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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

中国、海事局の万トン級巡視船「海巡09」進水 満載排水量13000トン(追記あり)

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中华人民共和国海事局

9月29日、中国の広東省広州市の造船所で、交通運輸部海事局の大型海事巡邏船「海巡09」が進水した。

「海巡09」は、全長165m、型幅20.6m、設計排水量10700トン。満載排水量は13000トンであり正式配備された時には、中国海警局の満載排水量12000トンといわれる中国海警局の「海警2901」「海警5901(もと海警3901)」を抜いて中国最大の海上法執行船となる(全長はほぼ同じ)。交通運輸部海事局の新たな旗船となる予定だ。

(追記10/30:「海巡09」が10月23日に就役した。発表と報道により進水時よりもさらに詳細が分かった。すこし追記修正をした。)

 

一応書いておくと、海事局(交通運輸部)は中国海警局(人民武装警察部隊・海警総隊)とは別の海上法執行組織であり、「海巡09」など海事局の公船には機関砲のような固定武装は装備されていない。
海事局の主な職責は水上交通安全の監督管理や、船舶や水上施設の検査、船員等の訓練や資格管理、船舶汚染防止などとなっている。

 

香港の文匯報の記事のイラストが「海巡09」の装備や性能について分かりやすかったので、それと合わせて少し。

我国万吨级大型海事巡逻船“海巡09”轮在广州下水 - 中华人民共和国海事局

万吨级大型海事巡逻船“海巡09”轮在广州出坞 - 央广网

「海巡09」性能一覽 - 香港文匯報

 

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 20201002053322(微信より)

 

海事局の万トン級海事船「海巡09」は、中国船舶集団の701研究所が設計し、2019年5月から黄埔文冲船舶有限公司で建造が始められた。新型コロナウイルスの拡大予防対策によって建造計画への影響もあったが、今年4月から船台での組み立てとなった。進水後は艤装工事が進められる。

海事局への引き渡し後は、広東省の広東海事局の管理となる。主に南方海域での活動に携わるのだろう。

  

「海巡09」は、全長165m、型幅20.6m、型深さ9.5m、設計喫水6.606m、設計排水量10700トン。航速は25ノット以上で、経済速度16ノットで10000海里の航続能力と、90日以上の海上パトロールを行う事が出来る。海況9級、風力12級の最悪の条件下でも安全に航行でき、海況6級(波高4~6m)、風力8級(17.2-20.7m/s)でのヘリの離着船が可能だそうだ。定員100人で、救助した人200人を乗せることができる。

北斗衛星測位系統など船舶位置情報システムやデジタル通信と融合した海上データセンターとして、船舶動態の監視や早期警告、データ収集処理と送信、総合指揮など、海事監督管理等の能力をもっている。公務船としてはじめて、主機や発電機等の設備をリアルタイムで使用状態を監視と診断する「智能機艙(インテリジェント・キャビン)」コントロールシステムを備えたそうだ。

 

 

ブリッジ(船橋)の全周に窓を配置して、360度の視界を確保した。ブリッジの上には、サーチライトやいわゆるLRAD(強声執法設備)や光電センサ追跡監視設備で、電光掲示板など定番の装備も付けられるだろう。装備した。

主マストだけでなく、煙突の後ろにもマストが設置されている。通信関係のアンテナが置かれるのではないだろうか。

煙突の後ろのヘリ格納庫のある構造物の上に、高圧放水銃2基と、衛星通信システム等のレドームがある。

(追記10/30:ヘリ格納庫のある構造物の上に、高圧放水銃は4基が設置されていた。2基はレドームの後ろに設置されていて自由度が低い。法執行活動よりもヘリ甲板と周囲での火災対策と感じられる。)

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「海巡09」性能一覽 - 香港文匯報

20211026201659(ヘリ甲板〜格納庫)

 

船体の中ほどにフィン・スタビライザー(折り畳み式)が装備されている。外見からは分かりにくいが減揺水槽もあるようだ。
海上保安庁の巡視船では、減揺水槽は上部構造物に分かりやすく置かれる場合が多いが、中国の公船では(海警局の船も含めて)上部構造物と一体化する設計なのか外観から有無は分かりにくい。

 

主機とプロペラは4機2軸推進方式。サイドスラスタは船首に2基と船尾に1基ある。

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ヘリ格納庫1つとヘリ甲板があり、複数種類のヘリコプターの搭載が可能となる(注意:複数機を搭載という表現ではない)。

(追記修正10/30:中型ヘリなら1機、小型ヘリなら2機の搭載が可能とわかった。ヘリ甲板にベアトラップ(着艦拘束装置)は無い。)

 

ヘリ甲板の下に航空燃料タンク(航煤加油罐)が設置されてあり、ヘリや無人機への燃料補給を行うことができる。燃料タンクが船体内ではないのは、タンクを交換して搭載できる方式なののだろうか?

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20211026201702(ヘリ格納庫内部)

 

 

船尾には、海洋調査船のコンテナ・ラボのように、任務に合わせて機器装備を積んだ海上コンテナを置けるようだ。海事局の5000トン級「海巡01」(現在の海事局の旗船)の場合は、そこに船舶を曳船するための作業スペースとウインチがあるが「海巡09」には無い。「海巡09」は海上指揮センターとしての性格の方が強いと感じられる。 

 

船尾はヘリ甲板を合わせると3階建てで、有人または9m級無人高速搭載艇を降下揚収するためのスリップウェイと開閉式ドアが設置されている。

税関の密輸取締船や漁政の漁業取締船でも一部採用されている方式で、多くはないけれど廃止もされていないということは、それなりに任務に貢献しているのだろう。

 

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(追記10/30:船尾のスリップウェイから降下揚収する有人搭載艇は、海警2901や海警2501など5000トン級が搭載する12.5m級艇かそれ以上だった)

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「海巡09」の建造発表の記事では”深遠海総合指揮旗艦”という表現だ。

海事局の曹德胜局長によると、「海巡09」は海事分野でのパトロールと海難救助、深遠海での総合指揮能力を有しており、海上交通のコントロールや緊急時の対応、海上輸送の安全を保障し海上交通能力とレベルを上げることで、中国の海洋権益を守るそうだ。同時に、極域を除く海洋でのパトロールや救援活動を行う能力があり、世界の海の海事領域での突発事故や共同活動にも携わる事ができるだろうと話している。陸と海と空と宇宙とを一体化した、水上交通の安全保障の装備システムと深遠海での海事保障能力により、交通強国・海洋強国の建設に貢献することが期待されている。

20201002053304中华人民共和国海事局 

 

我国万吨级大型海事巡逻船“海巡09”轮在广州下水 - 中华人民共和国海事局

万吨级大型海事巡逻船“海巡09”轮在广州出坞 - 央广网

黄埔文冲建造中国首艘万吨级海巡船“海巡09”轮出坞 - 国际船舶网

「海巡09」性能一覽 - 香港文匯報 

南海维权利器 万吨海巡船出坞  - 大公网

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