pelicanmemo

海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【アフリカ豚コレラ】 中国での ASF 発生から1周年

20190804210229非洲豬瘟資訊專區

2018年8月3日、中国の遼寧省瀋陽市で、アジアではじめての、アフリカ豚コレラ(African Swine Fever, ASF)の発生が発表されてから1年がたった。🐷

ツイッター(@pelicanmemo) の方では、1年近く、日本語で報道されないアフリカ豚コレラ(ASF)の情報を紹介してきたけれども、中国についてはまとめていなかった。
これについて少し。(まとめきれてないけど)😊

 

🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖

農業農村部によると、2019年8月1日までに147件のアフリカ豚コレラ(ASF)の発生があり、116万頭余りが病死・殺処分や屠畜された。

31の省・直轄市・自治区の全てで発生が確認された。その後に、発生後30日〜90日のASF再発生が無かった25省・市・自治区の自治体では疫情封鎖が解除されている。(*1)
香港とマカオの特別行政区では、区内でのASF発生は起こっていないが、香港の屠殺場で、中国から輸入した豚の発症とASFウイルスが2度確認された。
(*1) 農業農村部からの7月3日の"公式発表"をもとに、8月1日までの分を加算した。中国の公式発表に対して、台湾や日本による発表は集計基準が違うため数字に若干の違いがある。

 

農業農村部は、アフリカ豚コレラ(ASF)は「おさまりつつある」「総合的にコントロールできている(总体可控)」と発表している。
"アンダー・コントロール"、と言っているわけだ。🙄

その一方で、国務院から今年7月23日、新たに、アフリカ豚コレラの防疫コントロール工作への“意見”が発表され、防疫と養豚・豚肉生産への、さらに強い全体的な対策が求められている。

 

では、当局の公式発表ではない、中国のアフリカ豚コレラ(ASF)の状況はどうなのか?

 

ひと言で書くと、感染症の、初期の発見と封じ込めと治療に失敗し、かなりの重態に陥ったようなものだと思っている。

ヒトの病気にたとえるなら、麻疹(はしか)やインフルエンザなど感染力の強いウイルスに感染して、重症化し、全身症状まで進行してしまった。
強い薬を投与し続けることで、なんとか、高熱は下がって症状は緩和して見えるが、ウイルスは体内に残っていて完治にはほど遠い。副作用はとても大きく、体力や耐久力は大きく削がれている。

それでも、最悪の時期と比べれば症状の悪化はしていないので、ASFを「総合的にコントロールできている(总体可控)」、そういうことだろう。 

 

しかし、この感染患者、困ったもので、体調がすこし良くなったら動き出して、ウイルスをまきちらしている。

入院して隔離されると、いろいろと困るのだろう。「もう、熱は無い」「治った」「薬が効いた」「医者は大丈夫と言っている」と吹聴しているが、基本的に自分勝手で、ウソをつく。
(上に政策あれば下に対策あり(上有政策下有对策)という言葉もある)

本当の事はごまかしたり、発熱があっても体温計を正しく使わなかったり、記録をつけようとしない。熱が下がったら下がったで、薬の時間や量や治療をさぼったり、不摂生な生活に戻っていて、医者にも嘘を言っているよう。こんな感じ。😊

 

 

この後、少し長いだろうから、簡単に3行。

・中国で確認されたアフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスは、3種類。

・中国で感染拡大しているASFウイルスは、東欧〜ロシア西部で流行したものと似ており、2017年のポーランドのASFウイルスとの類似性が最も高い。

・中国でのASF発生の件数は、公式発表の数よりもかなり多い。

自治体や養豚業者のレベルで、一部で、発症や死亡の隠蔽や検査のごまかしが行われている。その結果として、公表されない発症と殺処分や埋設、検査なしの早期出荷が行われている。ASFウイルス汚染された豚肉が市場へ流れることとなる。
省当局や農業農村部、政府や党中央も、当然知ってるけど、養豚政策や豚肉生産とのバランスを重視して知らないふりを続けているのだろう。

 

アフリカ豚コレラ カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖  

Ads by Google

 


20190420091519

中国で確認された、アフリカ豚コレラ(African Swine Fever, ASF)のウイルスは3種類。

(1)中国全土の飼育豚で広く感染拡大しているASFウイルス、(2)東北地域の吉林省で野生のイノシシの死骸(1頭)から発見されたASFウイルス、(3)南部の広西チワン自治区ではじめて発見されたASFウイルス、の3つが発表されている。

 

吉林省の、ASFウイルスが確認されたイノシシは、中国国外から移動してきた(北朝鮮から?)と推測される、と発表があった。

広西チワン自治区の貴港市のウイルス株は、世界ではじめて発見された型。報道された時期から、2017年3月の貴港市での最初のASF発生例だろう。
このASFウイルスとその感染性が、広西および周辺でのASF発生と感染拡大や、ベトナムの北部から始まったASF発生との関連があるのかどうなのか、詳細は不明だ。(...もしかしたら?🙄)

我国目前非洲猪瘟的流行毒株都是基因Ⅱ型,但又能细化为三个不同的毒株,最原始的是白山野猪分离的毒株,与东欧最早的流行毒株相同;第二个是沈北的家猪毒株,是国内和东欧目前最主要的流行毒株;第三个是广西贵港分离的毒株,是全世界首次发现的毒株。
报告显示,我国非洲猪瘟从发病到报告平均为10天,最长3个多月。
非洲猪瘟疫情受控制 全国解除封锁超百起 - 新京报网

【アフリカ豚コレラ】 中国・吉林省の野生イノシシで初確認 北朝鮮から侵入か? - pelicanmemo (2018-11-26)

【アフリカ豚コレラ】 北朝鮮、発生している可能性が高い地域 【地図】 - pelicanmemo (2019-06-05)

 

中国全土の飼育豚に広く拡散しているアフリカ豚コレラ(ASF)のウイルス(2018年9月に黒竜江省の豚から分離(Pig/HLJ/18))は、東欧〜ロシア西部で流行したASFウイルスと似ている(*2)。特に2017年のポーランドで分離されたASFウイルス(PoL/2017 (GenBank: MG939588.1))との類似性が非常に高いと発表された。

ASFVs prevalent in Eastern Europe (Figure 3). However, the full genome sequence analysis recently reported by Wen et al. [14] showed that Pig/HLJ/18 has the highest similarity with the sequence of an ASFV isolated in Poland in 2017 [PoL/2017 (GenBank: MG939588.1)], and a comparison with the sequences of Georgia/2007/1 (GenBank: FR682468.1) and ASFV-SY-18 (GenBank: MH766894.1), revealed that nucleotide insertions, deletions, and mutations had occurred at multiple positions in the genomes of the PoL/2017 and Pig/HLJ/18 viruses.
Replication and virulence in pigs of the first African swine fever virus isolated in China

(*2) ロシアでは2017年に、極東地方のイルクーツクで1件の発生があった。このことから、ASFウイルスはロシアを西から東へ徐々に拡散していき、イルクーツクから中国へと伝播したと、まことしやかに語られている。

しかし、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスは、人間社会の経済活動により、飛行機や船に乗って “ジャンプ” することがある。

当ブログ管理人は、ロシアの西の果ての飛び地、カリーニングラード州の豚肉加工品の、ロシア国内の輸送(陸送)と輸入(違法持ち込み)による中国へのASFウイルスの伝播を、“ジャンプ”した可能性を提示している。😊(中国国内の流行とは話がズレるので余談)

【アフリカ豚コレラ】 ロシアでは200万頭、全豚の8.3%を殺処分? | サッカー・ワールドカップで中国へ拡大か?(2/2) - pelicanmemo (2018-09-26)

中国のアフリカ豚コレラ、ウイルスはどこから? ロシア当局「EUからの輸入豚肉が原因・・・」 - pelicanmemo (2018-09-16)

アフリカ豚コレラ カテゴリーの記事一覧 2ページ目 - pelicanmemo

🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖

 

 

20190424054806

 

農業農村部から発表される、アフリカ豚コレラ(ASF)の発生件数は、2018年10月のピークから2019年1月にかけて減少した。

2019年は、4月・5月に南部での発生件数が増加したが、6月に6件、7月に6件と、公式発表では多くは発生していない。あくまでも “公式発表では” 、だが... 🙄

農業農村部は、アフリカ豚コレラ(ASF)は「おさまりつつある」「総合的にコントロールできている(总体可控)」と発表した。
状況はコントロール下にある、"アンダー・コントロール"だと言っているわけだ。

 

実際には、ひと言で書くと、ウイルスの封じ込めに失敗した。

初期に、適切な対策が立てられていれば軽症で済んだが、全身症状まで進んで重態に陥っている。

徐々に強い薬を投与しているが、逐次投入であり、後手後手に回っている。副作用も大きく、体力と持久力を大きく削いでいる。症状を出させないようにしているけれども、完治にはほど遠い。

 

「ASF疫病区(疫区)3kmと制限区10kmの設定」「消毒の徹底と移動制限」「ASF発生した自治体からの生きた豚の運搬禁止」「省間の生きた豚の運搬制限」「産地偽装と検疫証明書等の偽造の厳罰化」「屠殺時に採取される豚の血(血漿蛋白粉)の動物飼料化の禁止」「残飯・食物残さの豚の餌への全面禁止」「違法な屠殺行為(私屠滥宰)の摘発強化」等等等々、さまざまな防疫工作を行ってきても、ASF発生は止まらない。
ただ禁止するだけでなく、「責任の所在の明確化と厳罰化」も行い、「省庁横断的な対策を行っている」が、それらは戦力の逐次投入であり、段階的に厳しくしていると感じている。
(当ブログ管理人は、“残飯・食物残さの豚の餌への全面禁止”が、抑止効果が高かったと思う。)

 

 

それでも、今年になって、農業農村部は、アフリカ豚コレラ(ASF)は「おさまりつつある」と発表することが出来る状態にはなった。

あくまでも “公式発表では” 、だが... 🙄

その一方で、国務院から今年7月23日、新たに、アフリカ豚コレラの防疫コントロール工作への“意見”(国务院办公厅关于加强非洲猪瘟防控工作的意见)が発表され、防疫と養豚・豚肉生産への、さらに強い全体的な対策が求められている。

副作用が大きかった。

 

アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスによる、感染した豚の病死と感染した群れの殺処分という直接の影響だけでなく、発生リスクを恐れての早期出荷や、バイオセーフティのレベルの低い養豚場や零細の養豚農家(backyard)の養豚からの撤退や停止という間接の影響が、中国の豚肉生産に非常に大きな影響を与えている。

農業農村部によると、6月の豚の飼育頭数は,昨年同月比で約26%減少と発表された。オランダの金融機関ラボバンクは今年7月末に、40%減少しているというアナリストの推計を発表している。
財新网が報じた養豚業界の統計によると、中国の94の中核的繁殖センターの半分以上が影響を受けており、当局による母豚や子豚の移動規制の強化もあって、養豚農家は補充が難しくなっているそうだ。

China's pig herd may shrink by 50% due to African swine fever: Rabobank - Reuters

 

中国の豚肉の生産〜流通のラインに、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスは入り込んでいる。

 

🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖

 

20180827224004

 

中国の豚肉の生産〜流通のラインに、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスは入り込んでいる。 

 

倉庫の冷凍豚肉や、加熱の弱い豚肉加工食品などの中で、ウイルスは感染性を維持したまま、数ヶ月から2〜3年、“時限爆弾”のように残り続けるだろう。

台湾や日本、韓国、その他の国の空港・港の税関で見つかった豚加工品や豚肉を使った製品から、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスのDNAが検出され続けている。これは氷山の一角でしかない。

 

もしも、中国当局が、養豚場・養豚農家での新たなASF発生を抑え込めていて、新たなASFV汚染豚が、豚肉生産〜消費に再供給されなかったならば、調理の加熱と消費によって希薄化されていたかもしれない・・・、
しかし、残念ながら、ASFウイルスに汚染された豚肉の再供給は続いており、アフリカ豚コレラのウイルスとの戦いはさらに長く続きそうだ。

 

NYTimesやWSJなど欧米メディアや、多くはないが財新網など中国メディアや香港メディアで、豚の発症や死亡の隠蔽や、検査のごまかしなどが報じられている。

 

財新網の7月5日付記事は、南部の広西チワン族自治区や広東省、貴州省での取材をもとにして、養豚業者(farm)・養豚農家(backyard)が、飼育している豚で起こった発症や死亡を報告しても、行政当局は聞く耳をもっていないと報じている。
そこで養豚業者・農家は、発症の初期症状が出たら豚を殺処分して捨てざるをえなくなったり、さらに悪いケースでは、早期出荷されてしまい、他の地域・省の屠殺場へ安価で売り払われていったそうだ。

In Depth: How Secrecy and Loopholes Fueled China’s Swine Fever Crisis - Caixin Global

 

今年の4月から5月にかけて、広西チワン族自治区や、隣接する広東省の南部の自治体で、こっそりと豚の死骸が空き地や山や川に捨てられているという、“報道されない”ニュースが、中国ネット・SNSで広く拡散されていた。
しかし、その一方で、農業農村部からは、その時期のASF発生の発表は無かった。

今年7月17日、中国南部の広西チワン自治区では、複数の自治体で、屠殺場の操業停止と市場での豚肉販売を禁止が発表されている。
しかし、その一方で、農業農村部からの、7月の広西チワン自治区でのASF発生の発表は2件(死亡744頭と147頭)だけだった。

南部で、新たな感染拡大が起こっているのではないか?という悪い予想も出てきていた。

 

似た話は、2018年8~10月の浙江省(温州市)でもあった。ASF発生が1件しか公式発表されていない(しかも2019年2月にだ)山東省でも疑われていた。

中国のどこでも起こり得た話で、起こっていたのだろう。

当局の規制が厳しくなったので収まっていたが、今年4月からは、中央の目が届きにくい南部の広西〜広東〜貴州で起こり、感染拡大が起こっているのかもしれない。

 

ただ、ひとつ注意が必要なのは、養豚場で豚が死亡したとしても、それがアフリカ豚コレラ(ASF)が原因とは限らないということ。病死はけっこうある。かなりある。それが、衛生状態の悪い養豚場ではなおさらだ。

近頃はさらに、「炒猪」行為が問題とされている。

🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖 🐖

 

 

近頃はさらに、「炒猪」行為が問題とされている。

 

ついに当局の規制は、豚肉チャーハンに、中国料理にまで及んでしまったのか? 🤪

 

( ;゚Д゚)なっ、なんだってー!? 

 

20190805193739 

 

 

 

、では無くてーw 😊

 

犯罪集団「炒猪」団が、養豚場に豚の死骸を投げ入れてから、「あの養豚場でアフリカ豚コレラ(ASF)が発生した!」と噂を流す。すると、そこの養豚場の豚は買われなくなってしまうので、豚を安く買い叩くという犯罪行為だそうだ。
中国のブラックな面を見るような話だ。

 

「炒猪」は、捏造や過剰宣伝など意味する言葉「炒作」に通じる。

日本語に無理に訳すなら「地上げ」ならぬ「豚上げ」、いや、値下がり狙いだから「豚下げ」だろうか?(いまいちw😊

农业农村部发布通知要求严厉打击“炒猪”行为-新华网

 

新華社など党中央の宣伝媒体が大きく報道しているので、養豚行政や豚肉生産に対して社会的悪影響が高いと考えられているのだろう。

とくに海南省で起こっているらしい。
いかにもな、中国のブラックな面を見るような話だ。

ただ、いきなり出てきた話題なので、公式発表にないASF発生の噂は「炒猪」団の捏造でデマだと転嫁するための、党政府側のごまかし?という陰謀論も考えたくなってくる。

虚々実々。 🙄

 

養豚(肥育豚と繁殖母豚)の状況、豚肉生産量や豚肉価格については、長くなりすぎるので、あまり触れませんでした。

主に、ASFウイルスの話を書いてみた。 

广西多地关停屠宰场 部分市场禁止销售猪肉|农产品_新浪财经

湖南公布86个屠宰场污染情况:非瘟核酸阳性率12.8%

非洲猪瘟疫情受控制 全国解除封锁超百起 - 新京报网

农业农村部发布通知要求严厉打击“炒猪”行为-新华网

农业农村部要求 有力打击有效防范“炒猪”行为 - 新华网

A Vicious, Untreatable Killer Leaves China Guessing - The New York Times

In Depth: How Secrecy and Loopholes Fueled China’s Swine Fever Crisis - Caixin Global

China's pig herd may shrink by 50% due to African swine fever: Rabobank - Reuters

ほかいろいろ。