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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

共同通信「尖閣諸島で「戦争恐れず」 中国軍中将、異例の言及」記事、鳳凰網が検証「捏造」と

20231212220024(共同通信のX(Twitter)ポストより)

共同通信は12月9日、中国の軍事委員会の元副院長、何雷中将が共同通信の単独インタビューに応じ沖縄県石垣市の尖閣諸島をめぐって「戦争を望まないが恐れない」と明言したと伝えた。

47NEWSはじめ地方メディア、多くのネットポータル・ニュースで転載されたので記事を目にした人は多いだろう。日本語ネットSNSでは「中国軍中将」がトレンドになり、かなり批判的なコメントをいくつも目にした(誰かのツイートを取り上げはしないが)。

一気に炎上したあとに沈静化したようにも感じられるが、熾き火のように奥の方でくすぶっているだろう。

尖閣諸島で「戦争恐れず」 中国軍中将、異例の言及 | 共同通信 (2023/12/09)

 

この共同通信の記事について、鳳凰網(*)が当の何雷中将に取材をし、検証記事「关于收复钓鱼岛,何雷将军回应火爆日本,不过这是日媒捏造的(钓鱼岛奪還に関して、何雷将軍の対応は日本を怒らせたが、それは日本のメディアによって捏造されたものだ)」で報じた。

关于收复钓鱼岛,何雷将军回应火爆日本,不过这是日媒捏造的 - 凤凰网 (2023年12月12日)

 

鳳凰網の記事の作者は、何雷中将に記事内容の確認をもとめ、その回答から共同通信の記事には4つのおかしな点があると指摘している。

まず(1つ目)、「まず最初に、日本のメディアは事実を捏造しました(首先,日媒捏造事实)」からはじまる。

(*)香港を拠点とするPhenixTV系ポータル・サイト。凤凰新媒体(凤凰网)(ifeng.com)の国際ニュース解説チャンネル「鳳凰大参考(凤凰大参考)(来自北京市)」が報じた。

 

当ブログ管理人から一言、この鳳凰網の検証記事もまた、中国側の情報工作のひとつかもしれない可能性にご留意ください。炎上ネタにさらに燃料を与えて、読者を混乱させてぐちゃぐちゃにして正常な判断を阻害するのも社会を分断する戦術のひとつです。

以下、鳳凰網の記事が共同通信の記事内容を紹介している部分は、共同通信の記事の原文の方から引用をして二重引用符(“”)で囲い下線付きフォントにしています。
鳳凰網の記事の抄訳では、例えば何雷将軍や何将军と呼んでいるところは何雷中将と書くなど、少し調整をしています。記事の内容を丸ごと日本語訳やそのまま紹介ではなく、当ブログ記事の構成に合わせて順序を変えています(そのように記載した)。
記事内容を紹介するために、中国側の一方的な主張を書く場合もありますが、それらは当ブログ管理人の意見では無いところにご注意ください。赤字強調は当ブログ管理人によるもので、原文の同じ文も一緒に赤字強調としました。

 

20231212220016凤凰网より)

 

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共同通信の報道によると(中国の軍事委員会の元副院長)何雷中将は”台湾武力統一に踏み切った場合、尖閣を同時に作戦対象とする可能性にも含みを持たせた。”ということだが、何雷中将本人は鳳凰網に対して、そのような発言はまったくしていない、共同社(共同通信)は事実を捏造している、ほかにたくらみがあるからだ、と述べた。

首先,日媒捏造事实。共同社报道称何雷将军表示,统一台湾时,中国大陆可能会同时收复钓鱼岛,何将军本人则对凤凰网表示,他并没有做出过这个表态,共同社捏造事实,别有用心。

 

共同通信の記事原文には”尖閣を「台湾省」の一部だとする中国の主張に基づいて台湾統一と尖閣奪取を同時に行う可能性について問うと「(中国主張の)道理からすればそうだ」と答え、否定しなかった。”とある。

鳳凰網の記事では、これに対して、何雷中将の当時の「正確な発言」をカッコ付きで引用している。

ただ、何雷中将は、共同通信の記者と合った日時や場所を「思い出した」くらいなのに、「正確な発言」は長文で引用することが出来ている。こういった発言は、中国軍の広報・プロパガンダでのテンプレ表現なので、共同通信の記者にも鳳凰網の記事作者に対してもよどみなく話せたのだろう。

报道原文称,中国称钓鱼岛为台湾省一部分,当问及中国统一台湾时,是否会一并夺取钓鱼岛,何将军答复:“从道理上来说是这样”。

何雷将军明确表示,当时的确切表述为:“钓鱼岛是中国不可分割的神圣领土的一部分,我们不希望在这个地方发生战争,但中国人民从来不惧怕战争,日方不要低估中国人民解放军捍卫国家领土主权的坚定决心、坚强意志和强大能力!”

 

紹介の順番が前後するが(4つ目)、共同通信の記事の”「(中国主張の)道理からすればそうだ」と答え、否定しなかった。” は意図的に誇張したもの、と指摘した。

何雷中将が”「道理からすればそうだ」"と言ったとしても、中国についてある程度知っている人なら「道理上はそうなる(道理上是这样)」「原則上はそうなる(原则上是这样)」と言った後にどう続くか分かるだろう、と言外にほのめかしている。

つまり共同通信の北京の記者なら、中国人についてよく知っているだろうから、何雷中将の発言を汲み取れただろう。それにも関わらず意図的に誇張した表現を使ったと言いたいのだろう。

 

当ブログ管理人は中国についてよく知らないので🙂、中国の人と話をしてるときに「原則からすればそうだ」と言ってきたら、「原則上…と言ってるけど、実際にはどうなんだろう」と思うかもしれない。ケースバイケース。敏感なあたりの話題だと空気を読んで、さらに問いただしたりはしないだろうし。🙂

 

 

2つ目は、共同通信が記事を公開した時期がおかしい。

共同通信は12月9日付けの記事で、”9日までに”何雷中将の単独インタビューを行ったと書いている。何雷中将は自身も参加した第10回北京香山フォーラムの期間中(2023年10月30日~31日)、10月30日昼ごろに共同通信の記者と何度か会ったことを思い出したそうだ。なぜ共同通信は(”単独インタビュー”から)1ヶ月以上経った12月9日に、200~300文字という短い記事で報じたのだろうか?と疑問を呈している。

共同通信ネット版の日本語記事は445文字(*)なので、200~300文字とは独自に中国語翻訳した訳文の文字数だろう。変なAI翻訳を使った抄訳&超訳/誤訳版では無いと思いたい🙂 (*)【北京共同】の後から©の前までの記事本文のみ。全角・半角どちらも1文字にカウントした)

 

そして3つ目、”共同通信の単独インタビュー”と書かれているが、何雷中将は昼食のためレストランに向かう途中に、会場の外で立ったままごく短いやりとりをしたくらいだったそうだ。「単独インタビュー」という表現は間違いではないかもしれないが、読者を誤解させ、意図的に煽った疑いがあると指摘している。

 

--(追記:12/14)------------------

この記事を書いた鳳凰網(鳳凰大参考(凤凰大参考))の記者、陈诚(陳誠)氏について調べてみたところ、第10回北京香山フォーラムが閉会した直後の11月1日に、鳳凰大参考が公開した何雷中将への単独インタビューを行っていた。(こちらは中国語原文の文字数が9,000文字以上、かなり長い)

どちら側が検証をもちかけたか分からないが、そのつながりもあって今回、何雷中将に直接確認がとれたのだろう。

凤凰专访何雷将军:如何看待新加坡防长3点对华建议? - 凤凰网 (2023年11月01日)

--(追記ここまで)------------------

 

記事は、自民党の政治献金問題、政治資金パーティー収入の裏金化のニュースと支持率の低下が続いているときだとして、共同通信による中国の軍事委員会の元副院長、何雷中将のこの「炒作インタビュー記事」にはとても利点がある(此时炒作何雷中将访谈,好处颇多。)と続けている。

ここは、共同通信の【北京共同】の記事のことなのでちょっと微妙な解釈だと感じた。🙂

 

確かに共同通信の12日9日付けのこの記事は唐突で、当ブログ管理人も違和感を感じていた(だからその後も、こうやって関連情報を調べているわけで…)。「独占インタビュー」といってる割には、鳳凰網の記事が指摘しているように、文字数は少なく内容はかなり薄い。日本語ネットSNSでバズることを狙っているようにも感じられた。

それでも、何雷中将の発言に「捏造」という単語があったとしても、共同通信の記事をまとめて「捏造(ねつ造)」と断言してしまうのは乱暴に過ぎるだろう。
(このブログ記事でもタイトルで使っちゃってるけど😅)

 

 

ところで、共同通信ネット版(nordot.app)やYahoo!ニュースほかネットニュースに転載されている記事は、地方メディア本紙の記事から最後の段落2つが削られているところに気付いた方もおられると思う。

鳳凰網の検証記事を書いた作者は、Yahoo!ニュースの共同通信の転載記事を底本にしたようなので、最後の段落2つの内容には言及していない。もしここも読んでいたら、読後感がすこしは変わっていたのかもしれない。

尖閣諸島で「戦争恐れず」 中国軍中将、異例の言及(共同通信) - Yahoo!ニュース (2023/12/09)

 

記録も兼ねて、共同通信ネット版記事で削られた部分を引用しておく。

「(略)…「(中国主張の)道理からすればそうだ」と答え、否定しなかった。」の後に次のように続いている。

 一方、発効から今年で45年を迎えた日中平和友好条約の締結交渉で、尖閣を巡る対立を「棚上げし、解決を将来にゆだねる」とした当時の最高実力者、故鄧小平(とう・しょうへい)氏の発言に触れ「(尖閣を巡る)争いは棚上げした」との認識も示した。
 その上で「鄧氏が亡くなって長い年月が過ぎ、将来世代のわれわれが争いを解決できるはずだったが、日本が挑発に出てきた」と主張、尖閣国有化で日本が一方的な現状変更を試みたと非難した。

相変わらずの一方的な主張だ。

八重山日報の12月10日版本紙紙面(有料配信)をもとに当ブログ管理人がテキストに起こした。

 

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