(央视网 (2020-02-14))(日本語部分と赤枠は当ブログ管理人による(以下、同じ))
中国、湖北省の武漢市で流行し、中国各地、さらに国外での感染拡大が起きている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2(前は2019-nCoV))。
日本で話題にされるのは、中国の話から一気に国内の話になりました。
2月中旬に、中国の天津市で大事な内容のニュースを日本メディアも報じましたが、、あまり話題にならず流れてしまったようです。
天津市のデパート(百貨店)で集団感染があり、販売員や来客、それら家族などへの感染が拡がり、感染者は43人。店内では、商品の表面や、対面販売での手と手を介した接触感染があり、飛沫感染などとの複合要因で起こっていたという調査結果が発表されています。
まず勘違いしてほしくないのは、これはすでに、営業停止をして全館の消毒など防疫の対策が行われた、すでに終わった集団感染の報告例です。
百貨店から感染拡大か 客ら2万人割り出し隔離 中国 天津 | NHK (2020-02-18)
新型肺炎、天津の百貨店で集団感染…客ら40人以上 : 読売新聞 (2020-02-17)
その百貨店は、陽性確認1人目(販売員)1月22日にが発症し、24日~25日に同じフロアで2人目3人目の販売員が発症(いずれも後に陽性を確認)していた。重大衛生事件として、直後に閉鎖されて館内の消毒などが行われました。(中国の対応は早く、徹底している)
天津市の新型コロナウイルス防疫対策チームが、感染経路を詳しく解明して話題になったので、央視(中国中央電子台(CCTV))が2月14日にテレビ報道。そこで、NHKや読売新聞が日本語で記事にしたのですね。😊
中国のネット・SNSでは、「名探偵ホームズのように、ウイルスの感染経路を解明した」と言われていました。
簡単に書きますと、
- デパートの同じフロアで、別々の売り場(小型家電、靴、衣類、宝飾品など)の販売員たちが相次いで発症し、感染が確認された。皆、武漢や湖北省と関係する感染経路は無く、お互いが接触した時間や場所も見つからない。
- 実は、来客が「ウイルスの運び屋」だった。
- 感染経路は、ウイルスは商品の表面を介して、宝飾品販売の時の手から手へ、販売員や来客の手へと移動して口・鼻への接触感染。そして飛沫感染もあり、デパート内の感染経路は複雑だった。
というもの。
飛沫感染だけでなく、接触感染による感染拡大は起きています。不特定多数が集まる施設では集団感染も起こり得るので、対策を考えなければなりません。
自分が感染しないのは第一として、同じくらいに「ウイルスの運び屋」にならないよう、運び屋にさせないよう、手を洗ったり消毒をするなど注意をする必要があります。
日本でも、特にデパートなど小売り店の対面販売では、マスクは万能では無いのだから過信はせず、手・指の消毒を頻繁にされるよう対策を徹底してほしいものです。
お客の目がある場所でやりにくいなら、カウンターの裏やバックヤードに入った時に、消毒用アルコールをシュッと、軽く手にスプレーするとか、いろいろと、頻繁に。
(央视网 (2020-02-14))(日本語部分と赤枠等は当ブログ管理人による(以下、同じ))
中国では、浙江省のデパートでも、販売員・店員や来客での集団感染あるいは感染連鎖が起こっています。天津の例は、ここまで詳しく解明された報告は今のところ見かけられず、非常に興味深い事例のひとつです。
(そのうち、あちこちから、もしかしたら日本でもクルーズ船での感染経路の調査結果などが発表されることを期待しています)
【新型コロナウイルス】 人から人への感染(ヒトヒト感染) 浙江省でデパートでも感染拡大か - pelicanmemo (2020-02-01)
新型コロナウイルス カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
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(央视网 (2020-02-14))
天津市の新型コロナウイルス防疫対策チームが2月2日に記者会見を行って、感染経路の調査と最初の報告をしました。
集団感染(感染連鎖)クラスタが発生した舞台は、天津市宝坻区にある宝坻百貨大樓(百貨店)。
(观察者网(2020-02-3))(日本語部分などはブログ管理人による加筆)
最初に陽性が確認されたのは、百貨店の小型家電売り場の販売員(症例1)。1月22日に発熱の症状があった。続いて、その夫も陽性が確認(症例2)。どちらも、武漢や湖北省の人との接触歴は無く、旅行歴も無い。よくある感染ルートに当てはまりませんでした。
続いて、百貨店の同じフロアの、宝飾品売り場の販売員(症例3)と、靴売り場の販売員(症例4)の感染が確認されます。こちらも武漢や湖北との接触歴等は無い。
靴売り場の販売員(症例4)が発症が最も早く、感染者が出ていた地区への訪問歴があったので、最初の感染者と推測されましたが、この3人の販売員は、お互いに勤務時間が違っていて、時間と場所に接点が無い。
迷宮入りかと思われていたところに、新たに5人目の感染者が見つかります。
推理小説、ミステリーでよくあるストーリー展開ですね。😊
実は、買い物に来たお客さん(症例5) がウイルスの「運び屋」だった。
このお客さん(症例5) が百貨店にいた3時間の間に、靴売り場の販売員(症例4)から、靴など商品の表面を介してウイルスが手につき、次に、宝飾品を吟味している時に手から手へウイルスが移動していった。このように多くの販売員や来客へ、直接感染や飛沫感染など複合的に感染が拡大していった。
(央视网 (2020-02-14))
- お客さん(症例5)は、百貨店のそのフロアに3時間(午後3時~6時)滞在して、ショッピングを楽しんでいた。
- まず、感染者(発症あり)の靴コーナー販売員(症例4)から、お客さん(症例5)へとウイルスがうつった。
この時に、お客さん(症例5)は発症はしていません。感染もしていないでしょう。しかし、品物の表面を介して、お客さん(症例5)の手にウイルスが付着していた。 - 次に、宝飾品コーナーでショッピング。
商品を手に取って吟味しているときに、お客さん(症例5)の手から販売員(症例3)の手へと、ウイルスがうつった。
その後、販売員(症例3)はその手で顔(口・鼻や目)を触ったことで、感染してしまった。
このフロアでは、品物や手を介した接触感染と飛沫感染によって、販売員と来客との間で、複雑な経路での感染連鎖が起こっていた。
・・・というのが、天津の防疫対策チームの発表と、央視の番組(8分50秒)の骨子です。
実は、この天津市発表と央視テレビ番組(8分50秒)では、登場人物は5人だけで、かなり単純化した図式で解説しています。よく見ると矛盾点もある(*1)。😊
おそらく、新型ウイルスの感染経路が、発症した感染者の飛沫感染だけでなく、手やモノを介しての接触感染があることを強く注意するために、分かりやすい図式にしたのでしょう。(もしかしたら30分くらいのロング・バージョンの番組動画があるのかもしれない)
発症していない人でも、ウイルスは、手から手へとうつったり、商品の表面を介して手へとうつることがある。そしてその手で口や鼻、目を触ることで感染します。
手を洗いましょう。消毒しましょう。
(央视网 (2020-02-14))
似た例として、先週から話題になっている、香港の北角地区の仏堂「福慧精舍」と集団感染があります。仏堂にお参りした人や、周辺の飲食店店員や住民から感染者が増えていて、調査が進められていました。
衛生局の26日発表によると、仏堂のトイレの水道蛇口や、経書やそれを包む布からウイルスが検出された。感染者が触った物の表面を介した、接触感染と考えられます。
感染者(発症あり)が、ちゃんと手を洗っていなかったか、お堂に自分一人だからと、マスクをはずして、手のひらで口を覆うようにして、咳などをしていたのではないでしょうか。
新型コロナウイルスは感染者の大便からも検出されているので、もしかしたら、ノロウイルスと同じように糞口感染(接触感染)かもしれません。
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(央视网 (2020-02-14))
(「天津シャーロック・ホームズ(天津福尔摩斯)」天津市疾病预防控制中心传染病预防控制室主任 张颖 )
閑話休題、
天津市の百貨店では、実は、もっと大きな感染連鎖が起こっていました。
推理小説の謎解きにしては、登場人物5人のシナリオでは矛盾(*1)があって物足りなかったので、もう少し調べてみたところ…、
1月20日から1月23日までに 、その百貨店で買い物をしたり、百貨店のそのフロアで買い物をしたというお客さん20人近くで感染が確認されています。そして、感染者の家族や親族、同僚などに感染拡大していった。
百貨店のそのフロアでは、感染者と話をするときの飛沫感染や、店頭の商品(靴、衣類、宝飾品、等々)を介して、商品から手へ、手から手へと、新型コロナのウイルスが伝播していったのでしょう。
新型コロナウイルスは、物体の表面についた場合、数時間から5日、最大で9日間も感染性を維持するだろう(その物体によって違いがある)という研究があります(MERS,SARSの研究からの推測)。
天津市では、1月24日に重大衛生事件の発生を発表し、2月1日に対外的に“緊急通告”を発布。市党委書記(市のトップ)は、
「天津の宝坻百貨店を、武漢の海鮮市場にしてはならない!」
と強調。
2月11日から宝坻区全域で3000人を動員して、その感染リスクの高い時期に宝坻百貨店を利用したか聞き取り調査を行い、監視カメラ映像や各種の購買履歴などビッグデータを利用して、約2万人の百貨店の利用者を割り出したと報道されています。
これまでに確認された感染者は43人。
百貨店の販売員・店員ら194人が隔離施設での経過観察となり、買い物客など約9200人に対して自宅隔離が指示されました。
(央视网 (2020-02-14))
天津市と宝坻区は公式発表で、1ヶ月経った今でも、次のような指示をしています。
1月19日から25日に宝坻百貨店を訪れた人は、継続して自宅で体調をチェックして、外出はしない。自宅でもマスクをして、他の人と会う時は充分な距離を保つ。密接接触者の体調に注意をして、もし発熱や倦怠感、乾いた咳などの症状がある場合は、すぐに所属する社区(コミュニティ)や村の委員会に報告してください。
1月19日至25日到过区百货大楼的人员,要继续居家观察,不得外出,在家时要戴口罩,与他人见面时保持足够距离,并关注与自己密切接触人员的身体状况,如有发热、乏力、干咳等症状,要立即向所属社区居委会或村委会报告。
ドアノブや洗面の蛇口、そのほか身の回りにある不特定多数の人の手が触れる場所は、ひんぱんに消毒しましょう。
ひんぱんに手を洗いましょう。
天津举行新型冠状病毒感染肺炎防控工作系列新闻发布会 - 天津市人民政府新闻办公室 (2020-02-02)
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来自天津宝坻的警报:超乎想象的危险传播链! - 央视网 (2020年02月14日)(動画)
来自天津宝坻的警报:超乎想象的危险传播链! - 新浪网 (2020年02月14日)
百貨店から感染拡大か 客ら2万人割り出し隔離 中国 天津 | NHKニュース(2020年2月18日)
新型肺炎、天津の百貨店で集団感染…客ら40人以上 : 読売新聞オンライン(2020/02/17)
被称为“天津福尔摩斯”的张颖已升任天津市疾控中心副主任 - 澎湃新闻 (2020/02/22)
2020年天津宝坻百货大楼冠状病毒病聚集性疫情 - 维基百科
(*1) 小型家電コーナー販売員(症例1)は発症が1月22日、宝飾品コーナー販売員(症例3)の発症が1月24日。靴コーナー販売員(症例4)の発症が1月21日。この3人に勤務時間や場所で交差する時が無かった。
そこを繋いだのが、1月23日に来店した来客(症例5)という説明でした。しかし、症例1はすでに発症しています(矛盾)。
他の記事では、1月27日に発表というものもある。しかし宝坻区の公式発表では、1月22日に発症し、通常の勤務を続け、1月27日にまた発症となっていた。
はたして、天津市の百貨店のそのフロアで誰が最初の感染者だったのか?
靴コーナー販売員(症例4)(天津市での48番目の感染者)の可能性は高いだろうが、もしかしたら、来客で、手に取った商品から感染拡大していったのかもしれない。
#新型コロナウィルス
— ぺりかんめも (@pelicanmemo) 2020年2月6日
中国、天津市でも、デパートでの感染拡大。
宝坻区(宝テイ区)の百貨大楼で、“聚集性”病例。これまでに、買い物客や従業員の感染者15人、死亡1人。
天津宝坻百货大楼疫情确诊15例,首现死亡病例https://t.co/FugQCrDQcD
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中国の天津では、市内にある大規模な百貨店から感染が広がったとして、利用客らおよそ2万人を自宅に隔離する徹底した対策が行われています。
中国メディアによりますと、天津の宝※テイ区にある百貨店では、先月31日に従業員の1人に新型コロナウイルスの感染が確認されたあと、利用客と従業員に相次いで感染が確認され、今月12日までに感染者が35人に増えました。
これを受けて地元当局は百貨店の従業員およそ200人全員を隔離したほか、地域の住民に百貨店を利用していた場合は報告するよう呼びかけ、さらに、ビッグデータを使いながら、担当者が地域の住宅を1軒ずつ回って、最終的におよそ2万人の利用客らを割り出したということです。
百貨店から感染拡大か 客ら2万人割り出し隔離 中国 天津 | NHKニュース(2020年2月18日)
新型肺炎、天津の百貨店で集団感染…客ら40人以上 : 読売新聞オンライン(2020/02/17)