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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

ソメイヨシノ韓国起源説、ゲノム解析によって否定。 その後の、韓国の報道は?

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(日本・国立研究開発法人森林総合研究所・日本のソメイヨシノ)

春、暖かくなり、ソメイヨシノの開花予想も発表されました。

台湾や中国、韓国のニュースでも、花見の名所の情報や桜祭りのスケジュールなど、にぎやかになっています。

この時期になると思い出すのが、韓国で盛んに喧伝されていた「ソメイヨシノは韓国の済州島起源説」。

 

昨年(2018年)9月、韓国の研究チームがゲノム解析の結果を発表し、日本のソメイヨシノや日本から米国のワシントンDCに移植されたソメイヨシノと、韓国の済州島に自生する王桜(왕벚나무)は、異なる種であることが確認されました。

もっとも、これって、日本の研究者によって研究されていて、これまでに何度も、異なる種だと発表されてきたことなんですけどね。😐

その後、韓国の報道はどうなったのか? これについて少し。

日本のソメイヨシノの起源は済州(チェジュ)にあるという主張が提起されてきたが、ゲノム分析を通じて日本のソメイヨシノと済州の「ワンボンナム(王桜)」は異なる種であることが確認された。これを受け、110年間続いてきた論争はやや呆気なく終止符を打つことになった。

(赤字強調は管理人による)

済州か日本か…ソメイヨシノ起源めぐる110年論争に終止符 | 中央日報

 

ひとことで書くと、あれほど盛んに「ソメイヨシノは済州島に自生している王桜と同じ種だ」「日本のソメイヨシノは韓国が起源だ」「日本がー...」と喧伝していた論調は、見かけなくなりました。

しかし、長年続けてきた、間違いを正しい歴史として煽り続けてきた報道を、自ら反省するような論調はいまのところ見かけていません。(*1)

(当ブログ管理人、この日本のソメイヨシノの韓国起源"珍"説について、いいかげんな韓国メディアの記事や評論文を多く見てきたので、不快感を隠そうとは思いません。(中には、比較的に適切な論調の記事もあったが))(*2)

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(韓国・文化財庁、済州島、シンリェリ(新礼里)の왕벚나무(王桜)(天然記念物第156号)より)
「韓国の王桜(왕벚나무)」は、「日本のソメイヨシノ」と比べると、花は少し大ぶりで、赤みが強いように感じられる。個体差も大きいようだ。

 

韓国の中央日報(日本語版)の記事では「シダレザクラを母系」と書かれていますが、中央日報の原文では「올벚나무」で、「エドヒガン」(学名: P. pendula f. ascendens )が母系です。
中央日報(日本語版)の(、縁もゆかりもない間違いとまでは言いませんが、)誤訳ですね。

済州か日本か…ソメイヨシノ起源めぐる110年論争に終止符 | 中央日報

特に今回のゲノム分析の結果、済州の王桜は済州に自生するシダレザクラを母系、ヤマザクラを父系として誕生した第1世代(F1)自然雑種と確認された。

また、日本東京と米国ワシントンなどで育つ日本のソメイヨシノのゲノムと比較分析した結果、済州の王桜と日本のソメイヨシノは明確に異なる別の植物であることが分かった。日本のソメイヨシノはシダレダクラを母系、オオシマザクラを父系とし、数百年前に人為的な交配を通じて作られた雑種という。済州の王桜と日本のソメイヨシノはともに雑種だが、別の種だ。

(文字は原文ママ。赤字強調は管理人による)
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제주도? 일본?…왕벚나무 원산지 110년 논란 종지부

특히 이번 유전체 분석 결과, 제주도 왕벚나무는 제주에 자생하는 올벚나무를 모계(母系)로 하고, 벚나무 또는 산벚나무를 부계(父系)로 해서 탄생한 1세대(F1) 자연 잡종인 것으로 확인됐다.

(赤字強調は管理人による)

올벚나무 - wikipedia(韓国語)  | エドヒガン - Wikipedia

Draft genome sequence of wild Prunus yedoensis reveals massive inter-specific hybridization between sympatric flowering cherries | Genome Biology | Full Text

(*)当ブログ記事では、日本のソメイヨシノと、韓国の済州島に自生する王桜(왕벚나무)とを区別するため、「日本のソメイヨシノ」「韓国の王桜(왕벚나무)」と書いてきています。 

 

この結果は、これまでの日本の研究によって発表されています。 

大正時代の初期に、アーネスト・ヘンリー・ウィルソン氏がエドヒガンとオオシマザクラの交雑予想説が発表され、国立遺伝学研究所の竹中要博士によって交雑種であることが突き止められました。

日本の伊豆半島でのオオシマザクラとエドヒガンとの自然交雑種が、江戸の染井の植木屋に何かの機会に持ち込まれたことで栽培され、日本全国へ広まったと考えられています。

20170403190942森林総合研究所 (pdf)より。赤字書き込みは管理人による)

 

直近では、2017年1月に、日本の国立研究開発法人 森林総合研究所 から、国際植物分類学連合が出版する分類学専門誌 TAXON誌(2016年12月刊)に、日本のソメイヨシノと韓国の済州島に自生している王桜(왕벚나무)が別の種類であるとして、学名を確立した論文が発表されています。
(上図では、その新しく提案された学名が反映されている) 

森林総合研究所/‘染井吉野’など、サクラ種間雑種の親種の組み合わせによる正しい学名を確立

Nomenclature of Tokyo cherry (Cerasus × yedoensis 'Somei-yoshino', Rosaceae) and allied interspecific hybrids based on recent advances in population genetics ; Katsuki, Toshio; Iketani, Hiroyuki; Taxon, Volume 65, Number 6, December 2016, pp. 1415-1419 

【さくら】韓国の王桜(왕벚나무)と日本のソメイヨシノ 2種の違いと、韓国起源説への対応 【ウリジナル】 - pelicanmemo

ソメイヨシノと韓国の王桜、似ているが遺伝的に他の品種。韓国SBSが報道 - pelicanmemo (2018-03-21)

 

今回、韓国の研究でも、日本でのこれまでの研究結果が正しいことが確認されました。

実は、韓国の科学技術情報研究院(KISTI)のデジタル学術情報ポータルサイト(NDSL)で検索をしてみると、これまでにも、韓国(韓国人と考えられる姓名)の研究の中に、「韓国の王桜(왕벚나무)」の遺伝子解析の結果によると「日本のソメイヨシノ」とは別の組み合わせだと発表する論文もありました。

今回、韓国の山林庁 国立樹木園と明知大、嘉泉大学とのチームによる研究によって、権威ある組織による"お墨付き"を得たことで、大きく発表されたのでしょう。

もっとも、「日本の研究結果が正しかった」という論調の、韓国メディアの記事は見かけていません。(*1)😕

 

日本メディアでもよく使われる「〜であることが分かりました」という表現。 

韓国のメディアに限ったことではありませんが・・・、読者・視聴者が好むだろう煽れるだろう間違いを伝えてきたのなら、それが間違いだったと分かったのなら、その間違いを自ら質してほしいものです。

 

ソメイヨシノの寿命は50年〜60年という誤解。 桜の花見の対象としての"寿命"か - pelicanmemo

 

 

今年(2019年)2月、韓国の北東アジア生物多様性研究所が、朝鮮半島の植物名を見直す「朝鮮半島の植物名リスト」を発表しました。

“일본 원산 벚나무, 소메이요시노벚나무로 부르자” (日本原産の桜は、ソメイヨシノボンナムと呼ぼう:ハンギョレ)(ボンナムは桜のこと)

 

オオバコ科のイヌノフグリ(개불알풀)(犬の陰嚢、学名:Veronica polita var. lilacina)を「봄까치꽃」(ボムカチ花)に 、ママコノシリヌグイ(嫁の尻拭き草(며느리밑씻개))を「가시모밀」(トゲソバ)に、その他の植物名の変更が提案されています。

どちらも、社会的にちょっと敏感な俗語交じりの名前であり、日本の帝国時代になって朝鮮半島に入ってきた植物名だそうなので、"日帝残滓"として変えようという意味合いもあるのでしょう。 

「日本のソメイヨシノ」と「韓国の王桜(왕벚나무)」が別の種であることが確定したことをうけて、そのリストでは、「日本のソメイヨシノ」は「소메이요시노벚나무」(染井吉野桜)(学名:Prunus yedoensis Matsum.)としています。
「소메이요시노 벚나무」は「ソメイヨシノ ボンナム」と発音します。ボンナムは桜のこと(王桜はワンボンナム)
「韓国の王桜(왕벚나무)」は「왕벚나무」(王桜(ワンボンナム))のまま(学名:Prunus nudiflora (Koehne) Koidz.)

桜のソメイヨシノ(소메이요시노、染井吉野)とワンボンナム(왕벚나무、王桜)は、別の種です。

한편, 일제 청산이라는 차원에서 수정한 학명과 국명도 있습니다. 학계의 최신 연구를 통해 잡종 기원이 각각 다른 나무로 밝혀진 우리나라와 일본산 왕벚나무는 각각 ‘왕벚나무(Prunus nudiflora (Koehne) Koidz.)’와 ‘소메이요시노벚나무(Prunus yedoensis Matsum.)’로 국명과 학명을 정리하였습니다.  

한반도관속식물목록

대한민국 생물연구 발전과 종보존, 생물IT 발전을 위한 기업 – (주)동북아생물다양성연구소

この発表について、複数の韓国メディアが報道しました。

もっぱら、イヌノフグリ(개불알풀)とママコノシリヌグイ((며느리밑씻개))等の名前についての記事が多いようですが、「日本のソメイヨシノ」を「소메이요시노벚나무(ソメイヨシノ桜)」について報じたものもあります。

それら記事の中の、初期のコメントでは、批判的であり、比較的に公正と感じられるコメントを見かけます。ポピュリズムに染まった韓国メディアの報道に対して、いろいろと感じている人もいるのではないかと思います。

 

ほんと、政治のくだらない争いを、お花見の場に持ち込まないでほしいものです。酒が不味くなる。

 

 

 

済州島で自生している「韓国の王桜(왕벚나무)」の自生地と「母木」は、韓国の国立山林科学院によって登録され、天然記念物や記念樹として保護されています。 

ところが、今回のゲノム解析の結果、済州「王桜」記念樹の中の1本が、済州島自生種ではなく、「日本のソメイヨシノ」とほぼ同じだということが分かりました。

済州島内で栽培されていた日本のソメイヨシノの、実を食べた鳥の糞などを介して、漢拏山に移されたと推測されています。

2015年に指定された根元が3.45mの桜の木だそうなので、漢拏山の国立公園観音寺地区(済州島の郷土遺産第3号(제주도 향토유산 제3호))の木でしょう。 

한·일 ‘벚꽃 원조’ 논란 끝? 제주 왕벚나무 ‘탄생의 비밀’ 확인(韓日「桜の起源」の議論の終わり?済州のソメイヨシノ「誕生の秘密」確認:ハンギョレ)

 

いったい、どういう研究によって、「韓国の王桜(왕벚나무)」の「母木」として指定することになったのやら・・・ 

この漢拏山の国立公園観音寺地区の「ソメイヨシノ」の桜の木、どうするんだろう?切り倒す?😕

 

済州島の天然記念物の王桜(왕벚나무)から作られたクローン桜を、日本のソメイヨシノ(소메이요시노벚나무(ソメイヨシノ桜))を置き換える移植が始められています。

천연기념물 제주 왕벚나무 순수혈통 묘목 9천 그루 확보

韓国、済州島の天然記念物第159号の王桜(왕벚나무、エイシュウザクラ)から作られた、苗木9000本を確保して、移植を計画しているそうです。クローン培養なので、遺伝子変異はない100%韓国原産の桜なのだそうだ。

 

時期的に、戦前から育てられてきたソメイヨシノの樹勢が衰える時期なので、韓国の社会的には、それはそれでいいんじゃないかと思います。
あの国のひとたちが決めることですし。

あの国の社会らしい、歴史(というファンタジー)の置き換え方だと感じます。(*2

 

(*1)日常的にチェックしている韓国の海洋警察庁の話題や、その時々の北朝鮮情勢や、日本海でのレーダー照射問題、などなど、韓国メディアの記事をチェックする時は、この話題は必ず一緒に検索しています。

(*2)当ブログ管理人、この日本のソメイヨシノの韓国起源"珍"説について、いいかげんな韓国メディアの記事や論調を多く見てきたので(比較的に公平な論調の記事もありました)ので、不快感を隠そうとは思いません。

(*3)わざわざ、左派系メディアのハンギョレの記事を選んで、引用元として使っています。

  

さて、今年はどこの桜を見に行こうかな。😊 

 

韓国メディア「ポトマック川の桜の起源」記事が、"失笑"ものだった件 - pelicanmemo

 

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