(CELL誌 2025年3月表紙)
2025年もあとわずかとなりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
思い返してみると今年(2025年)は、中国の有人深海潜水艇の活動や超深海探査に関するニュースが多かった。
しかし、いろいろとタイミングが悪くて、Blueskyで簡単にポストしただけでまったくブログ記事にまとめられなかった。年末の蔵出し的に、これらについて少し。
日本では、JAMSTECによる深海無人探査機「うらしま8000」の開発や、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の14課題の一つである「海洋安全保障プラットフォームの構築」(SIP海洋)での、南鳥島沖のEEZにおけるレアアース泥(REE-rich mud)採鉱システムの構築試験が進められている。日本メディアでも多く取り上げられているのでご存知のかたも多いでしょう。
実のところ、産経新聞も書いているように、この分野では「深海探査は中国1強」の状態にある。詳しい人達が何年も前から危惧し警鐘を鳴らしてきたことが、今まさに目の前で起こっている。
深海探査は中国1強 「深海大国」日本の能力後退で危機感、安全保障上の不安材料 - 産経ニュース (2025/5/12)
海洋研究開発機構が深海無人探査機「うらしま8000」を開発した背景には、日本が海洋国家として持つべき深海探査能力への危機感がある。深海探査は科学研究や資源開発などで重要性が増す一方、現在の主力である有人潜水調査船「しんかい6500」は老朽化が進む。深海探査は中国の「1強状態」とされ、日本が自国の海域を十分に把握できない状況は安全保障上も不安材料だ。
中国の有人深海潜水艇は、フルデプス・1万メートル級有人深海潜水艇「奮闘者(奋斗者)」号はじめ、最初の国産の7000m級「蛟竜(蛟龙)」号、4500m級「深海勇士」号をもち、それら潜水艇の支援母船を4隻、「深海一号」「探索一号」「探索二号」「探索三号」をここ7〜8年のうちに新たに建造して運用をしている。
研究開発の人材の教育やバックアップ体制も整えられている。
深海探査や海洋科学研究をウォッチしている身としては、とてもうらやましい状況にある。

今年(2025年)8月から9月にかけて、中国は北極海の氷海において有人深海潜水艇「蛟竜」号をはじめて運用し、成功裡に終了した。また、フルデプス「奮闘者」号と2隻同時の潜航調査および周辺海域での4隻の海洋調査船(「雪龍2(雪龙2)号」「極地(极地)号」と「深海一号」「探索三号」(有人深海潜水艇の支援母船))による調査活動が実施された。
これまで北極海での深海探査は「ミール1」「ミール2」を持っているロシアの独壇場だった。そこに中国が頭角を現してきた。北極評議会(Arctic Council) オブザーバーである中国の、北極海航路での存在感を強める意図もあるだろう。ロシアの非政府領域では中国との協力を歓迎する声も漏れ聞こえてきている。
「探索三号」進水、深海科考船「探索」ファミリーの三女。深海・遠海での多機能科学調査および海洋考古学調査船 - pelicanmemo (2024-04-23)
中国のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、ジャワ海溝の最深部へ インドネシアと共同探査 - pelicanmemo (2024-03-28)
中国のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、ケルマディック海溝の最深部へ ニュージーランドと共同探査 - pelicanmemo (2022-12-25)
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(CELL誌 2025年3月表紙。ヤップ海溝の最深部、水深8919mで撮影されたクラゲ)
水深6000mより深い”超深海(Hadal zone)”の科学調査と研究分野ではほぼ「中国1強」と言ってもいいだろう。
マリアナ海溝・環境生態研究計画(MEER計画(MEER计划)(Mariana Trench Environment and Ecology Research))は北半球から南半球にも拡大され、グローバル・ハダル探査プログラム (全球超深渊探查计划(Global -HEP (Global Hadal Trench Exploration Program)として、外国の研究者を受け入れる国際科学調査活動が実施されている。
マリアナ海溝だけでなくヤップ海盆、ニュージーランド沖のケルマデック海溝、インド洋のオーストラリア沖のディアマンティーナ海溝やウォラビー・ゼニス断裂帯での探査が行われている。それぞれの海溝ごとの生物多様性の違いも研究されている。中国国内には、海溝深部の生物や微生物の採取と遺伝子データベースが構築されている。
今年(2025年)3月の国際科学学術雑誌『CELL』誌で、中国科学院や上海交通大学などの共同研究チームは「マリアナ海溝環境・生態研究計画(MEER)」第1期成果を発表した。本調査はマリアナ海溝やヤップ海溝の水深約6,000mから10,000m超の超深海を対象としており、33回の潜水を通じて計2,000時間を超える海底作業を実施した。
膨大な生物サンプルと環境データを収集し、世界最大規模の「超深海(Hadal zone)生物データベース」の構築をすすめている。これら収集をつづけている超深海の生物・微生物の遺伝子データはこれから大きな可能性をもつだろう。



今年(2025年)、中国科学院はフルデプス・有人深海潜水艇「奮闘者」号による、北西太平洋の千島・カムチャツカ海溝およびアリューシャン海溝の深海探査活動が行われている過程で、水深9,533mの超深海において世界最深の化学合成生態系を発見した。
海洋プレート沈み込み帯からの湧出流をエネルギー源とするハオリムシや二枚貝などの生命群落が2,500km以上にわたる広範囲で確認された。これは、地中深くの炭素をメタンへと継続的に変換してメタンハイドレートの形で深海底にメタン貯留層を形成する、炭素循環と炭素収支に関する従来のモデルに疑問を投げかけるものと指摘している。この成果は、英科学誌『Nature』7月30日付けで発表された。


この発見は、フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」の予定外の潜水任務から始まったそうだ。
「予想していない驚き」だったと、深海科学工程研究所の杜梦然研究員は中国科学報に語っている。
潜航調査の過程で千島・カムチャッカ海溝の最深部での任務が終わりに近づいたとき、杜梦然研究員ら潜航調査チームは、異なる地形生物群集を比較するため別の斜面へ「迂回」することとした。
そこで予想外にチューブワームが「草のように密集して」生えているのを目撃したそうだ。
従来、チューブワームは冷水湧出帯で見つかる生物だが、なぜ超深海で見つかったのか?
その後の研究によって、沿岸域の冷水湧出帯とは違う、まったく新しいタイプの「静かな」冷水湧出帯であることがわかった。
無人深海潜水艇による撮影結果の分析ではない、有人深海潜水艇に搭乗した人間がリアルタイムで目視と判断が出来たことで新たな発見と成果につながった良い例だろう。
その他、「蛟竜」号のアップグレードなどのニュースがあった。





(北極海。フルデプス「奮闘者」号)

(北極海。探索三号)
(北極海。深海一号と探索三号)
我国载人潜水器应用水平持续提升----中国科学院深海科学与工程研究所 (2025-12-25)
中国科学院深渊团队发现全球最深化能合成生态系统和甲烷储库----中国科学院深海科学与工程研究所
“奋斗者”号完成北极科考,将我国载人深潜从“全海深”拓展至“全海域”----中国科学院深海科学与工程研究所
“雪龙2”号顺利返沪 我国最大规模北冰洋科考取得重要进展-新华网
我国第15次北冰洋科学考察圆满完成任务_新闻频道_央视网(cctv.com)
9533米!这里有全球最深“化能生命”|生物_新浪科技_新浪网
阿留申海沟软体动物卵囊的多样性及亲缘关系解析:揭示深渊-超深渊带的生殖策略 - 生物通
Nature | 中国科学院深渊团队发现全球最深化能合成生态系统和甲烷储库----中国科学院重大科技基础设施共享服务平台
挺进万米深渊, 用“大国重器”解锁中国深度_新闻频道_央视网(cctv.com)
载人潜水器与海上作业母船----中国科学院重大科技基础设施共享服务平台
CELL誌に、中国の「マリアナ海溝環境生態研究計画(MEER)」の最初の成果が発表された。 表紙には、フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」から撮影された画像が使われた。 論評1編と論文3編が掲載されている。 MEER:最も深い海で繁栄する驚くべき生態系 MEER: Extraordinary flourishing ecosystem in the deepest ocean www.cell.com/cell/fulltex... ほか
— ぺりかんめも (@pelicanmemo.bsky.social) 2025-03-07T02:39:49.899Z
中国のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、ケルマディック海溝の最深部へ ニュージーランドと共同探査 - pelicanmemo (2022-12-25)