(央视网より）
中国の、水深１万メートル級のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者（奋斗者）」号が、マリアナ海溝の最深部への試験潜航に成功した。11月10日には、水深1万909メートルで超深海底への着底を成功させた。
今年(2020年)10月10日に、西太平洋のマリアナ海溝の海域で潜航試験が開始され、11月16日までに12回の潜水試験が行われてきた。10月27日の第7次潜水試験で水深10058mを記録し、はじめて中国の有人深海潜水艇で潜航員（有人深海潜水艇パイロット）らが水深１万メートルを突破した。
続けて11月10日、13日、16日、19日と連続して水深１万メートル超への潜水が行われ、深海科学技術の実証試験、超深海海底の堆積物や岩石、生物サンプルの採取など科学調査が行われていた。20日に今回の潜水試験・調査が完了した。
これまでマリアナ海溝チャンレンジャー海淵の最深部に到達した人間は13人（一昨年(2018年)までだとわずか3人）。今回の中国の「奮闘者」号によって20人以上となる。中国人の人数が最も多くなったかもしれない（後述(*1)）。
11月19日には、中国科学院深海科学･工程研究所の賀麗生（贺丽生）がはじめて科学者として潜航している。マリアナ海溝の最深部には今年6月7日に、EYOS Expeditionsの有人深海潜水艇「Limiting Factor」に乗ったNASAの元宇宙飛行士キャサリン・D・サリバンが、女性としてはじめて到達した。
今回の中国の「奮闘者」号の潜水試験では、賀麗生の他にも女性の潜航員が潜っている。
有人潜水船「奮闘者」号、1万909メートルの潜水で新記録樹立--人民網日本語版
中国首位！女科学家贺丽生搭“奋斗者”号打卡地球“第四极” - 澎湃新闻
日本メディアではほとんど話題にならないけれども、現在進行形で、世界的に注目が集まっている領域のひとつだ。
閑話休題・・・、
11月16日の潜航調査で撮影されたこの画像を見てもらいたい。
マリアナ海溝の底で、海底堆積物のサンプル採取作業をしている「奮闘者」号の姿だ。外から撮影した奴がいる。
(央视网より）
キーワードは「双船双潜」。漢字を見て分かるだろうけど、ほかにも深海底に潜らせていた。
中国、1万m級・フルデプス有人深海潜水艇、「奮闘者」号と命名 - pelicanmemo (2020-06-21)
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「おわかりいただけただろうか・・・」
(央视网より）
耐圧殻の窓から外を覗いている潜水パイロット（潜航員）です。😅
今回のプロジェクトでは、フルデプス有人深海潜水艇「奮闘者（奋斗者）」号の支援母船「探索一号」と、もう１隻、保障船「探索二号」が参加している。
深海底への潜水試験では、まず「探索二号」から、深海底着陸機「滄海（沧海）」号と格納された移動カメラロボット「凌雲（凌云）」号が、”専属カメラマン”として海底へ下ろされた。
次に支援母船「探索一号」から、有人深海潜水艇「奮闘者」号が下ろされ、3時間半をかけて潜っていって深海底着陸機「滄海（沧海）」号の近くで作業を行っている。
「滄海（沧海）」号の裏面。
右側にある黄色い箱が移動カメラロボ「凌雲（凌云）」号。
「滄海（沧海）」号の正面。
水中光通信の送受信機が中央にある。その上に主カメラ。まわりにライトがたくさん。
「滄海」号は、海上の「探索二号」とケーブルで繋がっており、４Kハイビジョン撮影された映像を送ることが出来る。水中光無線通信によって「奮闘者」号とのデジタルデータ送受信も行われている。
さらに、衛星通信回線を使い本国との通信が行われ、ほぼリアルタイムで水深１万メートルの超深海底の高画質映像が送られた。
「蛟竜」号が7000m級潜水試験に成功した後もそうだったけど、こういうところ中国は、内外への成果のアピールに余念がない。（むしろ、感心している）
（「深海视界」より）
すでに深海底に到達するだけではなく、超深海を含む深海底でどのような活動を行うことが出来るのか模索とテストが始まっている。
今回は深海底着陸機がカメラとして使用された。
サンプル・バスケットの拡張として使えば、回収できるサンプルの量も質も大きく変わりうる。水深１万メートルの水圧環境を維持したまま生物サンプル等を大気圧の地上へ持ち帰ることも可能になるだろう。
移動カメラロボ「凌雲」号の代わりに、様々な観測･実験機材を載せることもできそうだ。
支援母船の複数クレーンの能力次第で、支援母船１隻だけでも有人深海潜水艇と深海底着陸機との同時運用が可能かもしれない。
中国のフルデプス有人深海潜水艇「奮闘者」号の潜水試験のうち、詳しい発表があった直近の４回の潜水調査では、午前5時前後に潜水を開始して、水深１万メートルを突破するまでに3時間弱、深海底までは3時間半ほどかかっていた。これは、かなり短い。
JAMSTECの「しんかい12000」では片道5時間を想定されていた。
潜水中の船体データをチェックしたところ、船体の傾きは前後は±2度強までで左右は±1度まで。ほぼ船体を水平にして降下したようだ。
潜水開始から海面浮上までトータル12時間。（日本の「しんかい6500」では潜水時間8時間と規定されてている） そのうち、深海底で約6時間の作業を行っている。有人深海潜水艇での調査では、現地に到達するまでの時間が長くかかり、深海底での活動時間が短くなるところが課題だったが、潜航員1人＋研究者2人の運用が進めばかなりクリアできそうだ
これを凌ぐには、JAMSTECが発表した、耐圧殻を２つ作って接合する、超深海海底に1~2日滞在できるという「しんかい12000」しかないだろう。
地球最後の秘境・深海はどんな世界? - 超深海をめざす「しんかい12000」(2) 超深海に「触れる」ような船を | マイナビニュース
無くなってしまった（らしい）夢の話でしたが… 😔
(*1) 2020年のEYOS Expeditionsの有人深海潜水艇「Limiting Factor」によるものまでで、マリアナ海溝チャレンジャー海淵に到達した人間は13人。月面よりも多くなった。スイス1人、米国6人、カナダ2人、ドイツ1人、英国1人、英国/米国1人(*)、台湾/米国1人(*)。
(*)は二重国籍あるいは〜系米国人。
List of people who descended to Challenger Deep - Wikipedia
中国のフルデプス「奮闘者」号は乗員3人で、マリアナ海溝の深海底に４回（11/10, 11/13, 11/16, 11/19) 到達した。中国国籍が７人かそれ以上が到達している。
中国、１万メートル級のフルデプス有人深海潜水艇、耐圧殻の熱間成形に成功 - pelicanmemo (2017-11-26)
中国、1万m級・フルデプス有人深海潜水艇、耐圧殻の溶接、始まる。 - pelicanmemo (2018-04-04)
中国、1万m級・フルデプス有人深海潜水艇、耐圧殻の溶接、終了 - pelicanmemo (2019-01-02)
中国、1万m級・フルデプス有人深海潜水艇、耐圧殻が完成 - pelicanmemo (2019-11-08)
中国、7000m級有人深海潜水艇「蛟竜」号、改修と技術的アップグレード中 - pelicanmemo (2019-02-22)
『第四極』読了。 中国の7000m級有人深海潜水艇「蛟竜」号、研究開発・深海挑戦記。（１／２） - pelicanmemo (2017-01-02)
有人潜水船「奮闘者」号、1万909メートルの潜水で新記録樹立--人民網日本語版
「奮闘者号」、水深１万９０９メートルの海底に到達 ：AFPBB News
中国の潜水艇、マリアナ海溝の海底に到達 「深海物質」の調査も：AFPBB News
“奋斗者”号全海深载人潜水器顺利完成万米深潜试验 - 新华网
再次下潜！ “奋斗者”号与“沧海”号将首次海底联合作业_凌云号
中国首位！女科学家贺丽生搭“奋斗者”号打卡地球“第四极” - 澎湃新闻
“奋斗者”号载人潜水器在马里亚纳海沟深潜再破万米：双深潜器“奋斗者”号“沧海”号海底互拍
“双船双潜”首次万米深海联合作业如何进行？工作超6小时“奋斗者”号返回并完成回收 - CCTV-13_央视网(cctv.com)
“双船双潜”首次万米深海联合作业如何进行？万米海底通讯难度大 如何实现？ - CCTV-13_央视网(cctv.com)
“双船双潜”首次万米深海联合作业如何进行？“奋斗者”号和“沧海”号万米海底互拍_- CCTV-13_央视网(cctv.com)
“奋斗者”号载人潜水器在马里亚纳海沟深潜再破万米 “沧海”号“凌云”号今晨率先布放坐底 - CCTV-13_央视网(cctv.com)
