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【新型コロナウイルス】 韓国での新型コロナワクチンの種類とブレイクスルー感染 なぜ拡大しているのか?

韓国では11月23日の1日あたりの新規感染者数が4000人超、過去最多となった。

韓国でのワクチン接種率は79.1%(11月24日0時まで)と高く、その半分がファイザー/ビオンテックのワクチンだと説明されている。しかしそれは、昨日の数字だけを見て半年以上前を説明しているようであり、取り扱いに注意が必要と感じる。

単純に国・地域の「ワクチン接種率の数字」だけを比較するのではなく、使用されたワクチンの種類、本格的に接種開始された時期と接種人数を詳しく見る必要があります。

 

韓国の疾病管理庁(KDCA)から発表された、ワクチンの種類と累計接種人数を簡単にまとめてグラフにしてみました。(横軸は発表日で午前0時基準。前月月末までの累計を表している)

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・2月中旬から、医療関係者や軍関係者等、療養病院など高齢者施設での60才以上高齢者に対して、アストラゼネカ(AZ)のワクチンを使った優先接種が始まった。4月から本格化な接種となった。

・ファイザーのワクチンは充分な数の確保が遅れたため、6~7月から本格的に接種が開始された。

・7月から、アストラゼネカ(AZ)のワクチンの累計接種人数(約1000万人)はほとんど増えていない。2回目接種をファイザー等にする”交差接種”が始まった。

・ファイザーのワクチンを2回接種した後の抗体価が減少しても6ヶ月は充分な感染予防効果があると仮定すると、いまのところこの接種層の多くでは感染予防効果を期待できるだろう(もちろん免疫や、基礎疾患の有無など個人により違いがある)

・アストラゼネカ(AZ)のワクチンだけを2回接種した層は、すでに大部分が抗体価が大きく下がっていて感染予防の効果も減少していると考えられる。(詳しくはすぐ後で説明。重症化予防の効果については発表待ち)
この層がかなりヤバい情況に置かれている。(もちろん(中略)個人により違いがある)

 

新型コロナのワクチンのうち、ファイザーやアストラゼネカ(AZ)のワクチンで、2回接種完了してから3~6ヶ月での抗体価の減少が報告されている。英国からの発表ではアストラゼネカの方が減少率が緩やかで半年後にはファイザーと逆転するとなっていたが、韓国では中央防疫対策本部による約500人を対象とした調査で逆の結果となった。デルタ株の流行下では、ファイザーを2回接種した2週間後の抗体価は338だったのに対して5ヶ月後に168に下がった、アストラゼネカ(AZ)を2回接種した2週間後の抗体価は207だったのに対して3ヶ月後に98まで下がった。

심상찮은 고령층 돌파감염…60대 이상 부스터샷 4개월로 단축

 

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(韓国、疾病管理庁のプレスリリースのうち、毎月1日発表のワクチン接種人数をまとめた)

 

--(追記:11/29)--------------------

韓国政府からワクチンごとのブレイクスルー感染の発生率が発表された。11月24日付けNHKが伝えた。これについて少し追記。

また、「ブレイクスルー感染」の発生率をワクチンの種類別に見ますと、
▼ジョンソン・エンド・ジョンソンが0.350%、
▼アストラゼネカが0.171%、
▼ファイザーが0.064%、
▼モデルナが0.008%となっています。

韓国 新型コロナ 23日の感染確認は初の4000人超 過去最多に | 新型コロナウイルス | NHKニュース(2021年11月24日)

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11月24日0時基準で、韓国での新型コロナワクチンごとの”接種者数(%)” と ”|ブレイクスルー感染者数”は以下の通り。

ジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセン(J&J)):1,497,303人(3.54%)|5241人。
アストラゼネカ(AZ): 11,116,361人(うち交差接種1,765,830人)(26.3%(交差接種なしだけは22.1%))|19,009人。
ファイザー:23,030,353人(54.4%)|14,739人。
モデルナ:6,676,405人(15.8%)|534人。
計:42,320,422人

アストラゼネカ(AZ)とファイザーを比べてみると、ファイザー接種者でもブレイクスルー感染者数がけっこう多いことが分かる。(仮にファイザーとアストラゼネカの接種者数が同数ならファイザーの方のブレイクスルー感染者数は7114人でAZの4割以下。感染者数の少ないモデルナと、AZ交差接種とヤンセン(J&J)はとりあえず無視した)

ファイザーを2回接種完了しても、抗体価が高いと推測される6ヶ月以内の7月や8月でも、個人の年齢や既往歴や生活、施設などでの感染予防の対策の多少によってそれなりにブレイクスルー感染が起きているのだろう。

--(追記ここまで)------------------

 

もちろん、ただワクチンの種類だけが原因で感染拡大をしているわけではない。日本での8月中旬からの急激な減少が”複合的な要因”と言われるように、韓国でも”複合的な要因”で感染拡大に繋がっているだろう。韓国社会の家族や友達や職場など近しい間柄での会食といったコミュニケーションが密なところも影響していると思う。

そんな中で、韓国政府が決定をした11月1日からの段階的日常回復(ウィズコロナ)による社会活動や行動の制限が大幅に緩和されたのは、とてもタイミングが悪かった(開始を延長出来なかったのは分からなくはないけれど、政治的判断を間違えたと思う)
社会的な活動度が高い層が又、無症状やごく軽い症状でスーパー・スプレッダーとなって拡げているのかもしれない。

日本の東京・首都圏での保健所業務がオーバーフローしたように、韓国でも”疫学調査員”による積極的疫学調査が難しい地区が出てきているハンギョレ(9/15))。その後に解消したという報道は見かけていない。

단계적 일상회복 1단계 실시, 11/1(월) ~ 별도 안내 시까지 < 복지 < 서울특별시(段階的日常回復1段階実施、11/1(月)~ |ソウル市・市民健康課)

 

 

韓国での新型コロナウイルスの新規感染者数の拡がりは、日本とは少し情況が違っていて、ソウル首都圏が全国の約8割を占め続けている。

ソウル首都圏で新規に陽性が確定した感染者のうち約半分がブレイクスルー感染だ。

 

韓国でのブレイクスルー感染は、高齢者だけでなく韓国軍の軍人でも起きており施設内での集団感染・クラスターも発生している。特に療養病院など高齢者施設での集団感染の事例では、入居者の60才以上高齢者の陽性率が非常に高い。

高齢者は基礎疾患があるなど重症化しやすく、ワクチンによる重症化予防効果はあるだろうが、治療が遅れると急速に病状が悪化して死に到る場合もあるだろう。治療が間に合っても重症患者病床を長く占有してしまう。また若い世代の重症患者は、(こう書くのはどうかと思うが)死に難いので同じようになる。結果として自然と、重症患者向けの病床は足りなくなっていきソウル首都圏では稼働率8割を越え続けている。

では、首都圏外の重症患者病棟のある病院への転院を考えてみても、他都市圏も同じくらいかそれ以上に稼働率が高いため転院は難しい。

すでに療養病院で集団感染が発生した場合にはそこをコホート隔離して対応しているところもある。それらでは新型コロナウイルス感染症に対する充分な治療は難しい。

この情況がこれから急拡大していくかは分からないが、すぐに収まることはないだろう。

 

 

アストラゼネカ(AZ)のワクチンの昨年夏までの優先接種対象者は、韓国の総人口の2割近い約1000万人にのぼる。

抗体価の減少とブレイクスルー感染の危険性について韓国政府は情報を持っていただろう。・・・にも関わらず11月1日からの段階的日常回復(ウィズコロナ)を開始し、感染予防のための行動制限・社会的な制限を大きくゆるめてしまったのは文在寅政権が政治的判断を間違えたとしか感じられない。

 

韓国政府は、当初はワクチンの追加接種(ブースター接種)を米国CDCの発表に準じた6〜8ヶ月とし来年(2022年)2月から本格化させる予定だったようだ。しかしアストラゼネカ(AZ)のワクチンの抗体価の減少が急という発表に合わせて、2回接種後4ヶ月に大幅に短縮して開始した。

本当は、段階的日常回復(ウィズコロナ)を始める前からブースター接種をはじめるべきだったが、ここでも政治的判断を間違えたあるいは判断をしなかったと感じる。

ブースター接種で使われるワクチンはAZでなくファイザーなど別の種類を使った交差接種を基本としているだろう。朝鮮日報の11月23日付け記事によると、22日までに60才以上の高齢者で追加接種を受けた割合は対象人口の7.5%、50代では5095人で50代人口の0.05%に過ぎない。

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さらに11月22日からは、全国の幼稚園・小学校・中学校・高等学校での休校対応を終了とし全面的な登校が始まった。

これから、日本の第5波であったような保育園や学校での集団感染・クラスター事例が韓国でも起こり始めるのかもしれない。

それでも新規感染者の数が日本の7月〜8月の第5波のように(まだ)急激に増えていないのは、7月から本格化したファイザーのワクチンの接種本格化による”ワクチン効果”なのではないだろうか。

歴史に”もしも”は無いけれども、韓国で接種されたワクチンが、日本のようにファイザーやモデルナなどmRNAワクチンだけだったならどうなっていたのか?・・・とても気になるところだ。

 

11月1日0時基準の発表の例。

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코로나19 국내 발생 및 예방접종 현황(11.1., 0시 기준) - 보도자료 | 브리핑룸 | 뉴스 | 대한민국 정책브리핑(新型コロナの国内発生および予防接種の現状(11.1.、0時基準)|疾病管理庁)

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韓国政府によりますと、23日、一日に新たに確認された新型コロナウイルスの感染者は4115人に上り、これまでで最も多かった今月17日より800人以上増えたほか、重症者も586人で過去最多となりました。

感染者が集中しているソウルをはじめとする首都圏では、集中治療室の病床の使用率がすでに80%を超えていて、政府は、首都圏の危険度について5段階で最高レベルの「非常に高い」としています。

韓国では、これまでにワクチンの接種を終えた人の割合が79.1%となっていて、今月から感染防止のための規制が緩和され、人の動きが活発化しています。

こうした中で、早い段階で接種を終えた高齢者や、まだ接種が進んでいない子どもたちの間で感染者が増えていることなどが、感染拡大の背景として指摘されています。

韓国 新型コロナ 23日の感染確認は初の4000人超 過去最多に | 新型コロナウイルス | NHKニュース

 

韓国政府は今月1日、首都圏で午後10時までとしていた飲食店の営業時間制限をなくすなど、コロナ関連の規制の緩和に踏み切った。ワクチン接種が進んだことがこの判断を後押しした。韓国の今月24日現在のワクチン接種率は79・1%で、日本の76・4%を上回る。

 しかし、ソウル市で先週確認された新規感染者のうち、ワクチン接種を終えた「ブレイクスルー感染」が約56%を占めるなど、政府の想定を上回る勢いで感染が広がっている。

規制緩和の韓国で感染急拡大、想定上回る勢い…「ブレイクスルー感染」半数以上 : 読売新聞オンライン