(via. 国家海洋局南海分局)
前回からの続き。
武装警察部隊(武警)と海警総隊(中国海警局)について、国家海洋局と中国海監の方向から。
・国家海洋局、中国海監の船艇はどうなったのか?
・中国海監の、航空機・ヘリはどうなったのか?
・武警・中国海警局となって、公船の乗員はすべて軍人となったのか?
ひとことで書くと、武警・海警総隊(中国海警局)となっても、いまのところはそれほど変わっていないと思われます。未だに、複雑なまま。
むしろ、その複雑さこそが、海上保安庁や海上自衛隊、日本政府の対応を難しくしている。😕
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国家海洋局、中国海監の船艇はどうなったのか?
国家海洋局の職責の大部分と、国土資源部の職責、水利部や農業部の職責の一部、国家林業局、国家測量地理情報局の職責の一部、などを統合整理して、自然資源部(自然资源部)が新設された。これにより、国土資源部、国家海洋局、国家測量地理情報局は無くなった。ただし、「自然資源部」は対外的に「国家海洋局」の名称を使用する。
国家海洋局の海洋環境保護の職責は、新設された生態環境部(生态环境部)にうつされた。
自然資源部の職責に、天然資源の開発利用と保護の監督、土地・自然・生態の合理的保護と有効利用のための規則の監督がある。生態環境部の主要な職責でも、生態環境のモニタリングと法執行活動に統一的な責任を持つ。
海洋環境のモニタリング、監督監視や法執行活動のための、人員と、船舶や航空機は必要なので、充分な海洋調査能力を持たなければならない。
主要职责是,对自然资源开发利用和保护进行监管,建立空间规划体系并监督实施,履行全民所有各类自然资源资产所有者职责,统一调查和确权登记,建立自然资源有偿使用制度,负责测绘和地质勘查行业管理等。("深化党和国家機構改革方案"・二十四より)
主要职责是,拟订并组织实施生态环境政策、规划和标准,统一负责生态环境监测和执法工作,监督管理污染防治、核与辐射安全,组织开展中央环境保护督察等。("深化党和国家機構改革方案"・二十五より)
武装警察部隊・海警総隊(中国海警局)の任務の中にも、海上での犯罪取締や治安の維持、海上密輸取締りのほかに、海洋資源の開発と利用、海洋生態環境の保護、海洋漁業の管理、等の方面の法執行任務が含まれている。
では、自然資源部(国家海洋局)や生態環境部は、海洋環境の調査や行政法執行の時は、武装警察部隊の協力のもとで船を出してもらうのだろうか?
2017年10月31日、国家海洋局の東シナ海を管轄する東海分局に、500トン級「中国海監201」が配備された。500トン級"近海沿岸環境監測船(近岸环境监测船)"は12隻が建造されている。(北海分局4隻、国家海洋環境監測センター1隻、東海分局3隻、海島研究センター1隻、南海分局3隻。)
また、中国海監総隊の頃の旗船だった3000トン級海洋監視船「海監83」「海監50」は、2013年に「海警3383」「海警2350」となった後、2016年に、海洋調査船「海測3301(海测3301)」「向陽紅19(向阳红19)」と名前が変わっている。
今から思えば、1000トン級以上の海洋監視船船隊が、海洋権益の維持保護活動のため、国家海洋局から抽出されることが分かっていたのだろう。
(国家海洋局東海分局より(2018年3月))
船名が「中国海警xxxx」の大型船も、いまのところ、海洋環境モニタリングで使われている。古い1000トン級海警船の中には、国家海洋調査船隊に属している海洋調査船もある。
海上保安庁の海洋情報部のような部署が、武警・海警総隊(中国海警局)に作られるのか、それとも中国海監など政府組織と連携して活動するのか。続報を待ちたい。
これらの海洋調査船も、中国が必要と考えれば、東シナ海での海洋環境モニタリングのために、日本の排他的経済水域(EEZ)など、中国の海洋主権がおよぶと一方的に主張している海域での活動に使われるだろう。
海洋科学調査船による調査活動に注目し、活動内容と成果を警戒しなければならない。
【中国海警局】 もと3000トン級海警船、海洋調査船へ転換 「海測3301(もと海警3383)」「向陽紅19(もと海警2350)」 - pelicanmemo
中国海監の、航空機・ヘリはどうなったのか?
国家海洋局の東シナ海を管轄する東海分局には、中国海監東海航空支隊(中国海监东海航空支队)があり、航空機・ヘリを運用している。(北海と南海とあわせて3支隊ある)
日本と強く関係するところでは、2012年12月に、東海航空支隊所属の「Y-12」型プロペラ機が、尖閣諸島の日本の領空侵犯をした。
2018年1月のタンカー「Sanchi」号の衝突、沈没による油流出の時には、沈没した海域での海洋環境航空モニタリング任務を継続的に行っていた。
面白いのは、2013年の国家海洋局/中国海警局の発足の後も、航空支隊の航空機・ヘリの機体のマークや文字は「中国海监」のままで、中国海警局の例のマーク(青色1本・幅広の赤色1本・青色3本)や「中国海警」「CHINA COAST GUARD」の文字は描かれなかったことだ。
(中国海監東海航空支隊より(2018年5月))
中国海監の各航空支隊の航空機・ヘリのパイロットの一部や、整備員は民間航空会社に依託されている。
武警・海警総隊(中国海警局)となった後、航空機・ヘリおよび人員はどういう扱いとなるのか、情報がほとんど無い。もしかすると、国家海洋局〜航空支隊のままで、武警には組み込まれないのかもしれない。
武警・中国海警局となって、公船の乗員はすべて軍人となったのか?
党と国務院との機構改革により、武警・海警総隊(中国海警局)となったことで、「中国海警局の公船の乗組員は、"公務員"から"軍人"となった」と書いてある解説記事を見かけた。
いったい、どのような人事が行われたとイメージしているのだろう? 😕???
国家海洋局・中国海監や農業部・漁政の法執行隊員や船員たちは船を下り、それに代わって、武装警察部隊(武警)の隊員たちが乗り組む、と考えたのだろうか?
武警に、その能力は無い。
これまでの武警には、外洋型大型船舶は無かった。海上での法執行活動に必要不可欠な法律、海事法や漁業法、国際条約などの専門知識と経験がある隊員も多くはいないだろう。
武警の王寧(王宁)司令官は5月の会合で、「武装警察の力は、“陸に強く、海と空に弱い。国内に強く、国外に弱い”という顕かな問題がある」と指摘し、武警部隊の使命の拡大にともなって、新たな能力の建設を始めなければならないと語っている。
武装警察部隊は、人民解放軍海軍とは別の組織なので、海軍軍人を大量に海警総隊に編入させることは難しいと思われる。その上で、もしやってしまったら、自ら、武警・海警総隊(中国海警局)が海軍の延長だと認めてしまうこととなり、キャベツ戦略(包心菜戦略(包心菜战略))の逆をいくことになってしまうだろう。
ゆくゆくは、海軍からの出向や退役した軍人を、武装警察部隊が雇用していって、武警部隊・海警総隊から海警船への指揮命令体制を整え、任務遂行能力を高めていくのかもしれない。
中国海警局に組み込まれた辺防海警部隊も、1000トン級以上の大型船舶は少なく外洋での運用経験も多くはない。経験者の人数が足りないだろう。
500トン級以下の船艇の船長や政治委員、航海士等の経験者を抜擢して、3000トン級以上のもと海監の船に振り替える事は出来るかもしれない。しかしいきなりそれをやってしまうと、軍・武警・公安の勤続年数や経験に対して序列に差が出てしまいそうだ。組織内での序列の乱れは、不平不満のもととなる。
では、国家海洋局・中国海監の法執行隊員たちが、軍人となるのだろうか?
有事ならともかく、組織体制が変わっただけで、一方的に徴兵できるわけはない。
中国の兵役法では、満18才の男性は兵役登録し、22才までに兵役に服する可能性があると定められている(実際には、志願者だけで新兵枠が満たされている)。
彼ら/彼女らは、公務員試験に合格し、公務員として就職した。母港の地元で雇用された普通船員もいるし、近頃の3000トン級以上の大型海警船の建造と配備にともなって、民間の大型船の船長経験者の雇用もされていた。
そもそも、中国海監の隊員たちが船から下ろされるとしたら、その隊員たちの仕事が無くなってしまう。
これまで3000トン級や4000トン級の船の船長や航海士などの人材が、これからは500トン級近海海洋調査船になる?そうだとしても、船の数が足りない。
乗り組む船が無いなら、陸に上げられて事務や労役?転職?
今年6月、国家海洋局の東シナ海を管轄する東海分局の、党組織建設(党建)指導グループ会議が、武警・海警総隊への隷属を前に開かれた。
会議では、まず、分局の各レベルの党組織・指導幹部は、海警への隷属の重要性と複雑性、困難さと不確定性を理解して、中央の決定を完全に実施し、思想でも行動でも海警への隷属という改革を支持することを求めた。
指導幹部には、現場の状況をよく把握して問題を見つけ解決し、誰もが改革を支持する雰囲気を作り、党員が個々人を教育し指導することを求めている。そして、海警部隊から離職や引退した人員の考えを落ちつかせることを重視しているのが面白い。
东海分局召开党建工作领导小组会议 就做好海警转隶期间党建和思想政治工作提出四点要求 - 国家海洋局东海分局
(中国海監東海航空支隊より)
あくまでも当ブログ管理人のイメージなのですが・・・😊
中国海警局が武装警察部隊(武警)に隷属しても、いまのところ、実際には、中国海警局の公船には、海監や漁政の、その船舶の来歴を反映した法執行隊員や普通船員が乗り組んで動かしているだろう。
(南海分局や、〜省の省総隊では、軍隊色が強いなど違いはある。)
徐々に、武警の存在感と影響力が増していくと思うけれども、いきなり数ヶ月で変わるものでもないだろう。海警総隊本部ビルと、保障基地と専用埠頭の整備も必要となりそうだ。
とりあえず餅は餅屋にまかせて、船艇の運用より先に、海警船のヘリポートを使った、武装警察のヘリと特殊部隊による、海上でのテロの鎮圧訓練が行われる、のではないだろうか。
どちらかというと、韓国の海洋警察庁ネタみたく、泳げない武警の海警隊員というようなB級中国海警局ネタが出てこないかなあ、と期待しています。😊