(ハンギョレ 한겨레 より)
韓国、慶尚北道栄州市で現代自動車(ヒョンデ)の電気自動車「アイオニック5」のタクシーが、早い速度のまま商業ビルの柱に衝突をした。ハンギョレなど報道をまとめると、車は衝突から5秒後に炎上し、事故から6分後に消防署の隊員が到着した時には車体が炎上していたそうだ。運転手の70代男性は近くの病院に運ばれたが死亡した。
このニュースを見聞きして半年前の釜山の高速道路で起きたEV車「アイオニック5」の衝突炎上(死亡2人)を思い出す人もいるだろう。
当ブログでは、あの死亡事故の後に詳しく検証をしてみた。半年後に韓国国立科学捜査研究院から調査結果が発表され、だいたい同じ原因と結果だったことが分かった(ブログ記事に追記)。
現代自動車のEV「アイオニック5」、高速道路の料金所で衝突、炎上。搭乗者の死亡原因と、発火の原因と、車両火災の原因と。 - pelicanmemo (2021-06-21)(追記:2022-11-10)
--(追記:2023/11/25)------------------
韓国の現代自動車のEV「アイオニック5」に関するブログ記事を、韓国での公式発表と現地報道を1年以上追いかけて書いてきました。
近ごろ、古いブログ記事だけがSNSで拡散され勘違いされているようなので、その後の事故等を検証した記事の一覧を載せておきます。特に直近の「事故車を解体【動画】 | 正面衝突で、バッテリーが炎上した場合と炎上しなかった場合」を読んでいただきたく思います。
現代自動車のEV「アイオニック5」、事故車を解体【動画】 | 正面衝突で、バッテリーが炎上した場合と炎上しなかった場合。 - pelicanmemo (2023-09-27)
現代自動車のEV「アイオニック5」、縁石にぶつかりバッテリーが損傷して全焼 - 韓国 済州島 - pelicanmemo (2023-03-31)
現代自動車のEV「アイオニック5」が衝突炎上、再び| 車幅より細い障害物への正面衝突で発火〜炎上リスク (追記あり) - pelicanmemo (2022-12-08)
現代自動車のEV「アイオニック5」、高速道路の料金所で衝突、炎上。搭乗者の死亡原因と、発火の原因と、車両火災の原因と。 - pelicanmemo (2022-06-21)
バッテリー・モジュール冷却用の絶縁不凍液(可燃性)のタンクがボンネット内右側に設置されています。衝突事故の直後に、ボンネットで起きた発火の原因である可能性は高いですがそれは外的要因でしょう。一部コメントで見かけた、その発火によってさらに消火困難なEV火災へと拡大したとは考えていません。
消火困難なEV火災は、車体の低い位置に設置されているバッテリー・ユニットが直接に受けた強い衝撃と変形と内部発火が原因だと考えられます。
--(追記ここまで)--------------------
釜山の事故では搭乗者がシートベルトをしていないなど、あきらかに人間の過失が目立った死亡事故だった。しかし、今回の「アイオニック5」衝突事故はすこし様相が違う。市街地で起きた事故で、事故前後の映像があり、目撃者らが初期消火と運転手の救助を試みようとしたが炎が激しくて近付くことができなかった様子も報じられている。
今回の「アイオニック5」衝突事故の原因は「急発進」という報道がある。その一方で、運転手が70代と高齢だったことから運転操作ミスの可能性も指摘されている。JTBCほかが報じた防犯カメラ映像を見ると、かなりの速度で突進していてノーブレーキ(ブレーキランプが点いていない)で建物に衝突した。衝突時に時速60kmとも言われている。
아이오닉5 또 고속충돌후 폭염화재 사망사고 ㅠ www.youtube.com
전기차 충돌 직후 800℃ ‘열폭주’…모서리 박으면 더 위험, 왜 : 한겨레(電気自動車衝突直後800℃「熱暴走」… 角を打つともっと危険、なぜ - ハンギョレ(2022-12-08)
それよりも、今回のニュースで注目されるのは、現代自動車(ヒョンデ)のEV車「アイオニック5」が衝突事故を起こした時のリチウム電池の安全性と発火・炎上につながる問題点がはっきりしてきたところにあるだろう。
車幅よりも狭くて固い構造物、たとえば建造物の角や柱、電柱やガードレールの端、車止めなどに早い速度で衝突した場合には「アイオニック5」の車体前部の構造ではバッテリー・モジュールへの衝撃を防ぎ切れないようだ。報道されている専門家による初期の見解でもそういうものが伝えられている。
衝撃を受けたリチウム電池セルが爆発的に発火すると、消火器による初期消火が難しいため車体全体の炎上へと繋がるリスクが高いと考えざるをえない。絶縁不凍液(可燃性)の燃焼も起こるだろう。
これでは、もし搭乗者がシートベルトをちゃんと付けていてエアバッグも正常に作動して事故直後に生存していたとしても、怪我や脳しんとうや気絶で動けなかったら逃げ出せず外部から助け出すことも難しいとなりかねない。
(追記:2023/01/19 :1月12日、現代自動車・起亜の南陽研究所安全試験棟で、アイオニック5の衝突試験がメディア公開された。韓国国内での”EVフォビア”へ対応したもの。ブログ記事の中ほどに追記しました。)
(追記12/12: ツイッターのアカウント pelicanmemo が凍結中なので、その後の報道などで見かけたネタで、ブログにすぐ追記するほどではない追加情報(いずれ一部をまとめてブログに追記するかもしれないの)をコメント欄に書いていてます(下→上へと旧→新です))
現代自動車のEV「アイオニック5」、高速道路の料金所で衝突、炎上。搭乗者の死亡原因と、発火の原因と、車両火災の原因と。 - pelicanmemo (2021-06-21)(追記:2022-11-10)
余談だが、今回のハンギョレ日本語版の当該記事は削除されている。(追記:削除されて、復活して、また削除されていた)
(追記12/9 朝6時:一晩あけてチェックしてみたら記事が復活していた。タイムスタンプも同じ。 衝突から5秒後に炎上した電気自動車…鎮火に1時間50分 : 経済 : hankyoreh japan(ハンギョレ日本語版(2022-12-08 09:07)))
(追記12/9 20時に確認したところ、ふたたび削除されていた。「this article is closed」となっている。なんなんだこれは?😬)(さらに追記:Archive.org で記録されてた)
釜山の事故の時も朝鮮日報日本語版の記事がすぐに消されていた。理由は知らんけど、こういうのは良いイメージにはつながらないだろう。なおネット掲示板やブログ等で引用されているし、韓国語版の元記事は公開されている。隠蔽は無理だし逆効果かと。
(日本語版の記事は削除されたり復活したりしている)ハンギョレ日本語版(2022-12-08 09:07)(http://japan.hani.co.kr/arti/economy/45332.html)
韓国語版・元記事: 전기차 충돌 직후 800℃ ‘열폭주’…모서리 박으면 더 위험, 왜 : 한겨레(ハンギョレ(2022-12-08)(記事タイトルは「또 불길에 휩싸인 전기차…진화에만 1시간50분 걸렸다(また炎に包まれた電気自動車… 消火に1時間50分かかった)から」更新されている)
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(ハンギョレより)
これまでに現代自動車(ヒョンデ)EV車「アイオニック5」による事故のうち衝突から数秒で炎上した事故では、どのケースも車幅よりも狭い構造物に早いスピードで正面衝突している。釜山の高速道路の事故では料金所の衝撃吸収装置へ衝突し、今回の慶尚北道栄州市の事故ではビルの角の柱と衝突をした。
今回、アイオニックや自動車関係のフォーラムなどでは「縁石」に乗り上げたことが原因でリチウム電池のバッテリー・モジュールに直接の衝撃があったというコメントを見かける。しかし、事故後の現場からレポートをしているニュース映像を見ると、車道と歩道との段差はあっても「車止め」のような構造物は無い。
むしろ、その程度の障害物に乗り上げたことが原因でリチウム電池セルが衝撃を受けて爆発的に発火して炎上するようなら、現代自動車(ヒョンデ)の電気自動車専用プラットフォームE-GMPに根本的かつ致命的な欠陥があると言われかねない。
(追記12/10:韓国語の掲示板やフォーラムで、炎上の主原因はリチウム電池ではなく冷却用不凍液(クーラント)だというコメントを見かける。これだと2時間近くも消火できなかった説明ができない)
消火直後の事故車「アイオニック5」をみると、車体前部のクラッシャブル・ゾーンはほぼ完全に無くなっている。…にも関わらず右前輪のホイール位置はあまり変わらず、Aピラーは歪むことなく残っている。車内のサバイバル・ゾーンの変形も少なく、ハンドルのエアバッグは開いている。もしかしたら衝突直後に運転手は生きていたのかもしれないと感じさせる。
(この後、この事故車「アイオニック5」はバッテリー再発火の危険があるため公園へと運ばれて長時間置いておいて安全が確保された)
--(追記:2023/01/19)------------------
1月12日、現代自動車・起亜の南陽研究所安全試験棟での衝突試験がメディア公開された。
アイオニック5を時速64kmの速度で40%オフセット衝突試験を行い、キャビン(室内)やバッテリーの変形や電解液漏れがないことを示した。ただし、
現代自動車統合安全開発室長 백창인 常務は「法規や商品性評価から保護するのは正面衝突が時速64km」とし「100kmの速度まで補完するには車体構成が難しい限界点がある」と説明した。(연합뉴스)
現代自動車統合安全開発室の 임진학 安全性能解析チーム長は「現在のバッテリーバック設計などで火災の99%はカバーされるが時速100km衝突を仮定すると多少脆弱な部分がある」(부산일보)
と述べた。縁石やレールクロス(突起物?)と同じ車体下部への衝撃試験は実施するのが非常に困難でコンピュータ・シミュレーションで実車評価に反映させているそうだ。
また国内販売車と輸出車の間で安全性に違いがあるという疑惑に対して、区別なく車両を設計していると説明された。
メディア各社が記事を書いている。読んだ中では聯合ニュース YNAやCAR GUY の記事が詳しいようだ。またAutoTimesが記者団と研究所関係者との一問一答の形式で載せている
시속 64㎞로 벽에 부딪힌 아이오닉5…승객 탑승부는 변형 없었다 | 연합뉴스 (聯合ニュース)
[르포] 시속 64km로 아이오닉5 충돌해보니..실내 및 배터리팩 멀쩡 - 카가이 (CAR GUY)
현대차그룹, "화재 없는 전기차 개발에 진심" (AutoTimes)
ーー(さらに追記)ーーーーーーーーーーーーー
なぜ衝突テストで火災が起きないのか?
충돌 테스트에서는 불 안나는 전기차, "어떤 이유가?"
IIHS(米国道路安全保険協会)の衝突試験ではバッテリーは12.5%しか充電されていない状態で行わている。他の衝突試験も同様で、衝突の衝撃による火災が起きる可能性が低い。実際の充電量とは乖離している。
--(追記ここまで)------------
--(追記ここまで)--------------------
ここでボンネットに”エンジンがある自動車”と”電気自動車”とを比べてみてどちらが安全かと言っても仕方はないだろう。リアエンジンやミッドシップのガソリン車と比べてみたいところだが、適当な比較対象が思いつかない。
はっきり言える事は、電気自動車(EV車)の場合は衝突時のリスクにリチウム電池への衝撃と爆発的発火および炎上の危険性が含まれることと、現代自動車(ヒョンデ)のEV車「アイオニック5」は通常の”自動車”に対する衝突時安全性能評価の数字は高いけれども、もしバッテリー・モジュールへの衝撃安全性を考慮した試験を行ったらどうなるか分からないということだ。
ヒョンデのEV車「アイオニック5」は、車幅に対して細い構造物へ早いスピードで衝突した時にはリチウムイオン電池の”バッテリー・モジュール”への衝撃を充分に吸収や分散できていない設計と感じられる。
また「アイオニック5」はバッテリー・モジュール冷却用の絶縁不凍液(可燃性)を希釈せずに使っている。これも車体炎上につながったと考えられる。タンクはボンネット内右側にあるので、衝突直後にボンネット右側から上がっている炎はこれかもしれない。
さらにバッテリー・セルが熱せられ続けて「熱暴走」を起こすことで消火と冷却に長時間が必要となる。周辺の建造物や車両への延焼リスクも高くなるだろう。
もしかしたら、駐車場や歩道に設置されているコンクリート製の車止め程度の障害物であっても、正面から早い速度でぶつかった場合、キャビン床下に薄く広く設置されているリチウム電池のバッテリー・モジュールに強い衝撃がかかって爆発的発火と炎上を起こすかもしれない。
「アイオニック5」(車体下)(아이오닉5 하부 배터리 / 사진 출처 = ‘아이오닉맴버스’)(autopostkorea)
(現代自動車より)
(現代自動車より)
これからも電気自動車(EV車)の安全性能を高める設計変更につながることを期待したいものだ
またEV車に対する衝突試験ではそのようなリスクも考慮した試験を検討してほしい。
現代自動車(ヒョンデ)におかれましては、「アイオニック5」はじめ電気自動車専用プラットフォーム「E-GMP(Electric-Global Modular Platform)」を採用しているEV車の設計に、バッテリーユニットの正面から下面にかけて高張力鋼のバンパーやアンダーガードを追加するなど、さらにリチウム電池セルを衝撃から守る構造にすることをおすすめしたい。
ハンギョレ 日本語版(2022-12-08)(ネット掲示板の転載記事から引用https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/news4plus/1670459231/1)
完成車業界はこれまで、電気自動車の火災発生率は内燃機関車のそれに比べて低いと主張してきた。しかし、電気自動車は火災発生による被害が致命的なものになる。電気自動車のドライバーが車両火災を恐れる理由はここにある。今年6月に釜山(プサン)で発生したアイオニック5の火災が代表的な例だ。アイオニック5が高速道路の料金所の衝撃緩衝施設に衝突した直後に炎に包まれ、ドライバーを含む2人が死亡した事故だ。
専門家は、電気自動車のドライバーはブレーキ故障やスリップなどの事故発生時の対応要領を熟知しておくべきだと助言する。釜山と栄州の電気自動車火災では、ある共通点が発見されているからだ。両車両とも左右の幅が狭い垂直の障害物の角に衝突していた。釜山の事故では料金所の衝撃緩衝施設、栄州の事故は建物の角だ。垂直構造物の角と衝突すると一カ所にエネルギーが集中してバッテリーに加わる衝撃が大きくなり、火災につながる可能性が高い。漢拏大学のチェ・ヨンソク教授(未来モビリティ工学)は「急発進などの事故が起きた際には電柱のような構造物は避けなければならず、平らな壁や駐車してある車両にぶつけるのが最も安全」だと語った。
漢拏大学のチェ・ヨンソク教授(未来モビリティ工学)は「急発進などの事故が起きた際には電柱のような構造物は避けなければならず、平らな壁や駐車してある車両にぶつけるのが最も安全」だと語った。
言いたいことはわかるけど、無茶言わんでくれ(苦笑)
ところで、ハンギョレ日本語版の当該記事は削除されている。記事検索をしても表示されない。(2022年12月08日20時に確認)
--(追記:12/9 06:00)------------------
一晩あけてチェックしてみたら記事が復活していた。タイムスタンプも同じ。 衝突から5秒後に炎上した電気自動車…鎮火に1時間50分 : 経済 : hankyoreh japan(ハンギョレ日本語版(2022-12-08 09:07))
なぜ消えて、なぜ復活したのかは分からない。一応、12月8日20時に削除されていたときのスナップショット画像を載せておく。
ハンギョレのサイト検索で調べてみると、今でもこの記事は表示されない。
--(追記ここまで)--------------------
--(追記:12/9 20:00)------------------
9日の20時に確認したところ、ふたたび削除されていた。「this article is closed」となって記事は表示されない。なんなんだこれは?😬)
URLは japan.hani.co.kr/arti/economy/45332.html
--(追記ここまで)--------------------
--(追記:12/10)---------------------
Archive.orgでURLチェックしてみたら保存されていた。
(Archive.org保存ページ)衝突から5秒後に炎上した電気自動車…鎮火に1時間50分 : 経済 : hankyoreh japan
12月8日朝にURLチェックした時は「Hmm... その記事はありませんね」だったんだけど…、12月8日04:48(GMT)(日本時間13時48分)には記事が一時的に閲覧できる状態だったようだ。日本時間の12月8日20時には削除されたので半日だけ復活した。
--(追記ここまで)--------------------
this article is closed : hankyoreh japan (ハンギョレ 日本語版 (2022-12-08))
アイオニック - サイト検索結果: hankyoreh japan
今年(2022年)6月に釜山の高速道路で発生した「アイオニック5」の衝突火災事故でも、朝鮮日報日本語版の記事がすぐに削除されていた。
あの衝突事故では、衝突や死亡の原因は運転者ら2人の対応に問題があったことが確認されている。今回の慶尚北道栄州市での衝突炎上事故の記事でも、安全性への問題点と火災炎上するリスクを比較的に丁寧に報じている。…にも関わらず、日本語記事が消える事が重なると、日本市場への再進出をしたヒョンデ(現代自動車)のEV車に対する印象にも影響しかねないと思うよ。
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#IONIQ5 が 2022-2023インポート・カー・オブ・ザ・イヤー 受賞🏆
— Hyundai Japan (@Hyundai_japan) 2022年12月8日
この度IONIQ 5は、日本カー・オブ・ザ・イヤーにおいて、競合モデルの中から最終選考に進んだ11台の車のうち、最も優れた輸入車に贈られる「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました✨#Hyundai #ヒョンデ #JCOTY pic.twitter.com/sBWOGq7n4s