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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【中国海警局】 ”速報”をはじめて公式発表。 | フィリピンの輸送船・巡視船と接触(衝突)【写真・映像】

20231023205339(フィリピン沿岸警備隊(PCG)(X(Twitter))より。赤色の船が中国側、青色の船がフィリピン側)

フィリピンは10月22日、南シナ海の南沙諸島(英語名:スプラトリー諸島)のセカンド・トーマス礁近くの海域で、同礁に座礁させた艦「シエラ・マードレ」号の乗員への補給任務のためにフィリピン軍がチャーターした輸送船が、中国海警局の船から危険な接近を繰り返された末に衝突されたと発表した。さらにフィリピン沿岸警備隊の巡視船が、中国海上民兵の船と衝突したと発表した。
(注:南シナ海のこの海域はフィリピンでは「西フィリピン海(West Philippine Sea(WPS))」と呼ぶなど、島嶼の名称でもフィリピン語(タガログ語)や中国語などそれぞれ付けられている。ここでは日本語名と英語名を基本として、フィリピンと中国の双方の主張を紹介するときはそれぞれの名称を使用する)

フィリピン側は「危険で無責任だ」と強く非難し、抗議をするとともに、現場海域は自国の排他的経済水域(EEZ)だとして捜査を始めると発表した。これに対して中国側は「責任はフィリピン側にある」「挑発をやめるべき」と主張した。

 

今回、中国海警局は公式サイトの維護権益法執行(维权执法)で初めて「速報」(中国海警快讯)を2度発表した。フィリピン側が仕掛けている報道攻勢と世論戦、OSINTと情報戦に対する対抗策を模索しているようだ。

フィリピンは、沿岸警備隊(PCG)の巡視船に内外の記者・カメラを同乗させ、ドローンを使った空撮やUAVからの上空監視映像も公開して、中国海警局や海上民兵の艦船の行動、プロパガンダやフェイクを執拗に報じている。

これによって誰でも、現場の海で何が起こっていたのか詳しくしって、一方だけのプロパガンダ情報を頼りにするのではなく自ら判断が出来る。

20231023063719中国海警快讯より)

フィリピン政府 南シナ海で軍の船に中国海警局の船衝突と発表 | NHK

南シナ海での船舶衝突 フィリピンと中国互いに抗議 対立深まる | NHK

 

日本語メディアの記事タイトルでは「衝突」という表現が使われているので、激しく「衝突」をした、「体当たり」をしたイメージをもたれるもしれないが実際にはどちらも「接触」と言ったほうが当てはまるぶつかり方だ。

フィリピン軍がチャーターした小型輸送船「ウナイザ・メイ2」の方は、「海警5203」の船首のアンカーと手すりが接触した。フィリピン沿岸警備隊の巡視船「BRP Cabra (MRRV-4409)」の方は中国海上民兵(CMMV)の船と、両船とも漂泊をしているときに船尾と右舷がわずかに接触をした。海流やうねりが影響したのだろう。

 

航行妨害を受けたフィリピンの小型輸送船「ウナイザ・メイ2」は、進路を遮って抑え込もうとした「海警5203」の船首ギリギリをすり抜けた。その時に「海警5203」の船首のアンカーに小型輸送船「ウナイザ・メイ2」の船尾の手すりが接触した。(中国側とフィリピン側の双方からの発表映像より)

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フィリピンはセカンド・トーマス礁(アユンギン礁)での実効支配の拠点とする座礁艦「シエラ・マードレ(BRP Sierra Madre(LS57))」へ、乗員への生活物資運搬のための通常の補給任務(Rotation and Resupply (RORE))を繰り返し行っている。フィリピン軍(AFP)が傭船した小型輸送船は2隻で、フィリピン沿岸警備隊(PCG)の巡視船2隻が警護をしている。これに対して、中国側は中国海警局の船と中国海上民兵(CMMV)の船を多く出して、フィリピン側の補給任務は不法であり認められないとして妨害を続けている。

 

フィリピンはフェルディナンド・マルコス・ Jr. 政権となってから、南シナ海(西フィリピン海)での中国の一方的な領有権の主張と強硬な対応には、一貫して対抗する姿勢を強く示している。とくに、フィリピン沿岸警備隊(PCG)の巡視船へ内外の記者・カメラを同乗させて、海上の現場の状況を頻繁に報道させている。

中国側の公式発表では一部を切り抜いた発表をしたり、報道やネットSNSではまったく違う船の画像を使って誤魔化しているが、フィリピン側の多方面からの透明性の高い映像や写真によって、(少なくとも国際的には)中国のプロパガンダが可視化されている。

もちろんフィリピン政府当局もプロパガンダ情報を発信している。それも自国メディアの映像などによって実際はどういう状況にあったのかが補足されている。

 

 

フィリピン軍(AFP)が傭船した小型輸送船「ウナイザ・メイ2」と、中国海警局の2000㌧級・718B型「海警5203」との衝突(接触)はつぎのように起こった。

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今回、中国海警局の2000㌧級・718B型「海警5203」と中国海上民兵(CMMV)の大型船が、フィリピン軍(AFP)が傭船した小型輸送船「ウナイザ・メイ2(Unaiza May 2 (UM 2))」を挟み込むように航行を妨害していた。小型輸送船「ウナイザ・メイ2」が2隻の間を抜け出そうとしたところ、中国海警局の「海警5203」も増速して押さえ込もうとした。

フィリピン側の空撮から、「海警5203」の航跡と中国海上民兵(CMMV)の船との位置関係で、「海警5203」が増速した様子がよくわかる。

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小型輸送船「ウナイザ・メイ2」は、「海警5203」の前をギリギリで通過することが出来たが「海警5203」船首のアンカーと「ウナイザ・メイ2」の船尾右舷の手すりが「接触」をした。

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中国側、「海警

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ちなみに、中国の環球時報(Global Times)は次のような、今回の衝突(接触)とは関係が無い、別の中国海警局の船(500㌧級)の空撮映像を用いて報じることで事実をねじ曲げて伝えようとしている。

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フィリピン沿岸警備隊の巡視船「BRP Cabra (MRRV-4409)」は中国海上民兵(CMMV)の船「琼三沙渔00003」と、両船とも漂泊をしているときにわずかに接触をした。

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両船とも、数メートルの距離で停止して漂泊していたが、「BRP Cabra (MRRV-4409)」の船尾が徐々に「琼三沙渔00003」の右舷に近づいていった。海流かうねりの影響だろう。

「琼三沙渔00003」は船首にサイドスラスターがあるが動かした様子はない。主推進器も動かしておらず衝突回避のための行動は行っていなかったようだ。

航跡から、軽く接触をした直後に「BRP Cabra (MRRV-4409)」がスクリューを回して前進したことがわかる。「BRP Cabra (MRRV-4409)」にサイドスラスターは無い。

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フィリピン沿岸警備隊「BRP Cabra (MRRV-4409)」の船上では、中国海上民兵(CMMV)「琼三沙渔00003」と接触しそうだったので取材陣がカメラを構えて待ちかまえていた。

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ゴツンと当たったところでフィリピン沿岸警備隊の隊員が防舷材を下ろし、「BRP Cabra (MRRV-4409)」は前進をして「琼三沙渔00003」と距離をとった。

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20231023205343(同型船)

 

フィリピン側の発表は次で、

The second incident happened at approximately 0814H when Philippine Coast Guard (PCG) vessel MRRV 4409 was struck by Chinese Maritime Militia vessel 00003 that was actively engaged in coordinated maneuvers to harass, impede. and obstruct the Philippine vessels. 

中国側の発表は次のようになっている。

8时13分,菲海警4409船蓄意挑事,有预谋主动倒车,尾部与我停车漂泊的琼三沙渔00003船右舷发生擦碰,恶意碰瓷制造事端,升温现场局势。

この接触の事案だけを見ると、発表の仕方はどっちもどっち感が強い。

中国側はフィリピン側の挑発と主張しているが、フィリピンのEEZにある礁で中国側が数にものを言わせて妨害や危険な操船、ハラスメントを続けていなければ起きなかったことは確かだ。

 

端的に書くなら、ギャングの集団がいきなり「ここは昔からオレたちのシマ(テリトリー)だ」と言って庭先に居座っているようなもの。これに対して暴力を使って追い出そうとすると、それに対する世間の目は厳しいし、逆にそれを理由に使われて潰されてしまいかねない。そこで、監視カメラ映像と違法行為の記録、法的措置を続けている。

 

20231023205339(フィリピン沿岸警備隊(PCG)より。赤色の船が中国側、青色の船がフィリピン側)

 

中国海警快讯 - 维权执法 - 中国海警局 (2023-10-22 06:11:00)

10月22日,中国海警依法拦阻菲律宾向仁爱礁非法“坐滩”军舰运送违规建筑物资的船只。

中国海警快讯 - 维权执法 - 中国海警局 (2023-10-22 11:47:00)

10月22日,菲律宾船只擅自闯入中国南沙群岛仁爱礁邻近海域,中国海警船在多次喊话警告无效的情况下,依法对菲擅自闯入的船只进行拦阻。6时14分,菲“尤娜扎·五月”2号游艇在我事先提醒告知的情况下,又无视我多次明确警告,以不专业、危险方式,故意穿越我正常执法航行的海警5203舰舰艏,导致轻微擦碰。8时13分,菲海警4409船蓄意挑事,有预谋主动倒车,尾部与我停车漂泊的琼三沙渔00003船右舷发生擦碰,恶意碰瓷制造事端,升温现场局势。菲方行径严重违反国际海上避碰规则,威胁我舰船航行安全,我方操作专业规范、正当合法,责任完全在菲方。

中国海警局新闻发言人甘羽就菲律宾非法侵闯仁爱礁发表谈话 - 维权执法 - 中国海警局 (2023-10-22 14:10:00)

10月22日,菲律宾不顾中方一再劝阻和警告,执意派出2艘运输船和2艘海警船擅自闯入中国南沙群岛仁爱礁邻近海域,企图向非法“坐滩”军舰运送违规建筑物资。中国海警船在多次喊话警告无效的情况下,依法对菲搭载违规建材的船只采取管制措施,对菲方运送食品等必要生活物资作出了临时性特殊安排,现场操作合理合法、专业规范。期间,菲方船只无视中方严正警告,以不安全方式危险接近我方船只,导致发生擦碰,责任完全在菲方。中国对包括仁爱礁在内的南沙群岛及其附近海域拥有无可争辩的主权。菲方行径侵犯中方领土主权,违反《南海各方行为宣言》,违背自身承诺,我们敦促菲方立即停止侵权行径。中国海警将依法在中国管辖海域持续开展维权执法活动,坚决维护国家主权和海洋权益。

菲方船只以危险方式接近中方船只导致擦碰 - 视频 - 中国海警 微博