(GoogleMap:尖閣諸島・魚釣島と北西約80km)
中国が東シナ海で、日本の排他的経済水域(EEZ)に設置した海洋ブイが話題になっている。
9月に海洋ブイが設置されていたことが公表されてから約2ヶ月。日本国内の政治も絡んできて、なかには変なコメントも見かける。
「尖閣諸島の魚釣島から北西約80km」「日中中間線の日本側」で「日本の排他的経済水域(EEZ)」という発表をもとにして「尖閣周辺」という表現が多く使われているので、もしかしたら尖閣諸島の領海や接続水域と勘違いしてしまう人もいるのではないだろうか?
「日中中間線」についてニュースや記事で使われる地図は、どちらが主張する線もざっくりとしたイラストが多くて少しわかりにくい。漁業協定のような緯度経度を使って規定されたものではないためだ。
そこで遅ればせながら、海上保安庁が公表している地図ともとにして、尖閣諸島と領海や接続水域との位置関係を示した具体的なブイの設置海域の地図を作ってみた。
日中中間線は、海上保安庁が毎年発表している海上保安レポート(海上保安白書)の2013年版のものを使用した(尖閣諸島の北側の海域であった違法操業の取締りの解説図なので、逮捕位置などが記されれている。薄消しした)。
海上保安レポート 2013 | 1 治安の確保 > CHAPTER3 外国漁船による違法操業等への対策
中国の海洋ブイの位置は、日中中間線から日本側に約500m入った海域(読売新聞)。ブイを設置したとされる大型海洋ブイ作業船「向陽紅22」は日中中間線から日本側に1km程度入った北緯26度4分、東経122度44分の位置で停止していた(産経ニュース)。
領海は基線から12海里(約22.2km)、接続水域は24海里(約44.4km)。
中国はグレイゾーンでの国際法のバグをつくのが上手い。
排他的経済水域(EEZ)なので国際法的に手をつけにくい事案だけど、これは日本も国内法を整備するなどして何とかうまく対応しないといけない問題。しかし下手な対応をすると、逆に、日本が国際法に反した行動をしていると言われかねない。
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産経新聞がMarineTrafficのAIS情報をもとに、大型海洋ブイ作業船「向陽紅22(向阳红22)」の航行情報をもとに割り出した海域とも合っている。
(ちなみに、この産経新聞の記事の航行情報の動画では、尖閣諸島の領海線は記されていない。(出典: MarineTraffic(マリントラフィック), 欧州宇宙機関, フランダース海洋研究所)))
ブイ設置の中国海洋調査船、航路・船速明らかに 「尖閣支配の既成事実化」企図か - 産経ニュース (2023/9/24)
AISを搭載した船舶の運航情報などを提供するマリントラフィックのサイトを基を産経新聞が分析したところ、中国の海洋調査船「向陽紅22」は7月1日午前11時ごろ、寧波市の沖合を出航。時速約7ノット(約13キロ)という遅い速度で航行。2日午後5時ごろ、日中中間線から日本側に1キロ程度入った北緯26度4分、東経122度44分の位置でほぼ停止した。
(国家海洋局(2018年に発表)より、同型か?)
中国が設置した海洋ブイには「中国海洋観測浮標QF212」と書かれており、海底に重りを下ろして固定しているとみられる。読売新聞の記事では、欧州宇宙機関が公開している地球観測衛星「センチネル2」の画像を調べて、直径10m程度の海洋ブイとみられる物体が確認できると伝えている。
2018年に発表された海洋ブイと同じタイプの可能性が高いだろう。
中国の海洋調査ブイに書かれている「中国海洋観測浮標QF212」は、中国語の「中国海洋観測ブイ」とアルファベットの「QF」は「気象ブイ(Qìxiàng Fúbiāo)」の略だろう。「QF2xx」は東シナ海で、黄海に設置される海洋ブイは「QF1xx」、南シナ海や北部湾(トンキン湾)に設置される海洋ブイには「QF3xx」の数字が割り振られている。
ただし、軍民融合を是としている中共中国なので、科学的利用だけに限定される気象観測ブイや観測データではないだろうし、観測データの軍事利用(航行安全情報だけでなく)や、軍事部門のセンサーが一緒に設置されていたとしても不思議ではないだろう。
尖閣諸島近くのEEZ内に、中国が新たに海洋調査ブイ | 10m型海洋気象ブイと大型海洋ブイ作業船「向陽紅22」 - pelicanmemo (2023-09-19)
中国、国家海洋局の 10m型 海洋ブイとは | 3000トン級 海洋ブイ作業船「向陽紅22」進水 - pelicanmemo (2018-10-07)
尖閣諸島近くのEEZ内、中国が新たに海洋調査ブイ…潮流データを海警船が活用か : 読売新聞 (2023/09/18)
政府関係者によると、海上保安庁の巡視船が7月11日、日中のEEZの境界にあたる日中中間線から日本側に約500メートル入った海域で黄色いブイを確認した。現場は同諸島・魚釣島から北西に約80キロの海域で、ブイには「中国海洋観測浮標QF212」と書かれていた。海底に重りを下ろして固定しているとみられる。
ブイ設置の中国海洋調査船、航路・船速明らかに 「尖閣支配の既成事実化」企図か - 産経ニュース (2023/9/24)
尖閣周辺の中国のブイ、岸田首相「日中各レベルで協議」 立民・泉代表の批判に - 産経ニュース (2023/11/21)
尖閣諸島の位置・面積等 | 情報ライブラリ | 笹川平和財団| 島嶼資料センター- THE SASAKAWA PEACE FOUNDATION
海上保安レポート(2013年)のオリジナルの地図はこちら。
海上保安レポート 2013 | 1 治安の確保 > CHAPTER3 外国漁船による違法操業等への対策
実は、魚釣島から北西約80kmを示したGoogleMapと重ね合わせた地図も作ってて、最初はそれを使うつもりだったんだけど・・・、一夜明けて酔いからさめて見てみると、載せなくてもいい情報多すぎだったので簡略版を作って差し替えたのでした(苦笑)
北西からやや西よりで、魚釣島から80km弱の海域。