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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【中国海警局】 第24回北太平洋海上保安フォーラム専門家会合、東京で開催 めずらしく中国海警が公式発表

20240313195643

中国海警局 微博より)

3月4日〜8日、第24回北太平洋海上保安フォーラムの専門家会合が東京で開催された。中国海警局が公式SNSで伝えた。

長官級会合や、中国で開催されている会合や訓練では公式発表を行ったり新華社など中国メディアが報じることもあったけれども、実務者による専門家会合への参加をわざわざ発表するのはめずらしい。

どういう心境の変化だろう?  🤔

海保はまた発表していないのに 🙃

 

今年は日本で、海上保安庁の主催で開催されている。専門家会合はニュー・オータニで行われたようだ。

中国海警局の発表によると、専門家会合には中国海警局、カナダ沿岸警備隊、海上保安庁、韓国海洋警察庁、米国沿岸警備隊(記載順は中国海警局の発表に合わせた)等フォーラム構成メンバーが参加した。ロシア国境警備局は参加しなかったらしい。

本次会议由日本海上保安厅主办,中国海警局和加拿大海岸警备署、日本海上保安厅、韩国海洋警察厅、美国海岸警卫队等论坛成员参会,中方牵头打击非法贩运工作组。

今回、中国海警局は違法な密輸や人身売買の撲滅に関する作業部会を主導している。これは今回初めてではないし、とくに目新しいことでもない。

 

南シナ海でのフィリピン沿岸警備隊へのハラスメントや傭船の貨物船艇への高圧放水銃を使った攻撃は国際的に非難をされ、台湾の大陸近くに位置する離島の金門島沖で起きた中国の小型高速漁船の転覆・死亡事故もあり、中国海警局や地方組織の強硬な発言と対応がエスカレートしていかないか懸念されている。

これに対し中国海警局は多国間の海洋協力で貢献していることを、全人代が開催されている間に内外へアピールしたい意図があったのかもしれない

 

 

北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF (North Pacific Coast Guard Forum))は、北太平洋における海上の安全・セキュリティの確保、海洋環境の保全等を目的とした各国間の連携・協力について、北太平洋地域に位置する主要6カ国(米国、カナダ、日本、韓国、中国、ロシア)の海上保安機関の長が一堂に会する多国間の枠組み。2000年に東京において第1回会合を開催した後、毎年開催国を代えながら長官級会合(9月頃)及び専門家会合(3月頃)を開催している。

北太平洋海上保安フォーラム - 海上保安庁

【中国海警局】北太平洋海上保安フォーラム、多国間多目的訓練(2023年)を浙江省寧波で開催 - pelicanmemo (2023-08-20)

【中国海警局】北太平洋公海漁業パトロール、2023年度は日付変更線まで - pelicanmemo (2023-09-17)

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中国、フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、潜水作業回数が累計230回、「蛟竜」「深海勇士」と合わせて1100回超

20240310203051交汇点/新华报业网 より)

中国の全国人民代表大会(全人代)と合わせて開催された中国人民政治協商会議(全国政協)で3月4日、会議場の外で行われる集団記者会見「委員通道」が実施され、全国政協委員(江蘇省)で中船(中国船舶重工股份有限公司)第702研究所副所長の葉聡(叶聪)が中国の有人深海潜水艇の実績と最新の成果などを発表した。

葉聡(叶聪)は、1万メートル級・フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者(奋斗者)」号の総設計師で、7000m級有人深海潜水艇「蛟竜(蛟龙)」号の主任設計士とテストパイロットを勤めていた。1979年11月生、43才と若い。

彼のチームメンバーの平均年齢は34才で、何人かは95后(1995年生まれ)と言い、若い科学人材の育成は自分の職務での重大な関心事の一つだと述べた。

中国の3隻の潜水船、潜水作業回数は累計1100回超--人民網日本語版(2024年03月05日) 

叶聪委员亮相2024全国两会首场“委员通道”:培养更多青年科学家担重担、挑大梁 - 人民网 (2024/3/5)

20240310203047交汇点/新华报业网 より)

フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号「奋斗者」中国語読み Fendouzhe、英語名はStriver)は、2020年に海試が行われ同年11月にはマリアナ海溝チャレンジャー海淵で中国初の水深1万909メートルの有人潜水記録を成功させた。それから2023年までの4年間に累計230回の潜水が行われた。そのうち水深1万メートル超は25回、潜水士と科学者ら32人が潜ったそうだ。

 

水深1万メートル以上の、世界でもっとも深い海の底に到達した人類は宇宙に行った人数よりも少ない。

2018年まではわずか3人(*1)、2019年からCaladan Oceanic社のDSV「リミティング・ファクター(Limiting Factor)」では20人以上が潜水している。さらに「奮闘者」号によって世界最多の人数が超深海の水深1万メートルへ送り込まれている(国際共同研究で外国籍の科学者が搭乗したケースもある)

「蛟竜」号と4500m級「深海勇士」号と合わせて潜水作業の回数は累計1100回以上、この3年間は、世界の有人深海潜水の半分以上を中国が行っている。日本語ではほとんど話題にならないが、これらは意識しておいた方がよいところだ。
(*1)1960年1月の「トリエステ (Trieste)」で2人、2012年3月「ディープシー・チャレンジャー (Deepsea Challenger)」で1人。

List of people who descended to Challenger Deep - Wikipedia

 

 中国、フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、マリアナ海溝での水深1万m超の潜水と着底に成功。 ”双船双潜” - pelicanmemo (2020-11-22)

中国、1万m級・フルデプス有人深海潜水艇、「奮闘者」号と命名 - pelicanmemo (2020-06-21)

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中国、7000m級有人深海潜水艇「蛟竜」号 南大西洋中央海嶺の熱水噴出域で調査

20240213201923新华网より)

中国の7000m級有人深海潜水艇「蛟竜」号と科学調査支援母船「深海一号」は、1月下旬から南大西洋(注:南太平洋ではない)の深海熱水噴出域での海洋生物・環境調査を行っている。

中国大洋事務管理局(中国大洋事务管理局)(*1)によると、2月7日までに「蛟竜」号は8回の潜水調査を行った。今次の海洋調査(中国大洋83航次)では46回の潜水調査が予定されている。(*1) 中国大洋鉱産資源研究発展協会(中国大洋矿产资源研究开发协会, China Ocean Mineral Resources R & D Association (COMRA))

中国大洋83航次预计“蛟龙号”下潜46潜次-新华网 (2024-02-10)

 

あまり日本語では知られていないが、中国は西南インド洋海嶺(SWIR)や南大西洋中央海嶺(SMAR(South Mid-Atlantic Ridge))で深海熱水噴出域の調査をよく行っている。

大西洋の北半球側の北大西洋中央海嶺(NMAR(North Mid-Atlantic Ridge))では、1970年代から米国やフランス、ロシアなどによる調査が行われてきた。その一方で、南半球側の深海熱水域の調査は多くはなかった。2009年、中国の海洋調査船「大洋一号」による調査航海(中国大洋21航次)で南大西洋中央海嶺(SMAR)で最初の熱水噴出域を発見、その後の調査で11ヶ所(*2)が発見されている。(*2)自然資源部第一海洋研究所による
2017年には「向陽紅01(向阳红01)」がパワーグラブを使って全長2m、直径50cmのチムニーの大きなサンプルなどを引き揚げている。

“向阳红01”船在南大西洋获取海底热液“烟囱体”-新华网 (2017-10-27)

 

中国の有人深海潜水艇「蛟竜」号、沈没の危機だった | 観察窓に、約400℃の熱水があわや直撃 - pelicanmemo (2019-05-19)

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国家海洋局の新しい局長に孫書賢 |もと中央外事工作委員会弁公室副主任

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中国の自然資源部の公式サイトが今年(2024年)1月29日に更新され、中国共産党の中央外事工作委員会弁公室(中央外弁(中央外办))の副主任だった孫書賢(孙书贤)が、自然資源部の党組成員、副部長ならびに国家海洋局の局長となったことが公表された。

部领导 - 自然资源部
自然资源部部长、副部长、纪检组长等领导简历

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「国家海洋局は無くなったんじゃないのか?」という声もあるかもしれない。

 

国家海洋局(SOA(State Oceanic Administration))は国土資源部が管理する国家局だったが、2018年3月の中国共産党と国務院による「深化党和国家机构改革方案(中国共産党と国務院の深化、改革法案)」(以下、"改革法案")によって、自然資源部に統合され廃止された

実際には、自然資源部は対外的に国家海洋局の名称を使用すると定められていた(自然资源部对外保留国家海洋局牌子)。2018年3月当時に国家海洋局局長だった王宏は、自然資源部にうつったあとの肩書きが「自然資源部 党組成員、国家海洋局 局長」だった。

 

それでも、行政組織としての職責、管轄と権限をもつ国家海洋局は消滅し、対外的な名称(ブランド(牌子))として国家海洋局が残されてもじきに使われなくなるものと思っていたんだけど・・・、
王宏は2020年に自然資源部副部長となり、公式の肩書きは昨年(2023年)になっても「自然資源部副部長、国家海洋局局長」(自然资源部副部长、国家海洋局局长王宏)が使われている。

そして今回、孫書賢(孙书贤)が自然資源部の副部長、国家海洋局の局長となったことが公表された。

 

王宏(1963年5月生まれ)が60才の定年を迎えたことによる交代人事だと思うが、海事関係の専門家である孫書賢(孙书贤)が中国共産党の中央外事工作委員会弁公室(中央外弁)へ異動し、5年を経てふたたび国家海洋局で局長に就いたところは興味深い。

国連海洋法条約 (UNCLOS)や、大陸棚限界委員会 (CLCS)の勧告などへの影響、中国の思惑や動きが気になるところだ。

頭の片隅に置いておいて、アンテナを向けていても損にはならないだろう。

 

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デレッキの語源に関する一考察

正月に段ボール箱の整理をしていたら古いCD-Rが発掘され、たわいもないテキスト.txtの中にデレッキの語源について学生時代に調べたメモがあった。

実は小さい頃はテツで、とくに蒸気機関車が好きだった。その後、テツ分は増えていかなかったけれども、運転室で罐焚きに使われる火かき棒「デレッキ」が気になっていて、県立図書館で北海道の図書館等の資料を取り寄せたりインターネット検索(当時)で公式サイトや個人のサイト(当時)などを調べてメモしていたもの。

懐かしく思い、今回改めて調べてみたところ、国立国会図書館などのデジタル・アーカイブの公開資料が増えていて補足できるところもあった。現在(2024年初頭)にインターネットやSNSで調べたものと合わせてまとめてみたい。

20240204212110(Google画像検索より)

 

公文書の資料を参照していますが、画像の使用(WEB掲載など)には申請が必要なため画像転載はあまりありません。

ちょっと長いので😅、長文を読むのが大丈夫で、お時間のあるかた向けです。

 

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「デレッキ」は’北海道方言といわれています。
テレビ番組やネット・SNSで、数年ごとに話題になるよう。近ごろでは、秋田のご当地ヒーロー 超神ネイガー@neiger_akita さんのツイート と返信とで東北地方(東北北部?)では火ばさみ(火鋏、トング、ゴミばさみ)を「デレッキ」と呼ぶと話題になっていました。

 

このブログ記事では「デレッキ」または「デレツキ」とは、特に注釈がない限り、蒸気機関車の罐焚きで使われていた「先の曲がった火かき棒」を示しています。また、石炭ストーブの焚口の扉を開閉したり、燃料の石炭や薪を動かしたり、火格子(ロステル、ロストル)をゆするなど灰や燃え滓を下の灰箱(アクカキ、アク(灰)受け)に落す用途にも使われている。
現在でも、炭や薪を燃料とするストーブや暖炉の道具、火室がある燃焼装置の施設での専門用語として残っています。

先の曲がった火かき棒「デレッキ」の語源には、オランダ語の鈎や引掛棒を示すdregが由来という説、デリック・クレーン(derrick)説,英語の火かき棒the rake説 、お雇い外国人のデリックさん説などを見かけました。
これら諸説についての考察もあとの方で書いてみたい。

 

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長くなるので、まず結論です。

当ブログ管理人の結論は、英語のthe rake説が近い。
19世紀の米国の南部訛り「de rake」が由来。北海道開拓使に雇われ官営幌内鉄道の建設に関わった米国人お雇い外国人が話した言葉がもとで、原語の音をもとにメモられて現場の専門用語として日本語化されたのが由来と思う。

蒸気機関車の運転室で、日本人技術者らに対して、実際の運転方法や登坂や下りなど地形に合わせた操作方法、機関士の給炭の仕方やタイミングなど経験と技術を伝授するときに、米国人お雇い外国人は身振り手振りや口語の英語でしゃべったでしょう。通訳がいても、専門用語を簡略な日本語に訳すのは難しいものです。

先の曲がった火かき棒の使い方を「火かき棒をつかって・・・」と説明するときに、訛った英語で「… use de rake」と話したら、それを日本人技術者・通訳らが音をひろって「”でれいき”をつかって」「”でれき”をつかって」とおぼえたのではないだろうか。

北海道の初期の鉄道建設では、米国の鉄道技師ジョセフ・ユーリー・クロフォード(Crawford, Joseph U.)が有名ですが、「デレッキ」の由来となったお雇い外国人は彼が推薦して開拓使に雇われた鉄道技術者でしょう。機械技師ハロウェイ(Holloway, Henry C.)の可能性があり、むしろ機械技師補助兼運転手マキューン(McCune, William H.)の方が蓋然性が高いと考えています。

 

次に、なぜ「デレッキ」が明治から大正・昭和にかけて、ストーブなどで使われる先の曲がった火かき棒の名称として一般化していったのか?について。

 

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