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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

中国、豚の飼育頭数、2019年末に半減か

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2018年8月、中国の遼寧省瀋陽市で、アフリカ豚コレラ (African Swine Fever(ASF))の発生が、アジアではじめて確認された。それから約1年がたつ。

ASFへの感染と発生による豚の殺処分の頭数は、公式発表では120万頭以上となった。

それとは別に、養豚業者や自治体による、ASF発生を恐れてのリスク回避、豚の飼育や運搬、検査など規制が強化されたこと、早期出荷や投げ売り、豚の飼育の停止や転業などによって、中国の豚の飼育頭数がすさまじい速度で減り続けている。

 

2019年4月、オランダの金融機関ラボバンクから、中国の豚は「2019年の末までに2億頭」「30%減少」と発表があった。

当ブログ管理人、"2億頭"というのは、中国の1年間の「出荷頭数、約7億頭の3割」のことだと考え、飼育頭数4〜4.3億頭(2018年)から2億頭も減るとは思っていなかった。

【アフリカ豚コレラ】 中国で2億頭が感染?殺処分? 勘違いとデマ、フェイク | ニュースを読み解くのに使える"数字" - pelicanmemo

 

しかし、2019年上半期(1月〜6月)の豚(肥育豚・繁殖母豚)の飼育頭数と月々の減少率が発表されたところで、改めて集計し直してみたところ、2019年の末の段階で、中国の豚(肥育豚・繁殖母豚)の「飼育頭数が約2億頭減少」すると考えるようになった。

以下、素人が、表計算ソフトで数字を弄った、その程度のものです。 

 

 

国家統計局によると、中国全国の豚の飼育頭数は約4.3億頭(4億2817万頭(2018年))。日本や欧米、外国メディアでは、この「4.3億頭」が用いられている。
(農業農村部の数字との違いとか、いろいろある。本筋とはずれるので、後の方に書いています。(*1))

農業農村部からは、毎月、豚(肥育豚(生猪)・繁殖母豚(能繁母猪))の飼育頭数の "前月比" と "前年同月比" が発表されている。(実数は2015年から発表されていないようだ)

そこで、国家統計局の"公式発表"の数字を元にして、毎月の増加率・減少率(%)をかけることで、月々の豚(肥育豚・繁殖母豚)の頭数を推計してみた。

以下、素人が、表計算ソフトで数字を弄った、その程度のものです。(予防線😊) 

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2019年12月に、豚(肥育豚(生猪)・繁殖母豚(能繁母猪))の頭数は2億〜2.2億頭。

2018年1月の4.3億頭から半減し、肥育豚(生猪)は2億頭減少するという結果になった。
(中国での豚の飼育頭数は、2017年から徐々に下がってきている。もし、アフリカ豚コレラ(ASF)の発生と流行が無くても、数千万頭減っていただろう。) 

 

グラフ中に特に描いている、①は肥育豚(生猪)価格が底となった時期で、2019年1月~3月。(価格のグラフの線は描いていない)

②は繁殖母豚(能繁母猪)の飼育頭数【棒グラフ・右軸】が、③は肥育豚(生猪)の飼育頭数と総頭数【折れ線グラフ・左軸】が、底をうつだろう時期を推測してみた。

2019年6月份400个监测县生猪存栏信息 - 中国政府网

生猪信息  - 生猪存栏信息和生猪疫情 - 中国政府网 (過去の統計)

  

 

中国の、豚の飼育頭数と肥育豚(生猪)価格には相関関係があり、価格の高低と頭数の増減にはサイクルがある。

2014〜2016年に、環境規制の強化によって飼育頭数が大きく減少し、後に大きく増加した。その2014〜2016年サイクルを参考にして、2019年7月から2020年7月までの頭数の増減率を予想してみた。(あくまでも素人による予想です)

 

肥育豚(生猪)価格が底をうって(①)価格が上がりはじめると、養豚業者は収益を高めるために、繁殖母豚(能繁母猪)を増やしはじめる。

しかし、繁殖年齢になるまでに8〜9ヶ月かかるので、すぐには母豚の飼育頭数の統計には反映されない。しばらく減り続け、2019年10月〜11月が底(②)となる。
その時期までの減少率は、公式発表された2019年1月〜6月の平均値の、マイナス4%を使った。

--(追記:12/06)-------------------

Pig herds probably began to pick up in November after 12 provinces, including Henan, Shandong and Jilin, reported an increase in inventories, said Yang Zhenhai, head of the ministry’s animal husbandry bureau. The declines in some provinces in the south and southwest have also eased. “Overall, breeding sow inventories are expanding and we see a bottoming in hog inventories.”

Worst of China’s African Swine Fever Over, Says Ministry Official - Bloomberg (2019/12/04)
--(追記ここまで)------------------

 

母豚から生まれた子豚は、4〜5ヶ月飼育されてから、肥育豚(生猪)として養豚場へ売られていく。肥育豚(生猪)の頭数は2020年3月〜4月が底となる(③)。そこまでの減少率は、母豚と同じマイナス4%を使用した。

 

(追記:計算はあくまでも、中国の公式発表の数字をもとにしたものです。
公式発表は実態とは違っていて、影響を小さく見せるよう操作している可能性は否定できません。
さらに、中国の公式発表はまったく信じられないと考える人がいるなら、減少率はさらに大きく見えることでしょう。)

 

さらに(通常なら)5〜6ヶ月、飼育して太らせてから出荷され、豚肉生産量が本格的に回復するのは2020年後半からだろう。

肥育豚と繁殖母豚の飼育頭数の増加率は、減少率の半分のプラス2%を使った。数字の根拠は特にない。
理由を書くなら、養豚の規模化と近代化が進められ、バイオセーフティのレベルが低い零細の養豚場や自宅養豚(backyard)は、飼育許可が下りなかったり、コストが上がる事で、豚の飼育を再開出来なくなると思われる。

都市化と人口集中が進む地域や、零細の養豚農家が多い華中地方や西南地方では、特に整理が進むのではないだろうか?

 

2019年上半期の、肥育豚の頭数(生猪存栏)は3億4761万頭、出荷頭数(生猪出栏)は3億1346万頭だった。
その一方で、アフリカ豚コレラ(ASF)発生前の、2018年上半期の、肥育豚の頭数(生猪存栏)は4億0904万頭、出荷頭数(生猪出栏)は3億3422万頭。
2018年上半期と比べると、出荷頭数は約2000万頭、6.2%減少した。

肥育豚の頭数が約6000万頭、15%も減っているので、バイオセーフティのレベルが低い養豚場や自宅養豚の整理が進められ、肥育するための子豚が補充されてこなかったのだろう。

 

豚肉の生産量は、2019年上半期は2470万トンで、2018年上半期から5.5%減少したそうだ。

2019年は減少傾向が続くだろうから、年末に生産量が半分になるのなら、2019年の豚肉生産量が3割減少も充分に起こり得るだろう。(2018年後半には、ASF発生のリスク回避のための早期出荷もあったし)

 

上半年国民经济运行总体平稳、稳中有进 - 国家统计局 (2019-07-15)

上半年国民经济总体平稳、稳中向好 - 国家统计局 (2018-07-16)

2018年经济运行保持在合理区间 发展的主要预期目标较好完成 - 国家统计局(2019-01-21)

  

(*1) 中国で飼育されている豚(肥育豚(生猪)・繁殖母豚(能繁母猪))の飼育頭数(存栏量)の公式データは、国家統計局と農業農村部から発表されており、その2つの数字は食い違っている。

2018年はじめの中国全国の豚の飼育頭数は、国家統計局によると約4.3億頭(4億2817万頭(2018年))で、農業農村部のデータを元にした報道によると約3.65億頭のようだ。

国家統計局の発表の方は、元データが、地方からの報告の段階で "盛られている"からとも言われる。

農業農村部は、全国400個所の毎月のサンプル調査による、前月比と前年同月比を発表している。2015年から実数を出さなったようだ。また、2018年1月から計算式を少し変更した。

中国の、豚の飼育頭数の実際の数字は、農業農村部の方が正しいだろうと思う。

しかし、国家統計局のデータが多く使われ、日本や欧米、外国では「中国の豚の飼育頭数は4.3億頭」が使われているので、そちらをベースにして計算してみた。

(追記:母数にどちらの数字を使うかで、結果は大きく変わってくる。
ありがちな間違いは、業界発表の数値(約3.65億頭(2018年)など)をもとに計算された数値なのに、中国の豚飼育頭数(2018年)と見做される約4.3億頭(2018年)を母数にして減少率を計算してしまうとこだろう。
それが、もし、豚の出荷頭数の約7億頭(2018年)を母数に使って、減少率を計算したりしたら、最悪。)

 

 

畜産の情報−海外情報 中国の養豚をめぐる動向と環境規制強化の影響− 2018年4月