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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【中国海警局】 尖閣諸島の領海侵入の公式発表に変化か? 日本の漁船に接近

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ツイッターのアカウント @pelicanmemo は凍結中。

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11月25日、沖縄県の尖閣諸島の領海に中国海警局の船4隻が侵入した。

実際には、南小島の沖で2隻、大正島の沖で2隻だった。そのうち南小島の沖合で領海侵入をした2隻は日本の漁船に接近し追尾をした。海上保安庁が漁船の周囲に巡視船を配備して安全を確保するとともに、中国海警局の船に対して領海から出るよう警告した。

今回、領海侵入をした4隻のうち1隻が76ミリ砲を搭載する「海警2204」だったので、メディアが注目するのはそればかりになっている。

しかし、ほかの大きな懸念が中国海警局の対応にみられた。

 

中国海警局は、所属する船が尖閣諸島の領海に入ったときに公式の微博(ウェイボー)などで発表をしている。実は、これまで日本漁船を追跡して領海に入った場合には発表は無かった。今回はじめて日本漁船を追跡した「海警2502」が領海に入ったことについて発表をした。

具体的なことは書いていないが、中国海警局の船が法執行活動を行ったことを”連想”させる意図があるのかもしれない。

(当ブログ管理人は、尖閣沖で領海侵入の事案が報道されたらいつも中国海警局の公式微博をチェックし、更新の有無を確認してツイッターで記録してきました。(アカウント凍結中(記事公開時点)のため埋め込み表示は出来ない。スナップショット画像など詳しくは後述(*1))

 

今回の発表は「中国海警2502艦艇編隊」。

八重山日報の11月26日付け記事によると、「海警2502」と「海警2301」の2隻が南小島の沖で領海に侵入し、仲間均石垣市議らを乗せた漁船「鶴丸」へ近づこうとする動きをみせた。

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2022年11月25日,中国海警2502舰艇编队在...  - 中国海警 - 微博

午前2時半ごろに侵入したのは「海警2301」「海警2502」の2隻で、南小島の南東約22㌔を航行していた日本漁船1隻に近づこうとする動きを見せた。
 漁船には3人が乗船。海保の巡視船が中国艦船を日本漁船に近づけないよう警戒し、漁業者の安全を確保した。
 漁船は24日夕、仲間均石垣市議らを乗せ石垣島を出港した「鶴丸」と見られる。

中国船、漁船追い侵入 最大級の機関砲搭載も 尖閣周辺 | 八重山日報 (2022-11-26)

(追記 11/28:

漁船追尾と別行動で侵入 最大級機関砲の中国船 尖閣周辺(八重山日報) - Yahoo!ニュース (2022-11-27))

 

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20221126130743(海上保安庁・第11管区海上保安本部|【公式】「能勢伸之の週刊安全保障」 @nose_anpo ツイートより)

2022年11月25日の、中国海警局に所属する船舶による尖閣諸島の領海侵入と日本漁船への接近と追尾の事案について、時系列で簡単にまとめておこう。(時刻はすべて日本時間)

 

まず前日の11月24日、午後6時ころから、石垣港で仲間均石垣市議らが乗る漁船「鶴丸」の、尖閣諸島の沖で操業を行うための出港準備。仲間均石垣市議がツイッターで、海上保安庁職員による検査の様子をツイートしている。

 

11月25日、

  • 午前2時40分すぎ、南小島の南で「海警2502」と「海警2301」の2隻(第1グループ)が領海侵入。日本の漁船1隻に近付こうとする動きをみせた。日本漁船は仲間均石垣市議らを乗せた「鶴丸」。
  • 午前6時ころ、当ブログ管理人が中国海警局の公式微博をチェックしたところ更新は無かった(その時の最新記事(11月23日付)は広東省であった大量のタバコ密輸事件だった)
  • 午前10時すぎ、大正島の沖で「海警2102」と「海警2204」(76mm機関砲を搭載)の2隻(第2グループ)が領海侵入。
  • 午前10時30分、中国海警局の公式微博が更新され、「中国海警2502艦艇編隊」が尖閣諸島の領海を航行したと公式に発表される。
  • 午前11時55分ころ、「海警2102」と「海警2204」(76mm機関砲を搭載)の2隻(第2グループ)が領海の外側に出る。領海内を約2時間航行した。
  • 午後1時40分ころ、「海警2502」と「海警2301」の2隻(第1グループ)が領海の外側に出る。領海内にいたのは約11時間で、日本の漁船「鶴丸」に近づこうとする動きを見せた。海上保安庁の巡視船が中国艦船を日本漁船に近づけないよう警戒し、漁業者の安全を確保した。

日本メディアは尖閣沖で確認された中国海警局の船の船名・番号をまったくと言っていいほど報じないので混乱が生じていた。夕方までには、中国海警局の船4隻すべてが領海を出たと報道された。

中国船2隻 領海出る 尖閣周辺で全4隻退去 - 産経ニュース (2022/11/25 16:15) ほか

 

ざっくり書くとこんな感じ。

 

今回の中国海警局の公式微博での発表には2つの可能性が考えられる。

1つめは、中国側が一段踏み込んだ対応をしてきた、というもの。76ミリ砲を搭載する船を送り込んだことに続いて、日本の漁船に領海内で接近した船について公式の発表をした。
ただし公式発表の中で日本漁船を「追い払った」というような具体的なことは書いていない。”サラミ・スライス戦術”で一枚薄く切り取ってきた。

 

2つめは、11月25日に「海警2502」など中国海警局の船4隻が領海に入ることは前から予定されていたので、用意していた原稿を予定していた時間に公開しただけだった可能性だ。

公式微博の発表の文面はこれまでの発表とまったく同じで、年月日と船名・番号を変えただけ。いつも通り。

2022年11月25日,中国海警2502舰艇编队在我钓鱼岛领海内巡航。 ​​​

ふつうは4隻船隊のうち最も大きい船が発表で使われる。5000㌧級「海警2502」は今回の4隻のうち最大の船なのでおかしなところはない。

投稿時間は午前10時30分(日本時間)。これまでの”領海侵入”事案とその発表とほとんど変わらない。この「海警2102」と「海警2204」(76mm機関砲を搭載)の2隻(第2グループ)が領海内を航行した時間も約2時間で変わらなかった。

たまたま、領海に入ることを予定していた日に仲間均石垣市議らを乗せた漁船「鶴丸」が尖閣沖で操業をすることが分かった。そこで「海警2502」と「海警2301」の2隻(第1グループ)を差し向けたけれど、発表では用意していたテキストを使い予定していた時間に行った。こういうことかもしれない。

 

今後も似た発表が続くようなら、中国側が対応を一段階強めてきたと分かるだろう。

 

「海警2502」「海警2301」「海警2102」「海警2204」の4隻のうち、どの2隻を漁船にあてるか?

「海警2502」と「海警2301」の2隻だったのはきわめて順当だった。いきなり76mm機関砲を搭載する「海警2204」を日本漁船に接近させるのは、尖閣沖の緊張を高め過ぎる。一方「海警2102」は前の船名・番号が「海警2146」でその前は「海監46」、古い1000㌧級海洋監視船なので他船を差し置いてこれを使うというのは、逆に対応を弱めたと見られかねない。

 

11月17日にタイで、岸田文雄総理大臣と習近平国家主席が3年ぶりに対面で首脳会談を行った。11月22日には第14回・日中高級事務レベル海洋協議がオンラインで開催された。

そのどちらでも日本側は尖閣諸島の周辺海域での問題をとりあげているが、中国側の対応はこれまで通りの一方的な主張を繰り返すだけで進展はなかったようだ。

 

【中国海警局】 718B型「海警2204」初確認、76ミリ砲(H/PJ-26型76mm単管速射砲)を装備 - pelicanmemo

中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

 

 

(*1) 今回(2022年11月25日)のツイート

11月25日の午前6時頃に中国海警局の公式微博をチェックして、更新が無い事を確認した。いつものように「中国海警 微博 更新なし」とツイートをした。

 

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昼前に別の2隻が領海侵入した報道を知り、午前12時頃に中国海警局の公式微博をチェックして、更新されていたことを確認した。微博のリンクと一緒にツイート。

余談だが、中国海警局の発表ではこの後に「我钓鱼岛领海内巡航(我が釣魚島(尖閣諸島の中国語名)の領海内を巡航)」と続くので、ツイートで紹介する時はその前までしか引用しないようにしている。

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微博の記事のタイムスタンプは11月25日10時30分(日本時間)。約2時間後にスクリーンショットを取得した。

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記録のため、日本メディアの記事をいくつか引用し転載しておく。

中国船2隻 領海出る 尖閣周辺で全4隻退去 - 産経ニュース (2022/11/25 16:15)

尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に25日午前から侵入していた中国海警局の船2隻が、午後1時10分ごろから相次いで領海外側の接続水域に出た。同日領海内に侵入した4隻全てが領海を退去した。

第11管区海上保安本部(那覇)によると、中国船2隻は同日午前2時35分ごろから相次いで領海に侵入。日本漁船1隻の動きに合わせて航行していた。海保が日本漁船の周囲に巡視船を配備し、領海から出るよう警告していた。

 

尖閣沖 中国海警局の船4隻が一時領海侵入 1隻は76ミリ砲搭載か | NHK (2022年11月25日 15時15分)

25日午前、沖縄県の尖閣諸島の沖合で、従来より大型の76ミリ砲を搭載しているとみられる中国海警局の船が日本の領海に侵入したのが初めて確認されました。その後、領海から出ましたが、すぐ外側にある接続水域を航行していて、海上保安本部が警戒を続けています。

第11管区海上保安本部によりますと、25日午前2時40分すぎと午前10時すぎに中国海警局の船、合わせて4隻が尖閣諸島沖の日本の領海に相次いで侵入したのが確認されました。

関係者によりますと、このうち午前10時すぎに領海侵入した1隻にはこれまでで最も大きな76ミリ砲が搭載されているとみられるということです。

この砲を搭載した船は今月15日以降、尖閣諸島沖の接続水域を航行しているのが確認されていて、今回初めて領海に侵入したのが確認されたということです。

この船を含む4隻はいずれも午後1時すぎまでに領海から出ましたが、午後1時半現在、領海のすぐ外側にある接続水域を航行していて、海上保安本部が警戒を続けています。

海上保安本部は中国海警局の船舶の大型化や武装化についても注視していて万全な体制で対応にあたるとしています。

 

尖閣周辺に一時中国船4隻 過去最大“76ミリ砲搭載”船が初の侵入も - 日テレNEWS

尖閣周辺に一時中国船4隻 過去最大“76ミリ砲搭載”船が初の侵入も(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース

「海警2204」は2時間ほど領海にとどまり、正午ごろに退去したものの現在は接続水域内を航行しているため、日本の領海に侵入しないよう海上保安庁は、警告を行うとともに監視と警戒にあたっています。

また、この船とは別に日本の漁船が航行していた尖閣諸島・南小島の南でも午前2時半ごろから中国海警局の船2隻が領海に侵入していましたが午後1時すぎに退去しました。

 

中国船、漁船追い侵入 最大級の機関砲搭載も 尖閣周辺 | 八重山日報 (2022-11-26)

第十一管区海上保安本部によると、25日午前2時半ごろから午前10時ごろにかけ、石垣市の尖閣諸島周辺で中国海警局の艦船4隻が相次いで領海侵入した。このうち1隻は、尖閣周辺で過去最大の76㍉機関砲を搭載していると見られる「海警2204」で、今回が初の領海侵入となった。尖閣周辺で中国艦船が領海侵入するのは今年に入って32日目、26件目。
 午前2時半ごろに侵入したのは「海警2301」「海警2502」の2隻で、南小島の南東約22㌔を航行していた日本漁船1隻に近づこうとする動きを見せた。
 漁船には3人が乗船。海保の巡視船が中国艦船を日本漁船に近づけないよう警戒し、漁業者の安全を確保した。
 漁船は24日夕、仲間均石垣市議らを乗せ石垣島を出港した「鶴丸」と見られる。
 午前10時ごろには「海警2102」「海警2204」も大正島周辺の領海に侵入した。4隻は午後1時過ぎまでに領海を出た。午後3時現在「海警2102」「海警2204」が領海外側の接続水域にとどまっている。尖閣周辺で中国艦船が航行するのは23日連続。

 

漁船追尾と別行動で侵入 最大級機関砲の中国船 尖閣周辺(八重山日報) - Yahoo!ニュース (2022-11-27))

第十一管区海上保安本部によると「海警2301」「海警2502」は午前2時半ごろ、南小島周辺で領海に侵入した。仲間氏が乗船した「鶴丸」を追尾する目的と見られる。
 一方、2隻と共に尖閣周辺を航行していた「海警2204」「海警2102」が領海に侵入したのは午前10時ごろで、場所は大正島周辺。鶴丸からは遠く離れ、この2隻は仲間氏も視認できなかったという。
 海保は鶴丸以外の日本漁船航行を発表しておらず、仲間氏も「他に漁船はいなかった」と説明する。「海警2204」「海警2102」の領海侵入は、漁船追尾以外の目的だった可能性が高い。

 

 

 

中国船2隻が尖閣周辺領海に侵入「外交ルートで厳重に抗議」松野官房長官会見11月25日(全文)(Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE)

中国船が日本領海に侵入。政府の見解は
司会:お願いいたします。

松野:冒頭発言はございません。

NHK:NHKの古垣です。尖閣周辺での中国船の動向について伺います。従来より大型の76ミリ砲搭載とみられる船が初めて日本領海に侵入しました。把握状況と政府見解、対応を伺います。また、海保の保有武器は最大40ミリ砲とのことですが、体制強化などを検討するかお聞きします。

松野:本日午前10時0分ごろから午前10時6分ごろにかけて、中国海警局に所属する船舶2隻が順次、尖閣諸島周辺のわが国領海に侵入し、そのうち1隻が砲らしきものを搭載しているとの報告を受けています。なお、ご指摘の砲の詳細につきましては、わがほうの情報収集能力が明らかになる恐れがあることから回答は差し控えさせていただきます。その後、これら2隻は同日午前11時53分ごろから午後0時0分ごろまでに、いずれも領海から退去したと承知をしております。

 現場海域においては海上保安庁の巡視船が、中国海警局に所属するこれらの船舶に対し、領海からの退去要求や進路規制を繰り返し実施し、領海外へ退去させるとともに、日本漁船に近づかせないように巡視船を日本漁船の周囲に配備し、漁船の安全を確保したところであります。中国海警局に所属する船舶のこのような活動はそもそも国際法違反であり、本事案について、外交ルートにおいて厳重に抗議し、速やかにわが国領海から退去するよう強く求めたところであります。中国海警局に所属する船舶による接続水域内の航行や領海侵入等の活動が相次いでることは極めて深刻に考えています。引き続き緊張感を持って尖閣諸島周辺の警戒監視に万全を尽くすとともに、中国側に対しては冷静かつ毅然と対応していく考えであります。

 また、海上保安庁では中国海警局に所属する船舶への対応について、常に相手勢力を上回る巡視船で対応するなど、万全の領海警備態勢を確保しています。いずれにしても、引き続き大型巡視船の整備など、中国海警局に所属する船舶の大型化、武装化に対してもしっかりと対応できるよう、海上保安能力のいっそうの強化に努めてまいります。

中国海警局の領海侵入、76ミリ砲搭載か? 松野官房長官の説明は [岸田政権]:朝日新聞デジタル

【速報】76ミリ砲搭載とみられる領海侵入の中国船 松野官房長官「尖閣周辺の領海から退去」約2時間航行 | TBS NEWS DIG