【アフリカ豚コレラ】ロシアでは200万頭、全豚の8.3%を殺処分？｜サッカー・ワールドカップで中国へ拡大か？（２／２）

20180827224001 （農林水産省）

8月3日、中国の遼寧省瀋陽市で、アジアではじめてのアフリカ豚コレラ(ASF)の発生が確認されてから、発生した省は増え、9月14日には内モンゴル自治区での発生が発表されました。9月24日までに、８つの省の20の市区でのASF発生が発表されています。

（続きです。タイトルは同じにしましたが "ロシアでは200万頭、全豚の8.3%を殺処分？ "という部分は前半部分です。）

アフリカ豚コレラ、ロシアでは200万頭、全豚の8.3%を殺処分？｜サッカー・ワールドカップで中国へ拡大か？（１／２） - pelicanmemo

アフリカ豚コレラについて：農林水産省

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中国のアフリカ豚コレラ(African Swine Fever, ASF)の発生について、どうも、米中貿易戦争というホットな話題と絡めて、中国のアフリカ豚コレラが発生した、というストーリーを語りたい人が多いよう。

「2018年7月に、中国はロシアから豚肉24万トンを輸入」はデマです。

ロシアからの豚肉の輸入は認められていません。密輸でというならべつですが。

中国のアフリカ豚コレラ、ウイルスはロシアから？｜ロシアから中国への豚肉輸出は無かった誤発表、フェイク・ニュース、そして陰謀論へ - pelicanmemo (2018-08-31)

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中国の海関総署（税関）の統計によると、7月の豚肉の輸入量は88,163トン。

2018年上半期の、中国の豚肉の輸入元は、ＥＵ（欧州連合）が６割以上、次いで、カナダ、ブラジル、米国、チリ。
米中貿易摩擦によって、米国からの豚肉輸入は大きく減りましたが、ゼロになったわけではありません。減った分は、EUと南米、特にブラジルからの輸入が大きく増加しました。ロシアからの輸入はありません。

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（三）６割以上がＥＵからの輸入となり、カナダと米国からの輸入は大幅に減少し、ブラジルからの輸入が倍増した。
2018年上半期、中国の豚肉の輸入は、ＥＵからの輸入が40.5万トン（3.6%減少）で全体の62.5%を占める。カナダと米国からの輸入がそれぞれ8.6万トン（16.5%減少）と6.5万トン（27%減少）。ブラジルからの輸入が6.8万トンで1.3倍に増加した。（抄訳）

（三）6成以上自欧盟进口，自加拿大和美国进口大幅减少，自巴西进口倍增。上半年，我国自欧盟进口猪肉40.5万吨，减少3.6%，占62.5%；自加拿大和美国分别进口8.6万吨和6.5万吨，分别减少16.5%和27%；自巴西进口6.8万吨，增加1.3倍。

（赤字強調は管理人による）（日本語訳では表現を少し整理した。）

上半年我国猪肉进口量小幅减少 - 中华人民共和国海关总署 (.docファイル）(http://www.customs.gov.cn/eportal/fileDir/customs/resource/cms/2018/09/2018090716502573548.doc)

（14）2018年7月进口主要商品量值表（人民币值）

海关总署：5月我国猪肉进口量减价跌近6成自欧盟进口 - 中国网

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ロシアから中国本土への豚肉輸出は承認されておらず、基本的には禁止されています。昨年、輸出再開があるかもしれないという報道もありましたが実現していません。

ロシア全国食肉協会のセルゲイ・ユーシン（Сергей Юшин）執行委員長は、2018年4月の、米国と中国との貿易摩擦に関するインタビューの中で、ロシアの豚肉の中国への輸出は承認されていない、米中貿易摩擦をチャンスとして、中国への牛肉・鶏肉など食肉の輸出量を増やし、豚肉の輸出を再開させたいと話しています。

そのために必要なのは、まずアフリカ豚コレラ(ASF)への対策と、次に輸出肉のトレーサビリティと話しているようです。（ロシア語からのネット翻訳なので少し曖昧）

I would be cautious in optimistic forecasts, since a number of issues with security at the epizootic level have not been solved yet. Russian pork - and in general meat - is not yet allowed for export to China. (google translate)

Я бы был осторожен в оптимистических прогнозах, так как до сих пор не решен ряд вопросов с безопасностью на уровне эпизоотии. Российская свинина — да и вообще мясо — пока не разрешена для экспорта в Китай.
（赤字強調は管理人による）

Сергей Юшин: «От разногласий между США и Китаем скорее выиграют канадцы и европейцы» — Агроинвестор（セルゲイ・ユーシン：米国と中国との対立から利益を得るカナダとヨーロッパ）

ただ、香港への豚加工品の輸出は承認されたのかもしれません。

（追記 2019/05/18：ロシアから香港への、豚肉、牛肉、豚肉や牛肉の内臓の輸出を、再開するための手続きが、大詰めにさしかかっている。（Россельхознадзор (2019/05/06)））

アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスは、豚肉や豚加工品の、冷凍肉で１年以上、加熱温度と時間が不十分の場合や保存期間が短かい薫製や塩蔵製品（ハムやソーセージ、サラミ、ジャーキーなど）では数ヶ月、感染性を残したまま残ります。

韓国の、仁川国際空港と済州空港で発見されたASFウイルスは、中国のASF発生した遼寧省瀋陽市で購入したソーセージとスンデ（朝鮮の腸詰め、ブラッド・ソーセージ。豚の腸にもち米と豚の血などを入れる）から。

韓国の空港で「アフリカ豚コレラ」、旅行者の荷物の餃子と腸詰めからウイルスを検出中国の遼寧省から - pelicanmemo (2018-08-28)

アフリカ豚コレラについて：農林水産省

ロシアにおけるアフリカ豚コレラの発生について：農林水産省

Россельхознадзор / АЧС / Африканская чума свиней （"ロシア連邦動植物検疫監督局の公式サイトによる、アフリカ豚コレラの流行状況（記事公開時点の、最新アップデートは9月24日版））

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ロシアでは、西部のヨーロッパ側（ヨーロッパ・ロシア）で、アフリカ豚コレラ(ASF)の発生が頻発しています。

東欧の国々、特にバルト３国（ラトビア、リトアニア、エストニア）やポーランド、ウクライナ、モルドバ、ルーマニアなどで、野生のイノシシと飼育豚でのASF発生が多い。ベラルーシもでしょう（注：地図上で、ベラルーシが空白地帯なのは情報を出していないから）。

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（ロシア連邦動植物検疫監督局（Россельхознадзор (Rosselhoznadzor)）, 2018年9月17日）

Эпизоотическая ситуация по АЧС на территории Российской Федерации и стран Восточной Европы. Данные МЭБ с 2007 по 2018 гг.（ロシア連邦および東ヨーロッパ諸国におけるアフリカ豚コレラ(АЧС)の流行状況。 2007年〜2018年。OIEデータ）（pdfファイル）
（注：赤い印は飼育豚で、青い印は野生のイノシシでの、アフリカ豚コレラ(АЧС)の発生例。以下同じ）

特に2017年末から2018年にかけて、バルト海沿岸のロシアの飛び地の領土であるカリーニングラード州で、野生のイノシシと、養豚場・農場との両方で多く発生しています。

近ごろのロシアでのASF発生は、主にここ。

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（ロシア連邦動植物検疫監督局（Россельхознадзор (Rosselhoznadzor)）, 2018年9月17日）

Эпизоотическая ситуация по АЧС на территории Российской Федерации в 2018 году（2018年の、ロシア連邦におけるアフリカ豚コレラ(АЧС)の流行状況）（pdfファイル）

そのカリーニングラードでは、州産の豚肉・豚加工品がASFウイルスに汚染されたまま流通してしまい（隠蔽があった？）、ロシア国内の６地域へ広がったという事件が発覚しています。

О выявлении референтной лабораторией по АЧС ФГБУ «ВНИИЗЖ» ДНК вируса АЧС в готовой - Россельхознадзор (2018-08-02)

Под Калининградом выявили сокрытие вспышки африканской чумы свиней :: Общество :: РБК (2018-08-17)

ロシア中部のチュメニ州でも、カリーニングラード州製の "карбонаде"（カルボネード。ソーセージ？サラミ？）から、ASFウイルスのDNAが検出されています。

Из тюменских магазинов изъяли опасные деликатесы — URA.RU (2018-09-19)

発覚していないだけで、以前にもあったのかもしれません。

ちかごろ、中国の感染症の専門家による、ロシアで開催されたFIFAサッカー・ワールドカップへの中国からの観戦客が土産として持ち帰った豚肉や豚加工品が、中国のASFの原因かもしれないという説が、中国の科学メディアで報道されました。

近日，中国农科院哈尔滨兽医研究所副研究员孙元在接受《中国科学报》记者采访时说：“非洲猪瘟（ASF）是由非洲猪瘟病毒（ASFV）引起的家猪和野猪的一种烈性传染病，死亡率高达100%，无疫苗，不感染人，是OIE法定报告动物疫病、我国重点防范的外来动物疫病。”
（中略）
专家表示，一个有可能的推断是，俄罗斯世界杯期间，国人出境看球赛，顺便从俄罗斯购回携带病毒的肉制品。这些肉制品未能全部食用，剩下的成为泔水。随后，用泔水喂养生猪，引发疫情。
（赤字強調は管理人による）

疾病、疫苗与养殖：对非洲猪瘟的反思

专家:非洲猪瘟或因世界杯期间带回的肉品携带病毒 - 澎湃新闻/新浪新闻
（澎湃新闻の元記事（http://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_2455627）は削除）

ロシアでのワールドカップの会場は、11都市（カリーニングラード、カザン、モスクワ、ニジニ・ノヴゴロド、サンクトペテルブルク、サマーラ、サランスク、ソチ、ヴォルゴグラード、ロストフ・ナ・ドヌ、エカテリンブルク）の12会場。

赤字の都市がある州・地方では、2017年・2018年にアフリカ豚コレラ(ASF)が発生しています。（注意：例えば"ソチ"の場合、ソチ市ではなく、ソチのあるクラスノダール地方のUst-Labinsky や Slavyanskyという意味。）

ロシアでのFIFAワールドカップの開催期間は、２０１８年６月１４日〜７月１５日。

中国ではじめてのアフリカ豚コレラ(ASF)の発表は、遼寧省の瀋陽市での８月３日。

法制日報によると、７月中旬から、高熱や嘔吐など類似の症状を示す豚が現れていた。

そして瀋陽市のASF発生した養豚場では、レストランやホテル、地域の学校や施設から集めた調理残滓や残飯を集めた "泔水" をエサとして与えていました。

とても興味深いタイミングといえるでしょう。

サッカー・ワールドカップと関係する、ヒトの感染症の例ではジカ熱。2015年に日本でも大きくニュースになった、ジカ熱のウイルスがオセアニアから南米へと流入したのは、FIFAサッカー・ワールドカップの観戦客の移動よるとも言われています。

2017年11月、吉林省のロシアとの国境で、冷凍豚肉4.7kgをカバンに入れて、手荷物として持ち込もうとした旅行者が検挙されたことが発表されました。

第一时间开展疫病监测，严防疫情跨境传入 - 吉林省畜牧业管理局

発表は、入境者への注意の意味もあると思います。どこの国でも、税関で検挙されるのは氷山の一角。その発表の前から、陸路での、個人の持ち込みや密輸による、ロシアの豚肉や豚加工品の、中国の黒竜江省や吉林省への流入があったのでしょう。