(農林水産省)
8月3日、中国の遼寧省瀋陽市で、アジアではじめてのアフリカ豚コレラの発生が確認されました。9月13日までに6つの省の14の市区での発生が発表されています。
アフリカ豚コレラ (ASF (African Swine Fever)) は、約10年前から、主に東ヨーロッパ諸国やロシア西部で、野生のイノシシと養豚場で起こり続けています。
9月13日にはベルギーで、2頭の野生のイノシシで確認され、ふたたび西ヨーロッパに入り込みました。
このあたり、アフリカ豚コレラのウィルスの拡大の歴史は、厚生労働省の資料をご覧ください。
アフリカ豚コレラには、治療法がなく、ワクチンも(今のところ)なく、もし養豚場で発生したら、発症していない豚も含めて同じ群れ全てを屠殺して無害化処理しなければなりません。(それを徹底できなかったことで、感染拡大が起こって大変な状況にある国も...)
ユーラシア大陸におけるアフリカ豚コレラの発生拡大状況(2007年〜)(pdf)(2018年9月18日現在。出典:OIE情報等)
前置きが長くなりました。中国で発生したアフリカ豚コレラ(ASF) のウィルスは、ロシアから侵入してきたものだと、まことしやかに語られています。多分そうなのでしょう。当ブログ管理人も7〜8割がたそうだと思っています。そうなんじゃないかな?😊
当事者のロシアにとっては、たまったものじゃない話。
ロシアの連邦動植物検疫監督局が、中国で発生したアフリカ豚コレラ (ASF) は
「EU(欧州連合)から中国へ輸出された、豚肉・豚加工品が原因の可能性がある」
と発表しました。
これについて少し。
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米国のトランプ政権による関税引き上げ政策によって、中国は、米国からの豚肉や豚くず肉の輸入を、ロシアからの輸入に切り替えたという"うわさ"があります。この輸入豚肉が、中国のアフリカ豚コレラ(ASF)の原因という"流言"もあり、特に、米中貿易戦争を絡めた記事やコメントでよく見かけます。
米中貿易摩擦によって、中国は、ロシアからではなく、EUや南米からの豚肉輸入が増やしています。
中国のアフリカ豚コレラ、ウイルスはロシアから? | ロシアから中国への豚肉輸出は無かった 誤発表、フェイク・ニュース、そして陰謀論へ - pelicanmemo(2018-08-31)
ロシアは、日本と海峡で接している隣の国なのに、日本メディアの報道は少なく、極東ロシアの印象も大きくはない。中国や韓国くらいにとは言わないけれども、もっと知られてもいいんじゃないかと。
ーー(追記)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
中国の海関総署(税関)の統計によると、7月の豚肉の輸入量は88,163トン。
2018年上半期の、中国の豚肉の輸入元は、EU(欧州連合)が6割以上、次いで、カナダ、ブラジル、米国、チリ。
米中貿易摩擦によって、米国からの豚肉輸入が大きく減った分は、EUと南米、特にブラジルからの輸入が大きく増加しました。
アフリカ豚コレラ、ロシアでは200万頭、全豚の8.3%を殺処分? | サッカー・ワールドカップで中国へ拡大か?(2/2) - pelicanmemo (2018-09-26)
ーー(追記ここまで)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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アフリカ豚コレラ (ASF (African Swine Fever)) は、2007年にロシアに侵入し、東欧で拡大しました。ロシアでは主に、ウラル山脈の西側(ヨーロッパ・ロシア)で発生していましたが、2017年には東側(アジア・ロシア)、シベリア連邦管区のオムスク州やイルクーツク州でも発生が確認されました。
さらに東の、極東連邦管区でのASFウィルスの確認は、未だ無いようです。
ロシアの連邦動植物検疫監督局は9月11日、中国で発生したアフリカ豚コレラ (African Swine Fever (ASF))のウィルスは、EU(欧州連合)からの輸入豚肉が原因の可能性があると発表。ロイターが報道しました。
The African Swine Fever (ASF) virus may have came to China from the European Union, Russian agriculture safety watchdog said on Tuesday, citing results of its own research.
(赤字強調は管理人による)Russia says ASF might have come to China from the EU | Reuters
ロシア連邦動植物検疫監督局(Россельхознадзор (Rosselhoznadzor))による公式発表はこちら。
Комментарий Россельхознадзора относительно возможных путей заноса АЧС в Китай - Россельхознадзор
中国で発生したアフリカ豚コレラ(ASF)の、最初の2度のウィルスの遺伝子を解析した結果、東欧(バルト三国(ラトビア、リトアニア、エストニア)、ポーランド)、アフリカやコーカサス地方のウィルスと類似している。また、近年の東欧・中欧(ポーランド、モルドバ、ルーマニア、ハンガリー、チェコ)で発生したウィルスの特徴を持っているそうです。
There is abundant evidence leading Spanish and Russian scientists was the discovery of this fragment into the genome of the virus ACHS released recently in Eastern and Central Europe (Poland, Moldova, Romania, Hungary, Czech Republic).
(google translate)
この事から、中国でのアフリカ豚コレラ(ASF)のウイルスの侵入ルートには、2つの可能性が考えられるとしています。
まず、2つ目の仮説から紹介。
可能性は低いと前置きをして、南コーカサス地方から野生のイノシシが、ASFウイルスの運び手になった可能性があるとしています。
これは、距離がありすぎる上、もしそうだとしても、まず新疆ウイグル自治区で最初のASF発生があったことでしょう。
次に、1つ目の仮説。
最も可能性が高い仮説として、中国とEUとの農畜産物貿易によってウイルスが侵入したと説明しています。
EU統計局(Eurostat)の貿易データベースによると、EUから中国への「精肉、冷蔵・冷凍豚肉」「ラード」は、2017年は、ASF発生があったポーランドやルーマニアから輸出されていた。2018年は前半6ヶ月に、ルーマニアから引き続き輸出されていて、さらに4月にASF発生したハンガリーからも輸出されていた。
According to the statistical service of "Eurostat" European Union exports to China of products with codes TH-FEA: 0203 (fresh, chilled or frozen pork), 0209 (lard) in 2017 were carried out by Poland and Romania, which are already happening widely ASF . In the first six months of 2018 Romania has continued to export above products in China. Also, do not stop supplying pig products from Hungary, after in April the first outbreak of African swine fever has been recorded there.
(google translate)
中国には、300以上の貿易港があり、高度に発達した交通インフラを持っている。中国で最初のアフリカ豚コレラ(ASF)が発生した遼寧省瀋陽市は、大きな貿易港のある大連市に近いので、そこからASFウイルスが侵入した可能性がある、と説明しています。
この仮説の弱いところは、東欧諸国から中国に輸入された豚肉・豚加工品は、消費のための輸入というところです。
大消費地である北京市や上海市、浙江、広東など沿海省の都市の、周辺の養豚場・農場で、はじめてのASF発生が起こる確率の方がはるかに高いでしょう。なぜ東北部の、しかも養豚が盛んな地域で発生したのか、説明しきれていません。
ロシア西部から、陸路で、豚肉・豚加工品が運ばれ、シベリアのイルクーツク州で発生したように、極東のアムール州や沿海地方から、中国の黒竜江省や吉林省へウイルスが侵入したとイメージする方が分かりやすい。(ただし、極東連邦管区での、アフリカ豚コレラの発生は確認されていません)
ただ、中国当局の解説と、中国メディアの報道にも悪いところがあるのですよ。😕
アフリカ豚コレラ(ASF)(非洲猪瘟)のウイルスの発生拡大の説明の時に、2017年以来、「ロシア極東地区(遠東地区(远东地区))で、数度のアフリカ豚コレラが発生している」と解説されます(勿論、そう書いていない適切な解説もあります)。
多分、イルクーツク州とクラスノヤルスク地方でのASF発生例のことを言っているのかもしれませんし、もしかすると"シベリア"のつもりだったのかもしれません。
どれだけ、距離があるのか地理的なイメージができていないのではないでしょうか。
日本メディアの記事や、ネット・SNSのコメントで、「ロシア」「中国」とひとくくりにして言ってしまわれるのと同じですね。
1921年肯尼亚首次报道发生非洲猪瘟疫情,该病于上世纪60年代传入欧洲,70年代传入南美洲,2007传入高加索地区和俄罗斯。2017年以来,俄罗斯远东地区发生数起非洲猪瘟疫情。该病现主要在非洲、中东欧和高加索地区流行。健康猪与患病猪或污染物直接接触是非洲猪瘟最主要的传播途径,猪被带毒的蜱等媒介昆虫叮咬也存在感染非洲猪瘟的可能性。
(赤字強調は管理人による)非洲猪瘟不是人畜共患病 不会感染人——农业农村部兽医局负责人就沈阳市沈北新区发生非洲猪瘟疫情答记者问 - 农业农村部新闻办公室 (2018年08月03日)
この解説がコピペされて広まり、さらには「ロシア極東地区で、アフリカ豚コレラが頻発している」という、過大な表現に発展しています。
中国メディアの記事、あるある。😊
2007传入高加索地区和俄罗斯。2017年以来,俄罗斯远东地区非洲猪瘟疫情频发。2018年8月,非洲猪瘟在我国首次发生。非洲猪瘟在猪群中传播主要通过与患病猪或病毒污染物直接接触而感染,带毒的软蜱等媒介昆虫叮咬也可传播。
(赤字強調は管理人による)安徽有效处置8处非洲猪瘟疫情 人会感染吗?肉还能吃吗?--安徽频道--人民网 (2018年09月13日)
中国当局の発表やメディアの報道では、とにかく、国外から来たことを強調したいようです。それは裏を返せば、中国国内での感染拡大が続いていて、さらなる社会の不安に広げないための情報操作、印象操作、イメージ作りとも感じられます。
ロシアもまた、EUからの輸入豚肉原因説をアピールしていくのでしょう。
Россельхознадзор - Официальный сайт
極東連邦管区 - Wikipedia、遠東聯邦管區 - 维基百科、俄罗斯远东地区 - 百度百科
連邦管区 - Wikipedia、シベリア連邦管区 - Wikipedia、極東経済地区 - Wikipedia
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