(国家海洋局ウェブサイトより)
2018年、4月3日午前、遼寧省大連市で1000トン級海監船「中国海監1001」の引き渡し式が行われた。
(注:船名は「海警1001」を書き間違えたわけではありません。「海監1001」で合っています。)
3月21日に、中国共産党と国務院(国家機関)の深化改革方案(深化党和国家机构改革方案)が交付され、中国海警局が党の中央軍事委員会が指揮する武装警察部隊(武警部隊、武警, People's Armed Police(PAP))に隷属することが発表されてから、はじめての、船名が「海警xxxx」ではない1000トン級以上の海上法執行船の引き渡し式だった。
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7月1日から、武装警察部隊(武警)に海警部隊と、関連する職能が編入された。武警・海警総隊は、引き続き"中国海警局 (China Coast Guard(CCG))"と呼ばれる。
これによって、中国が保有する法執行船艇は武警の管轄となり、「尖閣沖で確認される中国海警局の公船は軍艦だ」というような無邪気なコメントも見かけるが、そんなに単純な話ではない。
国家海洋局/中国海警局(2013年7月〜2018年6月)の時も複雑だった。おおむね、1000トン級以上の法執行船のほとんどが中国海警局に編入されたが、例外は多かった。5年の間にそれら例外だった船舶が徐々に編入されるかと思われていたが、実は、ほとんど変わらなかった。
指揮命令系統が、中国共産党の中央軍事委員会に一本化され、武警・海警総隊(中国海警局)(2018年7月〜)となっても、未だに、複雑なままだ。
むしろ、その複雑さこそが、海上保安庁や海上自衛隊、日本政府の対応を難しくしている。
何事でも単純化したがるきらいのある日本メディアの報道や解説では、勘違いされてしまいかねない。前回の記事は、武警部隊・海警部隊について書いてみました。今回は武警部隊ではない方面から少し。
【中国海警局】 人民武装警察部隊(武警)と海警部隊 - pelicanmemo
中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
(via. 超级大本营军事论坛)
武警・中国海警局が管轄する公船だけになったのか?
中国海警局は、よく、日本の海上保安庁のような組織だと説明されている。
中国海警局が正式に発足した時、4つの海上法執行組織が統合再編された。しかし、海上交通や航路の安全、事故調査、救助活動が主な職責である、国土交通部の海事局(海巡、MSA)と救助サルベージ局(救捞、CRS)は対象とならなかった。
これは、武警・中国海警局となっても変わってはいない。
【中国海警局】 海警局と海巡、海監、辺防海警、漁政、海関について、おさらい。 #週刊安全保障 #ホウドウキョク - pelicanmemo
国家海洋局/中国海警局(2013年7月〜2018年6月)の期間中、地方の部隊の船舶は、どこまでが海警船隊に組み込まれるのか曖昧なままだった。船舶に関して言うと、おおむね、排水量クラスで1000トン級以上の大型船は組み込まれていた(例外あり)。
記事冒頭で紹介した、遼寧省の海監漁政局(辽宁省海监海政局)は、1500トン級「海監1010」と、1000トン級を3隻「海監1001」「海監1002」「海監1013」を管轄している。これらが例外の一例だ。
他の省・自治区・直轄市も合わせると、武警・中国海警局となっても、少なくとも1500トン級5隻、1000トン級9隻(*1)、600トン級14隻が、「海監xxxx」の船名のまま運用されている。
漁政の、500トン級以上の漁業監視船も、20隻以上が「漁政xxxx, 漁政xxxxxx」の船名のままだ。さらに小型の船艇となると、数が多すぎて把握しきれない。
いずれの船も、地方の海監・漁政に所属している。武警・海警総隊(中国海警局)の直接の指揮下になったというはっきりした発表は見かけていない。
ただし、6月22日の武警部隊の海上法執行活動の職責の発表の中に、「〜、ならびに地方海上法執行業務と調整し指導(・・・的执法任务,以及协调指导地方海上执法工作。)」という部分があるので、武警・中国海警局と無関係というわけではない。
(*1) 1500トン級: 「海監1010(遼寧)」「海監3015(天津)」「海監7008(浙江)」「海監9068(広東)」「海監2166(海南)」。 1000トン級: 「海監1001(遼寧)」「海監1002(遼寧)」「海監1013(遼寧)」「海監2032(河北)」「海監4001(山東)」「海監4002(山東)」「海監4072(山東)」「海監2168(海南)」「海監2169(海南)」
【再掲】 中国海監、海洋監視船の船番号「海監xxxx」(4桁)のつけ方、まとめ。【中国海警局】 - pelicanmemo
中国は人治の社会と言われ、中国の政治ニュースの解説では政治闘争がよく引き合いに出される。これは党中央や政治局の序列の話だけではなく、中央政府と省政府や自治体政府、省・自治区・直轄市から市・県でも起こり、組織・部門の間でも大なり小なり起こっていることだ。
党中央が決めたからといって、全てが一気に同じ方向を向くわけではありませんし。
中国海警局が成立する以前からある、海上法執行組織の間でも、組織の中でも、管轄やテリトリー、利権などでの、政治的対立はあるだろう。自分たちの職場の飯のタネの船艇を、海警局や武警に持っていかれるなら、反発があっても不思議はない。
中国海警局が正式に発足した時、その構成員の約半分と1000トン級以上の船舶の大多数は、国家海洋局・中国海監総隊に隷属していた。それらが、まとめて武警・海警総隊(中国海警局)に引き抜かれていったのだろうか?
国家海洋局、中国海監の船艇・航空機はどうなった?
国家海洋局の職責の大部分と、国土資源部の職責、水利部や農業部の職責の一部、国家林業局、国家測量地理情報局の職責の一部、などを統合整理して、自然資源部(自然资源部)が新設された。これにより、国土資源部、国家海洋局、国家測量地理情報局は無くなった。「自然資源部」は対外的に「国家海洋局」の名称を使用する。
国家海洋局の海洋環境保護の職責は、新設された生態環境部(生态环境部)にうつされた。
・・・長くなったので、記事を分けました。😊
(ページ分けできる機能がほしい)
(追記:書きました。😊)
【中国海警局】武警・海警総隊と、国家海洋局、中国海監 - pelicanmemo