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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【新型コロナウイルス】 エアロゾル感染は、中国でどのくらい起こっているのか? 空気感染は?

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「エアロゾル感染」が「空気感染」と勘違いされたまま広まっているようです。

どちらも空気を吸うことで感染につながるので、わかりやすく勘違いされているのでしょう。

 

エアロゾル感染を「“中国政府”が認めた」といった、変な勘違いも広まっています。🙄

正しくは、上海市が2月8日に行った定例記者会見(新聞発布会)で、上海市民政局の曾群副局長が、衛生防疫専門家から聞いた情報というもの。(その衛生防疫専門家がどこの誰かは発表にありません)

しかも、主要な感染経路として「飛沫感染、エアロゾル感染と接触感染」と、この順番で話しています。(これは、ないわー)

分かっていない地方政府の官僚による、その人が持ってたイメージ中心での、説明不足の発表だったと感じます。(後述)

 

中国の中央政府当局(国家衛生健康委員会)は、 診療ガイドライン(試行第5版)で、主要な感染経路は飛沫感染と接触感染で、明確な証拠は無いとしつつエアロゾル感染と消化器を通した感染がありうる、と追加しました。

--(追記:02/20)-------------------

診療ガイドライン(試行第6版)で、感染経路の表現が修正されました。

主な感染経路で、接触感染に“密接”の二文字が追加された。
それに加えて、密閉環境で長時間暴露でエアロゾル感染の可能性があると追加された。 消化器は削られた。

日本メディアの記事を読むと、特にタイトルで、主な感染経路としてエアロゾル感染を認めた、というような表現もありますが、そうではありません。

主要な感染経路は、気道からの飛沫感染と密接接触感染。比較的密閉された環境で、高濃度のエアロゾルに長時間の暴露した場合、エアロゾル感染する可能性がある。

经呼吸道飞沫和密切接触传播是主要的传播途径。在相对封闭的环境中长时间暴露于高浓度气溶胶情况下存在经气溶胶传播的可能。

关于印发新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第六版)的通知

《新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第六版)》解读

 

新型肺炎「エーロゾル感染」の可能性 病原体空気漂う:朝日新聞デジタル

「エアロゾル感染」可能性認める 中国政府 新型肺炎 「飛沫」より感染力 - 産経ニュース
--(追記ここまで)------------------

 

これらは、中国の公式発表です。
「中国当局の発表はまったく信じられない!」と思う人もいるかもしれません。😊
(追記 2/20:中国についての「ネガティブ」な発表なら信じられる!という人もいるかもしれませんが…)

 

当ブログ管理人は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2 (前は 2019-nCoV)) について、特に「集団感染」に注目して調べています。よくツイートしてます。

もし、エアロゾルによる人から人への感染(ヒトヒト感染)が主要な感染経路のひとつならば、中国各地(武漢市・湖北省を除く)での「集団感染」例は、その件数も、1件あたりの平均人数も、集団の内訳も、この程度では済んではいないだろう、と考えます。

 

エアロゾル感染は、いまのところ、院内感染のような閉鎖環境や特殊な条件下で、少数で起こっていても、主な感染経路ではあり得ないでしょう。 

【新型コロナウイルス】 人から人への感染(ヒトヒト感染) 家庭での集団感染や、同窓会でも - pelicanmemo (2019-01-30)

【新型コロナウイルス】 人から人への感染(ヒトヒト感染) 浙江省でデパートでも感染拡大か - pelicanmemo (2020-02-01)
(この後、ツイートするばかりで、ブログでまとめられていないのが残念。😞)

新型コロナウイルス カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo

 

日本や欧米のメディアの記事タイトルでは、感染者の累計総数が3万人を越えた4万人を越えた、死者が千人を越えたと、大きな数字がよく毎日のニュースで使われています。

その一方で、都市それぞれの感染者数(*1)は2月14日昼までに、北京市(人口2000万人以上)は約370人、上海市(人口2400万人以上)は約320人、広東省の広州市(人口約1400万人)で330人、深圳市(人口約1300万人)で400人、…。香港特別区は53人。
(*1)PCR検査で陽性を確認した感染者数。以下おなじ。

実は、この程度。🙄

新型コロナウイルスは、SARSと比べると伝播しやすいだろうと言われます。

さらに、 飛沫感染や接触感染だけでなく、もしも、(上海民政局副局長が言うように)エアロゾル感染が主な感染ルートだとすると、上海や北京で、この程度で済んでいるわけがないです。🤔

 

上海市は記者会見と同じ日に、エアロゾル感染に関する詳しい解説「エアロゾル感染って何?注目に値するが、パニックになる必要はない」を公表しました。

その中で、感染者の咳やクシャミ、会話や笑いや歌う時に発生する飛沫からエアロゾルが発生するけれども、拡散して希釈されやすいのでほんの短い距離のことで、短い時間で感染力を失うだろうと説明しています。これって、飛沫感染とどれだけ違うの?🙄

ただし、密閉された狭い室内では、感染しやすくなると考えられているそうでで、換気が勧められています。インフルエンザなど呼吸器系の感染症の予防での「窓を開けて部屋の空気を入れ替えましょう」と同じですね。

直播丨2月8日上海市新型冠状病毒感染的肺炎疫情防控新闻发布会

【注意】新冠病毒可气溶胶传播?专家:值得重视,但无需恐慌

 

むしろ、エアロゾルによる感染の例というと、2003年のSARSの時に、高層住宅地アモイ・ガーデンズのブロックEで起きた集団感染(感染者107人。住宅地全体で321人) (Wikipedia)のような、感染者の糞便など排泄物(特に下痢)を介した感染や、あるいは、吐瀉物を介した感染が心配されます。
(中国の、特に農村部での衛生意識は推して知るべし)

今回の新型コロナウイルスでは、香港で、青衣島の集合住宅の1棟で10階離れた同じ部屋番号の2人で感染が確認されたことから、アモイ・ガーデンズのような糞口感染の可能性が疑われています。同じ棟の感染者は4人(~2/14)。

いまのところ、アモイ・ガーデンズの原因と同じトイレ配水管の問題は無く、あくまでもエアロゾル感染は疑惑の段階で、手すりなどを介した接触感染の可能性なども含めて調査中です。
4人のうち1人は他所で感染したよう。

【武漢肺炎】康美樓患者或曾改排氣管 申訴專員曾批房署執法不嚴|香港01 ほか

 

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北京市では感染者数のうち約半分が集団感染例で、平均感染者数は約3人(新華社 2月4日報道(核家族化が顕著?)。上海市では、感染者295人(2月6日まで)のうち45人が集団感染例で、家庭内の感染が大部分、他は会社の同僚と友達の集まりなど。(新華社 2月7日報道) 

 

意外に思われるかもしれませんが、中国(武漢市・湖北省を除く)では感染経路の調査が詳しく行われています。(武漢市・湖北省は調査自体が難しそう) 

明確な感染経路が無い場合は、公安当局が、街角や建物内の監視カメラの映像や購買履歴をたどって調べています。たとえば、感染者Aが感染者Bと野菜市場の露店で15秒間だけ隣り合っていた例や、感染者Cが感染者Dと薬局のカウンターで50秒だけ隣り合っていた例。

日本ではありえない規模と深さ🙄で、監視カメラ映像と顔認識システム、購買履歴等々のビッグデータを使った感染者と密接接触者の調査が行われています。

 

浙江省の温州市のビーフン料理店(粉干店)の店主親子2人で感染が確認された例では、監視カメラ映像等から店の近くを通った3615人を割り出し、テキストメッセージの送信や電話をすることで、店に入った40人を割り出して、2次感染していないかどうか調査している例もありました。(澎湃新闻

  

エアロゾル感染例は、そういった飛沫感染や接触感染の可能性が見つからないような、感染経路が分からない、ごく少数で起こっているのかもしれない、と考えています。

特殊な環境と条件の例では、病院での、患者の治療の作業中のエアロゾルの発生で、院内感染が起こりうるので注意がされています。

 

 

中国の言う事はまったく信じられないと思う人もいるでしょう。😊
エアロゾルによる人から人への感染(ヒトヒト感染)は、「本当はもっとたくさん起こっている!」しかし「中共が隠蔽をしているんだ!」と考えるのかもしれません。

 

同感です。

ですので、香港での集団感染例にも注目しています。🤔

いまのところ、香港でエアロゾル感染の疑いがあるのは、青衣島の長康村の高層住宅「康美樓」A棟での、感染者の部屋で「トイレの配管のずさんなDIY工事による漏れが原因かもしれない疑惑」の1件だけです。

 

  

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上海市民政局の曾群副局長は2月8日の記者会見で、「エアロゾル感染とは、飛沫が空気中で混ざってエアロゾルを形成し、吸引することで感染する」と表現しました。

これは、ほぼ飛沫感染ですね。🙄

原文はこちら。

曾群:卫生防疫专家告诉我们,目前可以确定的新型冠状病毒感染的肺炎传播途径主要为直接传播、气溶胶传播和接触传播。直接传播是指患者喷嚏、咳嗽、说话的飞沫,呼出的气体近距离直接吸入导致的感染;气溶胶传播是指飞沫混合在空气中,形成气溶胶,吸入后导致感染
(引用ここまで)

直播丨2月8日上海市新型冠状病毒感染的肺炎疫情防控新闻发布会

さらに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)(*1)の主要な感染経路として、「飛沫感染(直接感染)、エアロゾル感染と接触感染」と、この順番で話しています。

かなり変な表現です。

通常なら、「飛沫感染と接触感染が主要な感染経路」と言って、それに付け加えて、「エアロゾル感染がある」と発表するところです。
特に、中国中央の衛生当局(国家衛生健康委員会(衛健委))から発表された公式のガイドラインを、完全に無視している。

地方政府が「やらかした」例と感じました。🙄

 

これを、中国の中央政府に対して地方政府が抵抗をし、警鐘を鳴らすため「わざと、このような表現を使ったんだ!」、と見ることも可能かもしれません。😊

もしこれが隠れた告発ならば、告発の仕方としては下の下、だと感じています。

 

上海市は、エアロゾル感染を主要な感染経路と判断できるような「集団感染」例を見つけたのでしょうか? 

それにしては、上海市内での集団感染例で、エアロゾルによる人から人への感染例(ヒトヒト感染)が疑われる例は見かけていません。

上海市では、2月6日までの感染者295人のうち45人が集団感染例(2月7日発表)で、家族・親族での感染が38人、職場の同僚が3人、友達の集まりが3人となっています。
これらの集団感染は、普通に考えて、飛沫感染や接触感染によるものでしょう。

 

 

中国が発表する“感染者”数は本当は違っていて「真実を隠蔽しているんだ!」「すべての感染者や患者を発表していない!」と見るひともいるでしょう。😊

 

はい、その通りです。😊

新型コロナウイルスの陽性の発表は、PCR検査で陽性が確認された後に行われます。検査結果が出ていない感染者はカウントされていません。

湖北省では、疑い例の中に、発表された感染者数の2倍近く感染者(検査待ち)がいたようです。(2月14日発表では約1.8倍(湖北省衛健委))
(結局、湖北省では検査が追いつかず、2月13日の発表から"臨床診断病例"を含めての数の発表を始めた。いきなり新たな感染者数・死亡患者数が倍増するという、迷惑な事が起きた。(湖北省のトップ更迭も関係するのかも?))

 

うちのブログでは、H7N9鳥インフルエンザとヒト感染例を、2013年のはじめの頃から追いかけ続けています。昨年からはアフリカ豚コレラも。(どちらも、日本メディアがほとんど報じないニュース🙄)

それらの経験から、「検査対象を減らす」「検査をしない」「検査を後にのばす」は、中国の隠蔽(というかゴマカシ)でよく見かけた例でした。

結局、今回の、新型コロナウイルスでも同じことをしてますね。🙄 

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