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【新型コロナウイルス】 スウェーデン、高い致死率はなぜ? | “集団免疫”戦略はどうなっているのか?

20200428204518(via. Folkhälsomyndigheten)(2020/04/27に閲覧・取得)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。

欧州の多くの国がロックダウン、都市部や全国での外出制限や移動制限など厳しい対策を行っている中、スウェーデンでは比較的にゆるい制限で対応をしています。

 

ときどき「まったく制限していない」とか「ノーガード戦法」とかいうコメントがあって、誤解されているかもですが、パーティや洗礼式、葬儀や結婚式などを避ける事や、物理的距離(社会的距離)を取る事、70才以上の人は出来るだけ家にいて人混みに外出しない、など、強制はしていなくても、当たり前の対策は求められています。

日本語では、こちらのブログの記事が詳しく、まとまってます。🙂

【続編】コロナ対策からみるスウェーデン最新4月16日 | SOPIVA北欧通信 (2020年4月17日)

 

スウェーデンのコロナ対策は、日本と似ているところがあると注目されているよう。

公衆衛生での私たちの努力にただ乗りしている、“フリーライダー”(こいつらへのコメントは自粛)がいる所も似ていますね。

日本と違うところというと、スウェーデンの公衆衛生局は、新型コロナウィルス感染症の流行は1度だけでない長期戦であり、第2波、第3波が起こる事を想定して、社会経済を窒息させないように「集団免疫」を戦略として公にしているところでしょうか。🤔

Covid-19 — Folkhälsomyndigheten (スウェーデン公衆衛生局)

Alla har ansvar att förhindra smitta av covid-19 — Folkhälsomyndigheten(誰もがCOVID-19の感染を防ぐ責任があります - 公衆衛生局)

 

 

スウェーデン公衆衛生局の4月29日(11:30(現地時間))の発表によると、新型コロナウィルスの陽性確認の人数は20,302人(女11,245、男9,057)、死亡2,462人(女1,070、男1,392)(2020/04/29)

致死率は約12.1%で、とても高い。(日本は4月29日12時時点で、陽性確認13,695人、死亡389人。致死率は約2.8%)

スウェーデンは人口1000万人強で、日本の人口の約12分の1。
似たような対応をしてはいても、スウェーデンは明らかに、新型コロナウィルスの死者数が多い。これについて少し。

 

当ブログ管理人は、スウェーデンがうまく対応出来ているとは思っていません。
スウェーデンの“集団免疫”戦略は、日本社会の視点では成功していません。
むしろ、高齢者施設・コミュニティへの感染拡大を防げなかったところを、日本社会は“反面教師”として見るべきだと思っています。

スウェーデンの国内でどう評価されるか?はこれからでしょう。

 

要点を簡単に書きますと、

  • もともと集中治療室での治療が、患者や家族には選ばれにくい社会環境だった。これまでの、集中治療室の平均入室日数は2.7日(2011~2018年)と短い。
  • 集中治療室が少ない(人口10万人あたり約5床(欧州平均は約12床))うえ、満床が続いている(しかし医療崩壊はしていない)。
  • 新型コロナウィルスの感染者の、高齢者の集中治療室での治療が少ない。特に80才以上で激減している(下の図表)
  • 首都ストックホルムを中心に感染がすすみ、老人ホームや特養など高齢者住宅の多くへ拡がった。感染連鎖を制御出来ていないかもしれない。
  • 市中感染の数が増えてしまうと、高齢者施設の中への感染連鎖を防ぐのは、かなり厳しくなる。

 20200428200203

 

スウェーデンでは、医療崩壊は起きていないが、高齢者施設への感染拡大を防げなかった。

自治体の中には、デンマークに近いスコーネ県のように、高齢者施設への感染拡大を少なく食い止めている例もあるので、ストックホルムや首都圏の対策がまずかったのでしょう。

似た例として、ドイツでも高齢者への感染拡大を防ぐことが出来ず、70才以上の高齢者での陽性確認例は多く、致死率は上がり続けています(4月29日時点で、致死率3.9%)
しかしドイツでは、集中治療室が多い(10万人あたり20~25床)ので収容と治療が出来ています。(それでも、高齢者のCOVID19患者の高い致死率は変わらない。死者数は増え続け、致死率も上り続けている)

【新型コロナウイルス】 ドイツの致死率はなぜ低いのか | ドイツの地獄はこれからか? - pelicanmemo (2020-03-20)

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よく、スウェーデンの新型コロナウィルス対策が、他の欧州各国とくらべて緩いというニュースの中で、カフェや公園で人が沢山いる写真が使われています。

そのニュース記事を見て、「あんなに人が集まっている!?」と感じられた方もいるかもしれません。

日本の東京でも、品川区の戸越銀座 商店街の例のように、人混みのニュース写真が使われています。あれらの写真は望遠レンズの圧縮効果を利用して、伝えたい記事内容に沿った絵を撮影したくて、わざわざ人が重なるような写真をとっている。スウェーデンのニュースでも同じことが行われているようです。

デンマークのテレビ局が検証しました。(ツイッターで教えてもらった🙂)

Hvor tæt er folk på hinanden? Disse billeder er taget samtidig, men viser to meget forskellige ting - TV 2 (人と人との距離はどれくらいでしょう? これらの写真は同時に撮影されましたが、とても異なって見えています)

 

 

スウェーデンでは、70才以上の年齢層で、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の、患者数が多く(左上グラフ)、死者数が多く(右上グラフ)、人口10万人あたり患者数も多く(右下グラフ)なっています。

人口構成では75才以上の年齢層から減っているので、高齢者の感染者の割合が増えている。死亡者も増えている。

20200428200208

 20200428200203(Covid-19 — Folkhälsomyndigheten)(2020/04/27に閲覧・取得)

スウェーデン(とくに首都ストックホルム)では、新型コロナウィルス感染症となった80才以上のひとの3分の1が亡くなっています。他国と比較しても高い割合です。

 

 

スウェーデンでは、集中治療室は、人口10万人あたり約5床(諸説あり。4.89〜5.8)で、欧州平均の約12床よりかなり低い(北欧諸国は総じて少ない)。総人口1000万人強なので、全国で500床ほど。

4月中旬から、新型コロナウイルス(COVID-19)の患者の使用数が約500床が続いていて、ほぼすべてを占めている。いっぱいいっぱいな状態が続いています。

 20200430184922(icuregswe.org)

 

スウェーデン集中治療登録協会(Svenska Intensivvårdsregistret (SIR))によると、ICUでの治療には高価な装置群と高度な専門性をもつスタッフ複数人が必要なため、治療の費用がとても高い。集中治療にかかる総費用は、年間60億~70億クローネ(約650億〜760億円)(2018年)だそう。

もともと、集中治療室で治療を受けられる患者は、70才代後半から減る傾向ですが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の患者の場合は、これよりもさらに減っています。

 

集中治療室を利用した人数、年齢別・性別(2018年)

20200430184931(icuregswe.org)

こういう面は、日本メディアでよく使われる表現「“福祉大国”スウェーデン」、の「お国柄」でしょう。

 

さらに、“フリーライダー”の問題と、近年増加している、中東アラブ系など移民の人口が総人口の2割以上となっていることが、“集団免疫”戦略への障害となりうると言われています。

 

スウェーデン公衆衛生局 (Folkhälsomyndigheten)

Covid-19 — Folkhälsomyndigheten

Bekräftade fall i Sverige — Folkhälsomyndigheten

Experience— Folkhälsomyndigheten

Coronavirusutbrottet 2020 i Sverige – Wikipedia

Årsrapporter - icuregswe.org

 

Suède: Anders Tegnell, épidémiologiste à contre-courant - Reportage international

Scientist Behind Sweden's Coronavirus Strategy Says Country Better Prepared For Second Wave Due to Not Having Lockdown

PolitiFact | Fact-checking Sweden’s COVID-19 infection rate without shutdown

Coronavirus around Europe: Questions and concerns remain as countries move towards easing restrictions - thelocal.se

13 Swedish words we've learned during the coronavirus outbreak - thelocal.se

Inside Sweden’s Radically Different Approach to the Coronavirus - WSJ

In Sweden, There’s No COVID-19 Lockdown. Here Are 4 Things to Know.

The Grim Truth About the “Swedish Model”

 

Sverige och Storbritannien har gjort omvända resor - Sjukhusläkaren

Corona: Så är utgångsläget i sjukvården för Sverige – jämfört med Italien och Spanien

 

https://twitter.com/ken_cph/status/1254786913245913090

https://twitter.com/tv2newsdk/status/1254376312417869829

Hvor tæt er folk på hinanden? Disse billeder er taget samtidig, men viser to meget forskellige ting - TV 2