(微博 :DS_T黑黑Tより)
中国SNSで先週、中国海警局のエンブレムとマークがついたヘリの画像がはじめて公開された。
昨年(2019年)7月1日、国務院の国家海洋局(中国海警局)の行政下にあった海警部隊とその職責が、国務院との二重指揮をはなれ、中央軍事委員会が指揮する人民武装警察部隊(武警)に隷属した。海警総隊となり、中国海警局の名称も引き続き使用する。
今年(2020年)6月20日、全国人民代表大会(全人代)常務委員会が「人民武装警察法」改正案を可決した。武警の任務に海上での権益保護と法執行活動が追加された。
中国海警局の船艇や航空機について、いろいろな誤解もあるようだ。
例えば、尖閣諸島の周辺海域で連日のように確認されている中国海警局の船を「武装船」とか「ヘリを搭載する」と言う人もいるが、実のところ、海警局のヘリコプターが搭載されているかどうかは不明だ。
当ブログ中の人は、日本の世間一般よりも少しだけ多く、中国当局の公式発表や中国メディアの関連ニュース、中国ネットSNSの関連情報を見聞きしていると思う。中国海警局の船で中国海警局のヘリが運用されたという発表や報道を見かけたことはない。(*1)
3000㌧級以上の海警船の中にはヘリ甲板やヘリ格納庫を装備している船があるので、そこは「ヘリ搭載が可能な船」と書くべきだろう。
最大限の警戒をすべきなのは確かでも、日本語ネットSNSで、何かの政治的意図があるのか中途半端な知識でイキがりたいのか知らんけど、変な方向へ誤解を拡げかねないいいかげんな発言をする政治家もいるようだ。
閑話休題、
中国SNSで先週、中国海警局のエンブレムとマークがついたヘリの画像が、はじめて公開された。これについて少し。
(微博 :DS_T黑黑Tより)
中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
Ads by Google
背景のビルと地形から、場所は海南省三亜市の埠頭だろう。
ちょうど、そのあたりに中国海警局の大型船が停泊している埠頭がある。今回公開された写真4枚からは、ヘリの離陸が埠頭の地上からか海警船のヘリ甲板からからかは分からない。
(微博 :DS_T黑黑Tより)
ヘリの外見と装備は、国家海洋局 中国海監総隊の頃の末期に配備された(機体番号の後ろ2ケタが英字の機体)の直-9型(Z-9型)ヘリの民生型H425型の装備とほぼ同じのようだ。
基本的に、中国の自治体の警察組織や、中国海警局以前の武警などで運用されている警用・直-9F (H425)型と同じと考えられる。
(海監(2018年)、舟山)
【中国海警局】 中国海監ヘリ、H410型とH425型、比較 - pelicanmemo (2016-06-11)
右舷に遠隔監視暗視装置、機体下に警告スピーカー、機首に気象レーダー等が装備されている。
画像のヘリに海難救助のためのホイストはついていない。ただ、この機体は試験飛行か本格運用かが分からないし、ホイストは、海軍の直9型機の例から後付けで装備することが出来る。
(中国海軍の直-9型(Z-9型)、赤丸はホイスト型クレーン)
一方で、海軍の直-9型機では後付けで、両舷に機銃ポッドなど武装を装備できる構造がある。海監や海警局のヘリにその装備は無い。海軍のヘリとは別のタイプだ。
中国の直-9型(Z-9型)ヘリは派生型が多い。武警や、陸・海・空軍でも採用されている。
ここだけ見て、脊髄反射的に「軍用ヘリだ!」「攻撃型ヘリだ!」みたいなー、変な誤解をしないよう、デマを拡散しないように注意をしてほしいものだ。
今回公開された中国海警局のヘリの、尾翼の番号は「15901」。
場所と番号から、このヘリは海南省の、第二航空大隊に所属する直9型(Z-9型)ヘリの1号機かもしれない。
海南省海警局の所属か、直属第五局(三亜)の所属かまでは分からない。
国家海洋局 中国海監総隊の〜航空支隊の時は、固定翼機・ヘリの機体番号は国際民間航空機関(ICAO)に則っていた。中国の国籍記号は「B」なので、機体番号は「B-xxxx」等となる。
日本の安全保障と関係があるところでは、たとえば2012年(平成24年)12月13日に、日本の尖閣諸島の領空侵犯をした中国海監総隊 東海航空支隊のY-12Ⅳ型プロペラ機は「B-3837」機だ。
【尖閣】領空侵犯した国家海洋局・中国海監の航空機 "B-3837"機 Y-12IV型・主要諸元: メモノメモ(2012年12月13日)
その一方で中国や各国の軍用機は、ICAO機体番号ルールとは違った独自の機体番号ルールをつけている。
中国の武装警察部隊では、地上の車両番号に合わせてヘリの機体番号の最初に「WJ」を付けていた。今回の海警局ヘリではそれも付いていない。(更なる研究に期待したい)
武装警察部隊の海警総隊(中国海警局)となる前の、国家海洋局 中国海監総隊の3海区の分局総隊には、それぞれ航空支隊(北海航空支隊・東海航空支隊・南海航空支隊)があった。
2018年後半から後の公式発表は見かけていないが、”北海航空支隊・東海航空支隊・南海航空支隊”はそれぞれ”第三航空大隊・第一航空大隊・第二航空大隊”となったと考えられる。(〜航空支隊かもしれない)
尾翼番号「15901」の1・2ケタ目は(中国ネットSNSの"噂"から)、第一航空大隊(浙江省舟山)が「14xxx」、第二航空大隊(海南省三亜?)が「15xxx」、第三航空大隊(山東省)が「16xxx」かもしれない。(あくまでもネットの"噂"からの当ブログの想定です)
3ケタ目の”9”は、海軍のヘリ登録番号の例から直九型(Z-9型)機を示し、4・5ケタ目の”01”は1号機だと考えられる。
人民武装警察部隊は、複数タイプのヘリ約200機を、新疆ウイグル自治区はじめ全国に配備しているという。その数は少なくはないが、多いとも言えない。中国の国土は広い。
さらに、武警・海警総隊(中国海警局)となったことで海上監視・法執行のために、約50機の固定翼機・ヘリ(回転翼機)・無人機を配備するという"ネットSNSの噂"がある。
固定翼機とヘリと無人機では、航続距離や必要な滑走路などの違いがあるので、航空拠点は単純に3海区の3ヶ所とはしないだろう。中国の海岸線は長く、海域は広く、無人島など複雑にある。ヘリと無人機だけを配備する航空拠点も含め15ヶ所くらいになるのかもしれない。
続報を待ちたい。
海警直升机的涂装还有一点点民主啊...好看 - DS_T黑黑T 微博 (7月16日)
中国海監 南海航空支隊に、中型航空機「MA-60(新舟60)」型、正式配備 - pelicanmemo (2017-06-24)
中国海監 東海航空支隊に「Y-12F」型機 中型航空機「MA-60(新舟60)」型機も - pelicanmemo (2017-05-25)
【中国海警局】 尖閣諸島の日本の領海内で、中国海警局の公船がドローン(無人機)を運用 - pelicanmemo (2017-05-18)
【中国海警局】武警・海警総隊と、国家海洋局、中国海監、航空支隊 - pelicanmemo (2018-07-24)
【中国海警局】 船名・船舶番号、変更(2019年7月〜)。| 「海警6501」は直属第六局所属の5000トン級。 - pelicanmemo (2019-12-15)
中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
(*1)国家海洋局(中国海警局)の時は、3000㌧級の船2隻がヘリを搭載していた。どちらも武装警察部隊・海警総隊(中国海警局)(以下、武警・海警総隊(中国海警局))となる前に、中国海警局の隷属下から、自然資源部(国家海洋局)に戻った。
海洋調査船2隻、南海分局の「海警3383(もと海監83)」は「海測3301」となり、東海分局の「海警2350(もと海監50)」は「向陽紅19」となった。
【中国海警局】 もと3000トン級海警船、海洋調査船へ転換 「海測3301(もと海警3383)」「向陽紅19(もと海警2350)」 - pelicanmemo (2016-12-27)
2012年(平成24年)12月13日に、国家海洋局 中国海監総隊 東海航空支隊(当時)のY-12Ⅳ型双発プロペラ機「B-3837」機による領空侵犯があった。
2012年12月から1月にかけて、尖閣諸島へ接近する事案が複数回起きた。
当時のブログ記事(一部)。
【尖閣】領空侵犯した国家海洋局・中国海監の航空機 "B-3837"機 Y-12IV型・主要諸元: メモノメモ(2012年12月13日)
【尖閣】領空侵犯した中国海監の航空機の機長インタビュー|海監の戦略: メモノメモ (2012年12月15日)
【尖閣】に接近してきた中国海監の航空機 "B-3806"機(12/22, 12/24): メモノメモ (2012年12月22日)
【尖閣】国家海洋局・中国海監の航空機"Y12"の飛行コース(22日・24日・25日)(1/2): メモノメモ (2012年12月26日)
国家海洋局の航空機"Y12"型 東シナ海の飛行コース(2014/1/7): メモノメモ (2014年1月11日)
【尖閣】国家海洋局・中国海監の航空機"Y12"の飛行コース(〜2013/01/11): メモノメモ (2013年1月12日)
【尖閣】に接近する国家海洋局「Y12」機、中国海軍「Y8」偵察機2機も飛行していた: メモノメモ (2013年1月14日)
【尖閣】国家海洋局の航空機"Y12"の飛行コース(8/25) 拡大する海洋と島の調査活動: メモノメモ (2013年8月29日)
安部総理が領空侵犯した中国機への「警告射撃」の検討を指示したとか、小野寺防衛相が「信号弾で警告」すると記者の質問に答えたといった、日本メディアの度重なる "誤報" が、日中両国の緊張感をきな臭い方向に高めている。
1月15日付け朝日新聞の"誤報"が、小野寺五典防衛大臣の発言を大きく曲解し誤読させるものだったことから、日本国内でも批判が出ている。その前に、1月9日付けの産経新聞の"誤報"があった事も、波紋を広げる原因となっている。
日本メディアの「中国機に警告射撃」"誤報"の波紋、時系列での簡単なまとめ(1/9〜1/17): メモノメモ (2013年1月17日)
中国の軍事専門家、「別冊宝島」のCG動画に大まじめに噛みつく(笑): メモノメモ (2013年9月 3日)