
8月16日に、尖閣諸島の魚釣島に、メキシコ国籍の男性がカヌーで上陸しているのを海上保安庁が発見し、ヘリで救助したニュースが話題です。
男性は、カヌーで台湾に向かっていたと主張しているそうで、報道では、尖閣諸島の魚釣島まで漂流した可能性があると報じている。
尖閣沖で漂流者を海上保安庁が救助というと10年前、2014年の正月に、中国の熱気球愛好家が尖閣諸島への上陸を計画をしたが失敗し、尖閣沖に不時着水した事件があったのを思い出す。
このブログ記事は、当ブログ管理人が書いた当時のブログ記事を再掲したものです。それと追記少々。
当時のNHKの報道によると、熱気球は尖閣沖約22kmの海上に不時着水した。熱気球に乗っていた中国人1人は海上保安庁の巡視船により救助され、中国海警局(正式に発足して1年足らずだった)の「海警2151」(当時)に引き渡された。
【尖閣】熱気球で上陸計画するが失敗 飛行ルート図 2013年9月に計画開始か: メモノメモ (2014年1月5日)
<独自>尖閣・魚釣島に外国籍の男性が上陸「カヌーで台湾に」 海保が発見しヘリで救助 - 産経ニュース (2024/8/17)
尖閣諸島に上陸の男性救助 メキシコ国籍、カヌーで流れ着く? 沖縄(時事通信) - Yahoo!ニュース (2024/8/17)
以下、ブログ記事再掲。
載せた記事URLはリンク切ればかりでした。Archive.orgにウェブ記録が残っていたNHKの記事を、このブログ記事末尾で引用しました。
ーーーーブログ記事再掲、ここからーーーー
正月の三が日で終わってしまったような話だけど、せっかくのお笑いネタなのでこれについて少々。
沖縄県の尖閣諸島沖に中国人が乗った気球が着水し、付近で警戒に当たっていた海上保安庁の巡視船が救助しました。 乗っていた中国人は洋上で中国当局の船に引き渡されました。
尖閣諸島沖に中国人が乗った気球が着水(NHK)
(再掲時・注:このURL(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140102/k10014231831000.html) の記事は削除されています)
この熱気球に乗っていたのは、許師軍(许帅军)。1980年、河北省唐山市生まれの35才。
いくつかの記事で調理師と書かれている。職業とは別に、それなりの経験を持った「熱気球愛好家」ですね。中国航空運動協会(ASFC)会員。
2012年の年末には、「AX-7型」熱気球で、渤海横断を成功させている。この飛行は中国国産の熱気球による最長飛行記録だそうだ。 その時の熱気球の写真を探してみると、今回の熱気球と同じペイント(文字の垂れ幕つき)だった。多分同じもの。

中国外交部の発表から、当局が把握していなかった(少なくとも外交部は知らなかった)、個人または少人数のグループの行動と考えられる。
香港フェニックステレビによると、2013年9月から尖閣諸島への飛行と上陸を計画していたそうだ。
许帅军乘热气球登陆钓岛计划始于2013年9月(鳳凰网)
(再掲時・注:このニュース動画のURL(http://v.ifeng.com/news/mainland/2014001/0103c8de-bcf4-4a76-aef1-dd6565953f1e.shtml) は404 not found、削除されただろう。)
熱気球には無線機を載せていて、台湾当局に救助を要請、台湾から海上保安庁に連絡がいって、海保の巡視船が救助した。中国の掲示板に載っていた、APRS(Automatic Packet Reporting System)のコールサイン"BH3PZS-3"の軌跡を追ってみると、
福建省福州市から離陸し、高度6000m超を東へ向かっている。

尖閣諸島の魚釣島に近づき、南30kmあたりで高度を下げたところ南東に向かい、さらに高度3000m以下でやや北東に向かっている。上空の気流に流されたのだろう。

この記録では、魚釣島に最接近したのは30km前後(領空は12海里(約22.2km))。
ただし、記録は高度1668mで途切れているので、この後に領空侵犯があったかどうかは分からない。
中国が南シナ海でやってきたような、島嶼の実効支配の第一段階としてよく話題にされている、
「尖閣諸島の島か、周辺の海上から救助要請」
→「中国海警局の警備船により上陸や救助」
→「既成事実化と、中国の実効支配をアピール」
そして、
→「メディアに大きく取り上げられて、スポンサーがつく」
を狙っていたのかもしれない。
ところが実際には、尖閣諸島の南側を通り抜けそうになってしまった。
「違う違う、そっちじゃないんだ。このままだと沖縄に行ってしまう」
「高度を下げて、別の気流に乗って進路を変えないと・・・」
「さらに南に向かってるじゃないか! もっと別の気流に乗らないと(さらに下降)」
「ヤバい! 高度が維持できない」
(無線で台湾当局に救助要請)
「(海警局の警備船に連絡してくれるだろう・・・)」
「日本の巡視船じゃないかーっ!?・・・orz」
パイロットの気持ちはこんな感じだったのかな?(笑)(´ ・ω・`)
なにげに、台湾GJでした。
海警2151に乗って帰港した後、中国当局は彼にどう対応するだろう?
保釣団体やそのスポンサーあたりは、上空の飛行経験者として再度の飛行をサポートしようとするんじゃないだろうか。
ーーーーブログ記事再掲、ここまでーーーー
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--(再掲にあたっての追記:2024/8/18)------------------
台湾外交部の高安報道官(当時)は、尖閣諸島の沖で熱気球の落水事故が発生した後、「台湾と日本の双方は人道的救援に基づいて、お互いに通報をして救助メカニズムを発動した」と述べた、と台湾メディアの中央社が報じた。
中国外交部の秦剛報道官(当時)は、許師軍(许帅军)氏の行動についてコメントしないと述べ、そのような活動には規制があるので担当する部門に確認する必要があると述べたそうだ。
秦剛報道官(当時)は、許師軍(许帅军)氏は「ただの熱気球パイロットに過ぎない」と述べた。
その後の、「中国海警が中国の熱気球愛好家が尖閣諸島の海域で着水した後、まず全力で捜索救助活動を行った。この出来事に関係した人が、近くにいた日本側の船に救助され、中国側へ引き渡された。現在その人物の身体は良好である、と述べた」部分は、公式のテキスト記録には残されておらず、報道もされていない。
中国男子热气球赴钓鱼岛失败被日本救起 - BBC News 中文 (2014年1月2日)
外交部:乘热气球在钓鱼岛海域坠海男子状况良好 (2014年01月03日)
2014年1月2日外交部发言人秦刚主持例行记者会 (2014/01/02) (中华人民共和国驻莱索托王国大使馆)
許師軍(许帅军)氏のその後について。目立った活動はみられない。熱気球の愛好者活動は続けていて、熱気球の事故のニュース記事で、許師軍(许帅军)氏にコメントを求めているものもある。
再度の尖閣沖への熱気球飛行の挑戦は実行していないようだ。
Archive.org にウェブページの記録が残っていたので、当時のNHKの記事を転載しておきたい。
尖閣諸島沖に中国人が乗った気球が着水 NHKニュース (Archive.org)
沖縄県の尖閣諸島沖に中国人が乗った気球が着水し、付近で警戒に当たっていた海上保安庁の巡視船が救助しました。
乗っていた中国人は洋上で中国当局の船に引き渡されました。海上保安庁によりますと、1日午後2時半ごろ、台湾当局から日本側に尖閣諸島の周辺海域で気球が行方不明になったと連絡があり、付近で警戒に当たっていた巡視船が捜索を開始しました。
そして午後3時前、魚釣島の南およそ22キロ沖合で着水した気球を発見し、近くで漂流していた男性1人を日本の領海内で救助しました。
命に別状はなく船で事情を聞いたところ、男性は35歳の中国人で「尖閣諸島に行こうと1人で中国を出発した」と話したということです。
このため、日本と中国の間で外交ルートなどを通じて調整した結果、男性は1日午後8時前、洋上で海上保安庁の巡視船から中国海警局の船に引き渡されました。
中国海警局の船は日頃、尖閣諸島沖の領海に侵入し、日本の巡視船が警告するなどしていますが、今回は双方が協力する形となりました。
--(追記ここまで)------------------
<独自>尖閣・魚釣島に外国籍の男性が上陸「カヌーで台湾に」 海保が発見しヘリで救助 - 産経ニュース
第11管区海上保安本部(那覇)によると、男性はメキシコ国籍。16日午後2時38分ごろ、魚釣島東岸に上陸しているのを哨戒中の巡視船が見つけた。男性が救助を求めるように手を振ったため、ヘリコプターでつり上げて救助し、石垣市内の病院に搬送した。
カヌーが魚釣島まで漂流した可能性があり、男性はレスキュー案件として救助されたが、正規の出国手続きを行わずに男性が国外を目指していた疑いもあり、11管は事件・事故の両面で捜査、調査を継続している。
関係者によると、男性は日本最西端の与那国島(同県与那国町)から出航したとみられる。同島では数日前、カヌー1艇がなくなっていたとの情報もあるが、関連は不明。沖縄県警外事課は産経新聞の取材に「盗難届は出ていない」とした。
尖閣・魚釣島にメキシコ国籍の男性が上陸、「カヌーで与那国島から漂流」…海保が救助 : 読売新聞
第11管区海上保安本部(那覇市)によると、男性はメキシコ国籍の成人で、同県・与那国島をカヌーで出航後に漂流したという趣旨の話をしている。海保がヘリコプターでつり上げて救助し、県内の病院に搬送した。政治的意図はないとみられ、上陸の経緯などを調べている。
尖閣諸島に上陸の男性救助 メキシコ国籍、カヌーで流れ着く?―沖縄:時事ドットコム
同本部によると、16日午後2時40分ごろ、哨戒中の巡視船が魚釣島の東岸で、助けを求めるように手を振る男性とカヌーを発見。同5時ごろ、ヘリコプターで救助した。
与那国島の宿泊施設からメキシコ国籍の男性がいなくなっており、同一人物とみられるという。
中国メディアによる報道は、今のところ見かけていない(ブログ記事公開時点)。
台湾メディアなど中国国外の中文メディアでは、日本メディアの記事を参照するかたちで伝えている。今のところ新情報は無いようだ
墨西哥男登釣魚台向日海巡求救 稱要乘小船赴台灣 | 國際 | 中央社 CNA
墨西哥男登「釣魚台」! 向日方揮手求救:要划獨木舟去台灣 - 國際 - 自由時報電子報