中国で、2018年8月にアジアではじめて発生が確認されたアフリカ豚熱(ASF(African Swine Fever)、旧称:アフリカ豚コレラ)。
1年足らずで中国のすべての省・自治区・直轄市へと拡大したが、中国政府当局や省政府の厳しい”対応”の”成果”として、少なくとも農業農村部から公式発表されるASF発生件数は大きく減って、アフリカ豚熱(ASF)ウイルスの感染拡大は抑制されていると発表されている。
しかしその”副作用”として、養豚企業は大規模な生産調整を行い飼育頭数と豚肉供給量の激減を引き起こした。養豚場・農家ではASFが発生しても当局に対するごまかしが常套化するとともに、正式に許認可されたASFワクチンは未だ存在しないにも関わらず”違法ワクチン”が広く使用されている。
あいかわらず日本メディアはまったくと言っていいほど報じていないことだけど、外国メディア日本語版の記事で断片的に伝えられているものだ。
近頃、この違法ワクチンの使用が原因とされるアフリカ豚熱(ASF)の変異株の発生と感染拡大が起こっている。さらに”タチが悪く”変異したウイルスが発生するかもしれないと危惧されている。
報道などの時系列では、まず外国メディアのロイターが”違法ワクチン”の使用による変異株の発生と流行の報道があった。その変異株の感染拡大を防ぐため、飼育豚(雌豚)の大量殺処分を報じたことが発端だろう。
これに対して中国当局は、変異株について「ウイルスの変異はよくあること」と過剰に怖がる必要は無いとそれっぽい科学的な説明をしつつも、”違法ワクチン”の対策を強化することとなった。
中国当局はこれまでも違法ワクチン対策を発表していた。しかしその実態は野放しあるいは大きな抜け道がある状態だったと聞く。大きく減った飼育頭数を戻して豚肉生産量を増やすことが至上命令だったからだろう。それが「違法ワクチン+変異株」へと発展をし、被害が拡大しはじめたため対策を強化したと考えられる。
アフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ) - pelicanmemo
新型コロナウイルスのパンデミックは、中国でのアフリカ豚熱(ASF)の流行が発端か - pelicanmemo (2021-03-23)
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(微博より)2019年に出回っていた偽ワクチン。
日本語でニュースになった記事では、米国の中文メディアの新唐人(法輪功系メディア)がまとまっていて分かりやすい。(煽り記事が多くて個人的にはあまり好まないが。メディアの報道姿勢は分かるけど…)
2018年に起きたアフリカ豚熱(ASF)の大流行によって、中国の養豚業界は深刻な痛手を被りました。新たに発生した変異種は現在のウイルスよりも感染力が強く、防疫がさらに困難になるほか、豚肉価格の高騰も招いています。
英国のフィナンシャル・タイムズは3月17日、中国のアフリカ豚熱の感染拡大を抑え込むことができなくなっており、市場は変異ウイルスの発生を非常に懸念しているため、豚の先物価格と子豚の価格が高騰していると報じました。専門家は、新たな変異ウイルスは現在のウイルスよりも感染力が高いと指摘しています。
中国でアフリカ豚熱変異種が発生 | ASF | 感染 | ワクチン | NTDTV Japan (2021年3月19日)
【アフリカ豚熱】 病死豚の隠蔽と地下流通 | 通報に褒賞金、ブラックリスト 【アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2020-05-26)
ロイターが今年(2021年)1月22日に、アフリカ豚熱(ASF)の不認可の違法ワクチンの使用と、変異株による別の疾患について報じた。中国の新興ネットメディアも含めて、アフリカ豚熱(ASF)の違法ワクチンと変異株と新たな疾患について報じられたのはこれがはじめてだったと思う。
ロイターの報道によると、ASFワクチンの研究開発で、ASFウイルスのMGF360遺伝子を削除すると免疫が出来ることが分かっていたが、後に変異して有害な状態となる傾向があるためワクチン許認可には到らなかった。しかし、致死率が低くなる効果が出るということで不法に製造されて”違法ワクチン”として広く流通していた。しかし変異株が発生し、致死率は低いけれども別の致命的な疾患を発症するウイルスが流行していしまった。
ASFウイルス感染での致死率は低くても、雌豚に感染した場合は子豚の出産と健康に致命的な影響が起きてしまう。皮肉なことに、養豚業者は旧来のアフリカ豚熱(ASF)ウイルス感染豚と同じように、感染した可能性のある群れをまとめて殺処分せざるをえなくなったそうだ。
New China swine fever strains point to unlicensed vaccines | Reuters (JANUARY 22, 2021)
アフリカ豚熱(ASF、旧称:アフリカ豚コレラ)、
— ぺりかんめも (@pelicanmemo) 2021年1月22日
中国では、未承認の試験ワクチンが違法に広く使われたことで、致死性は低いが健康な子豚の出産率を減らす改変ASFウイルスの感染拡大が起きている。
New China swine fever strains point to unlicensed vaccines https://t.co/ePUz4UGmFp
2021-01-22
ロイターの報道からわずか1ヶ月で、中国のこの分野で最も最先端かつ権威ある(と思う)ハルビン獣医学研究所から”自然”変異株についての発表があった。さらにその10日後には、農業農村部から非認可の違法ワクチンについて生産や販売等を厳しく取り締まる発表がされた。
発表の時期があまりに近過ぎる。
外国メディアの報道があったので「広く検査をしてみたら見つかった」にしては当局の発表と対策が早い。
もしも本当に気付いていなかったとすると、指導部はまとめて処分されるだろう。
ハルビン獣医学研究所の発表は、ロイターの報道とは別の遺伝子欠損の変異株についての発表であり、ロイターが報道した変異株については触れていない。あくまでもアフリカ豚熱(ASF)ウイルスの低致死性の変異株の発表で、中国の国外でも別の”自然の”変異株があることを発表している。
ウイルスの変異は珍しいことではない。
しかしタイトルも含めて「”自然の”変異流行株(自然变异流行株)」と強調しているところから、暗に、人工の違法ワクチンが原因の変異流行株があることを示唆しているようだ。
新华社哈尔滨2月26日电(记者闫睿)记者26日从中国农业科学院哈尔滨兽医研究所国家非洲猪瘟专业实验室了解到,2020年,该实验室在开展非洲猪瘟流行病学监测及病原学研究中发现,我国部分省区出现了低致死率的非洲猪瘟基因II型自然变异流行株。
中国農業農村省は8日、アフリカ豚熱(ASF)の違法なワクチン生産・販売の取り締まりを強化する方針を示した。
同省は2019年から違法ワクチンに対する警戒を呼び掛けているが、問題が深刻化していることが浮き彫りとなった。
同省は「偽のASFワクチンの潜在的なリスクを予防し、豚肉生産全般の回復と安定した産業の発展を維持するため」一段と厳しい措置が必要だと表明した。
アフリカ豚熱の違法ワクチン、中国が取り締まり強化へ | Reuters (MARCH 8, 2021)
农业农村部办公厅关于进一步严厉打击非洲猪瘟假疫苗有关违法行为的通知 (2021年03月08日)
今回とは別件だが、アフリカ豚コレラの違法ワクチンの摘発はときどき報道されている。
【アフリカ豚熱】 中国、重慶市で、偽ワクチンの製造販売グループを摘発 【アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2020-05-26)
中国当局がアフリカ豚熱(ASF)の流行抑制に苦慮するなか、豚肉の先物相場と養豚場が仕入れる子豚の価格が高騰している。ウイルスの変異や違法ワクチンの広がりを受けて、世界最大の豚肉市場である中国で供給不安が高まっているためだ。
[FT]中国で豚肉価格高騰、伝染症拡大で供給不安 :日本経済新聞 (2021/3/18)
New China swine fever strains point to unlicensed vaccines | Reuters (JANUARY 22, 2021)
China to crack down harder on fake African swine fever vaccines | Reuters (MARCH 8, 2021)
アフリカ豚熱の違法ワクチン、中国が取り締まり強化へ | Reuters (MARCH 8, 2021)
[FT]中国で豚肉価格高騰、伝染症拡大で供給不安 :日本経済新聞 (2021/3/18)
China Advances Development of Vaccine Against Pig-Killing Virus - Bloomberg (2020年8月18日)
中国でアフリカ豚熱変異種が発生 | ASF | 感染 | ワクチン | NTDTV Japan (2021年3月19日)