【アフリカ豚コレラ】フランス (未侵入)、野生のイノシシを積極的に駆除　国境近くに「空白地帯」を

📸 #Meuse Peste porcine : une battue administrative à la frontière avec l'aide de l'armée https://t.co/1deiR9lxbs
— L'Est Républicain (@lestrepublicain) February 2, 2019

2018年9月、ベルギー南部の、ルクセンブルク大公国とフランスの国境が近い地域で発見された野生のイノシシの死骸から、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスが確認された。

隔離ゾーンが設定されたことでウイルスの拡散を防げていたかと思ったが、12月下旬に、フランス国境からわずか1.5kmの地区で、ASF陽性のイノシシが２頭発見された。

フランス政府は、国内へのウイルス流入を防ぐために、ベルギーのASF発生地域との国境近くに、野生のイノシシを全て駆除する空白地帯「ゾネ・ブランシェ（ホワイト・ゾーン）」を設定。国立狩猟者連盟 (FNC)などにハンターの動員を求め、フランス軍による後方支援もあって、イノシシの積極的な駆除活動が進められている。

フランスは、アフリカ豚コレラから、国内の養豚業と食肉産業、国産の豚肉・豚製品を守るため、区域を限定して、野生のイノシシの積極的な駆除を選択した。

20181016194129 (2018年10月時点）

まず、（たまに勘違いしたコメントを見るので）簡単に書いておきたい。

・ベルギーでは、南部のごく狭い地域の野生のイノシシでだけ、アフリカ豚コレラ(ASF)が発生した。ASFが突然に遠隔地で発生する例は多い。最も近いASF発生地域はポーランド東部で、1000kmも離れている。

・フランスでは、アフリカ豚コレラ(ASF)は発生していない。（記事公開時点）

（*）アフリカ豚コレラは、フランス語で"peste porcine africaine (PPA)"だが、ここでは英語の略語"ASF"を使用する。また、カタカナにしてイメージしやすいだろう"ホワイト・ゾーン"を使用する。

アフリカ豚コレラカテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

Ads by Google

昨年9月に、ベルギー南部ワロン地方の、リュクセンブール州のEtalle市の近くの森林で発見された、野生のイノシシの死骸から、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスが確認された。ベルギーは、ASFウイルスの拡散を防ぐため、汚染地域に、野生のイノシシの駆除を行ってヒトの立ち入りや産業活動を制限し、監視警戒するための３つの区域（ゾーン）を設定した。

【アフリカ豚コレラ】ベルギー南部、規制・監視ゾーンを設定森林の管理とウイルス拡大の防止へ - pelicanmemo (2018-10-20)

昨年12月上旬の発表では、野生のイノシシの駆除数と発見された死骸は計594頭。うち規制区域で499頭、陽性は205頭。規制区域の外での陽性は確認されていなかった。

ところが12月20日、規制区域の外の監視強化ゾーンで発見されたイノシシの死骸から、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスが検出された。

Peste porcine africaine : une détection à moins de 5km de la France https://t.co/2vmoSvFg4d pic.twitter.com/ZzReAv3ELM
— Semaine Vétérinaire (@semainevet) January 11, 2019

（*）丸印はASF陽性、三角印は陰性。

この対策としてハンターが駆除をしていたところ、野生のイノシシの群れを発見。射殺した４頭のうち１頭でASF陽性が確認された。取り逃がした中の2~4頭は、フランスの方へ逃げていったそうだ。

1月14日、フランス農業・食料省のディディエ・ギヨーム (Didier Guillaume) 大臣は、ASF発生地域と国境を接する区域に、141平方kmの空白地帯「ゾネ・ブランシェ (Zone Blanche de Dépeuplement )（ホワイト・ゾーン）」の設定を発表。また、獣医公衆衛生の監察官が率いて、養豚業者、ハンター、林業業者、科学者や自治体の代表者達が参加する「危機ユニット」の設置も発表した。

ベルギー南部の汚染地域から、アフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスが、フランス国内に流入することを防止する対策を示した。

20190207215952
（*）この地図では「ホワイト・ゾーン」と簡単に書いた。正しくは"Zone Blanche de Dépeuplement"「（野生のイノシシの）殺処分による空白地帯（ホワイト・ゾーン）」。（赤字追記等は管理人による）

Peste porcine africaine : le détail des mesures de prévention | Alim'agri （フランス農業・食料省）

「ホワイト・ゾーン」では、野生のイノシシ（推定500〜600頭）を全て駆除し、イノシシが存在しない空白地帯を作り出して、ウイルスの移動を阻止する。

またイノシシの糞や土壌に残っているウイルスが、ヒトの靴・服や車のタイヤ・荷台に付いて移動するのを阻止するため、区域内のすべての林業活動は禁止された。

さらに「ホワイト・ゾーン」の外側からベルギーとの国境を囲うように、全長43.3kmのフェンスの設置工事が進められている。フェンスは高さ1.5mで、下を掘って通り抜けられないよう地面の下50cmまで埋めて固定される。

（ディディエ・ギヨーム農業･食料大臣の公式ツイッターより）

Pour un dépeuplement rapide des sangliers dans la #zoneblanche et stopper la #PestePorcineAfricaine, mobilisation générale des chasseurs, @ONCFS_officiel @ONF_Officiel avec le soutien logistique @Defense_gouv. La clôture délimitant la zone de vide sanitaire est en cours de pose pic.twitter.com/UjxrbWf0BS
— Didier GUILLAUME (@dguillaume26) January 25, 2019

想定されていた事態への対策は、事前に、関係各所と連携して練られていたのではないだろうか。発表後、速やかに駆除やフェンスの設置工事が始まっている。

国立狩猟者連盟 (Fédération nationale de chasse (FNC))や国立狩猟・野生動物事務所 (Office national de la chasse et de la faune sauvage (ONCFS))、国立森林事務所 (Office national des forêts (ONF))に、最大限のハンターの動員が求められ、"ホワイト・ゾーン"でのイノシシの駆除と、パトロールが行われる。

フランス南部など各地からもハンターが参加しているそうだ。駆除したイノシシ１頭あたり100ユーロ（約12500円）の助成金が支払われる。

射殺されたイノシシの死骸は、集積場所へ、バイオ・セーフティの規則を遵守して輸送。フランス軍も、輸送トラックなど、後方での支援活動を行う。

ーー（追記：2/10）ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「100ユーロの助成金」と「フランス軍の参加」という情報が、独り歩きしているそうだ。

助成金は、地元の狩猟協会が管理しているので、賞金稼ぎのようなハンターは参加できない。ハンターの移動によってウイルスを拡散させてしまうリスクが減る。

フランス軍の方は、「あくまでも後方支援」という慎重な表現を使った情報を見聞きしていたので、上のような書き方をした。

ーー（追記ここまで）ーーーーーーーーーーーーーーーーー

野生のイノシシは、アフリカ豚コレラ(African Swine Fever (ASF)) や豚コレラ（古典的豚コレラ (Classical Swine Fever (CSF)）などのウイルスを拡散する原因のひとつとなっている。

駆除に、効果がある／効果は薄い、生態系への影響が大きい／小さい、など賛否両論がある。どう対応するのか、それぞれの国内事情もあって、各国でまちまち。

フランス政府は、アフリカ豚コレラから、国内の養豚業と食肉産業、国産の豚肉・豚製品を守るため、区域を限定して、野生のイノシシの積極的な駆除を選択した。

アフリカ豚コレラ、フランスにも迫るベルギー国境でイノシシ大量駆除へ：AFP

La France crée une « zone blanche » sans sangliers pour éviter l’arrivée de la peste porcine - Le Monde