(海上保安庁・第11管区海上保安本部)(時事ドットコム)
中国海警局の、機関砲4基を装備したとみられる「海警31239」が、日本の尖閣諸島の領海に侵入した。
「海警31239」は、もと中国海軍のミサイル・フリゲート(江衛I型(江卫级I型)、ジャンウェイI型)「539 安慶( 安庆)」艦。主砲の110mmやミサイル発射装置が撤去され、37mm機関砲4基が残されたようだ。
【中国海警局】 2000トン級「海警31239」領海に侵入 機関砲を搭載か 元海軍のフリゲート - pelicanmemo
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12月18日、海上保安庁は、中国海警局と今後の交流や情報交換を進めていくことで合意した、と報道があった。
緊張緩和に向かうかと思われた矢先に、逆に、緊張を一段高めるような武装船の派遣(12月22日に確認)と領海への侵入(12月26日)が行われたこととなる。コケにされたようなものだと思うが、海上保安庁はどう見ているのだろう?
機関砲の存在にばかり注目が集まっているが、この点は無視できないと感じている。
海上保安庁の佐藤雄二長官は17日の定例の記者会見で、「まずは互いを知ることが必要で、さまざまな機会を通じ、 日中間の海上保安機関どうしの協力関係の維持と発展に努めたい」と述べました。
海上保安庁 中国海警局と交流や情報交換へ (12月18日 7時02分|NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151218/k10010344791000.html (リンク切れ)
日中、海洋協議を本格化 中国・アモイで作業部会(12/8|産経ニュース)
まず、国家海洋局/中国海警局の中で組織間に不協和音があるのかも、と考えた。
中国海警局は、国家海洋局に、中国海監総隊(海監)、公安部の辺防海警部隊(辺防海警)、農業部の漁政船隊(漁政)、税関総署の密輸取締部隊(海関)の装備と人員を統合し再編して成立した。公安部の業務指導を受ける。
中国海警局にあるのは司令部と後勤部(後方勤務(兵站)部門)だけだと揶揄されるくらいで、専門の事務組織は無く国家海洋局が代行している。
では、海上保安庁との人的交流や情報交換の合意はどこが行ったのだろう? 尖閣諸島の周辺海域で主に確認されている公船が所属する、中国海監総隊との間ではないだろうか?(もちろん単独ではなく、海警司令部や中央海洋権益工作領導小組の指示や同意はあるだろう。)
一方、「海警31239」は、船舶番号から上海市の地方部隊に所属し、その出自から公安部辺防海警に配備された法執行船だと思われる。乗組員も、中国海軍から公安部に出向、あるいは移籍しているのかもしれない。
公安部が、主導権の所在を確認させるために「海警31239」送り込んだのだろうか?
海警局内で組織間闘争が行われていれば面白いのだが・・・、
むしろ、片手(海監)で握手をし、片手(辺防海警)でこぶしを振り上げてくる中国海警局と見る方が、いかにも中国らしくしっくりとくるように感じる。
たらいまわしにされなければいいのだが・・・
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あるいは、単に、スケジュール通りに行われているのかもしれない。
2012年9月11日に、日本政府により尖閣諸島の3島(魚釣島、北小島、南小島)が国有化された。
2012年12月、中国海監の海洋監視船が頻繁に航行する中、中国海監のプロペラ機"B-3837"(Y-12Ⅳ型)が尖閣諸島の日本の領空を侵犯した。
2013年、海監の海洋監視船や漁政の漁業監視船による航行が継続的に行われた。中国海警局が正式に発足。
2014年、中国の公船による航行が常態化している。
2015年、新造の3000トン級以上の大型海警船(非武装)が続々とオンステージし、すでに、尖閣諸島の周辺海域で確認される中国公船の大部分を占めている。
2015年には、76mm機関砲を装備する万トン級「海警2901」「海警3901」、30mm機関砲を装備する漁政型3000トン級などが試験航海を行い、正式配備された船もある。
新船溜达_骑鲸蹈海(飞扬军事 中国军迷原创第一站 -)
2016年、スケジュール通りに「海警2901」が尖閣諸島の周辺海域に派遣されるなら、その前に、日本政府と日本の世論の、武装船の領海への侵入に対する反応を見る尖兵として、もと海軍フリゲートの「海警31239」が派遣されたのではないだろうか?
徐々にエスカレートさせていき、茹でカエルのように、情況の悪化に徐々に慣らされている。
日本のメディアと世論は、熱しやすく冷めやすい。
今回の、機関砲で武装した「海警31239」の領海侵入に対して、機関砲の存在ばかりが取り上げられているように感じる。無害通航と見做して良いのかという点は、ろくに議論はされていないようだ。
これが町内の話だったら不審者情報の事案として、「刃物を持った外国人が・・・」と通報され大騒ぎになっているだろうに・・・
中国海警局の公船による、尖閣諸島の周辺海域の航行が常態化し、ニュースとしての話題性が低くなり報道される事が減った。その間に海警船は大型化し、気がついたら3000トン級以上の大型船ばかりが闊歩している。
気がついたら、機関砲を積んだ武装船が、日本の領海を闊歩しているのではないだろうか。
- 作者: 佐藤正久
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