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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

仙台上空の白い未確認飛行物体の気球 特注の大きさで実験用?軍事用? 市販の普及品は直径10数m(追記あり(2023/02))

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仙台市、宮城県の上空で目撃された白い未確認飛行物体。ラジオゾンデなどで使われる高高度気球と似ていると言われている。

白い飛行物体が出現 「気球?」正体は謎―仙台上空:時事ドットコム

謎の浮遊体に仙台騒然、関係機関も正体分からず 「気球にドローン」専門家指摘も | 河北新報オンラインニュース

 

気象観測で使われる白いゴム気球の、大きさと運搬重量から考えてみた。ざっくりと計算したものなので、勘違いをしていて間違っているかもしれませんが。

 

もし仙台上空で目撃された白い気球が、高高度気象観測などで使われる最大の3000g気球とすると、破裂時の直径が13m強。地上での離陸前の直径は約2m・容積は約5立方m。ペイロード(運搬能力)は数kgと小さい。

あの白い未確認飛行物体の気球の、画像から推計される大きさやペイロードとは合わないようだ。市販があまりされていない大きさの特注品で、未だに届け出が無いので民間ではなく軍事用で、米軍関係なのだろうか?

新型コロナウィルスの影響により民間航空機が減便・運休しているタイミングでの、高高度の通信や観測の気球プラットフォームの飛行テストでは?、と想像している。

 

--(追記:2023/02/07)------------------

2023年2月、米国の上空でよく似た気球が見つかった。中国外交部は民間の気象観測用と発表したが、米国は中国の監視気球と発表。2月4日に米軍がF-22の空対空ミサイルAIM-9Xサイドワインダーで気球を撃墜した。

北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)および米国北方軍(NORTHCOM)の司令官、Glen VanHerck空軍大将は2月6日の記者会見で、気球の高さは200フィート(約60m)、ペイロードはおよそ2000ポンド(約900kg)と述べた。海軍と沿岸警備隊による残骸の回収が進められている。

Gen. Glen VanHerck, Commander, North American Aerospace Defense Command and United States Northern Command, Holds an Off-Camera, On-The-Record Briefing on the High-Altitude Surveillance Balloon Recovery Efforts > U.S. Department of Defense > Transcript

--(追記ここまで)--------------------

 

 

この、米国のベンチャー企業 JP Aerospace の"tandem"と似ていることから、同社のものではないか?と感じる人が多いそうだ。JP Aerospaceの代表 John M Powell さんはツイッターやFacebookで「私たちのものではありません」「日本で飛ばしていません」「申請せずに飛ばしません」などコメントをして否定をしている。

彼は最初期に、このバルーンを3000g気球と推測していた。

Japan is all excited right now about a UFO that was spotted and filmed by thousands. Everyone thinks it's me! I've gotten an overwhelming (over 1/2 a million) responses. It's not us but it does look similar to our Tandem airship.
(赤字強調は管理人による)

JP Aerospace - Japan is all excited right now about a UFO... | Facebook

JP Aerospace

 

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このJohn M Powell さんの最初期の推測では、このバルーンは3000g気球。

 

2000g気球よりは大きく、4000g気球はまれだそうだ。そこで複数の製造販売サイトを調べてみたところ、たしかに最大は3000g気球だった。それ以上は特注扱いになるのだろう。

スペックシートに、破裂する時の最大直径と高度、ペイロード(運搬能力)などが記されている。3000g気球は、破裂時の直径は13m (42.6ft)、高度40000m。(製品によって違いはあるだろう)

もし仙台上空で目撃された白い気球が市販の3000g気球なら、直径は10m〜12mと考えられる。

特殊ゾンデ用途としてはオゾンゾンデなどの観測装置を付けて飛ばすもので、ゴム気球は1000g(平均破裂高度33km)ないし3000g(同38km)のものがあるが、オゾンゾンデでは2000g気球(同36km)が使われることが多い。 3000g気球では原型の長さは約3m、平均破裂高度38km付近における破裂時の直径は約13.5mに達する。
(赤字強調は管理人による)

ゴム気球 - Wikipedia 

Kaymont | High Altitude Photography Balloons

The Weather Balloon 3000 for maximum payload and altitude | Stratoflights

  

 

その一方で、この気球の画像の視野角から、バルーンの直径が推測されている。13m以上、25m、さらには45m、60mという数字も見かける。

 

ネットSNSの説の中には、吊り下げられる重量が3トンというものも見かける。その想定は、飛行船のような硬質や準硬質の構造で、地上でも高度20,000mでも球体の容積が変わらない気球を考えたのだろう。例えば飛行船「ツェッペリンNT」は、全長75mの葉巻き型で、容積は8225立方メートル、重さが約8トン。(成層圏まで上がれないけど)

アレは違うでしょう。

 

Googleの "Project Loon" 成層圏ネット通信プラットフォームで使われているバルーンは、半透明の薄いプラスチック製で、高度12マイル(約19.2km)での直径が49フィート(14.9m)。エアポンプを含む気球の重量は165ポンド(74.8kg)で、太陽電池やアンテナなどその他の追加機材の重量が165ポンド(74.8kg)。(Reuters

 
この記事では、"Project Loon"のような長期間の運用のためではない、比較的に安価な、白色の伸縮するゴム系素材で作られたバルーンを想定して計算をしてみた。このタイプは地上では直径約2m(3000gの場合)で、気圧が低い成層圏低層では4〜5倍に膨らむ。そして限界を越えると破裂する。

 

 

次のツイートの画像は、米国のベンチャー企業 JP Aerospace のバルーン2つを使う"tandem"。(低高度の撮影画像なので、この状態のバルーンは直径4~5m程度)

95,085フィート(28,982m)まで上昇させた時の総重量が80ポンド(約36.3kg)で、そのうちバルーン2つの重量が20ポンド(約9.1kg)。バルーン1つあたり約4.5kgなので、4000g気球を使っているのだろう。破裂時の直径は60フィート(約18.3m)のようだ。
あれが直径20m以上とすると、これでも無い。

Tandem is an unmanned twin balloon airship. The two balloons are separated by a thirty foot long carbon fiber truss. Two electric motors each spin a six foot long propeller. The propellers are specifically designed to work in the thin atmosphere twenty miles up. The airship weighed eighty pounds, twenty pound of which was the balloons.

Tandem - JP Aerospace

"tandem"には全長6フィート(1.8m)のプロペラとモーターが2つと、パラシュートやカメラが付いている。信号を送って破裂させることも可能だ。

フレームは炭素繊維製なので、実は見た目ほど重くはない。同社の100フィート(約30.5m)のトラス構造フレームでも20ポンド(約9.1kg)しかない。 

 

 

あの白い未確認飛行物体の気球には、太陽電池と思われる四角い構造物が22個ついている。

薄膜フィルム状の、非結晶タイプのアモルファスシリコン太陽電池を使うだろう。気球の直径が20mだったすると、太陽電池シート(?)の面積は1枚あたり畳1枚くらいなので、22枚で30~40kgだろう。

プロペラは4つか6つ。モーターは最低2つは付いているだろう。アンテナや電子機器など含めて、吊り下げられた構造物の重さは60kg以上ありそうだ。

バルーン単体の重量は、ざっくりと10kgとしてみる。充てんされているヘリウムの重量は容積次第。

 

あの気球が高度20,000mで、直径20mだとすると地上では直径約5mで容積は約65.5立方m、直径25mだとすると地上での直径6.25mで容積は約127.8立方m(高度20000mで4倍まで膨らむ場合を想定)。ヘリウムを充てんした場合の浮力は約70〜135kg。

 

これらから、あの白い未確認飛行物体の気球は、市販の普及品ではない大きさのバルーンであり、地上での大きさは直径5~6m。吊り下げている設備は50〜110kgと推測してみた。

太平洋上まで流れていった後に、破裂して落下させたのではないだろうか?実証実験で、回収する意図は無いのかもしれない。

 

民間によるものなら、国土交通省に事前の届け出が必要だがそれが無い。自衛隊・統合幕僚監部は、未確認飛行物体を確認していて当たり前と思うが、報道ベースでの問い合わせの話しか出てきていない。

軍事用で、米軍が関係する高高度の観測気球プラットフォームで、飛行テスト?

青森県の三沢基地や、その隣の「象の檻」があった姉沼通信所からだと少し遠いか?

もしかして韓国や中国で離陸させて、東シナ海や日本海を越えてきた?

・・・そろそろ妄想になってきた。😓

 

 

菅官房長官の18日の記者会見での質問が、「他国が敵意を持って飛ばした可能性」ではなく、「敵意」がつかない「他国のなにかの実験の可能性」だったら返答の表現が変わっていたのだろう。

菅義偉官房長官は18日の記者会見で、宮城県の上空で17日に目撃された白い球体の飛行物体について「発見されたことは承知している」と述べた。「他国が敵意を持って飛ばしてきた可能性はないのか」と問われると「ご指摘のような事実はなく、被害は確認されていない」と返答。「関係機関において従前より、必要な警戒監視はしっかり行っている」と説明した。

謎の白い球体 菅官房長官「発見は承知。被害はなし」 - 毎日新聞

 

  

 

 

Factbox: Inside Loon's internet balloon venture