第7波」のピークの頃でオミクロン対応ワクチン接種が奨められていた時期で、いわゆる何の話題でも”反ワクチン”なコメントも混じっていたようだ。
アフリカ豚熱(ASF)ワクチン「NAVET-ASFVAC」は、ベトナムのNAVETCO(National Veterinary JSC)（旧国立微生物研究所）と米国の農業研究所(USDA ARS)が共同開発しているもの。今年(2022年)5月下旬に農業農村開発省 (MARD) によって正式な証明書が与えられ、6月3日に限定的だが流通許可も発表された。
大量の死亡例が報告されたのはベトナム中南部に位置するクアンガイ省、ビンディン省、フーイエン省で、この３つの省は南北に隣接している。ビンディン省でASFワクチンの接種が一時中止された。
ベトナム農業農村開発省(MARD) 家畜衛生局による調査結果の発表によると、豚の大量死の主な原因は、ガイドラインを逸脱した不適切な接種方法によるものだった。対象外の生後2ヶ月の子豚に接種したことで約半数が死亡した例もあり、報告された死亡例にも間違いがあった。
ふたを開けてみたら「なんだかなぁ...」なことだった。😬
Lợn chết sau tiêm vaccine dịch tả lợn Châu Phi vì "tiêm không đúng"(2022-09-06)（アフリカ豚熱(ASF)の予防接種を受けた豚が「不適切な注射」で死亡）
Vaccine dịch tả lợn châu Phi: Thực hiện đúng chỉ đạo đều cho kết quả tốt (2022-09-05)（アフリカ豚熱(ASF)ワクチン：指示に正しく従い、良い結果をもたらす）
アフリカ豚熱（アフリカ豚コレラ）カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
Ads by Google
(TrangTraiVietより)（死亡した豚の現地での解体調査の様子）
大量死の報道があった当初、違法に輸入された未発表の中国製ASFワクチンが原因という指摘もされていた。実際問題、密輸された中華ASFワクチンもどきがベトナム国内で流通していたんだけど、今回の大量死亡事故はNAVETCO社のASFワクチンの販売と接種での管理と監督不十分ということだった。
Điều tra: Ngang nhiên bán vaccine dịch tả lợn châu Phi chưa được phép lưu hành (2022-07-21)（調査：流通が許可されていないアフリカ豚コレラワクチンをあからさまに販売）
アフリカ豚熱(ASF)ワクチン「NAVET-ASFVAC」は、本来、獣医当局の監督下にある生後8~10週の豚に対して接種を行うことが決められていたが、大量死が起きた地域ではワクチンの管理と接種の監督がしっかりと行われていなかった。ワクチンを自主的に入手した養豚農家や養豚会社では、子豚や妊娠中の雌豚を含む飼育豚に対して接種を行っており、注射環境も適切なバイオセキュリティが確保されていなかった。用量を守っていない例や、すでにASF発症している豚や他の感染症に感染している豚に接種した例もあったそうだ。
例えば、フーイエン省はASFワクチンの接種計画（第一段階）には含まれていなかったにも関わらず、人々はASFワクチン900回分を自主的に購入し、生後2ヶ月の子豚609頭にも自分たちで注射をしていた。そのうち542頭(89%)にASFワクチン注射の副反応があらわれ297頭(49%)が死亡した。
初期に報道されていた死亡頭数も正しくなかったようだ。
集計の結果、1392頭が死亡したと伝えられていたが、一部の農家では豚を売っていたにも関わらず接種後に死亡したと報告をしたり、生きていても死亡と報告した例もあったと報道されていた。（ただし、報告でも言及されている情報だが、地元当局や獣医機関による確認はされていないようだ）
ベトナム農業農村開発省(MARD) 家畜衛生局のグエン・バン・ロン(Nguyễn Văn Long)局長代理（9月の発表当時。現在は局長）によると、保健省の指示と動物衛生局の指導に従ってアフリカ豚熱(ASF)ワクチン「NAVET-ASFVAC」の接種を行っている地域では良好な結果が出ていた。
農業農村開発省はNAVETCO社に対してASFワクチン供給計画の見直し等を求め、自治体に対してはASFワクチンの供給と使用のガイドラインを逸脱することの無いよう、特に大量の死亡事故が発生した３つの省に対して要請をした。
農業農村開発省は、NAVETCOに加えてAVACとDabacoの３つのベトナム企業に対してアフリカ豚熱(ASF)ワクチンの研究と製造を指示し、今年(2022年)の年末までに認可が与えられると報道されていた。そのうちAVACのASFワクチンは1300回強がハノイ市、バクザン、ホアビンで治験が行われている。NAVETCOのASFワクチンでの治験第一段階60万回と同じく、AVACでも60万回が予定されているようだ。
ASFワクチンの安全性と有効性の評価のため、どちらでも地域と対象を限定していろいろな規模の数十の養豚場・養豚農家に限定して実施している。第二段階では、第一段階の結果を検討して全国的に使用するかどうかが決定される。
ベトナムでのアフリカ豚熱(ASF)ワクチンの、実験レベルでの有効性や安全性の発表や、時々に報道されている治験の数字を見ていると80%から最大95%や100%という数字がおどっている。
これが、バイオセキュリティがしっかりしていて飼育豚の成育環境が適切にコントロールされていて、ASFワクチンの接種と接種後の健康管理も充分できているならそれに合った有効性や安全性も担保されうるだろう。しかし裏庭養豚（backyard)のような、良いとはいえない飼育環境や、アフリカ豚熱(ASF)だけでなく他の感染症の罹患リスクが高い地域では期待される性能を発揮させるのは難しそうだ。
Vaccine dịch tả heo Châu Phi: Góc nhìn của nhà khoa học - Tạp chí Chăn nuôi Việt Nam(31/10/2022)（アフリカ豚コレラワクチン：科学者の視点）（2022年10月16日にベトナム畜産協会の後援、林業大学ドンナイ支部の協力のもとでカントー市畜産協会が主催した会議の資料「アフリカ豚コレラ対策：科学的および実践的展望」から抜粋）
Chấn chỉnh công tác cung ứng, sử dụng vaccine ASF (2022-09-19)（ASFワクチンの供給と使用の修正）
Việt Nam sắp có thêm loại vaccine dịch tả heo châu Phi mới (19/12/2022)
中国でのアフリカ豚熱（ASF(African Swine Fever)、旧称：アフリカ豚コレラ）の発生から流行、封じ込め、当局の対応と現場のいたちごっこ等々を見てきたけど、ベトナムでのASFワクチンでも似たような問題点が出ているように感じられる。
とはいえ、案外、バイオセキュリティがしっかりしている大規模養豚施設での試験と有効性と安全性の評価次第では、外国へも同レベルの養豚施設での使用と限定してなら輸出もあるのかもしれない。
【アフリカ豚熱】 韓国、慶尚北道ではじめて確認 ｜ 封じ込め失敗、南部に拡大へ【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2022-02-13)
【アフリカ豚熱】変異ウイルス（変異株）発生 違法ワクチンが原因も【アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2021-03-29)
新型コロナウイルスのパンデミックは、中国でのアフリカ豚熱(ASF)の流行が発端か - pelicanmemo (2021-03-23)
アフリカ豚熱（アフリカ豚コレラ）カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
Lợn chết sau tiêm vaccine dịch tả lợn Châu Phi vì "tiêm không đúng"
Vaccine dịch tả lợn châu Phi: Thực hiện đúng chỉ đạo đều cho kết quả tốt | baotintuc.vn
Xác minh việc lợn chết hàng loạt sau khi tiêm vaccine dịch tả lợn Châu Phi
Hàng loạt lợn chết sau khi tiêm vaccine phòng dịch tả lợn Châu Phi
Phú Yên: Xử lý sự cố tiêm vaccine dịch tả lợn châu Phi
Bình Định: Nhiều hộ chăn nuôi trắng tay vì sự cố vắc xin phòng dịch tả heo châu Phi
Số động vật mắc bệnh giảm trên 75%, nhiều sản phẩm chăn nuôi rộng đường xuất khẩu
Bộ NNPTNT yêu cầu tiêm phòng vaccine dịch tả lợn châu Phi theo hướng dẫn của Cục Thú y
Vaccine dịch tả heo Châu Phi: Góc nhìn của nhà khoa học - Tạp chí Chăn nuôi Việt Nam
NAVETCO | Trợ thủ đắc lực của nhà chăn nuôi
