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【新型コロナウイルス】チリ、ワクチン接種率が3割なのに感染者が増加? → 接種済みの年齢層ではワクチン効果あり

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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンの接種が各国ですすめられています。

近頃、チリでは国民の約3割がワクチン接種を受けたのに、新規感染者の増加が止まらないという論調の記事を見かける。

日本経済新聞では、感染が収束する気配が無いのはワクチンの違いによるとでもいうような記事を書いている。そこだけを取り上げるのは誤解のもとだ。違和感を感じたのでこれについて少し。

両者を分ける大きな理由とみられるのが、ワクチンの違いだ。チリで接種されたワクチンの9割以上が中国の製薬会社、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製だ。チリでの同ワクチンの有効性は54%と、英米で使われているファイザーやモデルナ製が90%を超えるのに比べ大きく見劣りする。

新型コロナ: チリ、人口26%がワクチン接種完了も感染拡大止まらず: 日本経済新聞 (2021年4月16日)

 

チリ保健省(MINSAL)によるプレゼン資料が分かりやすかったので、ざっくりと日本語の説明を書いてみた。

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La vacuna CoronaVac demostró ser efectiva en un 89% para evitar hospitalizaciones UCI - Ministerio de Salud - Gobierno de Chile

チリ保健省(MINSAL)の記事タイトルは「ワクチンは集中治療室(ICU)入院の予防に89%効果があることが証明された」。そこに注目している。さらに先の集団免疫がどうこうという話ではない。 

簡単に説明:

  • すでにワクチン接種を受けた高齢者層では新規感染者は減少傾向。入院も減少。
  • ワクチンの本格的な接種開始は2月3日。2月中旬からの新規感染者の増加は、50代以下の若い世代での感染拡大によるもの。
  • 50代以下のまだワクチン接種をしていない年齢層でも、3月中旬から新たな感染者数の増加は鈍化している。急激に変化している。ワクチン摂取率が上がる事により感染拡大が抑制された効果ではないだろうか?
  • チリが使用しているワクチンの約90%は不活性化ワクチンCoronaVacで、有効率は約67%(接種2回終了の場合、接種1回では約16%)。ヒトの移動や接触を減らすなど感染予防対策などを怠ると、右肩下がりに収束するのではなくだらだらと長く続くだろう。
  • ただし、入院回避には85%、集中治療室(ICU)入り回避には89%、死亡抑制には80%の有効であると発表されている(いずれも接種2回終了)。mRNAワクチンほどの性能は無くても、感染後の重症化を回避できたり、医療システムの圧迫や崩壊のリスクを大きく下げると期待できる。

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中国ワクチン、発症回避67% チリ保健省が調査:時事ドットコム (2021年04月17日)

チリ、ワクチン接種率は高いのに感染急増 気の緩みなど原因か - BBCニュース (2021年4月16日)

 

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チリでの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン集団接種戦略プログラムは、2021年2月3日から本格的に開始された。チリの総人口約1900万人のうち約1500万人が接種対象となる。(計画的集団接種対象は、高齢者や基礎疾患がある高リスク群、医療や介護関係者や、教育や育児、研究、行政、警察や憲兵隊や軍の関係者、ONEMI(国家緊急対策室)やCONAF(森林局(森林火災対応だろう))や消防、交通や電気・ガスその他インフラに関わる人など、エッセンシャル・ワーカーなどからすすめられる)

 

高齢者から徐々に年齢を下げて接種していく。基礎疾患を持つ人や肥満など重症化リスクの高い人は早めに接種の対象となる。週単位でかなり細かく設定されている。

気になる方はスケジュール表を見てみて。

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(例:3月22日~28日の週と3月29日~4月4日の週)

Calendario de vacunación masiva contra COVID-19 - Ministerio de Salud - Gobierno de Chile

 

接種対象者のうち、約半分が接種1回目を受け、33.7%が規定の2回目までの接種を終了した。
(接種回数12,726,959回(接種1回だけ:7,600,908回、接種2回終了:5,126,051回))(4月1日まで)

チリのワクチン集団接種戦略プログラムに採用された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンは、90.1%が不活性ワクチンCoronaVac(科興控股生物技術(Sinovac))、9.9%がmRNAワクチン(Pfizer-BioNTech)

 

 

MINSAL(チリ保健省)は、2月2日から4月1日までの2ヶ月間のコホート調査を行った。その期間にワクチン接種を受けた約400万人と、ワクチン未接種者を合わせた約1000万人を対象としている。

プレゼン資料が分かりやすかったので数枚に、ざっくりと日本語の補足と説明を書き込んでみた。

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このグラフは基準日2月3日を100として、年齢層ごとの新規感染者数の推移を示している。

 4月1日までに新型コロナのワクチンの集団接種を受けた60才以上で新規感染者数の鈍化や減少傾向がみられる。

今年(2021年)2月中旬からの新たな感染者数の増加は、主に50代以下の若い年齢層での増加によるもので、特に40代以下での増加が顕著だ。

その感染者が増加した50代以下の年齢層でも、3月下旬の週から急激に新規感染者数に鈍化の傾向がみられる。
一方で、入院患者数の方のグラフでは、ワクチン未接種者が多い50代以下の年齢層にまだ減少傾向はみられない。

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今後の経過を見なければならないが、これからワクチン摂取率がさらに高まることで、4月はじめがピークだったとなる可能性は充分にある。

 

しかし、チリでの不活性化ワクチンCoronaVacを規定の2回目まで接種した場合の有効性は66.96%(65.28-68.55%)
これが、1回目だけだと16.13%(14.30-17.92%)でかなり低い。

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La vacuna CoronaVac demostró ser efectiva en un 89% para evitar hospitalizaciones UCI - Ministerio de Salud - Gobierno de Chile 

 

これまでに何度も何度もいろいろな人が言っているように、ワクチンの2回目を接種することは極めて重要であり、2回目までに3週間のタイムラグは生じてしまう。
その間に、ヒトの移動と接触を減らすとかマスクやソーシャル・ディスタンスなど感染予防の対策を怠ってしまうと、右肩下がりに収束するのではなくだらだらと長く続くだろう。

残念だけど多分、日本でも起こると思う。

 

さらに、免疫回避の可能性があるE484K変異をもつ変異株のこともある。チリは特に、同じ南米大陸のブラジル型変異株(P.1, P.2)の流入と影響が気になるところだ。

チリは南北にとても長い国土をもつ。地域単位ごとのワクチン摂取率に大きな違いは無いが、都市部と地方とで人口構成が大きく違っている。首都サンチアゴや50代以下の若い労働者世代と子供が多く居住する地域では、ワクチン接種者が少ないコミュニティもあるだろうし、未接種者が集まりやすい地区や店もあるだろう。

ときどき大規模な感染拡大と収束をしている地域がある。

これら地域特性と影響が気になったが、ここまでは調べきれなかった。

20210417165822(地域ごとのワクチン摂取率)

Covid-19 en Chile: La Realidad Nacional en Datos. - Gob.cl - Cifras Oficiales

 

中国ワクチン、発症回避67% チリ保健省が調査:時事ドットコム (2021年04月17日)

新型コロナ: チリ、人口26%がワクチン接種完了も感染拡大止まらず: 日本経済新聞 (2021年4月16日)

チリ、ワクチン接種率は高いのに感染急増 気の緩みなど原因か - BBCニュース (2021年4月16日)

ワクチン接種猛烈に進む「チリ」感染激増のなぜ | 新型コロナ、長期戦の混沌 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 (2021年4月16日)