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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

中国、海事局の万トン級巡視船「海巡09」就役 世界初のスマート・シップ大型公船

20211026055333(中国ネットSNSより)

10月23日、中国の広東省広州市で、交通運輸部海事局のはじめての1万トン級海事巡視船「海巡09」が就役した。

「海巡09」は、全長165m、型幅20.6m、設計排水量10700トン。満載排水量は13000トンで、中国海警局の満載排水量12000トンといわれる中国海警局の「海警2901」「海警5901(もと海警3901)」より大きな中国最大の海上法執行船となる。

日本メディアの報道とコメントでは、船の大きさとトン数の数字と、中国による海洋権益の確保とか、日本はじめ周辺国の安全保障と絡めて書いているようだ。船の大きさばかり注目するのではなく設備や能力に注目をすべきだろう。

「海巡09」は、世界ではじめてのスマート・シップ(智能船)である大型公船と発表されている。

 

「海巡09」はエンジンはじめ主要設備各所に設置された200近くのセンサーによって、船の状態がモニターされ診断と最適化による運転制御が行われる。大型商業船や科学調査船で導入され始めているもので、大型公務船(公船)でも導入された。いわゆる船舶IoT(船のインターネット、IoS(Internet of Ships))は、恐らく設計・建造のレベルから適用されているだろう。

この分野はこれからさらに注目され重要視されていく。

20211026201715(中国ネットSNSより)

船内にはサーバーと海事データセンターが設置され、中国独自の衛星測位系統”北斗”GPSなど複数の衛星システムによるネットワークを構築し、ビッグデータを活用した宇宙から海までを一体化した統合的な海上交通や安全、法執行、救助活動が可能としている。

主機は4基のディーゼル発電機により30000kw強の発電能力をもつ。小さな火力発電所並の出力だ。

 

「海巡09」は機関砲は装備していない。よく注目される主要装備、ヘリや高速搭載艇や高圧放水銃やについては、進水時の記事で画像入りで詳しく書いたのでこちらを参照していただきたい。

中国、海事局の万トン級巡視船「海巡09」進水 満載排水量13000トン(追記あり) - pelicanmemo (2021-10-02)

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【中国海警局】 4000トン級海警船に76mm機関砲を搭載か

20211021052943(微博より。鳴謝、酸梅梅梅干)

中国のネットSNS微博で、中国海警局に所属する4000トン級の船に76mmと思われる機関砲が搭載されている撮影画像が公開された。

緑色のカバーに覆われているその外見から、中国海警局の万トン級「海警2901」「海警5901(もと海警3901)」や818型、718B型に搭載されているH/PJ26型76mm単管速射砲だと考えられる。

今年(2021年)1月には、5000トン級「海警2501」が搭載している写真が中国海警局から公開されていた。

 

この4000トン級(NATOコード:Zhaolai class)や5000トン級(同:Shuoshi II class)では、建造時から”台座”が設置されていたけれども機関砲のような固定武装はずっと装備していなかった。

中国海警局が、中央軍事委員会の直接の指揮下にある中国海警局人民武装警察部隊(武警)の海警総隊(中国海警局)となったことで、行政組織でもあった国家海洋局/中国海警局のときよりも武装化のハードルが低くなったと考えられる。

20211021052954(中国ネット掲示板より)

いきなり同型船ぜんぶに76ミリ砲が搭載されてはいない。中共が国際関係をどう認識してどう対応したいと思っているか次第だし、時間の問題だろう。

また、いわゆる”海監型”3000トン級10隻でも建造時から同じように、30mm機関砲に対応するだろう”台座”2基が設置されている。

 

【中国海警局】5000トン級「海警2501」、76mm機関砲を新たに装備 - pelicanmemo (2021-01-23)

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中国のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、マリアナ海溝で今年の潜航調査

20211018053715

中国の、水深1万メートル級のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号と科学調査母船「探索一号」が、西太平洋のマリアナ海溝の海域での潜航任務を終えて10月8日に海南省の三亜市に帰港した。出港は8月11日、59日間。

2021年から始まった第14次5ヶ年計画(十四五)最初の超深海科学調査となる今回の”TS21-1航次”は、「奮闘者」号の潜航試験ではない、初めての通常科学研究応用(常规科考应用)任務となった。

水かけ式で潜水成功祝う有人深海潜水艇「奮闘者号」の乗組員たち--人民網日本語版

 

中国のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者(奋斗者)」号は昨年(2020年)11月、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵で、水深1万909メートルへの潜航と深海底への着底を成功させている。

中国、フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号、マリアナ海溝での水深1万m超の潜水と着底に成功。 ”双船双潜” - pelicanmemo (2020-11-22)

 

20211020195149

今回の潜航期間では、水深7700〜10900メートルへの潜航を28回実施。そのうち7回は1万メートル以上の潜航で、チャレンジャー海淵の最深部で科学研究作業が行われた。中国全国の7つの大学・組織から18人の科学技術者らが参加し、3人の女性の科学者および潜航員を含む8人が水深1万メートル以上に潜った。

中国ではこれまでに19人が「奮闘者」号に乗って、世界で最も深い深海底へと到達したそうだ。

中国の「奮闘者」号以外では、チャレンジャー海淵の最深部へ到達した人間は19人(2021年4月まで(wikipedia))なので、すでに半分が中国人となった。

 

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【アフリカ豚熱】 ドイツ、ポーランド国境から100kmへジャンプ 【ASF, アフリカ豚コレラ】

20211015061048(Freistaat Sachsen)

ドイツで、2020年9月にはじめてブランデンブルグ州のポーランドとの国境近くで発生したアフリカ豚熱(ASF、旧称:アフリカ豚コレラ)。その後、南隣のザクセン州でも同じように国境近くで確認された。今年に入ってから養豚場3箇所での発生が確認された。

 

ドイツでは、チェコやベルギーでのASF封じ込めの成功例に倣って、ASF感染イノシシが発見された地域の周辺に、野生イノシシの移動を制限するためのフェンスや電気柵(忌避臭など含む)で囲い、狩猟や立ち入りを規制するなどウイルスの封じ込め策を行っている。

2020年9月以降、主にその封じ込め地域の内側で、野生イノシシで2345頭、養豚場の家畜豚で3件の発生が確認された(2021年10月8日現在)。

【アフリカ豚熱】 ドイツ、3ヶ月で野生イノシシから250例 | 発生地域の管理とウイルス拡大の防止 【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2020-12-08)

 

しかし、ウイルス封じ込めが100%確実なわけはなく、封鎖地域の外で感染イノシシが確認されることがある。そこで随時対応して、封鎖や調査地域を拡げたり対策を強化している。

 

ザクセン州政府は10月14日、これまでにASF感染イノシシが確認されていたゲルリッツ郡(Landkreises Görlitz)以外ではじめて確認されたと発表した。ドレスデン市近くのマイセン郡(Landkreis Meißen)で、狩猟により捕獲された野生イノシシから。封じ込め地域から約60km、ポーランド国境から約100kmも離れている。

今回のザクセン州の発表は青い星印の場所。
20211015212534(FLI(Friedrich-Loeffler-Institut))
(日本語文字と青い星印は管理人による)

ポーランド西部とドイツの国境近くでの、アフリカ豚熱(ASF)発生箇所の地図(フリードリヒ・レフラー研究所(FLI)より)。(青丸は野生イノシシ(ドイツ)、赤丸は養豚場(ドイツ)。黄色は野生イノシシ(ポーランド)、紫丸は養豚場(ポーランド))

 

【アフリカ豚熱】 ドイツ、ブランデンブルク州で、イノシシの死骸から初めて確認 ポーランドから越境か?【ASF, アフリカ豚コレラ】 - pelicanmemo (2020-09-12)

【アフリカ豚コレラ】 ポーランド西部で発生 ドイツ国境からわずか12km(更新 02/01) - pelicanmemo (2019-12-06)

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【中国海警局】 海軍から移管されたミサイル駆逐艦(旅大I型)、使われないまま地方自治体へ寄贈。博物館船に

20211012212736广西新闻网より)

中国海軍の退役した051型(旅大I型)ミサイル駆逐艦「162 南寧(南宁)」艦が、広西チワン族自治区の防城港市へと寄贈され、10月2日に埠頭に到着した。

「162 南寧」艦は1970年建造、1979年に中国海軍南海艦隊に配備された船齢40年近い老艦。2012年12月に、同型艦「131 南京」艦といっしょに退役して中国海警局の前身である国家海洋局・中国海監総隊へ移管されていた。

 

よく日本メディアの記事やネットSNSのコメントで「中国海警局は、中国海軍の軍艦を再利用している・・・」と言われる船だ。

 

しかし、中国海監総隊へ移管した後も、2013年に中国海警局が正式発足した後も、中国海警局が中央軍事委員会の直接の指揮を受ける人民武装警察部隊(武警)の海警総隊にかわった後も、ず〜〜〜〜〜っと港に放置されたままだった。

中国海監の時も、中国海警局も、修理や改装する手間やカネをかけたくなかったのだろう。艦砲も対艦ミサイル発射装置も火器管制レーダーも、対潜ロケット弾発射装置も、搭載艇も載ったままの状態だ。

20211012212732广西新闻网より)

この2隻が中国海監総隊へ移管されても使われなかった理由について、中国ネット・掲示板では、海軍の老朽艦は修理やメンテナンス、近代化にカネがかかりすぎる上、それを行っても性能は十分でなく扱いにくい、なにより乗組員の居住環境が悪すぎる、等があると推測されている。

 

 

「162 南寧(南宁)」艦は、広東省広州市の中国海監南海総隊・第8支隊の埠頭に放置されていた。

今年(2021年)7月に自然資源部南海局(*)と防城港市人民政府との間で引き渡し式が行われ、曳航されていき、今月、防城港市の馬鞍嶺(马鞍岭)旅客埠頭に到着した。
(*)国家海洋局は、党・政府の組織再編により自然資源部に吸収合併された。

防城港市は「162 南寧(南宁)」艦の豊かな軍事文化遺産を十分に活用して、海洋の特色ある国防教育と愛国主義教育の施設(海洋特色的国防教育和爱国主义教育基地)として改装する予定だそうだ。

 

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