(中国海警局より)
9月29日、中国海警局は「先日、北太平洋の公海上でロシア国境警備局と共同訓練と共同パトロールを実施した」と発表した。
ウラジオストク沖の日本海で行われた共同訓練が終了した後、9月21日に、中国海警局の818型「海警2303(梅山艦)」「海警2305(秀山艦)」とロシア国境警備隊の「ペトロパブロフスク・カムチャツキー(Петропавловск-Камчатский) (262)」(プロイェクト22100)、「カムチャッカ (Камчатка) (257)」(同・22120)は艦隊編成を行い、ウラジオを出港して北太平洋の公海へ共同パトロールへ向かっていた。
中俄海警舰艇编队依法检查北太平洋公海作业船只 - 国际合作 - 中国海警局
【中国海警局】ロシア国境警備局と共同訓練を実施 ロシア極東のウラジオストク沖 - pelicanmemo (2024-09-20)
北太平洋では、共同捜索救助活動、共同ダメージ・コントロールと救助、共同で不法船舶の捜索などの訓練を実施した。中ロ双方の効率的な調整能力を実証したそうだ。
中国海警局による訓練の発表で「损管(ダメコン)」が使われるのは、実戦を模した訓練(实战化训练)のときだ。
映像には、ロシア国境警備局の800トン級警備艦「カムチャッカ (Камчатка) (257)」から大きな黒煙が上がるシーンと、甲板から乗組員(に見立てた人形)が海上へ脱出し、中国海警局の搭載艇が救助をして救急蘇生法を行う様子等が公開されている。高圧放水銃による消防活動を行い、海警局のヘリを使った周辺の水域での捜索活動も行っただろう。それに加えて、共同で違法船舶の捜索を行っている。
其间,编队还进行了联合搜救、联合损管救生、联合搜索违法船只等演练,展示了双方高效协同配合能力。
共同訓練とパトロールを行った日程と、具体的な海域は発表されていない。
ただ、共同訓練の映像には近くの陸地にある山の稜線が写り込んでいる。ヘリかドローンによる海上数十mから撮影した映像なので、当該海域は陸地から40kmかそれ以上離れていても”はるか沖”の海域では無いだろう。
最初、訓練海域は、歯舞群島や択捉島、得撫(ウルップ)島など千島列島南半分の沖で行われると思っていたんだけど、これらの稜線と合う地形が見当たらない。千島列島の島には、富士山のような成層火山の活火山が多い。(もちろん見落としているかもしれない)
もしかしたらさらに北の、千島列島北部やカムチャッカ半島に近いあたりの海域だったのだろうか? ベーリング海やアリョーシャン列島の沖とまでは言わないが 🤔
4隻は、9月21日にウラジオストクを出港した。
ウラジオストクから北太平洋に至るまでの航行ルートも明らかになっていない。
常識的に考えて、日本海から津軽海峡を通って太平洋へ抜けたと思うが、AIS情報の更新はされていないし、ネットSNSをウォッチしていても津軽海峡近くでの目撃情報は見当たらなかった。
もしかしたら津軽海峡でなく宗谷海峡を、中国海軍やロシア海軍の通過と同時期に通って、オホーツク海から千島列島のどこか海峡を北太平洋へ抜けたのだろうか?🤔
潜水艦じゃないんだから、米軍や米国国防総省には中ロの巡視船4隻がどのルートを通ったのかは筒抜けだし、日本の防衛省や自衛隊、海上保安庁も把握しているだろう。それは中国・ロシア側も分かっているはずだ。
中国側は表向きには公表をせずに、国連決議や国際条約に従った行動であるという立場を示すことで、法律戦と世論戦・認知戦を行っていると考える。北太平洋のなかでも米国の領土・領海に近い海域で、中国とロシアの沿岸警備組織による共同訓練を行うことでグレイゾーン領域でも米国に対して圧力をかけようとしているのかもしれない。
【中国海警局】ロシア国境警備局と共同訓練を実施 ロシア極東のウラジオストク沖 - pelicanmemo (2024-09-20)
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中国海警局は、今回の中国とロシアによる共同訓練と共同パトロールは、「国連総会 46/215 号決議」(1991年に採択された公海での流し網漁業禁止決議)および「北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約」(略称:北太平洋漁業資源保存条約)に従って、法律に基づいた船舶検査や漁業生産秩序の維持に積極的に取り組んでいると発表している。
中国とロシアの共同訓練と共同パトロールを行った4隻は、北太平洋漁業委員会(NPFC(North Pacific Fisheries Commission))の調査船(Inspection Vessel) として登録されているので、表向き、法的な手続き上、問題はない。
しかし共同訓練の内容は、摘発していた違法船舶からの攻撃があり被害を受けた状況を想定している。中国海警局の発表で「ダメージコントロール(损管)」という単語が使われるのは実戦を模した訓練(实战化训练)で、攻撃を受けて船内で火災発生という想定も含む訓練のときだ。
これを「公海上での違法操業の摘発や、漁業生産秩序の維持のため」と主張するのは、国際法の拡大解釈で、国際慣例から逸脱するものと問題視されうるだろう。
中国海警局の818型「海警2303(梅山艦)」「海警2305(秀山艦)」は今年(2024年)7月に、北太平洋漁業委員会(NPFC)の調査船として登録されたばかり。中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の方でも、今年(2024年)6月に調査船として登録されたばかりだ。
同時に、中国海警局の万トン級「海警2901」「海警5901」などもNPFCやWCPFCの”調査船”として登録されている。
もし仮に、中国海警局が今後、北太平洋や中西部太平洋で軍事色の高い実戦化訓練を行った場合にも、しれっと「公海上での違法操業の摘発や、漁業生産秩序の維持のため」の訓練だと主張することが危惧される。
【中国海警局】「海警2901」「海警5901」を含む26隻を、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の調査船に登録 - pelicanmemo (2024-06-16)
今回の、中国海警局とロシア国境警備隊による北太平洋の公海上で行われた共同パトロール活動に関連して、中国海軍の軍事学術研究所研究員の張軍社(张军社)海軍大校(海軍大佐)(*1)が、環球時報のインタビューをうけた。9月22日付け環球時報が報じた。
(*1)張軍社(张军社)海軍大校は、中国海軍司令部参謀、駐アメリカ合衆国中国大使館の海軍副武官、海軍軍事学術研究所の副所長を歴任。
誇張と「大げさ」「まぎらわしい」説明をして、自己正当化アピールを繰り返している。
中国は1993年から、米国沿岸警備隊(USCG)と北太平洋の公海上で共同漁業パトロール活動を実施し、USCGのカッターに漁業法執行官を毎年派遣していたと述べている。間違いではないが、その米中間の覚書きとシップライダー協定は2019年末に失効した。
張軍社(张军社)海軍大校は、中国海警局の公式発表の内容を繰り返すとともに、「中国海警局の船は、北太平洋漁業委員会に登録された法執行船であり、2020年6月に北太平洋の公海上で漁船に乗船し検査する権利を取得した。」とし、「海洋犯罪と闘い、国際的な海洋安全保障と漁業生産秩序を維持し、海洋の持続可能な発展の促進に貢献するために、北太平洋の公海で関連漁船を検査する」と述べた。
中国が2020年6月に、北太平洋漁業委員会(NPFC)の調査船として登録したのは4隻(*2)だけ。その後、今年(2024年)になって、76ミリ砲を搭載する約10隻を含む20隻以上が登録されている。調査船の武装に制限はないので、国際法の抜け道を使っているとみられるだろう。
(*2) 2020年6月に登録されのは4隻だけ。「海警1303(当時、現「海警6306」)」「海警2302(当時、現「海警1303」)」「海警1501(当時、現「海警6501」)」「海警2301(当時、現「海警1304」)」
北太平洋の公海で、関連漁船に対していったいどのような「検査」を行うつもりなのだろう?🤔
ここ数年の海上安全に関するニュースを見れば、中国を含む各国の沿岸警備隊の巡視船に対して損傷を与えうる船体と装備をもち実績があるのは、中国の海上民兵の船くらいだろうに(笑 🙃
中共中国がよくおちいっている被害妄想で、自分に対する攻撃は現実よりも大きいと誤解してしまい、自国が行っている攻撃と同じような攻撃に対して備えなければならないといったとこだろう。
中国側によるいわゆる、「米中で太平洋を二分する」発言と合わせて「海洋膨張政策」への不安感も高まりそうだ。
張軍社(张军社)海軍大校は、中国海警局とロシア国境警備局の艦隊が、中国とロシアの海軍による合同パトロールのようにベーリング海まで至るかどうか言及している。
ベーリング海は太平洋の最北端の海であり、すべての国の船舶に航行の自由の権利があるとして、中ロの沿岸警備組織の船舶がベーリング海に入るのは正常で合法的だと述べた。
この海域がベーリング海だと断定は出来ないが、この陸地の稜線はカムチャッカ半島なのだろうか?🤔
米国が注目をし、米国漁船や本土へのリスクを想定するような海域なら、米国側からも公式発表ではないレベルでの報道や社説が出て危険性を伝えるのかもしれない。
中俄海警舰艇编队依法检查北太平洋公海作业船只 - 国际合作 - 中国海警局
中俄海警北太平洋联合执法巡航-新华网 (動画)
[正午国防军事]中俄海警舰艇编队在北太平洋展开联合执法巡航 双方展开多课目联合演练 提升两国海警协同能力 (ニュース動画)
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