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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【中国海警局】 尖閣沖の日本の領海での、海上保安庁の巡視船に対する法執行活動をはじめて発表

20231018055318

中国海警局の 甘羽報道官は10月17日、日本の漁船「鶴丸」と海上保安庁の数隻の巡視船が10月16日に尖閣諸島の日本の領海に「違法に侵入」したとして「中国海警局が必要な取締り(管控措置)と合わせて警告と駆逐(警告驱离)を行った」という主張を公式に発表した。

中国が、日本の領海内で海上保安庁の巡視船に対する法執行活動の実施を発表したのははじめて。

さらに日本側に対して「当該海域での一切の違法活動を即時停止し、類似事件が発生しないよう確実に保障することを求める」といった定型の、一方的で勝手な主張も述べている。

中国海警局新闻发言人甘羽表示,10月16日,日“鹤丸”号船只和数艘巡视船非法进入我钓鱼岛领海,中国海警舰艇依法对其采取必要管控措施并警告驱离钓鱼岛及其附属岛屿是中国固有领土,中国海警舰艇依法在本国管辖海域开展海上维权执法活动。我们敦促日方立即停止在该海域的一切违法活动,确保不再发生类似事件。

中国海警依法驱离日非法进入我钓鱼岛领海船只 - 维权执法 - 中国海警局 (2023-10-17 13:13:00)

いまのところ、この中国側の公式発表に対して、海上保安庁や日本政府からのコメントや公式発表は見当たらない(記事投稿時点)。

ロイターの報道では、英文記事は香港発だからだろう、中国側の発表と主張を特に取り上げている。日本語版は香港/東京発の記事だから、英文記事の内容と表現を踏襲しつつ両論併記としている。日本語のネットポータル・サイトのニュース記事も、ロイターの記事の配信ばかりだし。

それにしても…(嘆息)、相変わらず、海上保安庁からの尖閣諸島関係の情報発信は壊滅的にひどい。まずこれをどうにかしないと。

中国海警局と日本の海保、互いの船を退去と発表 尖閣領海「侵入」 | ロイター (2023-10-17)

China, Japan say their ships faced off near disputed islands | Reuters (2023-10-17)

 

 

今回の発表は、日中高級事務レベル海洋協議(第16回)が10月13日に中国の江蘇省揚州市で行われた直後のことだ。

今回(第16回)は、中国側はこれまでよりもずっと強く自らの一方的な主張を行っていた。

ALPS処理水の海洋放出に対する中国側の非科学的な発表(IAEA(国際原子力機関)からの公式発表にも関わらず)と、その後の意固地な対応とも構図が似ていて、ことさらに強硬に自らの立場を主張するばかりな上にその傾向は強くなっている。中国共産党の党内や国内政治が大きく影響しているだろう。中国の外交が機能不全を起こしている。

へんなとこで対立が強まっていると、日中高級事務レベル海洋協議の他の項目では日中双方が「一致」「合意」をしていてもさらに進展はさせにくいだろう。

日中高級事務レベル海洋協議、第16回会議 福島第一原発 ALPS処理水の海洋放出の後、はじめて開催 - pelicanmemo (2023-10-14)

中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

 

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中国海警局は、今年(2023年)になってから立て続けに尖閣諸島沖での日本の船舶に対する法執行活動を発表してきた。

2月には石垣市の海洋調査活動を行った作業船「新世丸」(997㌧・乗員34人)に対する法執行活動を発表。3月には日本のヨットに対して、7月には与那国町漁協所属の漁船「瑞宝丸」(9.7㌧)を名指しして法執行活動を発表した。

【中国海警局】 尖閣沖の日本の領海での法執行活動を公式発表 日本漁船を名指し - pelicanmemo (2023-07-17)

 【中国海警局】 石垣市、尖閣諸島で海洋調査 | 中国海警局は日本船に対する領海での法執行をはじめて公式発表 - pelicanmemo (2023-02-02)

 

今回、名指しされた「鶴丸」(9.1㌧)は八重山漁協に所属し、石垣市の仲間均市議が船長をつとめている。仲間均石垣市議が管理するホームページ「尖閣諸島の歴史と現状」によると、10月16日午前5時すぎに石垣島の登野城漁港を出港し、同日昼に尖閣諸島魚釣島の西方海上で操業を行った。アカマチの入れ食い状態で、はじめて12kg以上の大型アカマチを釣り上げるなど大漁だった。

海上保安庁の巡視船が日本漁船に近づかないよう警戒し、漁船の安全を確保していたこともあり、漁船「鶴丸」は中国海警局に所属する艦船に追尾されたが威嚇されずに漁労をして17日午後7時前に無事登野城漁港に帰港したそうだ。

今回も仲間均市議から中国海警局の艦船の写真が公表されていないので、漁船「鶴丸」に近づいておらず大した写真は撮れなかったのかもしれない。

鶴丸出港しました - 尖閣諸島の歴史と現状 (2023年10月16日)

大漁 - 尖閣諸島の歴史と現状 (2023年10月17日)

 

 

石垣市はふるさと納税の返礼品として「尖閣アカマチ」の提供を行っている(現在は注文は締め切られている)。10月15日までの寄付件数は85件、寄付金額の合計256万円で、アカマチ146.5kg分の注文が入った。石垣市は今後、八重山漁協に出漁を依頼し、尖閣諸島の周辺海域へ出漁するそうだ。

漁船「鶴丸」の9月23日〜24日の操業では、漁獲100kgあまりの大漁だった久しぶりの大漁。アカマチだけの漁獲ではないだろうし、ふるさと納税の返礼品はうろこと内臓をとった下処理済みで一尾まるまるなので、アカマチ146.5kg分だったら大漁2〜3回ではなかろうか😋

冬になると海が荒れて尖閣周辺への出漁が困難になるので、八重山漁協は「鶴丸」の他に1〜数隻を出漁させるのだろう。複数回の出漁にして期間があいてしまうと「返礼品が届いた/届いていない」と不公平感を与えてしまいかねないし。

注文356万円、近く出漁 尖閣アカマチ、寄付締め切り | 八重山日報 (2023/10/17)

 

 

これまでにも、2012年から「尖閣ブランド」としてアカマチの東京への出荷や、「尖閣マグロ」などの商標登録が行われてきた。これらに対して中国側から抗議など公式に対応があったとは報じられていない。近ごろの中国は強硬な対応を拡大しているので、今回はなにか対抗措置を仕掛けてくる可能性はありそうだ。

いまのところ中国海警局や外交部の報道官が「類似事件が発生しないよう求める」くらいだけれども、八重山漁協の漁船の出漁に合わせて尖閣沖へ出張派遣させる中国海警局の艦船の数を一時的に増やしたり、中国側も尖閣諸島の周辺海域での漁業活動をさらに強める(法的規制を緩めたり、中国漁船の監督管理のコントロールをわざと緩める)かもしれない。

石垣市へのご寄附について/石垣市

石垣市尖閣諸島デジタル資料館/石垣市

 

 

10月16日から17日にかけて漁船「鶴丸」を追尾した中国海警局の艦船は「海警1302」と「海警2102」。16日正午頃、尖閣諸島周辺の領海に侵入、操業中の漁船「鶴丸」の動きに合わせて領海内を約24時間50分航行、17日午後1時前に領海から退去し、午後2時前には接続水域からも出域した。石垣島への帰路についた漁船「鶴丸」を追尾していっただろう。

接続水域には機関砲を搭載した「海警2202」が航行していた。

「海警1302」は前の船名は海警2308、いわゆる海監型3000㌧級海警船で、海保11管の発表によると今のところ機関砲は搭載していない。「海警2102」は古い1000㌧級のもと海警2146(もと海監46)。「海警2202」はもと海警31240、機関砲を搭載する。

 

--(追記:)------------------

 

「領海侵入」と漁船名指し 中国発表に仲間氏「虚偽」 尖閣周辺 | 八重山日報 (2023-10-20)

八重山漁協所属の漁船「鶴丸」が16、17の両日、石垣市の尖閣諸島周辺に出漁したことを巡り、中国海警局は中国国内の短文投稿サイト・微博(ウェイボー)で鶴丸を名指しし、巡視船と共に「中国領海に侵入した」と発表した。鶴丸に対し必要な措置を講じ、退去するよう警告したとしている。鶴丸に乗船した石垣市議の仲間均氏は19日、八重山日報の取材に応じ「中国は、うそを根拠に尖閣を乗っ取ろうとしている」と反論した。
 中国海警局は7月にも、尖閣海域に出漁した別の漁船を名指しし「中国領海に侵入した」と発表した。漁船名を明らかにすることで、尖閣周辺に出漁しようとする漁業者の委縮を狙っていると見られる。
 鶴丸には仲間氏、竹富町議の山下義雄氏ら3人が乗船。石垣島を出港し、16日午後1時ごろ、尖閣諸島の南小島周辺に到着した。尖閣周辺で常駐している中国海警局の艦船2隻は領海に侵入して鶴丸を追ったが、大きく距離を取ったままで、近づく素振りを見せなかったという。
 仲間氏らはアカマチなど約150㌔を水揚げ。船上で一泊し、17日午後、石垣島に戻った。中国海警局の艦船は魚釣島と石垣島の中間地点まで鶴丸を追尾した。
 仲間氏は「海警は我々を遠巻きに見ていただけ。尖閣周辺から追い払ったかのような発表はうそだ。南シナ海とは違い、尖閣周辺ではまだ日本の力が強く、漁船に手出しできないのではないか」と推測した。

 

 

 

--(追記ここまで)------------------

 

 

中国船2隻が領海侵入 尖閣周辺、日本漁船追う | 八重山日報 (2023/10/17)

中国船2隻が領海から退去 接続水域に74日連続 | 八重山日報 (2023/10/18)

中国海警局と日本の海保、互いの船を退去と発表 尖閣領海「侵入」 | ロイター (2023-10-17)

China, Japan say their ships faced off near disputed islands | Reuters (2023-10-17)

鶴丸出港しました - 尖閣諸島の歴史と現状 (2023年10月16日)

大漁 - 尖閣諸島の歴史と現状 (2023年10月17日)

注文356万円、近く出漁 尖閣アカマチ、寄付締め切り | 八重山日報 (2023/10/17)

石垣市へのご寄附について/石垣市

石垣市尖閣諸島デジタル資料館/石垣市

 

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