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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

中国のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、ケルマディック海溝の最深部へ ニュージーランドと共同探査

20221130054204(央視新聞/IT之家より)

南太平洋、ケルマディック海溝の最深部の有人調査が、中国の水深1万メートル級のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号に搭乗したニュージーランドと中国の科学者によって行われた。

人類が、ケルマディック海溝の最深部であるショール海淵(Scholl Deep)に到達したのは今回で2回目(*1)。発表と報道では2人の女性が、ニュージーランドの科学者と中国の潜水艇パイロットがケルマディック海溝の最深部にはじめて潜水したとニュースになっている。

(*1)ケルマディック海溝の最深部ショール海淵(Scholl Deep)に到達した最初の人類は、2021年12月にFive Deeps Expeditionでの深海潜水艇「DSV Limiting Factor」で潜ったヴィクター・ヴェスコボ(Victor Vescovo)たち。

 

ニュージーランドの国立水質大気研究所 (NIWA)のKareen Schnabel博士(右)と、中国科学院 深海科学・工学研究所(中国科学院深海科学与工程研究所)の潜航員(潜水艇パイロット)の鄧玉清(邓玉清)(中央)が潜水した。

20221130054056(NIWAより)

 

ちなみに、一緒に潜った潜水艇パイロットの袁鑫(左)も居るけどほとんどニュースで触れられていない。😅

Chinese and New Zealand Scientists dive to one of the ocean's deepest regions | NIWA

首次中国-新西兰联合深渊深潜科考航次完成克马德克海沟第一航段科考任务----深海科学与工程研究所

 

中国科学院 深海科学・工学研究所(中科院深海所)に有人深海潜水艇は、1万m級フルデプス「奮闘者」号と4500m級「深海勇士」号がある。
昨年(2021年)末の資料によると有人深海潜水艇の運用を行う深海技術研究室には、100回以上の潜水を経験したスター級潜航員(星级潜航员)1人と、高級潜航員(潜水が45回以上100回未満)4人、潜航員(同・45回未満)8人、潜航員アシスタント(助理潜航员)(同・6回未満)3人、科学調査アシスタント(科研助理)2人が所属している。このほかに実習潜航員が2人で男性12人・女性4人。

今回、ケルマディック海溝に潜った発表に出てきた潜航員(潜水艇パイロット)の鄧玉清(邓玉清)と袁鑫は「潜航員」に該当する。

 

中国のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、マリアナ海溝で今年の潜航調査 - pelicanmemo (2021-10-20)

中国、フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、マリアナ海溝での水深1万m超の潜水と着底に成功。 ”双船双潜” - pelicanmemo (2020-11-22)

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余談だが今年(2022年)は、中国の7000m級有人深海潜水艇「蛟竜(蛟龙)」号が2012年6月15日に日本の「しんかい6500」がもっていた潜水記録6527mを抜き、さらに6月27日に水深7062.68mを記録してから10周年となる。

 

20221130054044(NIWAより)

フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号を載せた支援研究母船「探索一号」は、2022年10月6日に海南省三亜市を出発。10月31日にニュージーランドのオークランドの港からケルマディック海溝での潜航調査に向かった。

調査航海にはニュージーランドの国立水質大気研究所 (National Institute of Water and Atmospheric Research(NIWA))と中国科学院 深海科学・工学研究所(中国科学院深海科学与工程研究所)(Institute of Deep Sea Science and Engineering (IDSSE))の研究者2人と、上海交通大学、同済大学、浙江大学、青島華大遺伝子研究所(青岛华大基因研究院)、海南熱帯海洋学院、海南深科海洋技術サービス有限公司(海南深科海洋技术服务有限公司)の遠征チームらが参加した。

 

11月25日にオークランドに戻るまでの第一航段(第1レグ)で、「奮闘者」号は16回の潜水作業を行った。そのうち14回が水深6000m以上。最深部ショール海淵(Scholl Deep)では5回潜水し、うち2回が水深1万メートルに達した。

ケルマディック海溝の最深部の海水、堆積物や岩石、生物学的サンプルと環境データを取得したことで、超深海の水深1万メートルでの生物の進化と適応のメカニズムや、堆積物の環境変化および海洋プレートの沈み込みと物質交換の流れを深く理解する上での重要なデータを与えるだろう。

オークランド市で補給とスタッフの交代が行われ、第二航段(第2レグ)でも16回の潜水作業が12月末までに予定されている。

 

 

Schnabel博士と「奮闘者」パイロットらは深海底で6時間滞在して探査を行った。

Schnabel博士によるとケルマディック海溝の生物の特定は暫定的なもので、1950年代にデンマークの調査船「Galathea」による最初のサンプリング以来、観察や収集はされてこなかったそうだ。

中科院深海所の海洋生物学者の張海浜(张海滨)博士によると、マリアナ海溝で観察したよりも大きさは3分の1だったそうだ。「海溝ごとの種の違いは、生物が超深海の環境でどのように適応しているかについて謎が残っていることを示している」と話している。

 

20221130054040(NIWAより)

 

中国の1万メートル級・フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号は2021年末までに累計81回の潜水を行い、47人が初潜水を経験し、15の研究所や大学等のグループが参加した。水深1万mの地球で最も深い海の底に達したのは27人(うち女性5人(当ブログの推測だが、パイロット3人と研究者2人だろう))だった。

 

中国科学院 深海科学・工学研究所は「奮闘者」号を活用して、全球深淵深潜探査計画(全球深渊深潜探索计划)(Global Trench Exploration and Dive Program(Global TREnD))を積極的に展開して実施しようとしている。ニュージーランドや日本、インドネシア、チリなどの主要な研究機関や研究者と協力関係を築いており、多くの国と排他的経済水域(EEZ)の深海での科学研究の実施について初歩的な合意に達しているそうだ。

中国が主導する多国間の協力と、国際的な深海科学の領域での迅速なコンセンサスの育成、地球規模の超深海科学研究計画では、中国の深海科学研究技術の水準を高め、深海科学の最前線にいち早く進出をすることで、深海の分野での発言権を増やし、世界に対して中国の有人深海潜水能力を示すだろう。

 

・・・と、例によって「習近平総書記からの1万m到達成功への祝辞での指導で」といった前文付きで中科院深海所は発表している。

蛟竜号の潜水試験の頃から公式発表を見てるけど、以前は中国共産党向けの表現は多くはなくもっと風通しが良かったように思う。🙄

 

中国のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、マリアナ海溝で今年の潜航調査 - pelicanmemo (2021-10-20)

中国、フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、マリアナ海溝での水深1万m超の潜水と着底に成功。 ”双船双潜” - pelicanmemo (2020-11-22)

 

『第四極』読了。 中国の7000m級有人深海潜水艇「蛟竜」号、研究開発・深海挑戦記。(1/2) - pelicanmemo (2017-01-02)
『第四極』読了。 中国の7000m級有人深海潜水艇「蛟竜」号、研究開発・深海挑戦記。(2/2) - pelicanmemo (2017-01-02)

 

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中国とNZの科学調査者、ケルマデック海溝の最深部に到達--人民網日本語版

​中国とNZの科学観測人員、ケルマデック海溝の最深部に到達_中国網_日本語

“奋斗者”号到达克马德克海沟最深点—新闻—科学网

“奋斗者”号勇探万米海沟,中国-新西兰联合深渊深潜科考航次第一航段任务顺利完成 - IT之家

New Zealand biologist describes journey to ocean's deepest region as "incredible"-Xinhua

New Zealand scientist films weird and wonderful creatures at deepest depths of the Kermadec Trench in Pacific Ocean

 

Dr Kareen Schnabel | NIWA

深潜技术研究室----深海科学与工程研究所

 

Ex-US navy commander Victor Vescovo reaches bottom of ocean trenches to set exploration record | Triton Submarines

Ex-US navy commander Victor Vescovo reaches bottom of ocean trenches to set exploration record | World | The Times (December 15 2021)

 

ケルマデック海溝 - Wikipedia

Kermadec Trench - Wikipedia