12月4日、尖閣諸島の接続水域で、中国海警局の公船4隻が航行しているのが確認された。11月20日以来で、約2週間ぶり。翌5日には日本の領海に侵入した。
海上保安庁第11管区海上保安本部や、中国の国家海洋局の発表によると、4隻は「海警2305」「海警2308」「海警2151」、そして尖閣周辺で新たに「海警2302」が確認された。
4隻は、午前10時20分現在、久場島の北西と西北西およそ22キロの日本の領海内を航行しているということで、海上保安本部が直ちに領海から出るよう警告を続けています。
尖閣沖 中国海警局船4隻が領海侵入 政府が対策室 | NHKニュース(12/5)
尖閣沖 中国海警局船4隻が接続水域を航行 | NHKニュース(12/4)
3000トン級「海警2302」は、30mm機関砲などを装備する武装船。これまでも同船や同型船について、中国ネットで見かけた新情報をもとに紹介や分析をしてきた。簡単にまとめておきたい。
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(飞扬军事)
「海警2302」は、中国海警局が正式に発足する前に、農業部漁業局(漁政局)(*1)が計画した3000トン級漁政公務法執行船(渔政公务执法船)建造計画の13隻のうちの1隻。同型の"漁政船"(*2)は12隻で、東シナ海を管轄する東海区漁政局(*1)には「海警2302」「海警2303」「海警2304」の3隻が配備されている。(追記修正 2018/2/12:「海警2304」は江蘇海警総隊の旗艦。)
今回、「海警2302」が尖閣諸島の周辺海域で確認されたので、そのうち他の2隻も確認されるだろう。
中船重工の第701研究所が設計を行い、東海区漁政局の3隻は広州市の中船黄埔造船が建造した。2013年に建造をはじめ、2015年〜2016年に引き渡された。
同型船はほかに、黄渤海区漁政局が4隻(海警1301、海警1302、海警1303、海警1304)を、南海区漁政局が5隻(海警3301、海警3302、海警3303、海警3304、海警3305)を建造した。「海警3302」は海南省海警総隊に移管され「海警46305」と改名した。
ちなみに新型の3000トン級には他に、「海警2305」「海警2306」「海警2307」「海警2308」などの、いわゆる"海監型"3000トン級がある。こちらは国家海洋局による3000トン級建造計画で、10隻が建造された(東海分局には上記の4隻配備)。機関砲などの固定武装は装備していない(記事公開時点)。
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中船重工の建造時の発表によると(*3)、「海警2302」ほかは、全長約110m、型幅14m、型深さ8.4m。設計満載排水量3000トン。主機はディーゼル2基、2軸。可変ピッチプロペラ推進。バウスラスターを装備。ヘリ甲板とヘリ格納庫をもつ。定員60人。
日本の海上保安庁の巡視船と大きさ比較すると、「つがる」型、第11管区海上保安本部の尖閣警備専従部隊「PLH-04 うるま」「PLH09 りゅうきゅう」(全長105.4m、最大幅14.6m、深さ8m、満杯4037㌧)とほぼ同じ大きさだ。
(飞扬军事)(赤丸や赤矢印は管理人による。)
30mm速射砲1基、12.7mm自動機銃(RWS)4基(赤矢印)の固定武装や、高圧放水銃1基を装備する。定番の停船命令等表示装置(電光掲示板)やサーチライト、遠隔監視採証装置(赤丸)を装備する。衛星通信会議システムなども備えているだろう。
ニュース記事では、「機関砲のようなものを搭載した海警2302」という表現が使われている。海上保安庁の発表がその表現で、そのまま書いているのかもしれない。
第11管区海上保安本部(那覇)によると、4隻は海警2151、海警2305、海警2308、機関砲のようなものを搭載した海警2302。領海に近づかないよう巡視船が警告した。
尖閣周辺に中国船4隻 2日連続 - 産経ニュース
・・・いったい、いつまでそんな茶番を伝え続けるのだろう?
管理人の中では「機関砲のようなもの」は今年の"珍ワード"の1つになっている。
「機関砲のようなもの」は、北方工业公司(NORINCO)のH/PJ17型单管30mm速射砲。
12.7mm自動機銃は、ORW-1型RWS(リモート・ウェポン・ ステーション、遥控武器站)に搭載された4基(ブリッジ前とヘリ格納庫の上)を装備している。 装弾数120発。14.5mm機銃にも対応する。
ベトナム紙Quân đội nhân dânの記事から引用したこれらの写真は、11月にベトナムを公式訪問した同型の「海警46305」の装備だが、「海警2302」なども同じ装備を持っていると考えられる(最初から別装備だと組織間で差が出来てしまう。同型船のほかの複数の写真で、特に違いは見られなかった)。
【中国海警局】 「海警46305」 ベトナムを公式訪問 南シナ海の周辺国への訪問ははじめて - pelicanmemo(2016-11-12)
ヘリ甲板とヘリ格納庫をもつ。格納庫の上、左右に1基ずつ自動機銃がある。
格納庫のシャッターは、高さ約4m、幅約4.5m(右側にいる人の身長を165cmとして推計。ディスプレイに物差しをあてた程度の精度。)、ちょうど、「Z-9(直九)」型ヘリやその民生型の「H410」型「H425」型が入る大きさだ。格納庫の中はシャッターの幅で奥まで続いていると思われる。
ヘリ甲板の中央には、フランスDCNS社のGRIDシステムと似たタイプの着艦拘束装置が埋め込まれている。
(赤丸や赤矢印は管理人による。)
船尾のハッチ(赤丸)が特徴的だ。
漁政型3000㌧級は、複合艇(RHIB)1艘を左舷に搭載している。ヘリ甲板の下には、比較的に大型の高速搭載艇が搭載されていて、スリップウェイで降下揚収するのではないだろうか?
今回の、尖閣諸島の沖で確認された「海警2302」の真横からの写真を拡大してみると、そのようなシルエットがあるような、ないような・・・
新型の3000トン級や5000トン級の海警船はヘリ格納庫を装備しているが、搭載ヘリについての報道はまったくと言っていいほど見かけない。続報を待ちたい。
「海警2302」
【中国海警局】漁政型3000トン級海警船、試験航海 - pelicanmemo(2015-07-20)
【中国海警局】搭載艇と降下揚収装置 - pelicanmemo(2015-07-20)
「海警2302」は今年7月から8月にかけて、米国沿岸警備隊と中国海警局による 2016年の北太平洋の公海での合同漁業パトロール活動に派遣された。
【中国海警局】 アメリカ沿岸警備隊との、北太平洋での共同漁業パトロールを実施 - pelicanmemo(2016-09-02)
【中国海警局】 3000トン級「海警2301」 - pelicanmemo(2016-08-13)
【中国海警局】 東海分局に 新たな3000トン級「海警2303」 機関砲を装備 - pelicanmemo(2016-02-06)
中国海警局 カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
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(*1)「漁業局」なのか「漁政局」なのかが分かりにくい。農業部の組織表示では「漁業局」だが、「中華人民共和国農業部漁業局」と「中華人民共和国漁政局」が併記されているので、どちらでも間違いではないのだろう。
一方、黄海・渤海、東シナ海、南シナ海の3つの海区を管轄するのは、黄渤海漁政局、東海漁政局、南海漁政局なので、こちらは「〜漁政局」が適切。
農業部直属する各部局の名称|中華人民共和国農業部(日本語)
农业部渔业渔政管理局主要职责和内设机构介绍|中国渔业政务网
中华人民共和国农业部
(*2)"漁政船"とは、漁業行政を主管する部門が公務に使用する"漁業行政執法船舶(渔业行政执法船舶)"の略称。漁政型3000トン級は、中国海警局が正式に発足した後に完成して引き渡されたので「中国漁政xxxx」という船名はつかなかった。
(*3)漁政は、海監と比べると公開される情報が少ない。配備後の詳しい関連報道が見当たらないので建造時の発表をもとにした。
中国海警2302船胜利交付为龙穴厂区建造的首艘公务船|中船黄埔文冲船舶有限公司
黄埔造船3艘3000吨级新型渔政船同时开工|中国船舶工业集团公司
农业部5艘3000吨级渔政船在龙穴造船基地开工|中国船舶工业集团公司
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