Buque Escuela #Esmeralda ya recaló en #Shanghai como parte de su Crucero de Instrucción pic.twitter.com/3UqCkbfNUj
— Armada de Chile (@Armada_Chile) 2016年9月13日
チリ海軍の練習帆船「エスメラルダ(Esmeralda)」が13日、中国、上海の揚子江埠頭に入港した。「エスメラルダ」は8月下旬の、東京の晴海埠頭への入港と一般公開がニュースとなったのでご存知の方も多いと思う。
2016年の7ヶ月にわたる訓練航海では、米国(ハワイ)、日本(東京)、韓国(釜山)、中国(上海)を訪問。この後、インドネシア(バリ)、オーストラリア(シドニー)、ニュージーランド(オークランド)を訪問する予定だ。
中国を訪問するのは9年ぶりで8回目(1972年、1987年、1989年、1993年、2001年、2004年、2007年、2016年)。実は、外国の軍艦の中では、最も多く中国を公式訪問した艦なのだそうだ。
智利海军“明星舰”埃斯梅拉达号风帆训练舰今抵沪访问 - 上海频道 - 人民网
Después de 9 años la "Esmeralda" recala a Shangai - Armada de Chile
その中国でも、中国海軍初めての“練習帆船”の建造が進められている。 これについて少し。
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¡La "Dama Blanca" ya está en China! Hoy recaló al puerto de #Shanghai, tras 9 años, el Buque Escuela #Esmeralda pic.twitter.com/z3HlACOfpS
— Armada de Chile (@Armada_Chile) 2016年9月13日
造船業大手の広船国际有限公司(广船国际有限公司)の5月17日の発表により、広州市南沙区の造船所で、中国海軍のはじめての練習帆船の建造が始められたことが分かった。最初の鋼板の切断儀式の写真が公開されている。
中国は近年、人民解放軍海軍(PLAN)の艦船の増強と近代化を盛んに進め、ロシアから購入して改装した練習空母「遼寧」の運用と、国産の空母の建造も進めている。そんな中、「空母が必要、練習帆船も必要(既要航空母舰,也要风帆训练舰)」と、初めての練習帆船の建造も行っている。
中国海軍の、練習帆船(他国の)への乗船経験のある軍人は、練習帆船に乗船すると、歴史を通じて海軍の意義を深く感じることが出来ると語っている。
中国海軍の創設は第二次世界大戦後で、今年で創設67年(1949年4月23日創設)。歴史が浅い。(チリ海軍の創設は1818年。帆船「エスメラルダ」は1946年にスペインで建造が開始された。)
各国海軍が練習帆船を持っていることを「前世紀の懐古趣味」と揶揄しつつも、実のところ、自国海軍の歴史と、経験が浅く成功/失敗体験が少ないところがコンプレックスになっているのではないだろうか?
中国大陸の歴史では、明朝中国の洪武帝によって出された海禁令(1371年)の後、対外貿易や大型船の建造、遠洋漁業などが禁止・制限され、海洋との繋がりが薄くなった(時代によって差がある)。これはアヘン戦争の後、清朝中国とイギリス(大英帝国)との間で結ばれた南京条約(1842年)まで400年以上も続いた。
さらにアヘン戦争、アロー戦争、日清戦争(甲午戦争)を経て、清朝中国は半植民地化されたといわれる。
WW2前後の国共内戦を経た現代、中国共産党支配の中共中国では、1972年の米中国交正常化、鄧小平政権の1978年からの改革開放政策、1990年代の社会主義市場経済政策を経て、貿易と海運・造船業で目覚ましい発展を遂げてきた。
習近平政権では「一帯一路」経済圏構想の「21世紀海上シルクロード(一路)」、南シナ海とインド洋〜中東〜アフリカへの海上交通路の構築が進められている。軍事面でも「真珠の首飾り戦略」と呼ばれる、スリランカ、パキスタン、ジブチでの港湾建設・整備や中国海軍軍艦の寄港が行われ、兵站拠点化も進められていると分析されている。
近年の東シナ海や南シナ海での、中国(中華人民共和国)による国際法を軽視・無視した海洋領土の拡大の試みを正当化するためのバックグラウンドとして、明朝(15世紀)に行われた、鄭和ほか指揮による、中東からアフリカ東岸への「鄭和の七度の大航海」「鄭和の西洋下り(郑和下西洋)」が使われている。
(ちなみに、鄭和(郑和)は元朝中国の時代の雲南省昆陽で生まれた回族でイスラム教徒だった(宮廷に入ってから仏教に改宗と伝えられている。)
400年以上も前のことで、現代の中共中国(中華人民共和国)とは大した関係はないし、中国共産党とは全く関係はないのだが、中国が海洋大国だった時代があった。 そして今、また「海洋強国」を強く喧伝している。
練習帆船で、海軍軍人の訓練を高める意味は当然ある。しかし帆船一隻(複数隻となるかもしれない)で訓練できる人数は限られるだろう。
それよりも、インド洋から中東、アフリカの地域へ航海と親善訪問を行うことで、「鄭和の大航海」をイメージさせつつ現代中国の「海洋強国」へとリンクさせる、中国の対外的なイメージ戦略のひとつに位置づけられているのではないだろうか。
この、中国海軍のはじめての練習帆船について、5月の発表後は特に公開情報はないようだ。帆船の大きさやデザインなどは分からない。
La Esmeralda - Armada de Chile
鄭和 - Wikipedia
郑和下西洋 - 维基百科
Treasure voyages - Wikipedia
郑和下西洋(明朝历史事件) - 百度百科
ほか
めも
鄭和(郑和、もとの姓名は馬和。(哈儿只·马哈茂德·赡思丁(حاجی محمود شمس الدين Hajji Mahmud Shamsuddin))は、元朝中国の時代の雲南省昆陽で生まれた回族でイスラム教徒だった(宮廷に召し抱えられてから仏教に改宗と伝えられている)。
現代の中共朝中国に生まれていたとしたら、果たして200隻もの大艦隊を指揮する司令官となれただろうか?