韓国の北西部、北朝鮮と接する京畿道の北部や仁川広域市の一部地域で、養豚場での発生が続くアフリカ豚コレラ(African Swine Fever(ASF))。
京畿道北部のDMZ（非武装地域）に続いて、江原道鉄原郡と京畿道漣川郡で、野生のイノシシからASFウイルスが検出された。
10月13日までに５頭でASF陽性が確認された（DMZは国連管轄なので、公的には4頭）。
【アフリカ豚コレラ】 韓国で、野生のイノシシ２頭で陽性 江原道鉄原郡と京畿道漣川郡【地図】（追記あり) - pelicanmemo(2019-10-12)
農林畜産食品部・環境部・国防部は13日、関係省庁合同で、野生のイノシシを介してアフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスを拡散させないため、発生地域を中心に４つのエリアに分けて管理を強化することを発表した。
9月17日に韓国ではじめてのASF発生が発表されてから約１ヶ月。
野生のイノシシへの対策は発生以前から求められ続けていたので、後手後手に回っている感が強い。
韓国メディアでは「後の祭り対策（뒷북 대책）」（Google翻訳による直訳）、対策が後手に回ったという批判を多く目にするようになった。
４つの管理エリアは、感染危険区域、発生・緩衝地域、警戒地域、遮断地域（ブロック地域）。
野生のイノシシ対策であって、ASF発生した養豚場と自治体、周辺の自治体で行われているSOP（緊急行動指針）に基づいた防疫対策や、飼育豚の早期出荷、予防的な殺処分とは別の、あらたな対策となる。（地図にASF発生した養豚場は記入されていない）
(공동-참고)야생멧돼지 아프리카돼지열병 발생에 따른 긴급대책 추진 - 환경부（（共同-参考）イノシシ、アフリカ豚コレラ発生に伴う緊急対策の推進 - 環境部）(2019-10-13)
【アフリカ豚コレラ】 韓国、京畿道の非武装中立地帯(DMZ)で、野生イノシシからウイルス陽性 - pelicanmemo (2019-10-06)
アフリカ豚コレラ カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
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感染危険区域（감염위험지역）は、野生イノシシでASF陽性が発見された地域が指定された（現在(10/13)は、江原道鉄原郡の１ヶ所と京畿道漣川郡の２ヶ所）。
5㎢内を感染地域、30㎢内を危険地域、300㎢内を集中狩猟地域、に区分する。
感染地域では、川や道路などに鉄柵を設置してイノシシの移動を遮断する。
危険地域では、箱罠（10個）とくくり罠（120個）を設置。銃を使わないのは、銃声でイノシシが他の地域へ逃げないようにするためだろう。
集中狩猟地域では、銃を使用した駆除をすぐに実施する。
（追記 10/23： 感染地域（5㎢）には鉄条網（電気柵・高さ90cm）を設置、危険地域（30㎢）には遮断網（高さ1.5m）を設置。）
イノシシの1日の移動距離は40kmにもなると言われている。
新たな、野生イノシシでのアフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスが確認されたら、拡大していくのだろう。
アフリカ豚コレラ(ASF)の野生イノシシでの発生と、ウイルスの封じ込めの成功例というと、近年ではチェコとベルギーの対策がよく知られている。それをもとに考えるなら、森林や河岸への一般人の立ち入り禁止や産業活動の規制が明記されていないのは、防疫上の"穴"となり得る。
DMZ内探訪ツアーの中止や、国境近くの山への登山自粛要請はあるが、民統線での民間人の活動は規制されていても一部住人に認められている。 軍の兵隊や車両の消毒は、DMZに出入りするゲートでは行われていても、民統線では行われていないようだ。
特に、北朝鮮からの川を流れてきた、ASFウイルスに汚染されたイノシシなど野生動物の死骸や糞尿や土壌が、韓国での発生原因とも推測されている。高リスクの臨津江と支流や、他地域の北朝鮮に源泉がある川では、漁業や河岸での釣り・採集などの活動を制限すべきだろう。
【アフリカ豚コレラ】 ベルギー南部、規制・監視ゾーンを設定 森林の管理とウイルス拡大の防止へ - pelicanmemo (2018-10-20)
発生・緩衝地域および警戒地域は自治体単位となる。
野生動物への対策での、ヒトの都合で作った地理区分で対策するのは、韓国に限らず毎度どうかと思っているが、これは行政的に仕方ない。
発生・緩衝地域（발생·완충지역）は、養豚施設の豚と野生のイノシシでASFが発生した５つの地域（発生地域（발생지역））と、隣接する５つの市・郡（緩衝地域（완충지역））が指定された。
仁川広域市は、ASF発生した島とそうでない地域で分かれている。地図によると、ソウル特別市と合わせて微妙な色に塗り分けられている。発生・緩衝地域になるはずだが、微妙な位置づけのようだ。警戒地域（경계지역）に指定されている。
発生・緩衝地域と警戒地域の境界2kmと、警戒地域と南側の地域との境界2kmとを、遮断地域（차단지역）に指定した。野生のイノシシを全面的に排除する。
環境部は国防部と協力して、民間の漁師と軍の狙撃要員による、民統線（民間人出入統制区域）一帯のイノシシの、一定の条件下での射殺駆除作戦の実行も検討中だそうだ。
イノシシ捕獲褒賞金（1頭あたり10万ウォン（約9200円））を、行政安全部と協力して推進する。
次に、国境地域でのイノシシの調査と防疫も強化する。
国防部は、民統線からDMZ（非武装地域）一帯の調査を強化。DMZゲート７６ヶ所に高圧噴霧器・トンネル式消毒施設などを設置し、兵士など人や車両の消毒を徹底する。
山林庁は熱赤外線センサーを装備したドローンを使用して、民統線地域でのイノシシを調査する。
養豚場でも、アフリカ豚コレラの発生を防ぐための対策を強化する。
江原道では、DMZと民統線の間の南方限界線から10km以内の、希望する養豚場で飼育している豚を買い取る対応を検討している。
京畿道と江原道では、養豚農家の周辺のフェンスを集中点検し、不具合は補修。農家に野生動物忌避剤を緊急配布する。
こうやって公式発表を列挙していると、十分に対策をしているように見えるが・・・、
韓国メディアの記事で「後の祭り対策（뒷북 대책）」（Google翻訳による直訳）、対策が後手に回ったという批判を多く目にするようになった。
韓国のアフリカ豚コレラ(ASF)対策は、農林畜産食料部と、環境部と、国防部とが、協力して行っているようでも、噛み合っていないように感じられる。ここに行政安全部や税関、各自治体、養豚業界、等々が絡んでくる。
ASF対策のコントロール・タワーが無く、十分に機能していない。
イ・ナギョン首相は十分な対策を求めているが、中央災難安全対策本部は未だに設置されていない。
ムン・ジェイン大統領は、いまのところ、主管する行政組織それぞれにまかせたままだ。
野生のイノシシへの調査や対策は環境部が主管するが、前のブログ記事でもふれたように、人員不足が指摘されている。こういう時は組織防衛として、ずさんな調査結果を大きく見せることで、私たちは充分な仕事を行ってきていると主張してしまいかねない。（環境部の発表はそう感じられた）
国防部も、「DMZのフェンスが破られることは絶対に無い」というのが、国防部の主張での絶対防衛線のようだ。
韓国政府、文在寅政権は、なにかと北朝鮮の顔色を伺った対応が多い。
今年(2019年)５月に北朝鮮で、アフリカ豚コレラ(ASF)の発生が「公式に」発表された後の、韓国での対策は充分に行っていたとは感じられなかった。
京畿道の養豚場ではじめてASF発生した後も、養豚場と周辺の消毒と、周辺の半径3kmの養豚場の豚の予防的な殺処分ばかりが強調されていて、野生イノシシの調査と対策は圧倒的に足りなかった。
北からのASF感染イノシシの南下はあり得ないという国防部の主張や、環境部の調査結果が影響したのだろう。
感染症の予防をがんばっているように聞こえても、実際には、防疫当局や専門家はよく解っているけれども動けない状況に陥っているようにも感じられる。
あらたなイノシシ対策が発表された。
お手並み拝見というところだろう。
(공동-참고)야생멧돼지 아프리카돼지열병 발생에 따른 긴급대책 추진 - 환경부（（共同-参考）イノシシ、アフリカ豚コレラ発生に伴う緊急対策の推進 - 環境部）(2019-10-13)
정부, 돼지열병 긴급대책…서울 이북서 멧돼지 집중 포획（朝鮮日報）
[그래픽] 철원·연천 일부 지역, 돼지열병 감염위험지역으로 지정 | 연합뉴스（聯合ニュース）
환경부 - (참고)경기도 연천군 및 강원도 철원군 민통선 내 야생멧돼지에서 아프리카돼지열병 바이러스 검출（環境部）(2019-10-12)（京畿道と江原道でイノシシ死体２頭からASF陽性）
환경부 - (참고)강원도 철원 민통선 내 멧돼지 폐사체에서 아프리카돼지열병 바이러스 검출（環境部）(2019-10-13)（江原道のイノシシ２頭からASF陽性）
【アフリカ豚コレラ】 韓国ではじめて発生 京畿道坡州市 北朝鮮との軍事境界線近く （追記 10/12） - pelicanmemo (2019-09-17)
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