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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【中国海警局】 4000トン級「海警6401」、8年半ぶりに確認。2012年以来。

20210605131245(5月15日(第11管区海上保安本部提供)(ビューポイント(6/5)より)(追記修正6/5:6401の船の画像が報道されたので差し替えました)

5月29日、沖縄県の尖閣諸島の領海に中国海警局の船2隻が侵入し、付近で操業していた日本漁船3隻に接近する動きを見せた。すこし遅れて接続水域を航行していた別の2隻も領海侵入した。海上保安庁第11管区海上保安本部が発表した。

八重山日報の5月30日付け記事によると、領海侵入した4隻は「海警2502」「海警6401」「海警2301」と機関砲を搭載した「海警1305」。

 このうち「海警6401」の船名(舷号)が尖閣沖で確認されたのは初めて。

 

この4000トン級「海警6401」、海上保安庁からの発表や報道では画像が公開されていないが、前の船名・番号は「海警1411」で、その前の船名「海監111」の可能性が高い(*1)

2012年12月に確認されてから、じつに8年半ぶりの確認となる。

当時のニュース記事には「海監50」「海監83」と懐かしい名前の船が並んでいる。

中国船、尖閣諸島の領海に侵入: 日本経済新聞 (2012年12月21日)
21日午前10時20分ごろ、中国の海洋監視船3隻が沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に侵入した。海上保安庁の巡視船が確認、領海から退去するよう警告した。領海侵入は日本政府が尖閣諸島を国有化してから19回目。これを受け政府は同日午前、官邸対策室を設置した。
第11管区海上保安本部(那覇)によると、領海に入ったのは「海監50」「海監83」「海監111」。ほかに漁業監視船「漁政206」が領海外側の接続水域を航行している。

 

中国海警局の4000トン級「海警6401」は、もともとは中国海軍北海艦隊所属の退役した遠洋砕氷艦「海冰723」。全長102m、排水量4420トン。1981年に配備された船齢40年の老船だ。
海上保安庁で例えるなら、砕氷巡視船「PLH-01 そうや」(1978年進水)が尖閣諸島沖に派遣されたようなものだろう。

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37mm機関砲4基を装備していたが、退役して国家海洋局へ移管されるまでにすべて撤去されている。船名(舷号)は「海冰723」(1981年・中国海軍)→「海監111」(2012年・国家海洋局)→「海警1411」(2015年・国家海洋局/中国海警局)→「海警6401」(2019年〜・武警部隊・海警総隊(中国海警局))と変わってきた。(*2)
(中国海軍では、この210型破冰船の後継である272型砕氷船に「海冰723」の船名を継承させている。2015年進水)

 

砕氷船として設計・建造された船で、船首と船尾と喫水線近くの船体には厚い鋼板を使用して補強をしている。海氷の厚さ1.2m以下で航行可能で、ラミング航行の能力もある。そのずんぐりとした丸みのある船体から、いかにも砕氷船❗」という雰囲気が伝わってくる。

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「海警1411」となった後も、厳冬期の海氷が漂う渤海での海洋調査などでの活動が報道されていたけれど、尖閣諸島の周辺海域で確認されたことは無かった。

 

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「海警1411」にヘリ甲板・格納庫は無い。国家海洋局へ移管された8~9年前ですら、4000トン級という大きさと元砕氷船の頑丈さ、自力航行可能日数の長さだけしか特徴が無いと感じられた船だった。

当時、国家海洋局には3000トン級以上の海洋監視船はわずか11隻しか無く、この移管された「海監111(現・海警6401)」が最大だった(2012年末時点)。しかしその後、新たに3000トン級や4000トン級、5000トン級が多数建造・配備されたことで「海監111」はどんどんと影が薄くなっていった。また、海軍から移管された老朽艦は主機や設備の不調や船内の生活環境の悪さで運用に苦労していたと聞く。

 

ところが、8年半ぶりに船齢40年の老船「海警6401」が尖閣諸島沖にあらわれた。

なぜだろう?🤔

 

 

まず、尖閣諸島沖で運用できる3000トン級以上の船が足りなくなった可能性が考えられる。
修理や故障やメンテナンス、南シナ海や台湾海峡・周辺海域への派遣が重なってしまい、船舶のやりくりが難しくなっているのかもしれない。

中国海警局は今年(2021年)1月、5000トン級「海警2501」に76mm機関砲を装備している画像を公開した。海警局の武力増強の誇示と考えられるが、その一方で「海警2501」は尖閣沖で頻繁に運用されていた船であっても、これからは政治的に尖閣沖では使いにくくなったろう。

日本の政府や国会議員に対しては、尖閣諸島沖のグレイゾーン(白色に近いあたりの灰色)事態において、中国側から緊張を高めるような船舶を運用していないと見せるポーズにもなる。もちろろんすぐに甘い見方に転ばない方がいいのは当然のはなしだ。

【中国海警局】4隻で領海侵入 1隻はワンポイント・リリーフ - pelicanmemo (2020-12-13)

【中国海警局】5000トン級「海警2501」、76mm機関砲を新たに装備 - pelicanmemo (2021-01-23)

 台湾、海巡署、最大の国産4000トン級巡視船「嘉義」、配備。 多連装ロケット砲を装備。 - pelicanmemo (2021-05-03)

 

 

次に、海軍所属だった船なので「最後の花道」を作った可能性が考えられる。
もしかしたら、ふたたび武警からも退役させて移管する計画があるのかもしれない。

それとも「海警6401(もと海警1411)」で延命のための修理や大きな改装が行われたのだろうか?
 

 

もしかしたら・・・、🤔

中国海警局司令部が、日本の海上保安庁は砕氷巡視船「PLH-01 そうや」(1978年進水)を尖閣諸島の沖に派遣したという情報をどこかから得たのかもしれない。海上保安庁から、第11管区や第10管区以外の海上保安本部の巡視船の応援の派遣について発表されることはほとんど無い。

そこで対抗措置として、もと海軍の砕氷艦の「海警6401」をあえて派遣したのかもしれない。船齢も同じ40年前後で、カウンターパートとして最適な船だ。🙃

うん、きっとそうだ。そういうことにしよう。😆(なげやり)

 

 

(*1) 今回、ツイッターの”【公式】「能勢伸之の週刊安全保障」”では「海警6401」の画像が公開されなかった。海上保安庁第11管区海上保安本部からマスメディアに対して提供されていないのかもしれない。

海警局に所属する船に4000トン級は多くはない。船名と所属とAIS情報を突き合わせてみたところ、「海警6401」は「もと海警1411(もと海監111)」である可能性が高い。(もちろん、ふたたび移管されたり船名が変わった船がいる可能性はゼロではない)

20210529080402twitterより)

中国海警局に所属する船舶のうち「海警xxxx」の船名(舷号)命名パターンから4000トン級とされる船は8隻。実はあまり多くない。

報道や発表、AIS情報から確認されている現在の船名と、武警・海警総隊(中国海警局)となる前の船名とさらにその前の船名を書いた。

同じ排水量階級(今回は4000トン級)で、もと海軍の船ともと海監の船がバッティングすると、もと海軍軍艦の方の数字が先となるよう命名しているようだ。

4000トン級多目的海上法執行船(NATOコード:ZHAOLAI級)4隻。
「海警6402」(もと海警1401)、「海警1401」(もと海警2401)、「海警5402」(もと海警3401)、「海警5403(?)」(もと海警3402)。(海警5403(もと海警3402)は確認不足だが蓋然性は高い)

もと中国海軍の補助艦(砕氷船や情報収集艦、潜水艦救難艦)で1980年頃までに進水した老朽艦。当時、大型船が足りなかったので海監や漁政などに数隻が移管され、そのまま中国海警局の所属となった。
「海警6401」(もと「海警1411」←「海監111」← 272型砕氷船「海冰723」)、
「海警5401」(もと「海警3469」←「海監169」← 813型情報収集艦「852 啓明星(启明星)」号)、
「????」(もと「海警3411」←「漁政311」← 922-II型潜水艦救難艦「南救503」)(現在の船名は未確認。
「????」(もと「海警3412」←「漁政312」← 補給艦「東油621」)(現在の船名は未確認。

その他に、もと072型大型揚陸艦だった「拖25」や「警医01」などもあるが、船名が「海警xxxx」ではないし情報不足なので割愛した。

 

 

 (*2)
砕氷艦「海冰723」は1981年に配備された。

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1990年前後に電子情報収集艦として改装した時に前2基の機関砲がレドーム2つに載せ替えられた。
2012年に海軍から退役。機関砲など武装を撤去した後に国家海洋局へ移管され、船名は「海監111(海监111)」となった。北海分局第一支隊に所属。
中国海警局が正式発足した後、2015年に「海警1411」に変わる。
2018年3月に中国海警局が、国家海洋局から中央軍事委員会の指揮下にある人民武装警察部隊(武警)隷下とされたことで、中国海警局に所属する艦船の船名規則が整理・統合され「海警6401」となっただろう。渤海から黄海を管轄する北海海区指揮部(北海分局)で、第6支隊(直属第6局)に所属する。(”北海分局の第6支隊(直属第6局)”ではない)

 

【中国海警局】 船名・船舶番号、変更(2019年7月〜)。| 「海警6501」は直属第六局所属の5000トン級。 - pelicanmemo (2019-12-15)

 

“今年海冰情况比常年同期偏轻”--国家海洋局海冰观测随船记-新华网 (2017-01-18)

中国海監、1000トン級以上の海洋監視船は現在32隻。一覧にまとめてみた。: メモノメモ (2013年3月26日)

中国海軍の退役"戦艦"(笑)が海監の海洋監視船に|中国メディア日本語版の記事のワナ: メモノメモ (2012年12月5日) 

海监111钓鱼岛维权 原属海军5000吨级破冰船(图) - 环球网 (2012-12-20)

中国海监111船_百度百科

砕氷船 - Wikipedia

海氷723(中国) 中国海軍が砕氷型情報収集艦と…:世界の砕氷艦船 写真特集:時事ドットコム

最古参巡視船「そうや」の40年とは 先代は南極観測船「宗谷」、なぜ2代目は海保に? | 乗りものニュース (2018.11.22)

中国海警局|尖閣周辺で確認された海警船。(船名の新旧対照まとめ)【NAVERまとめ】 - pelicanmemo (2020-10-04)