pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

中国の「九段線」、10本目の線は、日本の領海・領空を侵して描かれている。【十段線】(追記あり)

20230903111221産経ニュースより)

8月28日、中国の自然資源部は「2023年版標準地図」を発表した。中国は主に南シナ海にいわゆる「九段線」と呼ばれる独自の境界線(10本の点線)を設定し、その内側を中国の主権が及ぶ範囲として権益を一方的に主張し活動しているため、周辺国との軋轢が続いている。

今年発表された「2023年版標準地図」は、これまでの標準地図の「九段線」の10本の線の位置を踏襲しつつ、国境(国界)線を曖昧な線ではなく国境が確定している線としてはっきり描いている。

「九段線」というと南シナ海の話とイメージされがちだが、この「九段線」の10本目の線は日本の領海・領空を侵して描かれていることは意外と知られていない。

中国が公式に発表した「2023年版標準地図」に対して31日、フィリピン、マレーシア、ベトナムや台湾が抗議する声明を発表した。日本政府も領土の主権を守るために抗議をしなければならない問題だ。

中国の新地図にアジア一斉反発 領有権主張「十段線」に拡大 - 産経ニュース

 

(追記9/5:中国のこの標準地図上で与那国島の位置や大きさに間違いが無いことを、国土地理院の地図と重ね合わせて確認しました。ブログ記事の少し後に検証画像をのせました。)

 

中国が発表した「2023年版標準地図」から台湾と周辺地域を抜き出して、当ブログ管理人が島の名前などを追記した。

20230903111330

 

さらに台湾から八重山列島(与那国島、西表島、石垣島、等)の地域を拡大したもの。

与那国島は東西12km、南北4kmの島なので分かりやすいでしょう。「九段線」の10本目の国境(国界)線は、日本の領海(約22km(12海里))の内側に描かれています。

20230903111327

(当ブログ管理人が描いた赤い点線は厳密なものではなく若干のズレはあります)

 

 

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--(追記:9/5)--------------------
日本の国土地理院の地図と、中国の自然資源部が発表した「2023年版標準地図」とを重ね合わせてみた。
まずありえない事だと思うけど、中国の地図上で与那国島の位置や大きさが間違っている可能性を検討するため、念のために作ってみた。

与那国島、西表島、石垣島と台湾本島の描画はまったく一致した。

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(国土地理院地図には鉄道の黒線も描かれています(例:台北〜花蓮〜)。海岸線のわずかのズレは、当ブログ管理人のへたくそな編集のせいです(苦笑))

地理院地図 / GSI Maps|国土地理院

标准地图服务系统(標準地図サービスシステム)
同「2023年版標準地図(1000分の1)
--(追記ここまで)------------------

 

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「2023年版標準地図」で国界(国境)を示す線は、日本の地図の”都府県界”のような「線」と「点」を組み合わせたものが使われた。陸上の国境線と海上の「九段線」のどちらもで使用されている。中国が国境線が確定したとする国境線には「線」と「線」の間に「点」が有り、「線」と「線」の間に「点」が無いところでは国境線が「未定(未確定)」という意味になる。

20230903111236

「九段線」の10本の線で示された海域では、それぞれ「線」と「点」が2つずつ使われている。つまり、日本の領海・領空の内側に、中国は一方的に国境線を引いたわけだ。

日本にとって、この中国の標準地図は明らかに日本の主権を侵害しており、領土、領海・領空について定めた国際法に違反しているとはっきり主張できる事案だ。特に今年(2023年)の標準地図は、文字通り一線を越えている。日本政府はアジア諸国と連携をして、この中国の一方的な主張を非難して対抗してほしいものだ。

「九段線」は南シナ海だけのニュースではないし、他人事な問題ではない。

 

 

ところで、こういった国境線の主張をするときには中国に限らず、双方の領土(基線)から等距離に中間線を引いたり、強硬に主張するなら相手国の領海・領空ぎりぎりの線を攻めてくると思うんだけど・・・、
この中国の「九段線」の10本目は、日本と台湾との中間(与那国島と台湾本島との中間)ではないし、なぜか、中途半端に日本の領海・領空を侵すように国境(国界)の線を描いている。

20230903111327

 

もしかしたら、はじめて台湾の東に「九段線」の10本目が描かれた2013年に、地図製作者が与那国島の存在を見落としていて、西表島と台湾本島の中間あたりにざっくりと10本目を描いてしまったのではないだろうか?

地図上で計ってみたら、台湾本島と西表島との中間の線はほぼ「九段線」の10本目と一致しますね(笑)

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中共中央としては「九段線」に”間違いがあった”とは政治的に認められないから、引っ込みがつかなくて地図の微調整すら出来ないんだろうなぁ(苦笑)

 

 

中国の標準地図ではじめて「九段線」に台湾の東に10本目が追加されたのは約10年前。

今回の日本語ニュースでは、今年から「九段線」に10本目の点線が、台湾を囲うように描かれた、と読めるような書き方がされている。このため、勘違いした書き込みがあったりX(ツイッター)などでそれは間違いで何年も前からあるという指摘を見かける。

数年ごとに繰り返されているはなしなので、次回またニュースで「新たに10本目が・・・」と報じていたらツッコミを入れてあげてください。

「九段線」から「十段線」へ 沖縄、与那国島沖に10本目 - pelicanmemo (2016-11-30)

中国当局の認可によって2014年6月に新たに発行された中国の“公式地図”。「九段線」は台湾東岸に破線が1本加わり、何と知らぬ間に「十段線」へと進化を遂げていた=2014年6月27日、中国・湖南省長沙市(AP)

(archive.org) | 静かに「九段線」を論破 中国は猛反発 (1/4ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)(2014.12.16付記事)

 

 

中国の新地図にアジア一斉反発 領有権主張「十段線」に拡大 - 産経ニュース

中国の最新領土・領海地図、アジア4カ国・地域が一斉に抗議 | ロイター

Philippines, Taiwan, Malaysia reject China's latest South China Sea map | Reuters

領土拡張の強欲ぶりが露わに、中国が台湾も囲った最新版「標準地図」を発表 失地回復意識に憑りつかれた本性をむき出し、次は絶対に沖縄を狙ってくる(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)

 

「九段線」の10本の線の場所はずっと、大きくは変わっていない。

一応、確認をしてみよう。

たとえば、昨年の「2022年版標準地図」では、「線」と「点」では無く1本の線で描かれていて、「九段線」の10本目は与那国島のすぐ西に描かれている。

20230903111303

 

南シナ海仲裁裁判の最終判決が出た2016年版の標準地図と2023年版を重ね合わせて比較してみたところ、「九段線」の10本の線の位置はほとんど変わりがない。(やっつけ仕事で、分かりにくいと思います。すみません)

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「2016年版標準地図」に描かれた「九段線」の10本の線はこちら。

20230903111248

 

 

2023年版标准地图正式发布 - 自然资源部

规范使用地图 :2023年版标准地图正式发布 - 自然资源部

标准地图服务系统

标准地图服务系统 > 中国全图 (こちらから絞り込み検索をしてダウンロードができます)

「2023年版標準地図」

20230903111240

“2023 年版标准地图”正式上线 - IT之家

中国新版地图惹众怒,南中国海众邻国、台湾及印度纷纷抗议 (2023年8月31日)

中国新版地图引国际反弹 北京要求各国“客观”看待