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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

ほんとに尖閣諸島の上空で? 中国空軍 J-10戦闘機がカナダ空軍 CP-140哨戒機に5m以内まで異常接近 - 東シナ海 (追記あり)

カナダ・メディアは、東シナ海で、カナダ空軍の哨戒機 CP-140 Auroraに対して、中国海軍のJ-10戦闘機が5mまで接近する「危険かつ非プロフェッショナルな飛行」をしたと動画付きで報じた。カナダのビル・ブレア(Bill Blair)国防大臣は17日に記者団に対して、中国軍機の行動を「危険かつ無謀(dangerous and reckless)」だと述べた。

 

日本語メディアの記事ではその異常接近が起きた空域を、中国側の発表をもとにして「尖閣諸島周辺の上空」や「尖閣上空」と伝えているけれども…、実のところ、中国が発表するナラティブを真に受けすぎではないだろうか?と思うのでこれについて少し。

カナダ軍の偵察機と中国軍の戦闘機が異常接近し、両国の間で非難の応酬となっています。接近があった場所についてカナダメディアは「中国沿岸の国際海域」だと伝えていますが、中国外務省は、みずからが領有権を主張する沖縄県の尖閣諸島周辺の上空だとしています。

中国軍機とカナダ軍機が異常接近 非難の応酬に | NHK

尖閣でカナダ軍機と異常接近 中国「主権侵害」非難:時事ドットコム

中国戦闘機、尖閣上空でカナダ機に異常接近 5メートル以内 - 産経ニュース

 

(追記11/04:軍事ライターの稲葉義泰がカナダ国防省に質問をしたところ「インターセプトが行われたのは諸島(the islands)の近くではなく、国際空域であった」と回答があったそうだ乗りものニュース(11/03)。記事後半で引用をした)

 

まず、防衛省・自衛隊や統合幕僚幹部から、10月14日に中国軍機による尖閣諸島の日本の領空侵犯の事案があったという発表は無い。
報道発表資料 | 統合幕僚監部

次に、中国外交部の発表では、カナダ空軍の CP-140哨戒機が尖閣諸島大正島の領空を飛行した(不法に侵入した)と言っていても、よく使われるフレーズの「警告をした、駆逐した」は無い。 中国外交部は記者会見で、カナダの報道を否定するために体裁を整えて正当化するための枕詞として、カナダ空軍機が尖閣諸島の日本の領空を飛行したことを持ち出して「中国の領空に不法に侵入した、中国の主権を深刻に侵害した、中国の国家安全を脅かした」という主張をしているにすぎないだろう。

毛宁:10月14日,加拿大1架CP-140型机非法侵入中国钓鱼岛附属岛屿赤尾屿领空,严重侵犯中国主权、威胁中国国家安全。(以下はカナダに対する一方的な主張が続くだけなので省略)

2023年10月17日外交部发言人毛宁主持例行记者会_中华人民共和国外交部

 

カナダ空軍の CP-140 Aurora哨戒機に対して中国海軍のJ-10戦闘機が異常接近した事案は、カナダのGlobalNewsとラジオ・カナダの記者団が同乗して取材している時に発生した。

20231018195500Global News - YouTubeより)

カナダ空軍 第1航空師団の司令官イアン・ハドルストン(Iain Huddleston)少将や駐日カナダ大使館の国防武官ロブ・ワット(Rob Watt)海軍大佐も同乗していて、機内で動画インタビューに答えている。取材に対して「我々はずっと国際空域にいる (We're solidly in international airspace,)」とし、CP-140 Aurora哨戒機は8時間の哨戒飛行中に中国軍機から複数回迎撃(intercept)されたが中国沿岸に近いので(given the proximity to the Chinese coast)当然のことだろうと述べている。そして異常接近の事案は、哨戒飛行での最後の遭遇時に起こった。

 

カナダ空軍CP-140 Aurora哨戒機が行っている、国連安保理決議に基づいた北朝鮮籍船舶の「瀬取り」など違法な海上活動に対する空中からの警戒監視活動に、中国軍機は何機か交代してずっと警戒監視を行っていただろう。

おおかた、CP-140 Aurora哨戒機が沖縄本島の在日米軍嘉手納飛行場へと向かうルートを飛行しているときに、中国空軍J-10戦闘機は東シナ海の中でも比較的に尖閣諸島に近い海域(100数十km〜数十km?)までくっついてきていて、中国大陸の基地へ帰投するため離脱をする直前に5メートル(10−20フィート)まで近づいて威嚇してみせたのではないだろうか。

CP-140 Aurora哨戒機はその後、フライトの目印としての尖閣諸島の大正島の日本の領空を通過してから沖縄本島へと向かったのだろう。そして、それをもって中国外交部はカナダ空軍機が「中国の主権を侵害した!」とイキってみせたのかも😆

Chinese fighter jet was "dangerous and reckless" towards Canadian surveillance plane: Blair - YouTube

Chinese fighters engaged in 'unsafe' intercept of Canadian surveillance plane, commander says | CBC News

 

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20231018195456Global News - YouTubeより)

航空自衛隊は東シナ海での中国軍機の動向を監視しているし、CP-140 Aurora哨戒機からの撮影動画には写っていないが航空自衛隊の機体も近くの空域にいたのかもしれない。もしも、中国空軍J-10機が尖閣諸島に近づくそぶりを見せていたら空自機が適切に対処していただろう。

 

カナダ空軍 CP-140 Aurora哨戒機は2018年から、国連安保理決議により禁止されている北朝鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対して行われている警戒監視活動の任務についている。Operation NEONは2023年に終了予定だったが2026年まで延長された。
防衛省・自衛隊から、カナダ空軍 CP-140 Aurora哨戒機が10月上旬から11月上旬の間、国連軍地位協定に基づいて在日米軍嘉手納飛行場を使用して警戒監視活動を行う予定と発表されている。

Operation NEON - Canada.ca

防衛省・自衛隊:わが国における国連安保理決議の実効性の確保のための取組 | 北朝鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対するカナダによる警戒監視活動について (2023-10-06)

日本の防衛省も自衛隊も日本政府も、カナダ空軍のCP-140機の東シナ海上空での飛行は了解している。もちろん尖閣諸島大正島の日本の領空を飛行しても問題は無いだろう。

 

 

カナダ空軍機と中国軍機が異常接近した詳しい時間がわかれば、カナダ空軍のCP-140 Aurora哨戒機がどのあたりを飛行していたかわかるだろう。今のところ、その情報はネットSNSには見当たらなかった。

もし今回の異常接近の事案の対応がさらにこじれていったら、カナダ側はそこが国際空域だった証拠を公開してくると思う。中国による一方的な主権の主張に対しては、透明性の高い情報を国際社会に対して公開することが中国の嘘やフェイクを可視化できて効果的だと徐々に国際的に周知されてきている。

そして、しかし、それに対して中国側はいつものように体面を保とうとして「それは虚偽情報だ」「中国軍の行動は正当なものである」とさらに強く言いだしそうかなあ…

 

 

--(追記:11/04)------------------

軍事ライターの稲葉義泰がカナダ国防省に質問をしたところ「インターセプトが行われたのは諸島(the islands)の近くではなく、国際空域であった」と回答があったそうだ。

果たして、本当にCP-140は尖閣諸島上空を飛行したのでしょうか。筆者(稲葉義泰:軍事ライター)の質問に対して、カナダ国防省は次のように回答しています。

「全般的な任務上の活動は、主に東シナ海および黄海という、日本と韓国周辺の国際海域および国際空域において実施されています。(中略)監視活動の実効性を保護するため、具体的な活動の地理的範囲については明らかにできません。しかし、インターセプトが行われたのは諸島(the islands)の近くではなく、国際空域であったということは明確にお答えできます」

「うちもやられました」中国軍機の挑発飛行は見境なし? 北朝鮮船を監視中のカナダ機も標的 国防省に状況聞いた | 乗りものニュース (2023.11.03)

--(追記ここまで)------------------

 

 

 

 

カナダによる、国連安保理決議により禁止されている北朝鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動では、2021年のクリスマスから2022年6月までに中国軍機によるこの種のインターセプト事案は約60件あり、そのうち20件以上が危険な行動とみなされていると昨年11月末にカナダのGlobalNewsが報じている。

今回が特別に異常な事態というわけではない。

Over the summer, multiple sources in the CAF and the federal government told Global News that Chinese jets were repeatedly “buzzing” a Canadian surveillance plane used in the UN mission.

Sources told Global News in June that there had been approximately 60 of these types of intercepts with Chinese fighter jets since Christmas 2021, over two dozen of which have been deemed dangerous.

Canadian military plane ‘intercepted’ by Chinese jets during latest mission - National | Globalnews.ca (November 30, 2022)

今回、カナダ・メディアがとくに報じたのは、カナダ空軍 CP-140 Auroraの機上にカナダ空軍 第1航空師団の司令官ハドルストン少将やGlobalNewsとラジオ・カナダの記者達が同乗していて、機上でのインタビュー動画や中国空軍 J-10機の異常な接近を動画におさめて報じたところが大きい。

20231018195507

 

それだけだったら日本メディアは取り上げなかったと思う。ところが中国の外交部が定例記者会見でわざわざ「尖閣諸島」をからめて反論をしたことで日本語メディアでも大きく報じられることとなった。ここんとこで中国側には、わざわざ話を大きくしてどうする?余計に反感をもたれるような主張をしてどうしたいんだ?と言いたい。

ほんと、中国の外交は機能不全を起こしている🙁

 

中国外交部の毛寧(毛宁)報道官は、カナダが国連安保理決議の履行を口実にして偵察や挑発を目的にして中国に頻繁に接近している、他国の管轄海域でスパイ活動や偵察活動を行うことを国連安保理決議は認めていない、とも述べた。

だったら中国は、国連安保理決議により禁止されている北朝鮮籍船舶の「瀬取り」への対応をもっとしっかりやって、公に発表をして、常任理事国の責任を果たせばいいのに。

 

中国の国防部の報道官からの発表はいまのところ見当たらない。

 

2023年10月17日外交部发言人毛宁主持例行记者会_中华人民共和国外交部

法新社记者:有加拿大媒体称,中国一架战机昨天以“不安全、不专业”的方式对加拿大一架侦察机实施了拦截。请问中方所掌握的情况是什么样的?双方军机空中相遇事件具体发生在哪里?

毛宁:10月14日,加拿大1架CP-140型机非法侵入中国钓鱼岛附属岛屿赤尾屿领空,严重侵犯中国主权、威胁中国国家安全。针对加方的挑衅行为,中方已向加方提出严正交涉,中国军队在现场采取了必要的处置措施。事实真相就是,加方军机不远万里到中国家门口滋事挑衅,中方依法依规处置。加方应当尊重客观事实,停止散布虚假信息。

近年来,加拿大军机以执行联合国安理会决议为借口,频繁对中国抵近侦察并挑衅。需要强调的是,联合国安理会决议从未授权任何国家以执行决议为由在他国管辖海空域部署军力开展间谍侦察活动。中方坚决反对任何国家以执行决议为名危害中国国家主权和安全。中方敦促加方正视事态严重性,立即停止冒险挑衅行为。

Chinese fighters engaged in 'unsafe' intercept of Canadian surveillance plane, commander says | CBC News

Chinese military jet intercepts Canadian Forces plane in ‘aggressive manner’ - National | Globalnews.ca

Chinese jets make 'reckless' intercept of Canadian flight: Blair | CTV News

Canada accuses China of ‘unprofessional’ interception: video

UPDATE 1-China lodges protest over Canadian plane, says it violated sovereignty | Reuters

中国軍機とカナダ軍機が異常接近 非難の応酬に | NHK

尖閣でカナダ軍機と異常接近 中国「主権侵害」非難:時事ドットコム

中国戦闘機、尖閣上空でカナダ機に異常接近 5メートル以内 - 産経ニュース

中国战机对加拿大侦察机实施拦截?外交部:中方依法依规处置

加拿大炒作“中国战机不安全拦截” 外交部:加机非法侵入我赤尾屿领空!_手机新浪网

 

Operation NEON - Canada.ca

20231018195449(Operation NEONより)

Op NEON - end of air operations: Infographic - Canada.ca (2023-06-03)(注:この後、再延長された)