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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【中国海警局】 台湾の周辺の海域をパトロール 「海警2901」など直属第一局・第二局の大型海警船10数隻

20241015201758(台湾国防部より)

中国 人民解放軍 東部戦区は10月14日の朝、台湾を取り囲むように設定した海域と空域で、陸軍、海軍、空軍などが参加する合同軍事演習「連合利剣—2024B(联合利剑—2024B)」を開始したと発表した。同14日の夕方に、成功裏に終了したと発表した。

中国海警局は中国軍の訓練に合わせて、台湾周辺の海域で10数隻によるパトロール活動を行った。報道ではとくに万トン級「海警2901」がはじめて参加したことが話題になっているようだ。ここでは、その他の中国海警局に所属する艦船と、それらの動きについてAIS情報などを参照して簡単にまとめておきたい。

 

台湾の国防部は14日夕方の臨時の記者会見で、同日午後4時半までに、中国軍機延べ125機が活動し、うち延べ90機が応変区(應變區)(台湾海峡の中間線を越えた空域や接続水域(約24海里)上空)に入ったと発表した。また中国海軍の軍艦17隻と、中国海警局など公船17隻が台湾の周辺海域で活動しているのを確認したと伝えた。

台湾本島の周辺だけでなく、中国大陸に近い離島の馬祖列島の馬祖島や東引島(連江県)、烏坵郷(金門県)の島の周辺の海域も含まれている。

 

 

今年の合同軍事演習「連合利剣—2024B(联合利剑—2024B)」では、米国のペロシ下院議長(当時)が訪台したときと違い、弾道ミサイルは使われていないし、中国海事局から航行注意情報は出ていないので実弾射撃演習も行われなかったようだ。

台湾国防部の記者会見では、中国海軍の軍艦が17隻と発表されている。その割に、中国軍が発表した動画では派手な軍事訓練の映像はあまり出てきていない。

むしろ、台湾社会と国民に対して、中国による軍事的な締め付けを感じさせ、グレイゾーン領域での海上封鎖の現実味を強くイメージさせる意図があったのではないだろうか。🤔

 

中国海警局が発表したイラスト地図では、中国海警局の船が4つの分隊に分かれて台湾本島の周囲をぐるぐる回って航行するかのような矢印が描かれている。

日本メディアの番組の中には、これを真に受けたような発言もあったが実際にはぐるぐる回りはしなかった。これも海上封鎖をイメージさせる、中国が仕掛けた認知戦の情報操作だったのだろう。

20241015201722中国海警局より)

 

中国海警局の4つの船隊は、中国大陸の基地や錨地と、それぞれが受け持った台湾本島の東・西・南・北の海域とを往復しただけだった。

たとえば、万トン級「海警2901」など4隻の船隊は、10月13日に台湾本島と与那国島の沖を「南下」したと台湾メディアが報じていた。台湾の海巡署と海上保安庁の巡視船それぞれ1隻ずつが追尾していたそうだ。

中共海警船編隊經台灣周邊 疑會合遼寧艦演訓 (2024/10/13)

合同軍事演習「連合利剣—2024B(联合利剑—2024B)」が終わった後、15日の朝に東シナ海の尖閣諸島の西の海域(接続水域の外側、離れた海域)を「北上」Blueskyのポストし、15日夜までに浙江省の舟山基地に帰港している。

つまり「海警2901」など4隻は東シナ海から与那国島の西側を通って、台湾本島の東の海域へとまっすぐ行き、14日の任務が終わったら、まっすぐ浙江省の港へと帰った。ほかの3つの分隊も似たような動きをしていた。

 

(追記10/17朝:MarineTrafficのスクリーンショット画像を2枚追加しました)

2024年10月15日の午前4時〜5時頃(日本時間)、「海警2901」は尖閣諸島の西の海域にいる。
すこし分かりにくいが4隻(青いマーク)が縦列で航行している(4隻は北から、海警2502、海警2901、海警2301、海警2304(Blueskyのポスト))。

20241017060157(Marine Trafficより。2024年10月15日午前6時半頃(日本時間)にデータ取得) 

 

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中国海警局の直属第一局と直属第二局(*1)に所属する船が、人民解放軍 東部戦区の合同軍事演習「連合利剣—2024B(联合利剑—2024B)」とまったく同じ日程で台湾周辺の海域でパトロールを行った。連携していたと考えて当然だろう。
(*1)より正しく書くなら、人民武装警察部隊・海警総隊(中国海警局)の東シナ海を管轄する東海海区指揮部(東海分局)、第一支隊(直属第一局)(上海)と第二支隊(直属第二局)(寧波(浙江省))となります。冗長になるので簡単に書きます 🙂

 

今回、尖閣諸島の周辺海域も含めると、直属第一局・第二局(福建海警局は除外)に所属する2000トン級以上の船から多くを使用していた。

台湾の国防部の発表では中国海警局の船は17隻だが、そのうち5隻は中国大陸近くの離島の沖で確認された福建海警局の船。

AIS情報によると少し離れた海域に2隻いたので、台湾本島の周辺にいた中国海警局の船は国防部発表より2隻多い14隻がいた。さらに尖閣諸島の周辺で、接続水域に4隻と北側の海域に1隻が確認されている。

20241015201717

China Launches Massive 'Joint Sword-2024B' Military Exercises Around Taiwan, Simulating Blockade

 

船型・トン数(NATOコード)で分けると、

直属第一局・第二局に所属する、
万トン級(ZHAOTOU WPS)「海警2901」(姉妹艦「海警5901(もと海警3901)」)

5000トン級(SHUOSHI II WPS)3隻すべて(同型4隻)が参加(1隻は尖閣沖)した。

4000トン級(ZHAOLAI I WPS)1隻(同型4隻)は参加していない。

3000トン級(海監型)(SHUCHA II WPS)4隻(同型10隻)のうち3隻、
3000トン級(漁政型)(ZHAOYU WPS)2隻(同型12隻)すべて、
3000トン級(公安)(ZHAOCHANG WPS)「海警1304」(同型船は無い)が参加した。

2000トン級(もと海軍フリゲート)(JIANGWEI I WEF)3隻(同型3隻)のうち2隻が参加(1隻は尖閣沖)した。

818型(3000トン級)(ZHAODUAN WPS)3隻(同型6隻)のうち1隻が参加した。2隻は北極海まで行っていたので、まだ帰路にあるだろう。

718B型(2000トン級)(ZHAOJUN WPS)1隻(同型9隻、直属第二局に1隻が配備)が参加(尖閣沖)した。

もと海軍の056型コルベット海警船(1500トン級)(JIANGDAO MOD WFFL)(同型22隻)は、直属第一局・第二局の所属だろう3隻(推定)のうち1隻が参加した。

のこりの3隻は、もと海監の1000トン級海洋調査船と、もと漁政の漁業監視船2隻(うち1隻は尖閣沖)だった。(なぜこの2隻が狩り出されたのか? 案外、今回一番の謎かもしれない。貧乏くじ?😅)

 

 

蛇足だと思うけど、中国海警局の直属第一局に所属する船は、その番号の1つめが「1」で、直属第二局だと「2」となります(「海警ABCD」とした場合「A」にあたる数字)。

【中国海警局】 船名・船舶番号、変更(2019年7月〜)。| 「海警6501」は直属第六局所属の5000トン級。 - pelicanmemo (2019-12-15)

 

台湾本島の東の海域では、花蓮市の沖に2隻、818型「海警2304」と3000トン級(海監型)「海警2301」、台東市の沖に5000トン級「海警2502」と、万トン級「海警2901」(AIS情報には出ていなかった)。直属第二局から4隻が配置された。このうち3隻が76ミリ砲を装備している。(*2) 4隻は台湾の接続水域の外側を航行していたようだ。
(*2)「海警2502」は76ミリ速射砲を装備していなかったが、今回、搭載している画像が出てきた。

空母「遼寧」と僚艦も近くの西太平洋にいたので、台湾本島の東の海域、太平洋に最大の武力が配置されていたことになる。

 

一方、西側の台湾海峡には、3000トン級(海監型)「海警2302」と、もと海監1000トン級海洋調査船「海警2102」(もと海警2146(海監46))の2隻が配置された。どちらも機関砲などは装備していない

台湾の東側、太平洋側では軍事的にもグレイゾーン領域でも緊張感を高めつつ、反対側の台湾海峡のほうでは緊張感を高めたくなかった中国側の意図が感じられる。・・・もっとも次回の「連合利剣—2024C」では逆にしてくるかもしれないが。

「海警2302」は、合同軍事演習「連合利剣—2024B(联合利剑—2024B)」が始まる前、台湾海峡の中間線の大陸側を南下した。台中市の沖についた後に中間線を越え、台湾の接続水域の外側を航行していた。演習が終わった後、台湾海峡の中間線を越えてからUターンし、北上していった。

(追記10/17朝:MarineTrafficのスクリーンショット画像を追加しました)

20241017060153(Marine Trafficより。2024年10月15日午前6時半頃(日本時間)にデータ取得)(色は速度を示している。黄色よりも緑色の方が高速)

 

台湾本島の南の海域に、3000トン級(漁政型)「海警1303」、3000トン級(公安)「海警1304」、718型「海警1105」がいた(台湾国防部が発表した3隻)。少し離れて、5000トン級「海警3501」がいた。

5000トン級(KANJIE WPS)「海警3501」は直属第三局の所属だが、まえの船名は「海警2506」(漁政206)で東海分局の所属だった船だ。OGが遠巻きに、訓練の様子を見守っていた感じかもしれない。

「海警1303」は、合同演習が終わった後、台湾海峡を北上していった。

 

台湾本島の北側、基隆市や台北市の沖には、3000トン級(漁政型)「海警1305」、056型「海警1109」、もと漁政の1000トン級「海警1103」がいた(台湾国防部が発表した3隻)。少し離れた海域に、もと海軍2000トン級(JIANGWEI I WEF)「海警2202」がいた。

台湾本島の北の海域と南の海域は直属第一局の担当だった。

「海警1305」は、浙江省の沖を南下し、台湾海峡に入る直前に真東に進路を変更して、基隆市や台北市の沖へ移動した。合同演習が終わったあと、同じルートを逆に航行して、大陸沿岸を北上していった。

 

人民解放軍東部戦区の合同軍事演習とは直接関係はしないが、尖閣諸島の接続水域を、5000トン級「海警2501」と、もと海軍のフリゲート(2000トン級)「海警2203」、718B型「海警2204」と漁政1500トン級「海警2103」が航行している。

合同軍事演習が行われる直前の10月13日に、尖閣諸島の領海に侵入して約1時間半航行した。もしかしたら連動していて、「海警2901」など4隻が南下していることから目を逸らす意図などあったのかもしれない。

あと、尖閣諸島の北の海域に3000トン級(海監型)「海警1301」がいたけど、これはあまり関係なさそう。

 

グレイゾーン領域で、臨検など海上法執行で海上封鎖をイメージさせ、太平洋側は日本や在日米軍からの干渉を抑止する意図が感じられる。これだけできると見せつけてきたようだ。

 

 

「海警2901」は合同演習が行われている間、AIS情報発信を行っていなかったようだ。それでも短い時間で台湾本島を一周するのは無理。すべての船のAIS情報をチェックしたわけではないので、中国海警局が船名を出していない船1~2隻が、合同軍事演習が終わったあとに台湾本島をぐるりと回って航行した可能性を否定するものではない。

 

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