pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

韓国の空港で「アフリカ豚コレラ」、旅行者の荷物の餃子と腸詰めからウイルスを検出 中国の遼寧省から

20180827224001(農林水産省)

韓国、農林畜産食品部は8月25日、仁川国際空港で、中国から入境した旅行者が持ち込んだ豚加工食品(餃子とスンデ(朝鮮のソーセージ(*))」から、アフリカ豚コレラ のウイルスが検出されたと発表した。

中国でアジアではじめてアフリカ豚コレラ (ASF (African Swine Fever))が発生したことは、「ついに、ウチの近所にまで延焼してきた!」とイメージしている。
ついに、お向かいの家が燃えはじめてしまい、お隣の家に燃え移りかけてたのを辛うじて防いだところ。😰

 

日本の空港でも、水際で食い止めて国内へのウイルスの侵入を防ぐべく、懸命の対策が続けられています。これには、海外旅行者や訪日観光客だけでなく、その家族や関係者(地元のお土産とか)、個人輸入など、ひろく市民の理解と協力がとても重要となります。 

 

韓国でウイルス検出の25日のニュースは、韓国メディア(日本語版)で詳しい翻訳記事が出て、水際対策の例として伝わると思っていました。しかし、27日の公式発表を日本メディアが伝えてはいません。

日本語での情報が少ないようなので、これについて少し。前回の記事と合わせて、個人的なまとめ兼。

韓国政府は27日、中国遼寧省瀋陽から帰国した旅行者が持ち込んだ加工食品から、アフリカ豚コレラのウイルスの遺伝子が検出されたと明らかにした。加熱された食品で、伝染の可能性は低いという。聯合ニュースが報じた。

中国加工食品から豚コレラ 韓国 - 産経ニュース

日本農業新聞 - アフリカ豚コレラ 中国沿岸部で続発 異常時 早期通報を 農水省 (08月27日)
日本農業新聞 - アフリカ豚コレラ 官民挙げて侵入を防げ (08月25日)

アフリカ豚コレラについて:農林水産省 

Ads by Google

 


20180827224002(韓国、農林畜産食品部(농림축산식품부)

韓国農林畜産食品部の発表によると、今月3日、中国の遼寧省瀋陽市発の航空便に乗って仁川国際空港へ到着した。 旅行者が、自己申告した荷物の中の餃子とスンデ(朝鮮のソーセージ(*))を検査したところ、PCR検査で、アフリカ豚コレラ (ASF (African Swine Fever))のウイルスが検出された。

農林畜産食品部によると、「餃子とスンデは加熱されているので、ウイルスの感染性は低い」「3〜4週間の細胞培養検査で最終確認を行う」。
(*)スンデ(순대)は、豚の腸の中にもち米や春雨などと豚の肉・血を詰めて蒸した、朝鮮の食べ物。形はソーセージに近いので、"朝鮮のソーセージ"と簡単に書いた。

 

ポイントは3つ。

  • 水際で食い止められた例だが、空港や港で見つかるのは氷山の一画でしかない。
    日本国内に入ってくる豚肉・豚肉加工品の検疫も100%はありえない。社会や世間での周知と、旅行者、観光客や留学生等の当事者だけでなく、家族や周辺の人、ひろく市民の理解と協力が重要になる。
  • 中国で、アフリカ豚コレラが発生した農場がある遼寧省瀋陽市から、韓国ソウルへのフライト。8月3日の便。
  • 遼寧省瀋陽市の農場で、アフリカ豚コレラの発生が確定したのは8月3日。
    発生の確定前に、ASFウイルスに感染した豚肉が市場に流通していて、餃子やスンデ(朝鮮のソーセージ)などに加工されていたのだろう。

もし今後、新たに、中国の豚肉を使用した食品から、アフリカ豚コレラ (ASF) のウイルス(ASFV)が見つかった時は、中国国内の流通ネットワークにのっている危険性がある。さらなる対応を考えなければならない。

 

現在、多くの国で家畜の病気が発生しているため、肉製品や動物由来製品のほとんどは、日本へ持ち込むことができません。
不正な持ち込みは、罰則の対象となりますのでご注意ください。 

動物検疫所ホームページ


僕にお座りをさせないで!/動物検疫所からのお知らせ - YouTube
请不要让我坐下来!/動物検疫所からのお知らせ【中国語(簡体字)版】 - YouTube
請您不要讓我坐下來!/動物検疫所からのお知らせ【中国語(繁体字)版】 - YouTube

 

Animal quarantine information for travellers to Japan:動物検疫所

 

・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

世界のこれまでのASF感染拡大の例には、航空機(ドミニカ共和国、ブラジル へ)や船舶(イタリア、マルタ、ジョージア(グルジア)へ)から出た残飯などが原因となったものがある。
(ダニや野生の豚・イノシシによる感染可能性については、長くなりすぎるので、触れていません。)

また、ロシアのカリーニングラード州では、ASF発生した会社と行政の対応が遅れたため(隠蔽があった?)、ASFウイルス汚染された豚肉と豚肉加工品が流通して、大手スーパーマーケットにも流れ、ロシア連邦の6つの共和国・州に広まってしまった。(タタールスタン共和国、ムルマンスク州、トゥーラ州、スヴェルドロフスク州、リペツク州、ヴォロネジ州)

Мясо с вирусом африканской чумы свиней обнаружено еще в 6 регионах РФ - Vesti (2018.08.02) 

Заражённую АЧС калининградскую свинину обнаружили в шести регионах России (2018.08.02) 

 

中国の農業農村部・獣医局(兽医局)や省(市・自治区)の畜牧獣医部門では、アフリカ豚コレラ(ASF)が発生した地域や、リスクの高い省からの"生きた豚"と産品の移動の取り締まりをすすめている。

ASF発生した省と隣接している山東省と、同省の東部沿岸の重要な中心都市である青島市では、遼寧省や黒竜江省、吉林省、内モンゴル自治区など、ASFリスクの高い地域から域内への"生きた豚"や産品の流通を禁止した。

山东暂未出现非洲猪瘟疫情 已禁止引进高风险区的生猪及产品

青岛市农委多措并举应对非洲猪瘟疫情 - 青岛财经网

 

とはいえ、中国のこと・・・、ASF発生した農場の"無害化"処理した豚について、中国ネット・SNSを通して"いろいろな話"を見聞きしている。(どれが真実で、どれがフェイクか分かりにくい)

お世辞にも、中国社会や業界の意識が高くなったとは・・・言いにくいのが現実だろう。

 

中国、「アフリカ豚コレラ」拡大 すでに4.3億頭の豚が感染だって?(中国国内の豚は全部で約4億頭) - pelicanmemo 

 

 20180827224000(農林水産省)

 

・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・ 

国際獣疫事務局(OIE) では、アフリカ豚コレラ (ASF (African Swine Fever))のウイルスの感染性をなくす対策として、豚肉の調理で最低70℃で30分以上の加熱処理を求めている(飼料の場合は、70℃・30分以上または80℃・3分以上の加熱処理) (African swine fever: OIE)

普通の食生活で、生の豚肉(無菌豚などを除く)を、充分に加熱せず食べることは無いし、ヒトには感染しないので、まず心配する必要は無い。
その一方で、薫製や塩漬け、特定加熱食肉製品の指針では63℃で30分間の加熱なので、少し温度が低いから注意が必要。残飯や廃棄物による拡散が問題だ。

さらに、日本国内での指針なので、中国など外国で守られているという保証はない。

薫製や塩漬け肉(ハムやソーセージやサラミなど(国・地域によって名称は変わる))は、海外からのお土産としてポピュラーなものなので悩ましいところです。☺️

 

アフリカ豚コレラ (ASF (African Swine Fever))のウイルスは、肉や血液、排泄物などの中では長い間、感染性を失う事はない。

死亡した豚の血液や各種臓器、筋肉の中で3〜6ヶ月残存する。冷凍された豚肉内で110日間以上(*)、塩漬け生ハム中で140日以上、薫製や塩漬のハム等の中でも300日以上、感染性を失わないという報告がある。(*)冷凍の骨付き豚肉だと数年?
(以下省略。詳しいことは、農林水産省や検疫所、動物衛生研究所などの飼料をご参照くだしあ)

このため、豚肉の加熱処理、あるいは、乾燥処理した場合では、塩漬けは6ヶ月以上、塩漬け以外では12ヶ月以上の処理が求められている。
しかし、繰り返します、中国などで守られているという保証は、まったくありません。

 

 

・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・ 

中国では8月3日、遼寧省(瀋陽市)の農場で、アジアではじめてのアフリカ豚コレラ (ASF) の発生が確認された。
16日に河南省(鄭州市)の屠畜場で2例目が確認された。2000kmはなれた黒竜江省の市場から運ばれてきた豚だ。次いで、19日に江蘇省(連雲港市)、22日に浙江省(温州市)で、相次いで確認された。

生きた豚や豚肉・豚加工品が長距離を輸送されて流通したことで、拡散の速度が非常に早い。

 

地方紙 "遼寧日報"の記事によると、瀋陽市でアフリカ豚コレラ (ASF) が確定した農場は、市内の別の農場(王某)から7月5日に45頭を購入した。潜伏期間15日に発病〜死亡1~2週間かかったとすると、死亡は7月末から8月初めになる。だいたい合っている。

農場(王某)は、3月24日に吉林省の吉林市船营区の農場から100頭を購入し、トータルで280頭を飼育していた。4月になって発病や死亡する豚が出たが、45頭と他の豚はブローカーを通して売却したそうだ。売却先は特定されている。感染経路は調査中。

遼寧省・吉林省と接する、北朝鮮の情報は無い。

 

仮に、アフリカ豚コレラ (ASF)ウイルスに感染した豚が出荷されて加工され、市場に出ていているとすると、3月後半から8月までの期間に、遼寧省・吉林省・黒竜江省で、製造された豚肉加工食品の中にウイルスが存在するリスクが、比較的に高いものがあるだろう。

発生までの状況は、複雑な経緯をたどる。3日に確認された1例目の遼寧省のA農場は、同省内のB農場から45頭を導入。B農場からもASFウイルスが見つかり、周辺の豚を殺処分している。B農場は3月下旬、吉林省のC農場から100頭を導入したことも判明した。中国政府は関連を注視し、調査に入った。

1例目から2週間ほど過ぎた16日、河南省のと畜場で2例目が確認された。感染豚は、2000キロ離れた黒龍江省の市場から運ばれていた。
(赤字・強調は管理人による)

日本農業新聞 - アフリカ豚コレラ 中国沿岸部で続発 異常時 早期通報を 農水省

辽宁:非洲猪瘟疫情稳控在沈阳 其他地区未发现异常 - 新华网 (2018-08-15)

中国(辽宁)自由贸易试验区沈阳片区管理委员会 - 辽宁日报 (2018-08-16)

 

次に注目するのは、遼寧省瀋陽市で、アジアではじめてのアフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスを確認という、中国社会にとって極めて重大であり、国際的にも充分な対応が求められる、中国共産党・政府当局のこれからの対応だ。 

 

当ブログは、中国のH7N9鳥インフルエンザの流行に、特に注目して追いかけてきました。その経験から、実は、中の人は、中国の衛生当局の対応を、楽観はしていないけれども、悲観をしているわけでもありません。(家禽より豚の方が大変な気もしますが)

H7N9鳥インフル カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo 

この前の2017年-2018年シーズンには、H7N9鳥インフルの感染者数は大きく減少し、卸売市場や農場でのウイルス確認例も非常に少なくなった。

はじめてのヒト感染例が確認されてから3〜4年がたち、中国当局の対応が組織的にこなれてきたところに、2017年からはじまった強制的なワクチン接種が功を奏したようです。

 

アフリカ豚コレラに、ワクチンは無い。

 

日本メディアの報道は、人間には感染しないからか、とても少なく、緊張感もあまり感じられない。

"対岸の火事"ではない。

 

アフリカ豚コレラについて:農林水産省

動衛研トップ > 疾病情報 > 家畜の監視伝染病 > 家畜伝染病 > アフリカ豚コレラ

アフリカ豚コレラQ&A | 農研機構

アフリカ豚コレラ (ASF) - JICA ウガンダ「家畜疾病対策計画」プロジェクト(「アフリカ豚コレラの知識: 野外応用マニュアル」から抜粋)

家畜防疫・衛生指導 - 中央畜産会

African swine fever: OIE - World Organisation for Animal Health

アフリカ豚コレラ - Wikipedia

African swine fever virus - Wikipedia

日本農業新聞 - アフリカ豚コレラ 中国沿岸部で続発 異常時 早期通報を 農水省 (08月27日)
日本農業新聞 - アフリカ豚コレラ 官民挙げて侵入を防げ (08月25日)

 

아프리카돼지열병, 중국 여행객 휴대 축산물서 검출(アフリカ豚コレラ、中国旅行者の携帯の畜産物で検出)- 中央日報 (2018.08.25)
[정치]"아프리카돼지열병 바이러스 확진...전염 가능성 작아" (アフリカの豚コレラウイルス感染...感染の可能性小さい ) - YTN (2018-08-27)
아프리카돼지열병 바이러스 유전자 확진…정부 총력대응(종합) (アフリカの豚コレラ・ウイルスの遺伝子と確定... 政府総力対応) -  聯合ニュース (2018/08/27)
정부 "아프리카돼지열병 확진…축산물 불법 반입 과태료↑" - 조선닷컴 (政府「アフリカ豚コレラ確定...畜産物の不法搬入の罰金ひきあげ」) - 朝鮮日報 (2018.08.27)

韓国で中国から持ってきた餃子からアフリカ豚コレラ・ウイルスを検出|カイカイch

 

韓国、農林畜産食品部(농림축산식품부)

アフリカ豚コレラ予防緊急行動規範/報告案内 - 農林畜産食品部ブログ(아프리카 돼지열병 예방 비상 행동수칙 / 신고안내)

 

アフリカ豚コレラに国際的な協調措置が急務-ユーラシア大陸に広がるアフリカ豚伝染病は世界的な脅威とみられる | FAO駐日連絡事務所

ロシア連邦におけるアフリカ豚コレラの現状:欧州および欧州を越えるリスク要因(前編)― 2013年8月 - 農畜産業振興機構

ロシア連邦におけるアフリカ豚コレラの現状:欧州および欧州を越えるリスク要因(後編)― 2013年9月 - 農畜産業振興機構

 

アングル:中国襲う「アフリカ豚コレラ」、アジア拡散防げるか | ロイター 

检验检疫部门提醒:出境游携带物品要注意检疫规定-新华网

感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)

感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)